スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第69話 出発準備とサプライズ

 

【◇月◇日】

 

 数日後の出発の日に向けて、『地球艦隊・天駆』の面々は、各々が準備に取り掛かっている。

 

 食料や資材といった必要物資各種の調達・積み込みはもちろん、親しい人にあいさつに行ったり……逆にこっちに訪ねて来たり、っていうのもある。

 

 例えば、ネルガルのアカツキ会長。いつも通りの独特な服装で訪ねて来て、ナデシコの皆さんを皮肉交じりで激励していた。

 素直に励ましたり応援するってことをしてくれない人だ、相変わらず。ナデシコの面々からも呆れられていた。

 

 けど、僕らの勝利や無事の帰還を信じてくれているのは本心のようだったし、『少ないが使ってくれ』って資金提供までしてくれたのは普通にありがたかったと思う。

 

 ……ただ、その時にちょっと……『地球の危機なんだからケチケチしないで全財産差し出せよ』的なことをリョーコさん達に言われてたんだが、その際の言い返し方が、また皮肉交じりの絶妙な感じで。

 

『冗談じゃない、そんなことをしたら破産してしまうじゃないか。僕は君たちが勝利すると、地球にはこれからも未来があると信じてるんだからね』

『そうなったらこれからは、ネルガルは並行世界をまたにかける事業を行っていくつもりだよ』

 

 とまあ、商魂たくましい+転んでもただは起きないところを見せつけて、感心しつつ呆れられていたわけだが……その後会長さん、流れるような動きで僕のところにやってきて、『そんなわけで先輩であるサイデリアルとも友好な関係を築いていきたいからぜひひとつ業務提携から……』って、だからやめれっちゅーのに!

 油断も隙もない……そのままいろいろと手を伸ばしてくるつもりだろ……そうでなくても、何を考えてるかわかんないからうかつに返事なんぞできん。

 

 会長からしてみれば、『並行世界をまたにかけた商売』なんていう絶好の儲け話を、しかし1歩先にいってるのが『サイデリアル』なわけだから……ノウハウの吸収なり、人脈づくりなり、色々なことに利用したいんだろうな。

 まあ、商売人としては間違っちゃいない考え方なんだろうけど、それで目を付けられる側はたまったもんじゃないんだってば……

 

 まあ……色々恩もあるし、交渉する気がないわけじゃないんだ。

 ただ、できればきちんと会社としてほかの役員も出席の上で会議の場を設けるか……最低でもミレーネルと一緒の時にやってくれ。彼女がいると、相手の謀略とかほぼ完璧に看破してくれるから、安心だ。

 

 次に、旋風寺コンツェルンから、浜田君とサリーちゃん、それに、浜田君の彼女だっていうルンナちゃんという子。あと、秘書さんとか工場の人たちとかも。

 物資の運び込み兼、激励やお見送りのために……だと思ってたんだが、微妙に違った。

 

 なんと浜田君とサリーちゃん、それにルンナちゃんは、そのまま『地球艦隊・天駆』に同行するつもりだという。機体の整備や、色々な雑務の手伝い要因として。

 

 その場に一緒にいたヒルダが、思わず『本気か!?』と叫んでいた。

 気持ちはわかる。彼女や僕以外の面々も、おそらく口には出さないが思っていただろう……表情が驚愕一色だったから。

 

 仮にも地球から遠く離れた……どころじゃない、しかも並行世界の宇宙に行くっていう、危険な旅路になるんだけど……と、もちろん舞人社長は説明していたけど、彼女達の決意は固かった。

 しまいには舞人社長も根負けし、その熱意を買う形で、3人を迎え入れることとなった。まあ、心強い味方が増えたと考えれば……うん、実際そうなのは間違いないしな。

 

 ……ところで、そのままタイミング逃しちゃって聞けてないんだけど……ルンナちゃんって誰? 多分初対面だと思うんですが。

 いやまあ、別にいいけどね……舞人社長や浜田君達が信用してるんなら、別に悪い子というか、問題のある子じゃないんだろうし。

 

 ……けど、なぜか一瞬、普通の女の子に見えないような鋭い目つきになって……離れたところにいたアキトさんと視線が交わされたように見えたのは……気のせいでしょうか?

