【○月$日】
ホントすごいな、この艦の生産設備……マジで何でも作れる。
必要なものは、設計データと材料だけ。それらを入力して準備すれば、あとはもう全部自動でやってくれる。ちょっとした雑貨類から、機動兵器やアンドロイドまで。
しかも、そのスピードも尋常じゃない。早ければ数十秒で完成する。
テクノロジーのレベルが地球とは違いすぎるな……ガーディムってどんな超文明だったんだよ。
しかも、何だってそんな文明のハイスペックな戦艦が、無人の状態でこんなところに放置されて……いやまあ、今はいいか。考えても答えは出ないし。
色々な設計データは、メインシステムと独立して生産設備の方のメモリーに残されていた。
そして、材料は……そのへんにいくらでも転がっている。
ここは推定『宇宙船の墓場』だ。ここから出ることができずに、乗組員共々朽ちていったのであろう宇宙船の残骸が、無数にぷかぷか浮かんでいる。
こいつらをリサイクルするのだ。アスクレプスか、または生産設備に付属してある回収用ドローンで、適当なものを回収してきて解体すれば、生産のための材料になる。
折角なので、色々作ってみた。快適に過ごすための家具類とか、宇宙空間で活動するための装備や、いざと言う時のための武器(白兵戦用)なんかも。
機動兵器や作業用アンドロイドも作れそうだったけど、今はやめておいた。別段、差し迫って必要ってわけじゃないし、管理も逆に大変そうだし。
データバンク内にデータがなくても、手間ではあるが、一から設計データを自分で作れば、そこに入っていないものも作ることができた。
手間ではあるけど、もともとこういう作業好きな方なので苦ではない。マイクラとか好きだし。
試しにウォーターベッドを作ってみたら、寝心地最高な快適寝具が出来上がった。
調子に乗ってジャグジーバスやマッサージチェアも作った。さらに快適に住めるようになった。
やばい、なんかここで快適に暮らすための設備がどんどんそろいつつある。ここ離れたくなくなりそうで怖い。
……いっそのこと、推進機関とか直してこの船ごと移動できればいいんだけど、流石にそれは難しいみたいだ。
残骸じゃ材料として使えないような、特別なパーツないし素材がいくつも必要みたいだし、そもそも船を『戦艦』として運用するための一番重要なシステム……移動や兵装をつかさどる部分のデータが軒並み破損してるからな。
ああ、もちろん遊んでばっかりじゃなくて、最優先で解決しなければならない部分についてもちゃんと取り組んでる。
この空間から脱出する方法について、きちんと調べたし、目途ももう立った。
方法としては、この空間内に存在する『時空境界面』に、次元断層を発生させるレベルの衝撃をぶつけることで、境界面を崩壊させて通常空間への出口を作れるようだ。
ただ、それには膨大なエネルギーが必要になる。少なくとも、戦艦に搭載されてる普通の兵装程度じゃまず無理そうだから……それをまずは『作る』必要があるな。
……僕がアスクレプスの力を十全に扱えれば、それも必要なかったんだろうとは思う。
というか、こいつならその気になれば、単体での次元移動や次元震の発生すら可能だったはずだし……力不足を恥じるばかりだ。
しかし、ないものねだりをしていても仕方ない。
ここは大人しく、それをどうにかする武器を作ることにしよう。
幸い、その辺のスクラップでもどうにかなりそうだし……設計データもある。
何ともおあつらえ向きな話で、アスクレプスのデータストレージの中に、色々な武器やら機体やらの設計データが保存されていたのだ。
そしてどうやらそれらは、アスクレプスと同郷?である、『Zシリーズ』に登場した兵器類のようだった。面倒なので1つ1つ説明とかはできないが、あの『多元世界』で猛威を振るっていた機体や武器のデータがいくつも保管されていた。
『サイデリアル』関連のものをメインに、地球産の兵器類のデータ、一部の版権作品のデータ、そして、『御使い』関連の機体その他のデータまで……実にありがたい。
これらのデータと、『バースカル』の生産設備を合わせれば……うん、いけそうだ。
