【▽月@日】
……もう何度目になるかわからないが、この世界、ちょっと厳しすぎやしないだろうか。色々な意味で。
いや、面倒ごとが降ってくるのは仕方ないとは思うよ? こんなご時世だし、その都度対処していかなきゃ仕方ないんだろうな、とは理解してるよ?
けどさ……だから、いっぺんに複数来るのをできればやめてほしいんだってば……。
こないだだって、使徒+エンブリヲ+DG同盟+ガーディムのコンボで来たじゃん。
で、今回は……しかも、ストーリー的にも結構なトラウマイベント系の奴が起点になって、そういうごちゃまぜ展開になっちゃったんだよなあ……さすがスパロボである(諦観)。
NERVの食堂で昼食を摂ってた時のことだ。
ミレーネル、ココ、ミランダ、そして僕の4人で一緒の席に座って、『ココの機体もうすぐできるね』なんていう雑談をしていた時のこと。
突如として警報が鳴り……その直後にもたらされた知らせは、『起動実験中のEVA参号機が暴走した』というもの。
『参号機』という単語が聞こえた時点で、『あれかよ!』と僕は心の中で頭を抱えた。
参号機といえば、テレビ版、新劇場版の両方において、視聴者の心をえぐってくる屈指のトラウマイベントの1つである……被害者は違うけど。
そして、この世界は新劇場版準拠っぽいから……被害者は、アスカか。
その後、ブリーフィングもなしにいきなり出撃になった。
何せ、参号機から検出されたパターンが『青』だったもんで、現時刻をもってそいつを『使徒』として認識・迎撃することになったのである。
使徒はね……確実に防がないと世界が滅ぶレベルの脅威だからね。
しかも結構な速さでこっちに近づいてきてるってことで、急いで総員出撃準備をして、できた者から出撃ってことになったのだ。
そして、僕らに先駆けて準備が済んだ、エヴァンゲリオン初号機と零号機が先に出撃したんだけど……案の定、苦戦していた。
シンジ君は優しいし、閉じ込められているであろうアスカのことを心配して、本気を出せない。
レイちゃんはそのへん割と割り切れるんだけど、こっちは純粋に戦闘能力が足りてない。
そんな感じなので、遠慮なしに攻めてくるエヴァ使徒相手に防戦一方になってたわけだ。
途中から、本来アスカが乗るはずの二号機に乗って出撃した、新たなチルドレン……マリも一緒になって戦い始めたことで、多少戦況は改善したと思われたんだけど……その直後に、さらに想定外のことが起こったことで、またひっくり返された。
なんと、もう1匹使徒が……それも、最悪の奴が来やがったのである。
どこかの先生曰く『最強の拒絶タイプ』が。
テレビ版だと名前付いてたはずだけど……新劇場版だと『第〇の使徒』って名前なんだよなこいつら……ええと、10番目だっけこいつ?
そいつは、エヴァ3機をまとめて蹴散らした上、捕食するような形で零号機を取り込んだ。
その光景にシンジ君は、色々な感情が入り混じった悲鳴を上げ……と、このあたりで僕らがようやく出撃できた。
これでももちろん、全速力是準備進めたんだけどさ……あえて言い訳させてもらうなら、僕らが遅かったっていうよりは、ありえないくらい短時間で戦況が動きすぎなんだよ。
とにかく、これでようやく戦力的には余裕ができたわけだったんだが……さあ反撃だ、ってなろうとしたところで、またしても敵が増えた。
行方不明になっていた『マジンガーZERO』である。
甲児君を取り込んで絶賛暴走中の魔神が、よりにもよってこの局面で乗り込んできた。
さらに、また最悪のタイミングでガーディムまで現れた。
指揮官としてやってきたジェイミーが、こないだと同じようにこちらを煽る煽る……聞き流せばいいんだろうけど、状況が状況なのでどうしてもイライラが募るばかりである。
しかし、こっちがいくらイライラしていても、敵がそれで攻撃の手を緩めてくれるわけでも、弱くなってくれるわけでもない。
