『喜びのアドヴェント』
あるいは、『聖アドヴェント』
スパロボZ時獄篇、連獄篇、そして天獄篇における最重要キャラクターの1人であり……Zシリーズ全てを通してのラスボスたる存在。
全宇宙・全並行世界の頂点に立つ存在『御使い』の1人にして、膨大な次元力を完全に制御することにより、呼吸をするように奇跡を起こし、人知を超えた力をふるう絶対強者。
その力たるや、生身で機動兵器をたやすく圧倒し、表現すら難しいほどの長い距離を一瞬で移動し、人の心や記憶を思うがままに改ざんし操ることができる……死すら超越した永遠の存在。
天獄篇最終盤では、新たなる『至高神』を作り上げ、その力をふるうことにより、単独で銀河そのものを終焉させることすら可能なほどの存在となった……そんな男が、今、目の前にいる。
「そう身構えなくてもいいよ、私は別に、君を害する目的でここにいるのではないからね……むしろ、こうして君と対面することになったこと自体、想定外と言ってよかった」
「ご配慮いただいてどうも……けど、それにしてもまずは……謝ったほうがいいですかね?」
「謝る? それは、どうして……いや、何に対してだい?」
「それはもちろん……『ヘリオース』を勝手に使ってしまっていることに対して、です」
思い返せば……もう2年以上も前になる。
この世界……じゃなくて、『新西暦世界』に僕が転生した時、なぜか僕が乗っていた機体。
あの時はまだ『アスクレプス』で……いや、今も通常モードとしてはそれだけど。
その時から、自分のものであるかのように、僕はずっと……好き勝手にあれを使っていた。
戦闘のため、移動のため、さらには、次元力の研究や戦艦その他への補助動力としてまで……本当に便利に使っていた。
自分のものではない、あくまでなぜかそこにあった、拾った機体であるにも関わらず。
それどころか、最近はもう『一時的に借りている』なんて意識すら、うっかりなくなってきていたように思えるし。
転生したばかりの頃はまだ、それに対して、本来の所有者であるアドヴェントに対して、悪いとも思っていたし……さらにちょっと失礼なことを言えば、こんなことをして後で怒られるのが怖いとも思っていた。……怒られるどころか消されるのでは、とも。
そんな感じのことをきちんと謝罪させてもらったのだが、アドヴェントはそれを聞いて、きょとんとしたような表情になっていた。
かと思えば、くすくすとおかしそうに笑ってみせて、
「なるほどね。やれやれ、そんな風に考えていたのか、君は。まあ……君の境遇を鑑みれば、ある意味仕方のないことではあるのかな……見当外れとはいえ」
「……はい?」
見当はずれ? 何が?
今度は僕がきょとんとした顔になっていると、アドヴェントは『いいかい?』と話し始めた。
「まず大前提として、私は君がヘリオースを奪ったとは思ってはいないし、怒ってもいない。そもそも実際に君は私からヘリオースを奪って使っているわけではない。あのヘリオースは、正真正銘、君のための機体なのだからね」
「え?」
どういう意味、と尋ねる前に……アドヴェントの背後の空間が揺らいで……『それ』は、現れた。
「私の機体は……ほら、ここにある」
巨大な黄金の体に、6枚の翼、人型でありながら、異形の魔物のようにも見えるそれは……
「至高神……Z……!」
「そう。かの『超時空修復』を経て、残った『消滅しようとする力』を因果地平のかなたに持って行った後も、こうして私とともにあり続けてくれている、私の相棒さ。本来の姿よりは、だいぶ小さくなってしまっているけれどね。そして、これがここにあるということは……わかるだろう?」
「……じゃあ、僕の乗っている『ヘリオース』は……『至高神Z』のもとになったそれとは、別物……ってことですか?」
「そういうことだ。まあ、それでも、実は全くの別物、というわけでもないのだけどね……これに関しては、話がややこしくなるから省かせてもらうよ。……まだ、君が知るべきこと、知るべき時でもないからね」
だから、とさらに話を続けるアドヴェント。
「君は君の思うように生き、思うように『ヘリオース』の力をふるえばいい。私に遠慮する必要なんてないからね……そしてそれは、私の望みであり、『喜び』でもある。そして……彼も、それを望んでいるはずだ」
