スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第65話 残された不安と、帰還へのカギ

 

 

【◇月△日】

 

 昨日の突然僕の髪が金髪になった一件は、色々な情報が社内外で拡散・錯綜した結果、『会長、大一番を前に大胆にイメチェン事件』として定着した。してしまった。遺憾である。

 

 遺憾であるが……理由を聞かれてもうまく説明できないうえ、その理由自体も僕の推測でしかないので……まあ、仕方ないと思うことにした。

 幸い、似合ってないってこともないようだったし。何人かはほめてくれたし。リップサービス込みだとしても。

 

 けどコレ……多分だけど、アドヴェントの……あの夢の影響だよね?

 いや、そもそもアレって夢だけど多分夢じゃないっていうか……間違いなく、あれは本物のアドヴェントで……そして何かあったというか、何かされたんだろうな。

 

 まあでも、別に何も体に……気になる不調とかはないようだし……ひとまず様子を見ることにした。案外ただの、不本意に起こったイメチェンで済むかもしれないし。

 望み薄? 知ってるよ。

 

 それより、あの夢だよ……なんか、気になることいろいろ言ってたよなあ……。

 

 本来の力とか、僕の覚悟とか……まるで、これから何か起こるかのような、不吉なことを……そして、それらに備えるために『少しだけ力を貸す』とかなんとか……

 

 そして、それらよりも地味に気になってるのが……『テンプティの因子』とか言ってなかった?

 

 ……待て待て待て待て、よく考えたらガチで聞き逃せないセリフだぞこれ!?

 あの夢の中では、目の前にアドヴェントがいることへの緊張とか困惑とかその他もろもろで聞き流しちゃったけど! こっちはこっちで十分に厄ネタだ!

 

 テンプティって……あの享楽主義者か!?

 Z世界に存在した『御使い』の1人、『楽しみのテンプティ』!? アドヴェント以上っていうか……4人の中で一番タチの悪い奴じゃないか! 嘘だろ、あいつまでいるとか言わないよな!?

 

 ……落ち着け、パニックになってもどうにもならない。

 それよりも状況を整理するんだ……最近こればっかりだな。

 

 ついでだ、僕の持っている知識……Z世界の『御使い』についても、今一度整理しよう。

 

 

 

 そもそも、『御使い』とは何か。

 

 彼らは、『スーパーロボット大戦Z』シリーズに登場する敵勢力の1つであり……全ての平行宇宙のあらゆる存在の頂点に立つ存在、として君臨していた……メタ風に言えば、ラスボスの勢力だ。

 

 全部で4人存在し、それぞれ呼び名は『喜びのアドヴェント』『怒りのドクトリン』『哀しみのサクリファイ』『楽しみのテンプティ』……『喜怒哀楽』の4つの感情を司る存在。

 

 その力はすさまじく、あらゆる次元、あらゆる並行世界のいかなる存在であっても、彼らを害することはかなわず、挑んできた者達はことごとく敗れ去り、散っていった。

 彼ら単体の戦闘能力に加えて、彼らは人造の神である『至高神ソル』により、次元力を自在に引き出し、制御することによって、時に死生の理すら覆し、時に無から有を生み出し、時に1つの銀河を丸ごと滅ぼしすらすることができた。

 

 それだけの力を持つ存在であっても、きちんとした倫理観を持っている存在であれば全然よかったんだろうけど……残念ながら、彼らは見事なまでにロクデナシだった。

 しかも、自分達にその自覚がない……所謂『自分が悪だと思っていない悪』。一番厄介なタイプである。

 

 彼らは自分達こそが絶対の存在であるという傲慢と独善の元、自分達以外の存在全てを見下していた。そのうえで、あらゆる並行世界を観測し、管理していた。

 

 彼らは、他の文明が成長し、やがて自分達のレベルにまで追いついてくることを認めなかった。一定以上のレベルに至った文明に干渉し、それ以上成長しないように抑圧した上で管理するか、そうでなければ滅ぼしてしまう。そんな傍若無人を繰り返してきた。

 

 そんな彼らはしかし、Z世界で勃発した『天獄戦争』にて、地球から旅立った主人公部隊との壮絶な戦いの末、4人中3人……ドクトリン、サクリファイ、テンプティが消滅。

 残った最後の1人であるアドヴェントは、自らの敗北と間違いを認め、全ての平行世界を救う『超時空修復』に手を貸した後、因果地平のかなたへ去っていった。

 

 

 

 ……『御使い』の説明についてはこんなところだが……今言った通り、御使いって連中は、最終的には改心?したアドヴェント以外は、超がつくくらいにタチの悪い連中なんだよ。

 

 その中でも一番タチの悪いであろう奴が、さっき言った通り『楽しみのテンプティ』だ。

 

 彼女は全ての行為を自分にとっての遊びと捉えて好き勝手するため、『楽しそうだから』というだけの理由で平然と多くの人の命が奪われたり、星そのものが大変なことになるようなことをやってのけたりする。

 Z世界では、ドクトリンと一緒になって、積み木感覚で銀河を消し飛ばして滅ぼしたり、滅びの運命に決死の覚悟で人類が抵抗しているところに、その障害になる敵機をばらまいて、右往左往する人々を眺めて『楽しんで』いた。

 

 そんな彼女の『因子』……不安しかない……。いったいどういうことなんだ……?

