【◇月▽日】
本日、なかなかに激動の一日でした。
しかし、決して悪い意味ではなく……むしろ、いよいよ僕ら『独立部隊』が、イスカンダルに向かって踏み出す始まりとなった日……と言ってもいいかもしれない。
……この『独立部隊』っていう呼称を使うのも、あるいは今日が最後になるかもね。
日中、まだ日も高い時間のうちに、突如『科学要塞研究所』に警報が鳴り響いた。
何かと思って窓の外を見てみれば、そこにはなんと……すさまじく巨大なドラゴンみたいなメカが浮いて、咆哮していた。
……っていうかアレ、真ゲッタードラゴンでは!?
全体像が見えるまでにしばらくかかったけど、上にゲッターロボみたいなの乗ってるし。
まさかと思って聞いてみれば……予想通り、兜博士が作っていた秘密兵器っていうのが、アレだったらしい。早乙女博士が作成していた『真ドラゴン』を改良して作り出していたそうで。
しかし今、それは何者かの手によって奪われてしまっていた。
その『何者か』がいったい誰だって話なわけだけど……出ました、エンブリヲ。どうやったのか知らないが、兜博士が徹底的に秘匿していたアレの存在を察知して強奪したらしい。
しかも、奴と一緒に……死んだって聞いていた早乙女博士まで現れた。
直接見た感想を一言。肩幅がすごい。研究者とは思えないガタイだ。
エンブリヲいわく、彼もエンブリヲによって操られているようで……そのまま真ゲッタードラゴンに乗り、こちらに攻撃を仕掛けてきた。
さらにそこに、なんとミケーネの連中まで現れて襲ってきた。ZERO騒動の時に逃げ出して以来だけど、真ゲッタードラゴンと同時に相手するのはさすがにきついか……って、皆身構えた。
が、結果的にはその懸念は半分以上取り越し苦労となった。
というのも、それぞれにとって宿敵と言っていい相手が現れたことで、竜馬さんと甲児君の戦意が天元突破してしまい、それぞれ真ゲッタードラゴンとミケーネの連中に猛攻撃を開始。
甲児君なんか、開幕間もなくして『マジンガーZERO』に変身して大暴れしていた。ミケーネの神々も、いや、うん、強いんだろうけど……普通に蹴散らされていた。
しかも今回は、僕ら仲間たちのバックアップもあったわけだから、なおさら一方的だった。
そして早乙女博士の方だが……なんと彼、操られていませんでした。
あくまでエンブリヲに利用されているフリをして、あえて竜馬さん達の前に障害として立ちふさがることで、その成長を確認しようとしたらしい。
真ゲッタードラゴンに乗った自分を倒すほどの腕を見せた竜馬さん達を『見事だ』と認め、エンブリヲの目を盗んで乗り込んでいた號達にドラゴンを託した。
……で、まあ、当然……いつの間にか自分の手駒である(とすっかり騙されて思っていた)早乙女博士にきれいに裏切られたエンブリヲは、当然のごとく激怒。
しかし残念ながら、彼にとっての災難は、まだまだ終わってはいなかった。
☆☆☆
「ふざけるなよ早乙女博士……貴様、私をだましていたのか……!」
「騙す? ああ、そうだとも。貴様が間抜けにもあの程度の洗脳で私を利用しようとしていたようだからな、体よく利用させてもらったにすぎん!」
「せっかくこの私が、君の最高傑作を、有意義な形で利用してやろうと思っていたものを!」
自分の思い通りに動くと思っていたはずの早乙女博士が、明確に自分に反旗を翻し、あろうことか『真ゲッタードラゴン』をそのまま、独立部隊側の戦力として託すと言い出した時、エンブリヲは、逆に利用されたことを知り、怒りに顔をゆがませた。
しかし、それを聞いた早乙女博士は、こらえきれないとばかりに大口を開けて笑って見せた。
「最高傑作だと? ふ……ふははははははっ! 笑わせてくれるわ!」
「何を笑っている……一体何がおかしい!?」
「これが笑わずにいられるか! エンブリヲ、貴様に科学者を名乗る資格はないな!」
その声に乗っていたのは、エンブリヲに対する、心の底からの侮蔑と嘲笑だった。
「生物は絶えず進化する! それと共に、その生み出すものも進化する! 最高傑作などという通過点で満足している男に、ゲッター線の真髄は永遠に理解できまい!」
物騒極まりない、しかしこの上なく的を射ているその言葉に、兜博士や真田副長を始めとした、『研究』という分野に覚えのある者達は、まさしくその通りだと納得させられ……しかし、1000年以上の時を自分の箱庭の中で過ごし、自分の想像を超える可能性というものを排除し続けたエンブリヲにだけは、それは理解できなかった。