ただし、流石に時間はかかりそうである。気の長い取り組みになるのも覚悟しておこう。
【○月#日】
この艦『バースカル』には、生産用のドックがいくつかあり……昨日から僕は、そのうちの1つをぶっ続けで稼働させて、あるものを作らせている。
それこそが、僕がこの空間から脱出するための切り札として考えているものだ。
それは、『DEC反応砲』。
略さずに言うと、『ディメンション・エナジー・クリスタル反応砲』。
次元力が結晶化した物質であるDEC……『ディメンション・エナジー・クリスタル』を用いて、抽出したエネルギーをぶつける兵器である。
これなら、次元力を込めた攻撃だから、相応の出力で撃ちさえすれば、『時空境界面』を破ることもできるはずだ。
アスクレプスの中にデータがあった次元力関連の兵器類。その中には、残念ながら材料その他の関係で作ることができないものも多かった。
作れる武装の中で、コスパや作成難易度、必要な期間などを鑑みた結果として、最もよさそうなのがこれだった。
それでも、かなり作るのに時間はかかるようで……しばらくはここに留まることになりそうだ。
あと、それと並行して、燃料として使う『DEC』の生成も進めている。これに関しては、アスクレプス自体に、抽出した次元力を変換・蓄積する機能が備わっていたので、自動化して任せている。
こっちにも時間はかかりそうだし、どっちみちその間は待つしかないだろう。
にしても、よくもまあこんだけのデータがそろえてあったもんだ。
『DEC反応砲』は、まだサイデリアルが地球に来る前に開発された、とある戦艦に搭載されてた技術だったはずだけど……『天獄篇』で地球を一時的に支配した時に接収したのかな。
ありがたいから使わせてもらうけどね。
【×月○日】
数え間違えてなければ、ちょうど今日で月が替わった。
そして、それと同時に……ようやく『DEC反応砲』が完成した。この空間から脱出するための、僕の切り札が。
必要な燃料……DECも、試射と予備含めて、3回撃てるだけの量を用意した。
なお、『DEC反応砲』は……もともとはこの兵器は、戦艦に搭載するタイプのものなのだが、後付けで戦艦に……ガミラスの艦にしろ『バースカル』にしろ、取り付けるのは無理があったので、アスクレプスそのものが構えて撃つタイプにした。
次元力を扱う以上、そっちの方が都合がよかったっていう理由もある。
かなり大型のものになったので、携行なんてまずできるようなサイズじゃないんだが。
実際に構えてみると……見た目的には、某ハンティングアクションゲームで、据え置き型のバリスタや大砲(ただし縦横に3倍くらいのサイズ比)を使う感じになった。
折角だし、『DECバリスタ』とでも名付けようかな、コレ。
低出力で試射してみた結果、使用自体は問題なし。
ビームではなく、エネルギーを収束した細長い楕円形の光弾が飛んでいき、射線上にあった――わざと的にするために置いておいた――デブリとか残骸に接触し、爆発。
それらは奇麗に消滅したし、小規模ながら次元震も観測できた。
この出力でこれなら、出力全開で使えば、問題なく時空境界面を破れるだろう。
ただ、急ごしらえの上にかなり小型化したことがたたってか、1発撃っただけでメンテが必要になった。……これは、本番やれるのは明日だな。
【×月×日】
さあ本番行ってみよう! と意気込んで外に出ようとした時、水を差されるが起こった。
この空間に、残骸でない何者かが侵入してきたっていうのをレーダーが捕らえたのだ。
一体何だよと思いつつ見てみると……そこにはなぜか、宇宙戦艦ヤマトの姿が。
……え、何で? 何でヤマトがここに?
僕と同じで、ワープに失敗したんだろうか?
この空間……そんなに頻繁にというか、落っこちる確率結構高めな場所なの? それとも、単に僕もヤマトもめっちゃ運が悪かったとか、ワープした場所が悪かったとか?
……考えても仕方がなさそうなので、考察はやめにしよう。
それよか、もしヤマトがここから出られなくて困ってるようなら……ついでだし、『よかったら一緒にどうですか?』的な感じで声かけてみようかな?