 

 幸いと言っていいのか、彼女本人が出てきてるって感じじゃないけど……いやでもなあ……。

 

 気になる……せめてそこんとこだけでも教えてほしかったよ、アドヴェントさん……。

 

 

 

【◇月□日】

 

 不安はあるけど、検証も調査もできない以上はどうしようもないので、ひとまず務めて気にしないことにした。

 そんな気分を紛らわすために一層仕事に打ち込んだり、訓練に力を入れたりしている。

 

 そんな感じで過ごしていた僕に、昼頃通信が入り……『科学要塞研究所』に呼び出された。2つあるうちの、『もう1つ』の方に。

 

 待っていたのは、ここの主である兜博士と……沖田艦長や真田副長、さらにブライト艦長やルリ艦長、スメラギさんといった、独立部隊の意思決定レベルの方々だった。

 全員ではなかったようだけど、主だった面々はそろっていて……『え、何?』ってめっちゃ緊張した。僕、何かやらかしちゃったっけ、と。

 

 しかし幸い、そこで切り出されたのは 責とか諮問の類ではなく、協力要請だった。

 この先に待っている戦いに向けて、全面的に『サイデリアル』に、そして僕自身にも力を貸してほしい、と。

 

 ……え、何ですか今更? と、正直思ってしまった。

 

 だって僕、少し前からすでに『独立部隊』の一員として協力させてもらってたと思うんだけど……え、僕の勘違いでしたか? だとしたらショックなんだが。

 ……あ、違う? きちんと仲間? ああ、よかった……

 

 しかし、だったらどういう意味でそんなことを切り出されたのかというと……どうやら、僕の『サイデリアル会長』としての立場に配慮したものだったようだ。

 

 知っての通り、と言えばいいのか……『サイデリアル・ホールディングス』は、『西暦世界』に本社を、さらに『宇宙世紀世界』にも支社を置いている『多次元企業』だ。

 こと『西暦世界』においては、立派に大企業の仲間入りをすでに果たすまでに成長した、割とその名を知らない人はほとんどいないレベルの存在だったりする。

 

 そして、僕はそこの会長であり……つまりは、僕の拠点というか本拠地は『西暦世界』にあると言えるのである。

 

 しかし、今回独立部隊が目指すこととなるのは、そのいずれでもない『新西暦世界』の、さらに地球から16万8千光年のかなたにある、イスカンダルである。

 並行世界である上に、物理的にも距離の桁が違う、はるか遠い場所だ。

 

 沖田艦長達は、そんな途方もない場所に……二度と帰ってこれるかもわからない旅路に(もちろん戻ってくるつもりではいるだろうが、それでも万が一ということはあるので)、既に西暦世界に生活基盤を持っている僕を連れていくことに対して、酷だと思っていたらしい。

 しかしその上であえて、僕にも協力してほしいと言ってきたのである。

 

 なぜなら、兜博士達曰く、僕らが『新西暦世界』に行くための、次元の壁をぶち破るカギは……『ゲッター線』と『ヘリオース』にあるらしいのだ。

 

 その話を聞いて、僕がどう答えを返したか?

 そんなの決まってるじゃないか、二つ返事で了解させてもらったとも。

 

 ここまで、形は違えど苦楽を共にしてきた仲間たちを見捨てるなんてこと、僕の方からしても考えもしなかったからね。むしろ、『残れ』って言われてもついていくつもりだったし。

 ヤマトの帰還のために、僕やヘリオースにできることがあるっていうなら、なおさらだ。

 

 そう伝えた僕に、沖田艦長は『改めてその英断に感謝する』と言ってくれた。

 

 そして、手始めにというか……兜博士及び科学要塞研究所とは、技術協力から進めていくことになった。

 次元の壁を打ち破る方法を確立するために、次元力に関するデータを一部でいいので提供してほしいということだったので、その通りにさせてもらった。

 

 光子力やゲッター戦同様、便利で強力だけど危険なエネルギーでもあるので、扱いには細心の注意を払ってほしい、と伝えた上で。

 

 その見返りにじゃないけど、こっちはこっちで兜博士から色々と、主に技術面で協力してもらうことになった。

 

 実は、今サイデリアルで……というか、僕やミレーネルが極秘裏に作成を進めている、ある秘密兵器があって……その仕上げにちょっと手を貸してもらおうかと思ってるんだよね。

 もうずいぶん長いこと……それこそ、『アルデバル』や『アンゲロイ・アルカ』よりも時間をかけて作成に注力してるんだけど、規模が規模だけにまだ完成に至ってない奴があるんだよ。

