第58話 人生はいつも理解不能と想定外の連続
【▽月#日】
今日はちょっと、新たに部隊に参入した1人である、ココについて書こうと思う。
ココは、性格については……まあ、事前に聞いていた通りの娘だった。
明るくて元気で、人懐っこい感じ。メイルライダーの中だと、ヴィヴィアンに近い。
エンブリヲのところにいた時には、そういうところはなりを潜めていたみたいなのだが、アルゼナルに戻ってきて以降はすっかり元通りである。
うんうん、やっぱり笑ってる方が可愛いよ。笑顔が一番。
そんな風に思えてしまうほどに……なんていうか、無邪気で、笑顔が似合う子だ。ほとんど交流もない僕でも、そう感じる。
一番の親友であるミランダのみならず、初陣の日以降、仲良くなる予定だった(ココ談)第一中隊の面々ともすぐに打ち解けていた。
そのフレンドリーさたるや、どちらかというと内向的なクリスが逆にびびるくらいである。
それこそ、因縁があるはずのアンジュとすらも、3日と経たずに気軽に話せる仲になっていた。
彼女とのことについて、何も思う所がないわけではないようだったが、『生き返ったし謝ってくれたからOK』ということで完結させたらしい。すごい前向きな娘である。
そのフレンドリーさはメイルライダーのみにとどまらず、この数日間であっという間に部隊内の他の面々とも仲良くなった。
ミランダと並んで最年少(12歳)のため、部隊内ではマスコットみたいな扱われ方になりつつある。
サブロウタさんやクルツなんかのナンパ好きな面々も、『流石に小さすぎる』ということで、小さな子を愛でる、かわいがる感覚で接してるっぽい。
もちろん、僕やミレーネルのとこにも来た。
ミランダと特に交流があるのが僕だってこともあって、彼女から僕のことは色々と聞いていたらしい。ぐいぐい来て……いや、別に迷惑ではなかったんだけど……ちょっと戸惑いました。
けど、きちんと仲良くなれたと思う。これから、機体その他の関係で色々関わって行く機会も多くなるしね、いいことだ。
ミランダ共々、これからもよろしく。
……こんな風なほのぼの話をした後で、こういう話を持ってくるのは……ちょっとばかり無粋というか、話の流れ的にアレな気がしなくもないんだが……一応。
彼女……ココは、あの『初陣』の日、確かに死んでいたはずである。
彼女の死については、何度も言うように、僕自身もこの目で確認している。
しかし、今はこうして生き返り……紛れもなく、普通の人間としてふるまっている。
これに関しては、当然ながら、色々と出来る限りの検査・調査が行われた。
ココと……そして、彼女と同様、エンブリヲが『生き返らせた』と思しき、年少部の子達については……あらゆる検査の結果、全て『問題なし』だった。
何も異常な個所はない。普通の、生きた人間である、と。
そうなるとつまり、ココは……一度死んだ後、本当に生き返ってここにいる、ということになる。恐らくは……年少部の子達も。
エンブリヲの奴が、そんなことまでできるのか、という事実に、ちょっと背筋が寒くなるものの……決戦の時の奴の様子から見て、奴自身、この『死者蘇生』について、完全に把握、ないし制御できているわけではないみたいな感じもした。
自分で甦らせたんだから、自由にまた死なせられるし、操れる。そんな風に思っていたけど、実際にはできませんでした的な……どうにもちぐはぐな感じがあった。
……何か、あったのだろうか? エンブリヲが、彼女達の命や意思を制御できない理由が。
あるいは……そもそも、彼女達の蘇生が可能になったことに関しての、原因が。
それこそ……彼女達を蘇らせた、エンブリヲすらも気付いていない……何かが。
仮にそうなのだとしても、今、僕らはそれを見つけられてはいない。
結局、こうなった理屈については、わからないままだ。
わからない、が……今こうして、目の前で笑っているココが、ココ自身である以上は……それを理由に彼女を、色眼鏡で見るというのも……なんか違うよな。
うん、ココはココだ。
少なくとも今は、それでいい。
【▽月$日】
別行動をしている部隊から連絡あり。
それぞれの状況に動きがあったらしい。
まず、宇宙に上がっていた部隊。
彼らは、『インダストリアル7』でラプラスの箱を取りに行っていたはずだが、そこで案の定、遭遇したネオ・ジオンと戦いになった。
敵の首魁であるフル・フロンタルは、Zでも出てきた巨大モビルアーマーを持ちだしてきたが、バナージ君のユニコーンを中心としての壮絶な戦いの末、これを撃破。
その後、説得して刃を収めさせたフル・フロンタルを伴って、当初の予定通り『ラプラスの箱』を開け……その中身を確認した。
中身については、Z世界と同じく……地球連邦のスキャンダルだった。スペースノイドの政治参画を嫌った地球側の人間が、前もってその可能性を潰していたという奴。憲章に本来あった条文が削除されてしまったという証拠。
しかし、それを目の当たりにしてなお、バナージ君とオードリーちゃんは、それでも人類の可能性を信じることを決めた。
そして、互いの本音をぶつけ合った説得の末、何とフル・フロンタルと……いや、ネオ・ジオンとの和解に成功。