 

 ちょっと気になったので、誰かに聞こうかなと思ったんだけど、その直後にアキトさんが僕のところに歩いてきて、ぽん、と肩に手を置き、

 

『大丈夫だ。彼女はもう、問題ない』

 

 ……とだけ言って去っていった。

 意味が分からない。

 

 ……わからないけど、まあ……一応ホントに大丈夫そうではあるから、いいか。

 

 浜田君達同様に、『地球艦隊・天駆』に同行することになった人は、他にもいる。

 

 NERVからは、チームEVAに加わる形で、マリさんが参加することになった。

 それも、自分の本来の機体である『エヴァンゲリオン8号機』で。

 

 相変わらずというか、独特の軽い感じで話す彼女は、堅苦しい感じはしないものの、フリーダム&マイペースすぎて逆に距離感をつかみかねている子が多いようだ。

 そういうのを気にしている様子は、本人にも全くないけども。

 

 あとは、ゲッターチームに加わる形で……って言っていいのかな。號さんと渓さん、凱さんの3人。

 この3人はどっちかっていうと、こないだの戦いの後にチームに加わった感じだけどね。『真ゲッタードラゴン』の乗員として。

 ただ、登場があまりに唐突すぎたから、途中加入メンバーみたいな形でカウントされてる感があるけども。

 

 他にも、合流はしないにしても、見送りに来てくれた人はまだまだいる。

 

 神ファミリーの面々や、シンジ君のクラスメートのトウジ君やケンスケ君、インダストリアル7にいたバナージ君の友人達など。

 

 アルゼナルからはわざわざジャスミンさんやマギーさん。そして、『龍の民』を代表してってことで、ヴィヴィアンのお母さんのラミアさんが来てくれていた。

 『リベルタス』以上の大一番に打って出るってことで、頑張ってこい、と激励していた。

 

 そしてジャスミンさんからはさらに、主にエルシャあてに、年少部の子たちからのビデオレターを持ってきてくれて……『気を付けていってきてね』なんていうたどたどしいメッセージを聞いて、エルシャが泣きそうになっていた。

 

 そして、見送り勢の中で一番ビッグネームだったのは……まさかのフル・フロンタルだ。

 地球連邦との和解後、ネオ・ジオンの首相という立ち位置になったらしい彼は、『同行はできないが武運を祈っている』『不在の間、地球とコロニー、両方の守りは任せておけ』と、頼もしいことを言ってくれていた。

 

 他にも、フロンタルが連れてきた部下たち……かつては戦場で本気で憎みあい、殺し合った間柄の面々もいただろうに、それを乗り越えて純粋に『地球艦隊・天駆』の面々を激励しているのを見たときは……何というか、『人って本当に分かり合えるんだな』と思ってしまった。

 

 こんだけ色々な人の希望を背負って、僕らは旅立つことになるんだな……と思うと、緊張が結構……いやまあ、やることは変わらないんだから、今更ではあるけどもさ……。

 

 彼らの期待を裏切らないように、絶対に勝たなきゃな、って思った。

 

 

【◇月▼日】

 

 いつものように、2つの世界を往復して、物資輸送その他をしていた時のこと。

 

 『サイデリアル』本社にいた僕とミレーネル、そしてココとミランダは……その日、『緊急の会議があるので今すぐ来てください』って言われて呼び出された。

 

 一体なんだろう、と思いつつ、大会議室に入ると……その瞬間鳴り響く、盛大な拍手の音。

 

 部屋に一歩入ると、大勢の社員達が拍手をしていて……いくつも並べられたテーブルの上に、豪華な料理が並んでいた。どう見ても会議なんかじゃなくて、何かのパーティーである。

 

 ふと見ると、部屋の前の方……プロジェクターで会議資料を投影して映し出したりするそこに、なんか垂れ幕みたいなのが張ってあって……そこには、『壮行式』の文字が。

 

 そう、『壮行式』である。サプライズパーティーならぬ、サプライズ壮行式である。

 『地球を救うために銀河の果てまで戦いに行く会長に乾杯!』ってな感じで、ある程度厳かにしつつも、とにかく湿っぽくならないように、笑って励まして送り出すような感じで、社員達が僕らに内緒で企画してくれていたのだ。役員から事務員まで、一丸となって

 

 今言った通り、びっくりさせられたけど……嬉しかった。

 僕もミレーネルも……そして、テストパイロットとして雇用しているミランダとココも、それぞれ一言ずつ挨拶させられて(ミランダが緊張でがちがちになって卒倒しそうになってた)。

 

 料理はおいしいし、社員の皆はかわるがわる激励に来てくれるし。

 役員から掃除のおばちゃんまで、分け隔てなく。見事なまでに無礼講のパーティーだ。

 

 役員や秘書課の皆からは、『今日の分の仕事はもう終わらせておきましたから!』って、前もって逃げ道も塞がれてたしね、いい意味で。

 

 しかも、さらなるサプライズとして、なんとその会場にミランダのご家族が呼ばれてて……無粋ってもんだろうから、詳細に描写したりとかは避けるけど……感動の再会だった、とだけ。

 

 今現在、『始祖連合国』は、ノーマ差別なんてしてる場合じゃないほどに大変なことになっているっていうのは、周知のとおりだ。

 『サイデリアル』は、そのうちの1つの国で、復興支援兼ビジネスとしていろいろやってるわけなんだが……その一環として、現地企業のM&Aを進めている。

 