 

 一応もう完成は見えてきているんだけど、最後の一押しに苦労してたんだが……この分なら、皆でイスカンダルに旅立つのに間に合うかもしれない。

 

 完成すれば、自分で言うのものなんだけど、滅茶苦茶大きな戦力になるはずだ。頑張ろう。

 

 ところで、この『科学要塞研究所』だけど……さっきちらっと触れたけど、どうやら光子力の他に、ゲッター線も扱ってるみたいなんだよね。

 いや、正確にはそれ以外にも、この『宇宙世紀世界』に存在する様々な技術について手広く取り扱って研究・開発を進めているそうだ。そこに今回、あるいはこれ以降、『西暦世界』の技術や、『次元力』も加わるかもしれないわけで。

 

 何を隠そう、あの『マジンエンペラーG』にも、光子力に加えてゲッター線の技術が使われてるんだってさ。

 すごいな、ロボットアニメ2大巨頭のハイブリッドかよ。そら強いはずだわ。……もしかして『G』って『ゲッター』の頭文字だったりするのかな?

 

 そんな『科学要塞研究所』では今、この先の戦いや、『新西暦世界』への帰還に関して、切り札となりうるあるものを作っているらしいんだけど……それが何なのかについては教えてもらえなかった。

 

 これは別に、僕らを信用していないとかではなく、誰に対してとか関係なく、情報を扱う範囲を最小限にしているのだそうだ。外部に漏れる可能性を、限りなく0にするために。

 そういうことなら仕方ない。協力もできないが、信じて頑張ってもらうとしよう。

 

 それ以外にも協力すること、やるべきことはいろいろあるだろうしな……さて、忙しくなりそうだ!

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「どうやら連中、まだあきらめていないようだな。何かこそこそと企んでいるようだ」

 

「想定された事態だ。奴らの掲げる『正義』というのは、諦めの悪さがお家芸のようなものだからな……足掻くというのなら、それを踏みにじるまでだ」

 

 どことも知れない場所で、『時空融合』の主犯格と呼べる3人が顔を突き合わせて話していた。

 彼らは彼らで網を張っているのか、『独立部隊』の面々がこの状況の打開に向けて動き出していることを察知していた。

 

 しかし、レナードの報告にも、エグゼブは余裕たっぷりにそう言って見せる。

 自らの計画を妨害しようと動いている者がいると聞いても、まるで足元の虫けらが足掻くのを見ているかのように、微塵も動じた様子は見せない。

 

 それとは対照的に、眉間にしわを寄せて機嫌の悪さを隠そうともしない様子の男が、その斜め向かいに座っていた。

 しかし、ふん、と鼻を鳴らして立ち上がると、そのままどこかへ歩き去っていく。

 

「おや。どこへ行く、エンブリヲ?」

 

「どこでもいいだろう……連中が何かやるのをわざわざ待っていてやる義理もない。君の言う通り、さっさと踏み潰しに行こうと思っただけだ」

 

「わざわざ君の方から出向くのか? そう焦らずとも、時が来れば奴らは私達の前に現れるだろう。その時を待ってひねりつぶせば済むことじゃないか」

 

「そうかもしれないが、だからといってウロチョロと目障りな動きをする羽虫共を放っておくこともないだろう。……いい加減不快に思っていたところだ、身の程を知らない哀れな者達に、自分達に一寸の希望も残されていないことを教えてきてやる」

 

 吐き捨てるようにそう言い残し、エンブリヲはその場から搔き消えるようにいなくなった。

 

 その姿を見送り、エグゼブはやれやれ、とでも言いたげにため息をつき、レナードは何か不思議に思うような表情になってしばし虚空を見つめていた。

 

「……あいつ、あんな性格だったか? 初めて会った頃のエンブリヲは、敵と定めた者の抵抗やら何やらも含めて、笑いながら楽しんでいるような男だった気がするが……」

 

 そう、誰が何をやろうとしていても、『無駄な努力だ』と嘲笑し、見下し、余裕たっぷりに眺めて待って……それを踏みにじる。そんな男だったと、レナードは記憶していた。

 

 今のエンブリヲは、その、強者ゆえの傲慢はそのままに、余裕や悪い意味での寛容さが鳴りを潜め、代わりに1つ1つの物事にいらだって反応している。

 些細なことかもしれないが、その違いがレナードの目には不可解に映っていた。

 

 しかし、エグゼブには特に気にするほどのこととは思えなかったようで、軽い調子で『別に問題はないだろう』と言い切る。

 

「やることなすこと上手くいかずにここまで来たとなれば、苛立ちもするだろうさ。それに、私に言わせれば……君だって以前からすれば、随分性格が変わったと思うが?」

 

「……それもそうか」

 

 エグゼブの指摘する『変わった』きっかけになった、眉間の傷跡にふと指で触れながら、レナードは確かに考えても仕方のないことだと、エンブリヲの変化を気にするのをやめた。

 

 

 

 

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