『DECバリスタ』を使えば、それなりの大きさの穴を時空境界面に開けられそうだし、それが開いてる間に、ヤマトが通り抜けることも可能だろうから。
……地球のためにも、ヤマトはこんなところで止まっていていい存在じゃない。
その助けになれるなら、僕もやれることをやらないと。
……ぶっちゃけ、土星でのことが原因で軽くトラウマっぽくなってるし、そうでなくても普通に緊張するんだけど……そんなこと言ってられないしね。
意を決してアスクレプスを出し、ヤマトにコンタクトを試みようかと思った僕だが、その前にまたもや異変が起こった。
もう1隻、レーダーの範囲外から入ってきた船があった。ガミラスの戦艦が。
僕が失敬して使わせてもらってるものよりもかなり大きい、武装も充実してるやつだった。
それがヤマトに向かって進んでいって、これは戦闘になるか、とハラハラしつつ見てたんだけど……何やら様子がおかしい。
ガミラスの艦から戦闘機が1機出て、大和に着艦した。
そしてしばらくすると、大和とガミラスの艦が並んですすーっと飛んでいき、ちょうど次元境界面の前あたりまで一緒に来た。
ガミラスの艦から、ロープのようなビームのような……というか、ビームがロープの形になってる感じのものが伸びて、ヤマトと結合……牽引用の設備か何かか、あれは?
何をやってるんだろうと思ったその直後、ヤマトから凄まじい威力のビーム砲みたいなものが発射されて……時空境界面を直撃、盛大にぶち抜いて大穴を開けた。
びっくりしすぎてひっくり返るかと思った。何アレ……うちの『DECバリスタ』とは、威力も迫力も比べ物にならないんですけど。
……あ、ひょっとしてあれ、かの有名な『波動砲』か!?
『宇宙戦艦ヤマト』の代名詞的な武装。アニメ史における『ロマン砲』や『必殺砲』の先駆け的存在。
一発放てば惑星すら破壊するっていう、ヤマトは見たことなくても『波動砲』は知ってるっていう人も多いであろう、あの……。
計測機器を見てみると、『波動砲』(と、仮定する)の射線上には、重力異常や、極小ではあるが次元震なんかもいくつも観測されていた。どういう仕組みで撃ってるんだアレ? 単なる破壊光線じゃなさそうだけど……うう、知らないって悔しいな。
とか考えていたら、『波動砲』でぶち抜いて開けた穴目掛けて、ガミラスの戦艦が飛んでいく。
そして、ビームのロープに引っ張られる形で、ヤマトもそれに続いていく。
……ひょっとして、あの2隻、一時的に手を組んだのか?
ヤマトが『波動砲』で時空境界面をぶち抜く。ガミラスはそのヤマトを引っ張ってここから脱出する……牽引されてるところを見ると、ヤマトは今の一撃でエネルギーを使い果たした、か?
なるほど、ヤマト単体では、壁は破れるけどその後動けないから脱出できない。
ガミラスは、時空境界面を破る力がない。
だから、役割分担する形での呉越同舟、か……よく考えたもんだ。
そしてそれ以上に、よく実行する気になったな。どっちにとっても不俱戴天の敵同士だろうに、相手を信頼して自分の役目を果たす……か。
流石は、地球連邦軍にその人ありと言われた沖田十三……そして、ガミラス側の艦長も、話が分からない人じゃなかったと見える。最初に飛んでいった真っ赤な戦闘機は、その為の使者だったのかも。
どっかの第六天魔王は、『呉越同舟なんてもんはねえ!(一部抜粋)』って言ってたけど……そんなことはないんだな、という真実を見た気がした。やっぱり、人と人とはわかり合えるんだな。
……と、思っていたんだけども。
牽引している途中で、ビームロープが外れた。
そしてそのまま、ヤマトを置き去りにして、ガミラスの戦艦、行ってしまった。
……ええ~……裏切るの? ここで?
頭の中で、50過ぎの眼帯のおっさんがすげえいい笑顔を浮かべてるんですが。ほら、こうやんだよ、とでも言いたげな感じで。
しかも、泣きっ面に蜂とでも言うべき事態がさらに発生。
やはり動けないらしいヤマトに向かって、突如どこからか現れた機動兵器の集団が襲い掛かろうとしていた。
……? あのデザイン、どっかで見たような……
ヤマトからは、搭載されていたロボット達が出撃……あれ、増えてる?