その言葉と同時に、僕の背後にも、空間の揺らぎが現れ……そこに、何度もともに戦った、僕の相棒が……もう、そう称することに何ら抵抗はなくなってしまった、『ヘリオース』がいた。
機械のそれにしか見えない無機質な瞳……しかし、なぜか、僕はそれに見られているような感覚を覚えていた。
「君と彼なら、今、地球に降りかかろうとしている災いも……そして、その先に存在する真の敵も……きっと打ち砕くことができるだろう。始祖・アウラが言っていたように……君にはそれだけの力があるのだから。まだ、自覚することはできていないだろうけど……いずれ、君はそれに気づくことになる。そしてその時が、本当の意味で君とヘリオースが、この世界に誕生する時だ」
「どういうことですか? さっきから、何が何だか……言ってることが全然……」
「わからないだろうね……当然だ。だがすまないが、私はまだそれを君に教えることはできない。まだ……その時ではない」
「まだって、今まさに地球は……じゃあ、いつなら!?」
「君に、覚悟ができた時。あるいは、覚悟を決める時がきたなら……だろうね。そしてそれは、きっと、そう遠くない未来だ」
そう言って、アドヴェントは爽やかに笑いながら……僕の頭に手をぽん、と乗せた。
なぜか、その触れられているところから……暖かい何かが広がっていくような感触を覚える。
「臆することはない。君には、心強い仲間たちがいる……彼ら、彼女らがいれば、君はどれだけ強い敵が現れたとしても、戦っていけるだろうし……この先、全てを知り、力を手にしたとしても、その使い方を誤ることはないだろう」
「それも……アウラさんが言っていた……」
「……少しだけ、手を貸してあげよう。苦難の道と知りながらも、母星を救うために戦いの銀河へと旅立たんとする君に……君達に……どうか幸あれ」
その瞬間、世界は光に包まれて――――
「……夢、か? いや、それにしては……」
気が付くと、僕は……仰向けに寝ていて、見知った天井を見上げていた。
サイデリアル本社にある、僕専用仮眠室の天井だ。
体が重い……物理的に。
見ると、僕に覆いかぶさるような形で、ココが爆睡していた。……男の布団の中に無警戒にまあ……いやまあ、手を出すつもりは全然ないけどね。
あーあーよだれまで垂らして……気持ちよさそうに眠ってるなあ。
この安眠具合、僕と一緒の寝床だからか、それとも彼女もともとこうなのか……あるいは、割と贅を尽くした高級寝具(低反発マットレスその他もろもろ)ゆえか……なんでもいいか。
個人的には、一番最初のそれだとちょっと嬉しいけど。
ココを起こさないようにベッドから出て、着衣を整えてから、会長執務室に戻る。
その途中で時計を見ると、3時間くらい経っていた。ほんの少しの仮眠のつもりだったのに、結構がっつり寝ちゃったな。
そこには、秘書であるミレーネルが待ってくれていたので、おはよう、と一言声をかけた。
するとミレーネルも、おはよう、と返してくれる……かと思いきや、僕の方を向いて、何か言おうとして……そのまま固まった。
え、どうしたの? 僕、何か変だった?
あわてて確認してみるけど、きちんとさっき身支度は整えたし……何もおかしなところはない……はず。ネクタイもきちんとしめてあるし、社会の窓も開いてないし。
そしたら、恐る恐る、って感じでミレーネルが僕の方を指さして……
「み、ミツル……そ、その髪、どうしたの?」
「え、髪?」
髪……あ、もしかして寝ぐせかな? そんなすごいことになってるのか?
手櫛でわしゃわしゃといじってみるけど……そんなでもない気が……いや、こういうのはきちんと目で見なきゃわからないもんだよな。
ついでだから顔も一緒に洗おうかと思って、洗面台に向かった僕は、そこで鏡を見て……
「………………は?」
なぜか、鮮やかな金髪になっている自分の顔を見て……絶句することとなった。
え、ちょ、ナニコレ……ナニコレ?
ヅラ? ドッキリ? ……引っ張ってみる……痛い、地毛だ。マジで僕の髪の毛だ。
え、いやでも、今朝顔洗う時に洗面台で見た時には、間違いなく白髪だったはず……仮眠してる間に染まった……のか?
だとしたら、原因は……
というか、この澄んだ金色は……激しく見覚えが……
……あの、ちょっと!? アドヴェントさん!?
一体コレ、何してくれた結果こうなったんですかねえ!?