なので、さっさと体勢を立て直してこの危機を切り抜けるしかないわけである。
まあ、そんなことはとっくに各艦の艦長や司令官レベルの方々はわかっていたので、即座に作戦を練り直して、現れた敵に驚異度別に優先順位をつけて対応することとなった。
現在出てきている敵は、使徒2体、マジンガーZERO、ガーディムの3種類。
戦闘能力で一番やばいのは、ぶっちぎりでマジンガー。
次いであのゼルエル劇場版。そこから一歩譲って使徒参号機。
ガーディムはぶっちゃけ、量産機はそこまで強くない。弱くもないが、対応できるレベルの敵でしかない。
ジェイミーの乗る指揮官機『マーダヴァ』や、グーリーっぽいアンドロイドの乗ってる準指揮官機『プラーマグ』は要注意かもだが。
ただし、使徒2体は、それぞれレイちゃんとアスカを取り込んでいるので、そのまま倒すのはちょっとどうしよう、って感じ。
どうにかして救出するにしても、どっちみち無力化する必要はあるだろうから、戦うことに変わりはないんだけど。
その戦力や数、特性を加味して考えた結果……
まず、マジンガーZEROの相手は、グレートマジンガーと真ゲッターを主軸に、スーパーロボットを中心としたチームで務める。
とにかくパワーが圧倒的なうえ、生半可な攻撃は通用しないくらいに堅牢なので、これはパワーと頑丈さが何よりも重視されると判断したためだ。
使徒2体は、エヴァンゲリオンを中心に、モビルスーツなど、機動力と火力を両立させた機体が相手をする。
マジンガーほどではないとはいえ、攻撃力もかなり高い上に、数が2体+何をしてくるかわからないので、臨機応変に対応できる、汎用性の高いメンバーがここに組み込まれた。
なお、総司さんとナインの『ヴァングネクス』や、僕の『アスクレプス』もここである。
相手が使徒で『ATフィールド』を使ってるので、いざとなったら僕が『ヘリオース』になって、次元力で強制的にそれを引っぺがす役割も担っている。
そしてガーディムは、機動力を重視した小回りの利くメンバーが主である。パラメイルやAS、ブラックサレナやエステバリスなんかだ。
他2つに比べて戦力的にはそうでもない代わりに、数が多い上、戦況を分析してこちらに対して実に効果的に嫌がらせをしてくる奴がいるので、こっちはこっちで楽じゃない。
それでも、泣き言言っている時間があったら戦え、っていう状況なので……艦長たちの指示に素早く従い、僕らは手分けしてこの状況を打開するために動き出した。
……ああ、それともう1つ。
ガーディムに対応するメンバーの中に……さっきの説明には入れなかったけど、ミレーネルもここに含まれてるんだよね。
……ただし……ここ最近乗ってた『アルデバル』じゃなく……最近完成した、『アレ』で。
☆☆☆
第三新東京市……の、地下にある居住空間『ジオフロント』。
人類の科学の粋が結集して形作られている、この閉ざされた箱庭の中で……今まさに、人類の今後、行く末を左右する戦いが繰り広げられていた。
「すまない……甲児。本当は、こうなる前に止めてやりたかったんだが……」
「鉄也、さん……いいんだ、そんなことは……今は、早く、こいつを……っ!」
操縦席である、パイルダーの中に閉じ込められ、『マジンガーZERO』を動かすパーツの1つとして扱われている甲児。
自らの甥にあたる彼を助けられなかったことを悔やみながら、剣鉄也は、グレートマジンガーに乗り……甲児の意思とは無関係に暴れまわる『ZERO』を相手に、一歩も引かずに戦っている。
スペックでは圧倒的に向こうが上。
しかしそれを、鉄也はグレートの光子力エンジンを暴走させて無理やり高出力を生み出すことでどうにか差を縮めて食らいついていた。
(だが、これも長くはもたない……いざとなれば……俺は……!)
