第72話 Voyage
【◇月◆日】
宇宙戦艦ヤマト(旗艦)
ラー・カイラム
ネェル・アーガマ
トゥアハー・デ・ダナン
真ゲッタードラゴン
ナデシコC
プトレマイオス2改
エターナル
ソーラーストレーガー
『地球艦隊・天駆』、合計9隻。
本日、滞りなく出港することに成功した。
出発直前、性懲りもなくガミラスの連中が現れ、ヤマトを狙ってきたものの……それを事前に予測していた、ネオ・ジオンと地球連邦軍の混成艦隊が僕らを援護してくれたため、妨害されることなく、パラレルボソンジャンプは実行できた。
ゲッター線に皆の『新西暦世界』への思いを集め、それを次元力で増幅しつつ、『リヴァイヴ・セル』で翻訳、演算ユニットに転送。
同時に、『ヘリオース』の力で次元震を起こして時空の壁を揺らし……カウントダウンが0になったところで、ボソンジャンプを実行。
9隻全て揃って、パラレルボソンジャンプによって次元の壁を越え……数秒後には、周囲の景色が一変していた。
ガミラスの艦隊も、地球連邦軍とネオ・ジオンの艦隊もどこにもなく……代わりに、上下左右前後、どこまでも続く星空が広がっていた。
ヤマトからもたらされた観測結果によると、現在地は……ええと、正確な名称とかアレは忘れたけど、『天の川銀河』と『大マゼラン銀河』の中間地点近く、とのこと。
『天の川銀河』ってのが、地球が所属する銀河系の名で……『大マゼラン銀河』は、言わずもがなだが、『イスカンダル』がある銀河系の名である。
つまり、僕らは無事、『新西暦世界』に帰ってくることができた……ということだ。
ヤマトの面々には実に4か月ぶり、僕にとってはさらに長く、2年以上ぶりの帰還である。
……まあ、宇宙のど真ん中で何もない空間にだから、感覚的には全然『帰ってきた』なんてそれはないんだけども。
やはりというか、実際にやってみるまでは『本当に帰れるんだろうか』って、皆大なり小なり思ってはいたわけだが、こうして肝心要の『パラレルボソンジャンプ』が成功したことで、皆の士気も一気に上がったように見えた。
ここからいよいよ、イスカンダルへの旅の始まり、というわけだ。
さっき聞いた通り、ここは両銀河の中間地点であり……単純計算で、イスカンダルまでは、16万8千光年の半分だから……8万4千光年くらいか?
そしてこれもさっき言っていたけど、ヤマトのスケジュール的に見て、既に当初の予定を4か月ロスしている。
当初、1年でイスカンダルに行って帰って……往復33万6千光年を行く予定だったことを考えると、致命的どころじゃないロスだと思えるが、その分の遅れはカバーできる見通しだという。
ヤマトの出港当初にはなかった、ボソンジャンプをはじめとする様々なテクノロジーを有効利用すれば、1回あたりのワープの距離をぐんと伸ばしたり、その他にも色々と方法はあるそうだ。
詳細なスケジュールは今調整・検討中だそうだけど……真田副長や航海長達を信じて待たせてもらおう。
追記
新西暦世界に戻ってきたということで……一時的に行動を共にしていたメルダとは、ここで別れることになった。
彼女はこの後ガミラスに戻り、ゲール提督(宇宙世紀世界でしつこかったガミラスの奴)の横暴その他について告発するつもりだとのこと。
彼女にとっては、己の正義感にのっとった行動であり、同時に上官の敵討ちでもある。頑張れ。
愛機である『ツヴァルケ』に乗り、ヤマトを出立していく彼女を、皆で見送った。
次に会う時は敵同士かもしれない……と思うと、なんだか寂しいし、ちょっと辛いな。願わくば……そんな時が来ないでほしいもんである。
皆と一緒に楽しくおしゃべりして、スイーツなんかを堪能して笑っている彼女の顔を思い出すと……戦場で会って戦うことなんて、考えたくもなくなるよ。
誰も口には出さなかったけど、多分皆、同じように考えていたと思う。
【◇月%日】
今のところ、旅程はすこぶる順調に進んでいる。
進み始めて早々に真田副長から通達があったんだけど、ヤマトの『自動航法システム』とやらを使い、スケジュールの修正に成功したそうだ。
1日もたたないうちによくもまあ……よっぽど高性能というか、優秀なシステムなんだな。いやもちろん、副長や航海長達も頑張ったんだろうけど。
聞いた話だと、事前に波動コアと一緒にイスカンダルから届けられてあった、イスカンダルへの地図をインプットしてあって、そのデータと、周囲の環境やら何やらの情報をもとに、最善の航路をリアルタイムで判断するとかなんとか……すごい技術もあったもんだ。
なので、基本的には航路・予定その他の決定はヤマトに一任し、他8隻はそれに従ってついていっている……という感じである。