 企業経営が悪化してたちまち倒産していく企業がそこら中に転がってるからな、あの国……ほとんど捨て値で買い叩けるんだよ。

 

 当然、それにともなって失業者も溢れているので……そのへんで暇してる、労働力になる人の雇用も作りつつ、現地進出進めてるんだよね。

 就業経験あるからノウハウもわかってる、しかし会社がつぶれて仕事がなく、働き口を喉から手が出るほど欲しがっている人がそこら中にいるから、すぐに人集められて、コスパもいいのだ。

 

 ……高度経済成長期以降の、外国に進出する日本企業ってこんな感じだったのかな?

 

 で、その中核として機能させている会社の1つの話なんだが。

 

 その会社は、倒産する前に買収したので、立て直しは楽だったし、買収前から働いている人達をそのまま雇用してる。

 

 その会社の社員の1人が、ミランダのお父さんであり、彼女の生家である『キャンベル家』の大黒柱その人だったのだ。わー偶然(棒読み)。

 

 しかも、わが社は福利厚生の一環として、各家庭への援助制度みたいなものも完備してある。

 配偶者の有無や子供の人数に応じて、一時的なものも含めて色々手当がついたり、保養所や社販なんかを利用できたり、あとはフレックスタイムや特別休暇制度なんかも、色々と。

 

 それらを上手く使えば、今のこの、国そのものがガタガタな状態でも、将来への不安もなく、ある程度ゆとりをもって日々の生活を送れるはずだ。

 

 なお、これらはさっきの『偶然(棒読み)』とは違い、ほんとに普段から、全ての社員に対して実施している制度である。特別扱いとかじゃ全然ない。

 社員を大事にしてこそ会社は強く、大きくなれるんだよ。サイデリアルはホワイト企業です。

 

 国家存亡すら危ぶまれるレベルで大荒れの社会情勢の中、危うく一家路頭に迷うところだったところを救ってくれたってことで、キャンベルさん一家にはめっちゃ感謝された。

 そして、そんな風にして家族を救ってくれていたばかりか、こうして再会させてくれたってことで……ミランダにもめっちゃ感謝された。もう2度と会えないと思ってたそうだから。

 

 うんうん、よかったよかった。

 サプライズパーティーの中のさらにサプライズとして、一応当事者であるはずの僕にも内緒で呼ばれて再会、ってなったもんだから、びっくりしたけどね……。

 

 まあそんな感じで、いろんな意味で騒がしく、そしてその勢いで元気になる『壮行式』だった。

 

 こんだけ盛大に応援されちゃ、何が何でも地球救うしかないな、うん! 頑張ろう!

 

 

 

追記

 

 ミランダがらみの利権やらなにやらは、どっちかっていうとえこひいきみたいなことになるっていう自覚あったから、必要なら僕のポケットマネーで買いそろえるつもりだったんだけど、見事に会社そのものの事業の中に組み込まれた形になった。

 

 役員の皆曰く、『ミランダちゃんは会長だけでなく、もう社員皆にとって家族みたいなもんですから』とのこと。

 会社全体の公私混同……いや、もうここまでくると、規模的に立派にきちんと1つの方針だといえなくもない……のかも?

 

 なお、この話をしている最中ずっと、ご家族、とくにご両親が『ミランダにこんなに良くしてくれる人達ができて……』って感激して泣いていた。

 

 国の法律によって泣く泣く分かれることになった上に、ミランダが『ノーマ』だっていうこともあって、つらい思いをしてるんじゃないか、ちゃんとご飯は食べられてるのか……今までずっと、色々と心配していたんだそうだ。

 ……そりゃそうだよな……あの国の、ノーマに対する扱いを知ってれば……なあ。

 

 ……しかし、ミランダのご家族……娘がそうだったからか、ノーマに対する差別とか偏見、全然ないみたいだな。加えて、『始祖連合国』そのものへの執着とか愛国心みたいなのも薄そう。

 これなら……例えばの話だけど、『始祖連合国』の外に引っ越しても普通にやっていけるんじゃないだろうか。

 

 ……適当な国の、市民権とか永住権的なものをプレゼントしたら喜んでくれるかな?

 もちろん、彼らがそれを望むならだけど。

 

 ミランダが家族と引き離されることになったのは、『始祖連合国』の、ノーマは発見次第逮捕して隔離・追放するっていう法律がもともとの原因なわけだ。

 けど、国籍ごとあの国を出れば、『始祖連合国』の法律は適用されなくなる。ノーマ関連の法律も何も関係なくなる。

 

 ……つまりはそういうことだ。

 

 

 

 

 

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