「くそ……やめろ……! 皆……逃げてくれ!」
拳や蹴りでとらえられないと見るや、ZEROはその体を空中に浮かべ……その目から十重二十重の『光子力ビーム』を放って、まとめて鉄也達を薙ぎ払おうとする。
しかし、それが発射される直前、死角から超高速で飛び込んできた真ゲッターがその顎にトマホークを叩き込み、頭をカチ上げて斜線を斜め上にずらす。
放たれたビームは、何にも当たることはなく、数分前に使徒が明けた大穴を通って虚空に消えていった。
「弱気になるなよ甲児! 今助けてやっから、もうちっとだけ踏ん張りやがれ!」
「っ……あ、ありがとう、竜馬さん……でも、もしもの時は……かまわないから、俺ごとがはっ!?」
言い終わる前に、ゲッターの蹴りがマジンガーの顔面に叩き込まれる。
「くだらねえもしもの話なんかすんじゃねえ! ガキは黙って助けられてろ!」
「助けたいのか殺したいのかどっちなんだお前は……」
コクピットが搭載されている頭部に割と本気の蹴りを叩き込む竜馬。
それに呆れながら隼人が言うが、竜馬は『はッ!』と鼻で笑って言い放つ。
「こんくらいでくたばるたまかよ。見ろ、そんなくだらねえこと心配してる奴なんざどこにもいねえぜ?」
竜馬が視線で指す先には、連携して飛びかかるザンボットとダイターン、それに合わせて隙を見つけて動輪剣で切りかかるグレートマイトガイン、それを援護するダイバーズやボンバーズ、それにブラックマイトガインという図があった。
先ほどと同じように、随分と荒っぽい絵面ではあるが、不思議と不安はない。
このくらい本気にならなければ、マジンガーを相手に戦うことなどできないし、このくらいで自分たちの仲間が、兜甲児が負けるはずがないと確信しているが故の、『本気』。
感じ取れる、伝わってくるその気迫は、全て彼らが、本気で甲児を助け出そうとしているがゆえのものであると、見ている隼人にも不思議と分かる光景だった。
「……まったく、物騒な友情もあったもんだ」
「俺たちが言えた義理じゃねえがな……おら、もう一発俺たちもいくぞ、合わせろ、隼人、弁慶。それと鉄也、お前もいつまでも無駄にセンチになってんじゃねえ、後にしろそんなのは!」
一括して再び飛んでいく竜馬。その真ゲッターの背中を目で追いながら、鉄也は気合を入れなおし……今一度、ZEROの姿をその目ではっきりととらえる。
「ああ、その通りだ……嘆くのも謝るのも、今じゃない。甲児……お前を助けてからだ!」
若者達が、自分の甥を助けようと必死になってくれている。
彼らは今まで、幾度もこの星を襲った災厄を退け、幾度も自分の予想を覆して成長し、巨悪を打倒してみせた。
いつだって彼らは、敵がどれだけ強大で、どれだけ絶望的な状況でも、あきらめることはなかったし、死力を尽くして希望をつかみ取った。
そして、今回もそう……ならば、年長者である自分が、甲児の叔父である自分が、どうしてこんなところで、後ろ向きなことを考えてくすぶっていられようか。
「もう少しだけ頑張ってくれ、グレート……行くぞ!」
迷いを捨てた鉄也は、黒鉄の魔神を飛翔させた。
☆☆☆
「綾波……アスカ……!」
怒り、苦しみ、悲しみ……様々な感情がごちゃごちゃに入り混じった状態で、精神的にすでにボロボロのところまですり減りながらも、シンジは戦っていた。
エヴァの起動実験……その最中に、エヴァ参号機を乗っ取る形で出現した『使徒』。
それによって使途は、エントリープラグにアスカを取り込んだままに襲い掛かってきた。
さらに、その戦闘中に現れた新たな使徒。
これまでのどの使徒よりも強大な戦闘能力をもって襲ってきたそれは、自分達を蹴散らした上、綾波の乗るエヴァ零号機を、異形のごとく変形した姿で大きく口を開いて食らい、そのまま取り込んでしまった。
それによって、使徒の発するパターンがエヴァと同一となり、使徒がセントラルドグマに侵入しても自爆機能が発動しなくなってしまった、と通信の向こうでリツコ達が騒いでいたが、シンジにとってはそんなことよりも、綾波達の安否のほうが重要であり、耳に入ってこなかった。
こうして、独立部隊の面々と協力して戦い、どうにか使徒の猛攻をしのいではいるものの……頭の中では、どうしてこんなことになったのか、ここからどうすればいいのか……そんな疑問が繰り返し浮かんでは、しかし対応策など思いつくはずもなく、消えていく。
「ちっ……やっぱりあのATフィールドとかいうのが邪魔だな……なあ、前みたいにミツルに引っぺがしてもらっちゃダメなのか? そしたらもっと……」
「それができれば、攻撃する分には楽そうなんだけど……うちのMAGIで分析した感じ、ちょっちまずそうなのよね……」
ジュドーのその問いに、通信の向こうからミサトの声が届いて答える。
「詳しいことは説明してる暇がないし、正直私も完全には理解出来ていないから省くけど……『ATフィールド』っていうのはただのバリアじゃなくて、自己と他者の境界線なのよ。それを無理に引っぺがす……ないし、取り去るっていうのは、その境界線が不安定になるってことなの。それが敵だけなら特に問題はないんだけど……今は……」
