スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第67話 『ラピュセル』と『アントワネット』

 デモンメイル『ラピュセル』と、同じく『アントワネット』は、ともに『サイデリアル』が作成した、パラメイル系列の機動兵器であり……しかしながらその性能は、ラグナメイルに匹敵、あるいは凌駕すらするそれを誇っている。

 

 その一方で、両機は設計思想の基礎は同じであるが、搭載されている武装や、想定されている戦闘スタイルが全く異なるため、一概に同じシリーズにまとめていいものかと、たびたび開発部局の中では話題になった機体でもあった。

 それらはいずれも、パイロットであるココとミランダに合わせて作成されたがために生まれた差である。

 

 そして2つの機体は、今、ロールアウト早々に、その戦闘能力をいかんなく発揮し、格上であるはずの北辰衆の乗る『六連』を相手に、一歩も引かない見事な戦いを見せていた。

 

「ぬぅっ……小娘が、ちょこざいな!」

 

「少しばかり性能のいいおもちゃを手に入れた程度で調子に乗っているとどうなるか、教えてくれようぞ!」

 

「さっきからそう言ってるけど、おじさん達全然『アントワネット』についてこれてないじゃん。ほら、次行くよっ!」

 

 言うが早いか、急加速して『六連』に迫る、ココの『アントワネット』。

 全身各所に備え付けられたスラスターが火を噴き、秒ですさまじい速さに加速して、横向きに構えた剣で切りかかる。

 

 北辰衆はこちらも、『六連』の機動性能を生かした、素早くトリッキーな動きでかく乱しようとするが、そのかく乱の動きそのものに普通に追いついてきて両断しようとする『アントワネット』の剣が迫り、あわてて錫杖で防御し……失敗した。

 

 手にした錫杖は、アントワネットの『MVS』の超振動する刃によってたやすく両断され、その刃はそのまま『六連』の機体を深く切り裂いた。

 

「なっ、ぐぅ……不覚ッ!」

 

 コクピット周辺に張られたフィールドに守られ、どうにか致命傷は避けたものの、駆動部にまで少なくないダメージが入り、たちまち1機が脱落となる。

 

「よし、次……っと!」

 

 その『アントワネット』に、別な『六連』が2機同時に襲い掛かる。

 

 ココは少し慌てつつも、1機が振り下ろす錫杖を剣で受け止め……ようとしたところで、錫杖が動きを変えた。フェイントをかけた動きで、がら空きになった胴体めがけて突きが見舞われる。

 が、ココはそれに素早く反応し、機体をひねるように動かして蹴り上げてそれを防ぐ。

 

 そしてもう1機は、中距離からミサイルランチャーを放ってきたが、今度は剣を持っていない方の手をそちらに向け……その瞬間、『ラムダ・ドライバ』で発生させた力場が、ミサイルはもちろん爆風まで含めてそれを防ぎ切った。

 

 お返しとばかりに、その腕に仕込まれていたビーム砲を放つが、直線的なその攻撃は、六連にはたやすくかわされてしまった。

 しかし今の隙間に、いったん距離をとって体勢を立て直すココ。

 

 再び2機を同時に視界に収め、剣を構えなおす。

 

 

 

 一方、そこから少し離れた場所で、ミランダもまた、残り3機の『六連』を相手にしていた。

 

 こちらはココとは対照的に、遠距離戦を主体とした立ち回りで、『ガナリー・カーバー』と『クラフティブ・レイガン』からエネルギー弾をまき散らして手数で攻める。

 

「ココって結構天才肌だったんだなあ……私も負けてられないな、っと!」

 

「ぬぅっ、珍妙な技ばかり使いおって……」

 

「だが、どうやら接近戦は不得手のようだな。近づかせまいとしているのが丸わかりだぞ!」

 

「そんなの、自分でもわかってるよ……っと!」

 