泥沼の戦い、互いの怨嗟のぶつけ合いになっていた宇宙世紀の戦いは、こうしてとうとう、その長すぎる歴史に幕を下ろしたのである。
そして、もう1つの部隊……宇宙世紀世界の、地球に降り立った部隊について。
こちらは、何かが終わった、というような報告ではなかった。
むしろ、これから起こる、という感じのそれ。
彼らは、Dr.ヘルの進攻に対抗するために地上での戦いに身を投じていたわけだが……前回もちらっと言ったように、予想外にその軍の歩みは遅かったのだそう。
よく言えば慎重、悪く言えば鈍足。幸か不幸か、戦いは長引き、しかしそれゆえに激しくも特になかったために、こちら側の被害も少なく済んでいた。
しかし、それもどうやら終わりつつあるそうで……ここにきて、Dr.ヘルの軍勢が、今までに倍する勢いで総攻撃をかけてきたのである。
防衛ラインを構成していた地球連邦の軍はたちまち壊滅し、今までの戦いがブラフか何かだったのかというような勢いで進軍を始めている。
恐らく、次が奴らとの決戦になる見込みで……場所は恐らく、光子力研究所のすぐ近くになるとのこと。
この報告を受けた僕ら『西暦世界』の部隊は、すぐさま会議を開き、『宇宙世紀世界』の地上組と合流することに決定した。もちろん、Dr.ヘルとの決戦に加勢するために。
連中の操る機械獣は、決して侮ってはいけないレベルの戦闘能力を持っている。決戦となれば、今いるそれらを総力投入してくることだって考えられる。
いくら彼らがスーパーロボットを中心に編成されていても、負担は大きいはずだ。
なら、エンブリヲとの戦いを征し、戦力の増強にも成功した僕らが合流すれば、こちらの布陣はより万全になり、戦いを有利に運べるんじゃないか、と見込んだわけだ。
もともと補給やら何やらも既に済んでいたので、準備は1日で整った。
明日には出発だ。『パラレルボソンジャンプ』で宇宙世紀世界に飛び、光子力研究所に向かう。
時間的には……朝一で出れば、十分間に合うだろう。向こうにいる部隊と打ち合わせする時間も取れると思う。
向こうの世界においては、甲児君や竜馬さん達が長いこと因縁を持っていたDr.ヘルの軍団。
同じく宇宙世紀世界の出身である、ミスリルの皆さんも、そいつらについてはよく知っていた。
とうとう決着をつける時が来た、と、こちら側の士気も十分である。
なお、同じく宇宙世紀世界にいる、宇宙にいる面々については……間に合うかどうかは微妙らしい。
『インダストリアル7』からだと、純粋に距離もあるし、補給とかもしなくちゃいけないし。
アクシズまで戻れば、そこから一気に地球までボソンジャンプできるかもしれないけど。
コロニーレーザー制圧の時の奇襲は、イネスさんのナビゲートで、あくまで片道切符で跳躍した形だったはずだもんな。『火星の後継者』がやっていたように。
あっちの戦艦は、『ナデシコC』や『アルデバル』なんかと違って、単体でボソンジャンプできるようなユニットを積んでるわけじゃないし。
最悪、間に合わないかもしれないと仮定して……僕らだけでも合流して戦うつもりでいるのがいいだろう。
……ただ、僕としては……不安要素が1つ。
別に、戦いそのものや、宇宙部隊が合流できないことでの戦力の不足に不安があるわけじゃない。僕らが力を合わせれば、Dr.ヘルだろうが機械獣だろうが勝てると思うし、怖くはないと思う。
でも……僕の記憶、ないし知識が正しければ……Dr.ヘルよりも、その部下のあしゅら男爵の方がヤバいというか、注意しなきゃいけないんだよなあ……。
細かいところは省くが、あしゅら男爵の正体は、古代ミケーネ文明の神官であり……その命を生贄に捧げることで儀式を行い、機械獣軍団なんかよりも数段ヤバい、『ミケーネの神々』を復活させるという使命を帯びている。
Dr.ヘルは元々、その、いずれ復活するであろうミケーネと戦うためにこそ、光子力を欲していた。
同時に、あしゅら男爵が『使命』を果たすことのないように、洗脳とか記憶操作とか色々やって力を封じていた……というのが、僕が知っている限りの真実だ。
もちろん、この知識は前世由来のもので、この世界においてもそうであるとは限らない。
根拠も何もないから、説明することはできない……なので、皆に話すこともできない。
ただ、前に聞いた話で……鉄也さんが、あしゅらにトドメを刺そうとした甲児君を、攻撃してまで止め、あしゅらを逃がしたっていう話を聞いていたので……可能性は高いんじゃないかなー……という嫌な予想が常に頭の中にあったりする。
結局、その時はその時、ってことで、対処するしかないんだろうな……。
まあ、ユニコーンやらフルメタやらについてもそうだったんだ。原作知識なんて、それに頼って何かをどうにかできるもんでもなかった。
色眼鏡で物事を見ずに、1つ1つ、現実の物事、現実に生きている人達のやることとして対処していくしかない、ってことだろう。
……大丈夫。きっと、皆と力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるさ。今までもそうだったんだから(軽い現実逃避)。
【▽月%日】
ちょっと待って何コレ聞いてな――(日記はここで途切れている)