「……そうか……今は、綾波とアスカが使徒の体内に取り込まれているから……」
「そこで『境界線を曖昧にする』ようなことをすれば……そっちの取り返しがつかない事態になる可能性がある、というわけか……」
「それってつまり……ええと、まずいことなのか?」
「そりゃもう。自己と他者の境界線がなくなっちゃうと……簡単に言えば、パイセン達と使徒が『混ざっちゃう』んだよ。コーヒーにミルクを入れて混ぜるとカフェオレができるよね? それをもう1度、コーヒーとミルクに分けられると思う?」
ミサトの説明から、今の状況をカミーユとアムロが察し、続くシンとマリとのやりとりが補足となって……それを聞いて、ほかの面々も理解した。
そんなことになってしまえば……否、そうでなくても、今現在すでにどれだけまずい状況なのかがよくわかるものだった。いっそ、残酷なほどに。
(今でさえ、レイとアスカが無事である保証なんてない……非情に徹するのなら、通常の使徒殲滅と同様に対処するのが、最も安全で確実……でも、彼らにはそれができない……できるとしても、絶対にやろうとしない)
そんな言葉を、NERVにいる赤木リツコは、声に出すことなく、心の中にとどめたままにする。
科学者として、そしてNERVの一員として、世界を守るために最善だと言える結論を出して伝えようとも、彼らは絶対に従わない。
それがわかっているからこそ、今この場で打てる手がないことに対して、ため息をついた。
隣にいる戦友……作戦部長であるミサトもまた、そのことについてはわかっているはずだ。何せ、先程説明したのだから。
それでも、彼女もまた、希望を捨てない側にこうして立っているということは……そういうことなのだろう。
(……アスカは、使徒がエヴァを主体に侵食しているから、まだ助かるかもしれない。五体満足で救えるかは怪しいけれど。でも、レイは……使徒のパターンが変化したということは、零号機を、レイを取り込んで使徒がその在り方を変えたということ。それはつまり、あの子がさっき言ったように『混ざった』ことを意味する……そして、その変化はおそらく、不可逆のもの……だとすれば、もう……)
彼らが話しているよりも1歩進んだところの、残酷な現実を、告げるか告げまいか……それを思って下唇を嚙んでいるリツコ。
その彼女が気付かないところで……
「ふざけるな……」
変化は、起こっていた。
「お前たちなんかに……渡すもんか……!」
操縦桿を握る手に力がこもり……
かみしめた奥歯が、ぎりっ、と音を立てる。
そして、その目に……明らかに人間のそれとしてはおかしい……毒々しい、あるいは禍々しい、赤い光が灯り……その変化は、直に、彼が乗る機体にも伝わっていく。
「綾波を……アスカを……返せ……!」
かけがえのない、仲間を助けるために。
1人の少年は……今、自分の意思で……1つの壁を越えようとしていた。
そして、もう1人。
「変容……融合……吸収……不可逆の変化…………いっそもう今、それが起こってると最悪を仮定して、それらを元に戻す方法……」
記憶を漁る。
ここではない世界で過去に起こった、今回のこれと似た出来事を探り当て……応用できるものがないか、青年は思索する。
「オリジナルの世界線にそれはない、バッドエンドだった、続編も知らない……けど、『似た例』なら知ってる……化け物に変えられた女の子……あの時は、そう……『天秤』と『水瓶』……相性のいい2つのスフィア……それに匹敵する次元力なら……。仕方ない、ちょっと無茶するか……!」
☆☆☆
「空間だけでなく因果をもゆがめる魔神に……この惑星独特の種かしら? あんな不思議な生物もいるのね……うん、なかなかいいデータが取れそうだわ」
そして、それら2つの戦場を、離れた位置から観察するように見ている1人の女性。
ガーディムの一等武官であり、この場に現れた部隊全ての指揮官である彼女・ジェイミーは、常と同じく、未発達な文明として見下すような姿勢のまま、手元のコンソールを捜査して部隊に指示を出していく。
戦場をひっかきまわして反応を見つつ、隙があれば、目的であるいくつかの機体、ないしシステムの奪取を試みるために。
投入された機体はすべて無人機ゆえに、仮に特攻させることになったとしても、彼女には躊躇いのかけらもあるはずもない。
ただ、独立部隊の側もそれを察しているが故か、ガーディムに対しては深追いしてかかってくることはなく……あくまで、その他の2つの戦線の邪魔にならないように、無人機によるちょっかいを防ぐ戦闘に徹している。
これはつまり、他2つ……使徒とマジンガーZEROに比べて、ガーディムが脅威として小さいとみられているという意味でもあるのだが、ジェイミーはそれを理解しつつも、ふふっ、とおかしそうに笑っていた。