 張られた弾幕の隙間を縫って急速に接近して来る『六連』。それをミランダは、肩の『クラフティブ・レイガン』からさらに分厚い弾幕を張り巡らせて対応する。

 

 さすがに物理的に通れる隙間がないとなると、いかに『ディストーションフィールド』による守りがあっても、機体の小さな『六連』では強行突破は難しい。そう判断して反転する。

 

 その瞬間を見逃さず、ミランダは素早く狙いをつけて、長距離狙撃モードにしたガナリー・カーバーを構え、自分が張った弾幕をぶち抜いて、その向こう側にいる『六連』を狙い撃った。

 

「……っ、惜しい!」

 

 間一髪というところでその一射は躱されてしまい、掠った腕の装甲の一部をえぐり取るだけにとどまった。

 しかし、『ディストーションフィールド』を貫通して、掠っただけであれだけのダメージになるならば、直撃すれば間違いなく落とせるはずだと思い直し、気合を入れる。

 

 その直後、今戦っていた者達とはまた別な『六連』が、大きく回り込んで弾幕を回避する形で、ミランダの乗る『ラピュセル』の背後に現れた。

 

「後ろっ!?」

 

「性能だよりで戦況把握が甘いわ、素人めが!」

 

 そしてそのまま、コクピットがあるであろう胸部めがけて、突撃の勢いも載せた突きを繰り出すが……その瞬間、

 『ラピュセル』の真後ろに、澄んだ緑色の半透明のエネルギーフィールドが発生し……そこから雨あられと放たれた針状の弾幕によって、突っ込んできた『六連』はきれいに返り討ちにされた。

 

「なっ、馬鹿な……真後ろに……!?」

 

「残念でした……『クラフティブ・レイガン』は、前後左右上下、どこにでも撃てるの。でも、忠告はありがたく受け取っておくね、おじさん」

 

 ミランダの乗る『ラピュセル』に搭載された射撃武装『クラフティブ・レイガン』。

 通常の砲撃用装備と違い、これは発生させたエネルギーフィールドを砲身代わりにしてエネルギー弾を形成・射出するため、射角が恐ろしく広く、実質的に死角が存在しない。

 

 今のように真後ろに撃つこともできるし、エネルギーフィールドを広げれば、真上や真下、さらにはやろうと思えば、全方位に同時に放つこともできる。

 『接近戦を何が何でも防ぐ』という設計思想に即して作られた、攻防一体の兵装なのだ。

 

 思わぬダメージを受けた『六連』は、一度退いて体勢を立て直そうとするが……その瞬間、背後に超高速で飛んできた『アントワネット』が、反応を待たずに『MVS』を一閃させた。

 先ほどまでの意趣返しのような一撃に、あえなく脱落となった。

 

「ミランダ、だいじょぶ?」

 

「あ、ココ。うん、平気だよ。助けに来てくれたの?」

 

「うん、それもあるけど……あ、こっちの人たちも」

 

 ココの指さす先で、『撤退だ!』という掛け声とともに、残る無事な『六連』も含めた全機が素早く後退していく。

 どうやら、ココは逃げ出した敵を追撃しつつ、ミランダに奇襲をかけようとしている機体を見つけて斬り落としに来たようだ。

 

 しかし、それをさらに追おうとしたココたちだったが、『六連』はその小さな体を生かして戦場のど真ん中を突っ切って飛び……しかも突破に難儀しそうな、ミケーネ神達がいる場所を通っていった。

 これ以上の追撃は難しそうだと、ココもミランダも判断せざるを得なかった。

 

 しかも、そこにいた何匹かの『ケドラ』が、ミランダたちを発見し……標的と定めたのか、飛翔して襲い掛かってくる。

 

「あっ、やばい、キモイのが来る……よーし、こんな時はコレだ!」

 

 聞いている者達の気のせいでなければ、どこか嬉しそうにココが言ったかと思うと、彼女の乗る『アントワネット』の両肩のパーツが展開する。

 