結局ただ、調律者たる自分に歯向かう愚か者としか見ることのできないエンブリヲは、不快感を隠そうともしないままに、ぱちん、と指を鳴らす。
「従わないというのなら仕方ない……ここでそのガラクタの龍とともに朽ち果てるがいい」
エンブリヲの周囲の空間がゆがみ、ミスルギ皇国でも見た、様々な無人機の軍団が姿を現す。
その中には、サリア達メイルライダーにとって、ある意味見慣れた機体も混じっていた。
「なんだありゃ、グレイブか?」
「しかも、未改造のノーメイク……」
「パラメイルにもAIを搭載して、自分の軍勢に組み込んだ、ってことかしら?」
「はっ、たかがグレイブなんざ持ってこられたところで怖くなんかねえよ! 撃ち落としてスコアに変えてやらあ!」
「そうだね……アレくらいなら私でもどうにでもできそう」
ロザリーとクリスが威勢よく言うが、エンブリヲは笑みを深めて言った。
「見た目で判断するのはよくないな……これらは私が手を加えて改良した、いわばラグナメイルの量産型と言ってもいい機体だ。当然、そこらのパラメイルなどとは比較にならない性能を持っている……私を裏切ることの罪深さを、たっぷりと味わうといい」
その言葉に、『ラグナメイル』の凶悪なまでの性能を知る面々の間に、一気に緊張が走る。
エンブリヲの言葉が本当なら、確かに油断ならない相手だ。
量産型ということで若干ダウングレードしているかもしれないが、それでもラグナメイルの戦闘能力は、そこらの機とは一線を画すレベルであると、戦ったことがある者ならばよく知っている。
それでもなお、逃げようとする者、怖気づく者は1人もおらず、全員が目の前の敵に立ち向かう姿勢を崩さない。そのこともまた、エンブリヲを苛立たせた。
不愉快な気分のままに、エンブリヲは『行け』と合図を出し、戦いが始まる。
エンブリヲの言葉通り、無人機のグレイブ達は、見た目からは想像もできないほどのスペックに押し上げられていて、小さい機体サイズを生かした回避と攻撃のコンビネーションで攻め立てて来て、自軍部隊を苦しめる。
そして、同様の改良は、程度は違えど他の無人機にも適用されているようで……全体的に戦力が向上しているのを感じ取ることができた。
そしてそれに加えて、主の敵討ちに燃えるミケーネの神々や、その手勢である魔物『ケドラ』も合わさって襲ってくるのだから、片時も気の休まる暇などない。
それでも、ここまで数多の激戦を潜り抜けてきた独立部隊の面々は、一歩も引かずその猛攻を受け止め、返り討ちにする戦いぶりを見せる。
縦横無尽に飛び回るグレイブやモビルスーツには、同じくモビルスーツやラグナメイルを駆る面々がその相手をし、撃ち落とし、切り伏せる。
巨体の馬力を生かして攻め立ててくるミケーネには、マジンガーZEROとマジンエンペラーGを中心とした、互角以上のパワーで渡り合えるスーパーロボット勢が務めて迎撃。
地上から攻めてくる敵勢力に対しては、レーバテインをはじめとしたASに加え、陸戦仕様のモビルスーツがその相手をした。
そんな戦いの中、また1機、無人機のジンクスを撃ち落とした総司は、先ほどから気になっていた疑問が再び頭をよぎり、思わずといった様子でつぶやいた。
「この忙しい時に……ミツルの奴、どこで何してんだ?」
ミツルと、その愛機ヘリオース。
この部隊の中でも、最大戦力の1つに数えていいであろう彼らが……この戦いには参加していない。出撃の際、既にいなかった。
いや、ミツルだけではない。彼の秘書であり、先の戦いでは『アンゲロイ・アルカ』に乗って獅子奮迅の活躍を見せたミレーネルや、彼がこのところよく面倒を見ている2人のメイルライダー……ココとミランダもいない。
「4人そろって遅刻ってわけじゃないだろうし……ナイン、何か知ってるか?」
「特に連絡は受けていないのですが、このところ、何やら新兵器の開発を進めているとのことでしたので……その調整ではないでしょうか。ロールアウト間近だという話でしたので、この戦いに投入するつもりで最終調整をしているのかもしれません」
「そうかい。まあ、間に合えばいいが、その前に……って、やべえ!」
総司の視界の端に、無人機達と戦っている自軍部隊の横を猛スピードですり抜けるようにして、その背後にある『科学要塞研究所』に向けて飛翔していく複数の影が見えた。
機体サイズはかなり小さいが、ASでもパラメイルでもない。あれは……