「守るもの、助けたいものが多いと必死になっちゃって大変ね。失敗した者、無能な者なんて、さっさと切り捨てて、優先目標の達成だけを見据えて動けば、最大限効率的な戦いができるのに……くだらない感情に流されてそれができないなんて、本当に理解不能な種族。そんなんだから……」
ちらり、とその視線が横にずれる。
ジェイミーの目がとらえたのは、ジオフロントのさらに奥にある……NERV本部の建物。
そのさらに地下に、NERVという組織の心臓部である、『セントラルドグマ』が存在する、最も攻め込ませてはいけない、守らなければならない場所と言える。
つまりそれは、ちょっかいを出されると非常に困る……戦力をさらに割いてでも守らなければならない、優先度の高い防衛目標ということだ。
「そんな風に取捨選択ができないから……」
「あんたみたいな卑怯者に困らされる羽目になるって? ホントよね」
突如、遮るように言い放たれると同時に……ジェイミーの乗る『マーダヴァ』の正面に、1機の機動兵器が舞い降りるように現れた。
それに少し驚いたようにするジェイミーだったが、すぐにその顔はいつもと同じ笑みに戻る。
強いて言うなら、それにさらに嘲笑の感情が乗っているように見えなくもない。
自分の考えを読まれたのは少々癪ではあるが、だからといって立った一機で突出してくるなど、いったい何を考えているのか、と。
「その声、聞き覚えがあるわね……確か、ミレーネル・リンケ。向こうにいる特記戦力・星川ミツルの協力者……こうして直接会うのは初めてかしら?」
「……ふうん、そうなのね。やっぱりか」
ジェイミーの言葉を……特にその中の『初めて』という部分を聞いて、何かに気づいたような様子になるミレーネル。
それが声音に乗ったが故か、ジェイミーは少しだけ怪訝そうにした。
「……どういう意味? まあいいわ……それで? たった一機でこんなところに出てきて……的にでもなりに来たのかしら? それとも、交渉して帰ってもらおうとでも思った? 今は大変なところなんだから邪魔しないでくれ、って?」
「どっちも違うから安心していいわよ。あんたにそんなこと言ったら、嬉々として邪魔して来るのはわかり切ってるし。もっと強引に、邪魔されないようにするために来たのよ」
それを聞いて、変わらず嘲るように見つつも、少しだけ不快そうにするジェイミー。
「強がりなんて美しくないわね。たった一機でこの『マーダヴァ』や、こちらの戦力に、勝てるどころか太刀打ちできると思っているの? 我々超文明ガーディムの機体は、低次元な文明の作る、レベルの低い機動兵器とは違うのよ?」
それに、と続ける。ミレーネルの乗る機体を見ながら。
「その機体も知ってるわ。あなたが以前から使っていたものと同型機のようね……でもそれ、同じ地球産の兵器を相手に撃墜される程度の戦闘能力しかなかったと思うのだけど」
どうやって調べたかは不明だが、ジェイミーの指摘は確かに当たっていた。
一時期ミレーネルが愛機としていた『アンゲロイ』は、高い性能を持つ機体ではあったものの、アルゼナルで行われた戦いの折に撃墜され、大破した。
数がそろっていたとはいえ、文明として、技術力で大きく劣る兵器にも太刀打ちできなかった程度の兵器だと、ジェイミーは見下す態度を隠さない。
むしろ、彼女を囮ないし陽動にして、他の機体……それよりも高い戦闘能力を持つと目される、『ヴィルキス』や『レーバテイン』による奇襲を警戒し、戦場全体の観察を怠っていない。
しかし、一向にそれらが動く気配はない。呼応してこちらを攻める作戦ではないようだ。
それならばそれで、今言ったとおりに、この無謀な愚か者を的にするだけだと、ジェイミーは無人機部隊に指示を出す。
指示を受けて、無人の、あるいは戦闘用アンドロイド『ソルジャー』の乗った無人機達が、素早く動いて、ミレーネルの乗る『アンゲロイ』を包囲した。
これで逃げ場はなくなり、哀れな機体とそのパイロットには、蹂躙される以外の未来はなくなった。
本当に何もなく決着がついてしまいそうな現状に、はぁ、と呆れてため息をつくジェイミー。
「お望み通り相手をしてあげるわ。虚勢でもあれだけのことを言ったのだから、せめて10秒くらいはもたせてみなさいね? ……まあでも……」
そこまで言って、今一度その『アンゲロイ』を見るジェイミー。
表面上は、かつてミレーネルが乗っていた機体と、大きく違う個所はない。
細部の装飾その他が違っているように見えなくもないが、いずれにせよ、ガーディムの機体群をもってして対応できないような存在には見えない、というのが、ジェイミーの判断だった。
過去のデータと比較して、明確に違う点など……せいぜい1つ。
そのデザイン。機体のカラーリングくらいのものだ。
「過去のデータを見る限り、多少パワーアップしたとしても、その機体にそんな大した働きができるとは思えないけどねえ……そんな―――
――――黒く塗った程度で」