 ラグナメイルであれば、そこには時空を破壊する兵器『ディスコード・フェイザー』が搭載されている。

 ミランダの『ラピュセル』には、その代わりに『クラフティブ・レイガン』が搭載され、先ほどまで猛威を振るっていた。

 

 では、同型機である『アントワネット』には何が搭載されているのか。

 

 ミランダのみならず、離れたところで戦っていたアンジュ達も、何気に気になるようで注目している前で……展開したパーツの下に出現したのは……見覚えのある、深紅の放熱板。

 

「えっ? あれって……」

 

 少し離れた場所で、ミケーネ神の1体を『アイアンカッター』で両断し、また1体倒していた甲児が、驚いたようにつぶやいた。

 その眼前で、『アントワネット』の両肩の放熱板が徐々に赤熱していき……

 

「吹っ飛ばせ! ブレストフラァ―――ッシュ!!」

 

 全てを燃やし尽くす灼熱の熱線が放たれ……向かってきていたケドラ達に直撃。

 本家本元よりは小ぶりながらも、決して劣らない、見掛け倒しではない熱量を浴びせられ、ミケーネ神のしもべとして作られた怪物達は、たちまち燃え尽きて消滅していった。

 

 その凄まじい威力はもちろん、別な意味でも驚愕させられてあっけにとられる仲間達。

 

 その眼前で、さらに……今の熱波を受けてなお、ギリギリで……位置取りから、味方が盾になる形で生き残ったケドラめがけて放たれるのは、

 

「そして、もう一丁! サンダーストラァ―――イク!!」

 

 『アントワネット』の頭部が光輝いたかと思うと、そこから、収束した超高電圧の光が束になって放たれ……ケドラを直撃。

 全身を焼かれて動きの鈍ったケドラは回避も防御もできず、すさまじい電撃に全身を蹂躙され、炭か灰かよくわからないものになって、文字通り戦場に散っていった。

 

「ブレストファイヤー……の次はサンダーブレークかよ!」

 

「なんでパラメイルにマジンガーシリーズの武装が!?」

 

「あ、大丈夫です。ちゃんと許可は取ったって言ってました」

 

「許可? 誰が誰に?」

 

「ミツルさんが、兜剣造博士に」

 

 遠距離戦主体のミランダの『ラピュセル』と違い、ココの『アントワネット』は接近戦主体の機体としてチューニングされている。

 

 ゆえに、『D・フォルト』と『ラムダ・ドライバ』による強固な防御力に加え、格闘戦に耐えうるだけの装甲強度と、素早く使えて決め手になる火力のある武装を突きつめた結果が、今の形であった。

 

 同サイズ帯とはいえ、真っ向から敵の武器を蹴り飛ばしてはじくことができる装甲と馬力。

 

 敵の装甲を紙同然に切り裂いて勝負を決められる振動剣『MVS』、

 

 広範囲に一気に決戦兵器級の威力の熱戦を放射できる『ブレストフラッシュ』、

 

 同様に決め技としての威力を持つとともに、出力や範囲を調整すれば、鍔迫り合いからの奇襲などにも使える電撃兵器『サンダーストライク』、

 

 いずれもココが、激しい戦闘(特に近距離~中距離戦)の中でも使えるようにと、決定打足りうる威力があり、なおかつシンプルに使えるものとして調整され、搭載された武装だった。

 

 欠点があるとすれば、出力によっては放出機構の冷却を要するため、連射はしづらいこと。

 そして、小型であっても凄まじい威力を発揮するように作られた関係上、相応にエネルギーを消費するという点だろうが、それも動力炉である『Dエクストラクター』と、その他に搭載されているサブ動力によって十分賄える範囲だった。

 

 なお、ミランダが先ほど言っていた通り、許可は本当にきちんととってある。

 というか、その兜博士の協力で小型化し、実装されている。

 

「すげえなこりゃ……まるでパラメイルの皮をかぶったスーパーロボットだぜ」

 