ガンダムが増えてるよ? ていうかあれって……ダブルオークアンタじゃない? え、何、刹那君までいるのこの世界?
もう1機の方は……名前忘れた、何だっけあの……あれ……ティエリアが乗ってる奴だよね? くっそ、だめだ出てこない。
その2機を加えたスーパーロボット部隊による戦いが始まったわけだが、押され気味だ。
数がメタルビーストの時以上に多いし、動きも素早い。生命反応がないところを見ると……無人機かあれ。どうりでパイロットがいたら難しいような無茶苦茶な動きもしてるわけだ。
さらに、なぜか機動兵器達は、隙あらばヤマトを狙おうとするので、それを守るために防戦気味になってる。
とうとう何発かの攻撃が、ロボット達の防衛線を抜けてヤマトに届いた。
大したダメージにはならなかったようだけど……ヤマトって、土星で戦ってるのを見てた時は、バリアみたいなのを張ってたと思ったんだけど。メタルビーストの攻撃とか、爆散した破片とかをそれで防いでたの、見えたし……地球で『遊星爆弾』を破壊した時の爆風も防いでたよ?
それが今はない……つまり、それに回すエネルギーもない、ということか……けっこうガチでピンチそうだな。
……覚悟、決めるか。いや、さっき決めたっけな。種類は違うけど。
☆☆☆
不測の事態によりワープに失敗したヤマト、そしてその一行は、まるで宇宙の墓場とでも呼べそうな『次元断層』という空間に迷い込んでいた。
そこで出会ったガミラスの戦艦。使者としてやってきたメルダ・ディッツ少尉から聞かされたのは、この空間を脱出するために、一時的に協力したい、という提案だった。
ガミラスに対する敵対感情から、最初は反発する意見が出るものの、沖田艦長の決断により、その申し出を飲むことが決定。
波動砲により時空境界面を突破するも、その後の牽引の最中に、さらなる不測の事態が発生。
ガミラスの艦から回されていた牽引ビームが突如として切断され、ヤマトを置き去りにして次元断層の向こうへいってしまったのだ。
連絡員――実質的な人質――としてヤマトに残っていた、メルダをも置き去りにして。
実はこの時、ガミラスの艦の中では、同乗していた『親衛隊』の者達が、『敵対しているテロン人を助けるなど言語道断』として、艦内を掌握し、牽引ビームの切除と自分達だけでの脱出を強行していたのだが、そんな事情を知る由もないヤマトの乗組員達は、やはり裏切った、と怒りをあらわにする。
そこにさらに、正体不明の無人機と思しき機動兵器が攻撃をかけてきた。
ヤマトはエネルギーを使い果たし、自力での移動はもちろん、『波動防壁』の展開すらもできない状態。機動部隊を出してこれに応戦するが、苦戦は免れなかった。
途中からは、ヤマトに乗っていたメルダ少尉も防衛に加わる。
無理もないことではあるが、冷ややかどころか敵意すら乗った視線を受けながらも、『信用できなければ、後ろからでも撃つがいい!』とまで言い切って見せたことにより、一応はこの闘いの間だけは共闘することとなった。
しかしそれでも、多勢に無勢の上、なぜかヤマトを狙ってくることもあり、不利な状況に変わりはなかったが……そこに、さらなる予想外の事態が起こる。
「レーダーに感あり! 所属不明の機体が接近中! は、速い!? もう来ます!」
「くそっ、また増援かよ!?」
ヤマトの艦橋に悪態をつく声が響く中、その何者かは、突如として戦場に乱入してきた。
緑色の光が尾を引いて飛び、まるで流星のような勢いで斬り込んできたそれは……今まさに、ヤマトに向かって攻撃しようとしていた機動兵器2機を、すれ違いざまに両断した。
それを見ていたヤマトの乗組員達、そして、戦場に出ている機動部隊のパイロット達は、無人機が爆散したその煙の向こうに、その機体を見た。
そして、
「……二刀流の……白い、機動兵器……!」
思わず、といった様子で……沖田十三は、ぽつりとつぶやいた。