「あれは……あの赤い機体は!」
「北辰か!」
深紅の機体『夜天光』と、それに付き従うように飛ぶ『六連』。ジンシリーズの小型発展機。
アキトの怨敵である北辰と、その部下達である『北辰衆』の乗るそれらの機体が、明らかに『科学要塞研究所』を目指して高速で飛んでいく。
「貴様、やはり生きていたのか……」
「無論だ。あれしきのことで死ぬはずもなし……最も、一度は全てを失った身なれば、今は神気取りの優男の飼い犬に甘んじている有様ではあるがな」
「あんたら、今度はエンブリヲについたのね……あーもう、ろくでもない連中同士がつるむとか、ますますタチが悪くなっちゃって……」
「類は友を呼ぶ、っていう奴だろうぜ……ってそんなことより、誰かそいつらを止めろ! 研究所がやべえぞ!」
ヒルダが叫ぶのに応えて、近くにいたメンバー……グレートマイトガインと轟龍がそれらの機体を止めにかかるが、機体のサイズ差と機動性能を生かしたトリッキーな動きでかく乱され、突破を許してしまう。
その際、一瞬ではあるが鍔迫り合いに持ち込んだ、ジョーと北辰の間に、とある会話が交わされていたのだが……それが原因でジョーが冷静さを失い、結果として突破を許してしまったことは、戦闘中に他の者が知ることはできなかった。
これからの計画の要となる真ゲッタードラゴンを守ることができても、『科学要塞研究所』に被害が出て準備に支障が出るようなことになれば、やはり多少なり支障は出てしまう。
ハラスメント攻撃とも呼べるような意図で襲い掛かる北辰達だが、その眼前の空間が突如歪む。
その現象を見た瞬間、北辰は即座に何が起こっているのかを看破した。
(ボソンジャンプ反応……なるほど、テンカワ・アキトか)
単独でボソンジャンプが可能な、アキトの『ブラックサレナ』なら、どれだけ距離が離れていようと即座にその距離をゼロにすることができる。他のいずれの機体でも間に合わない支援も、彼ならば可能だった。
しかし、北辰とてそれを予想していないわけではない。
アキトがこうして転移して現れた時には、自分が相手をし、残る部下達の『六連』で研究所を攻撃する、というプランを既に用意していた。
だが、身構えると同時に……北辰は不思議なことに気づく。
(……反応が……他にも……?)
アキトの『ブラックサレナ』が現れ、自分の乗る『夜天光』との鍔迫り合いに入り……ここまでは予想通り、と思った次の瞬間。
自分達の横をすり抜けていった、部下の機体の進む先に、さらに2つ……『ボソンジャンプ』の反応が出現したのである。
ちょうど、『六連』の行く手を阻むような位置で、今まさに空間がゆがみ始め……それが収まった時、そこには、見慣れない機体が姿を現していた。
(……? あれは……パラメイル、か? いや、あの緑色の方は、エンブリヲに聞いていた、特殊な機体と特徴が一致する……ならば、もう一機は……)
大きさ、及び見た目は、確かにパラメイルだった。
しかしその実態は、それよりも数段上……ラグナメイルと同等かそれ以上の性能を誇る、似て非なる機体……『デモンメイル』である。
片方は、ミスルギ皇国での決戦の際にも現れ、ミランダが搭乗した深緑色の機体。手には、長銃型の汎用武装『ガナリー・カーバー』。
これに関しては、エンブリヲにもたらされたデータの中にあったために、北辰も知っていた。
そしてもう1つは……それらのデータの中にはなかった、銀色の機体。
デザインはほぼほぼ、ミランダの機体と同じように思えるそれは、しかしそれよりも装甲が重厚になっているように見えた。手に持っている武器も、銃ではなく、やや細身の剣だ。
そして、それに乗っているのは……
「よっし、何とか間に合ったね! じゃあ、行こうミランダ! 私達の2人の、今度こそホントのデビュー戦だ!」
「そうだね、ココ。出遅れちゃった分、きっちり活躍して取り戻さなきゃ」
ミランダの乗る、深緑色の機体が、手にした銃『ガナリー・カーバー』を構えて、突撃して来る『六連』に狙いを定める。
ココの乗る銀色の機体が、手に持った剣『
新たな力を手にした少女達は、今度こそ、自分たちの手で、守りたいものを守り、平和な世界を勝ち取るために……その障害となるものを排除するために、自分の意思で戦場に飛び出した。
自分達で考え、そして名付けた……新たな相棒と共に。
「パラメイル第一中隊所属……ミランダと、デモンメイル『ラピュセル』!」
「同じく、ココと『アントワネット』!」
「「行きます!!」」