 あっけにとられて思わずそうつぶやいてしまった総司。

 後ろに乗っているナインも同様だったが……その直後、何かに気づいたように、何もない空中にその視線を向ける。

 

「キャップ、気を付けてください。転移反応……何か来ます」

 

「っ!? 何かってなんだ、敵か?」

 

「わかりません、見たことない反応……いえ……あ、すいませんこれ『ヘリオース』ですね」

 

 それを聞いて、『なんだミツルか』と緊張感の大部分を霧散させる総司。

 驚かすなよ、とでも言いたげな視線をナインに向けながら、

 

「まったく、ミツルの奴今頃……ああ、そうか、ミランダ達の機体の調整でもしてたのか? なら仕方な……どうしたナイン、まだ何かあるのか?」

 

「ええと、その……ヘリオースと一緒に、何か別な反応が転移してきてる、ような……これのせいで最初わからなかったみたいです。でも、コレ、大きい……一体何……!?」

 

 困惑している様子のナインが言い終わるより先に……総司もまた、それに気づく。

 

 戦場の真上、上空に……大きな空間のゆがみが発生し……ナインの言う通り、何かが転移してここに現れようとしていた。

 ヘリオース……ではない。サイズが明らかに違う。

 

 総司とナインのみならず、敵味方の全員がそれに気づき、転移して来るそれの影響で地上に影が差し始めることになれば……皆、目視でその姿を視認することができていた。

 

「でけえ……何だこりゃ? 戦艦か?」

 

「『アルデバル』……ではないようですね。デザインは割と近いようですが……しかし、あの戦艦、どこかで……?」

 

 総司とナインの言葉通り……それは、戦艦だった。

 

 総合的なデザインは『アルデバル』によく似ている。緩い流線型のフォームに、機体各所に装着された、砲台と兼用になっているいくつもの装甲板。

 『アルデバル』と同様、高火力かつ高機動という性質を有しているのであろうことは、容易に想像できた。

 

 細部の形状や装飾、あるいは兵装などは当然違うようだが……それ以外に、目立って異なっている点が、大きく3つ。

 

 1つ目は、カラーリング。

 『アルデバル』が灰色と、緑色をアクセントに形作られていたのに対し……こちらは、白と金色という、なんとも目立つ上、荘厳さや清潔感のようなものを感じられる姿になっている。

 仮に宇宙空間に浮かんでいたら、周囲の暗黒の景色からかけ離れたその色はさぞ浮いて見えることだろう。

 

 2つ目は、装甲の大きさとデザイン、そして数。

 『アルデバル』にもあった、何枚もの……まるで魚のひれのように装着されている前面装甲は、その数と大きさ、そして厚みを増しており、攻撃力・防御力共に強化されているのは明らかだ。

 砲台として機能するクリスタル状態の機構も増設されているうえ、何カ所か開いている空洞は、潜水艦の魚雷発射口に近い形状からして、実体弾を発射できる砲口なのであろう。

 

 さらに、同様の装甲が、全面だけでなく側面や背面にも、形状を微妙に変えて、流線形を損なわないように装着されている。

 文字通り、全方位に死角のない攻撃力・防御力を有している形と見て取れた。

 

 そして3つ目は、その大きさである。

 全長500mを超える大きさだった『アルデバル』をさらに上回り、その1.5倍以上にもなろうかと思えるほどのサイズは、戦場に物理的に大きく影を落とし、その存在感をさらに大きなものにしている。

 

 突如現れたその戦艦に誰もが目を奪われる中……聞き覚えのある声が、スピーカーから聞こえて来て、戦場に響いた。

 

 

 

「ワープアウト完了、通常空間に復帰。『ソーラーストレーガー』全システム正常稼働……コンディション・オールグリーン……成功よ、ミツル」

 

「ご苦労、ミレーネル! よーし、そんじゃ……遅れた分取り戻しますか!」

 

 

 

 

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