普段は、通常の宇宙空間を9隻揃って飛んでいく。
ある程度進んだら、『ワープ』によって一気に長距離を跳躍し……それが終わったら、また普通に宇宙空間を飛んでいく……という繰り返し。
ワープを行う場所やタイミングは、これもヤマトが決定し、指示する。自動航法システムを参考に、ワープを行うのに最適な場所やタイミングを計算して決定しているんだそうだ。
また、ワープが終わるたびにきちんと各艦の状況を点検し、問題等が発生していないかどうかを確認しつつ進む、という形になっている。
ワープ自体にもかなり大きなエネルギーが必要だし、艦への負担もあるから、跳んで、休んで、跳んで、休んで……を繰り返して進むわけだな。
とまあ、簡単にまとめると、進み方は全部ヤマトの方で決めて指示してくれるので……ぶっちゃけ僕らは、周囲に敵影やら何やらがないか警戒しつつ、それについていく形なのだ。
気を抜いていいわけじゃないのはわかってるが、割とやることは多くなく、自由に気楽にできる旅路なのである。
特にこの『ソーラーストレーガー』の場合、艦の制御を限界まで機械で自動化してるから、人間がやることってあんまり多くないんだよな。その気になれば1人で動かせる艦だし。
基本僕は艦橋にいるんだけど、色々な用事でそこを離れることも多い。食事やトイレはもちろん、日課のトレーニングなんかも時間をとってきちんとやってるし……息抜きとかも。
その気になれば、手元にあるタブレットその他で艦の状況はリアルタイムで知れるから、極端な話、部屋でくつろぎながらそのへんをモニタリングすることもできるんだけど……さすがに何かあったときに即座に動くかもしれないことを考えると、それはまずいよな。
とはいえ、今言った通り割と緩く過ごしてるし……同じ艦に乗っている、舞人社長達やメイルライダーの皆とおしゃべりしたりすることも多い。ドックに行けば勇者特急隊の皆もいる。
さすがに他の艦にしょっちゅう行ったりするほどフットワーク軽くはできないけど、通信一本ですぐつながるから、おしゃべりなんかは割としてるし。
なので、果てない長い旅路ではあるものの……さほどストレスをため込むこともなく、今現在は順調そのものといっていい現状なわけだ。
嬉しいことに、戦闘も全然起こらないしね。
ガミラスの勢力圏内だって聞いてたから、発見されて襲撃食らう可能性も考えてたんだけど……まあ考えてみたら、この広い宇宙でそうそう頻繁にエンカウントするとも考えにくいか。
いくら連中の軍事力が強大でも、常に宇宙全体をカバーできるわけもないし。
けど逆に言えば、こちらをあらかじめ捕捉、ないし航路を予測しておいて、待ち伏せするような形で襲ってくるような可能性はあるってことだ。
実際、以前ヤマトはそういう形でガミラスの襲撃を受けたことがあるらしい。
その時は、『波動砲』を上手く使った沖田艦長の作戦と、ちょうどこの世界に現れた刹那やティエリアの協力もあって凌げたらしいが……さすがに宇宙での戦いとなると、向こうには一日の長があると考えた方がいいのかもしれない。油断は、できないなやっぱ。
常在戦場、とまでは言わないけど……過度に気を張りすぎず、かといって気を抜きすぎもせず、いつ何が起こってもすぐ動けるようにしつつのんびりゆったり過ごす……難しそうだな逆に。
【◇月&日】
今日は、進路上にあったとある無人の惑星で、水やその他の資源の補給をすることに。
もちろん、地球を出発する時に、物資は大量に積み込んで用意してあるんだけど……少しでも節約しつつ。備蓄を確保しておくために、こういう機会にはきちんと補充することになっている。
補充するのは、さっき言った通り、水や……色々な『有機物』を、である。
さて、ヤマトには、『O.M.C.S』という名の食料供給システムが搭載されている。
略さずに言うと、『Organic Material Cycle System』……だったはず。
様々な有機物を分解・再構築することで、食料や飲料水を作り出すことができるシステムであり、これのおかげでヤマトの乗組員たちは、毎日おいしい食事をとって英気を養うことができるという、長い旅路を支えてくれる重要な設備なのだそうだ。
ただし、当たり前だが、いかに優秀なシステムとはいえ、無から有を生み出すわけではない。
稼働させるには、きちんと材料が必要になる。
『Organic』の名の通り、原料はあらゆる『有機物』である。有機物なら割と何でもいいらしく……色々なものを突っ込んで分解し、食料に生まれ変わらせることができる。そのまま食べると毒になるようなものでも、消費期限を過ぎて食べられなくなった保存食でも。
限られた物資で生き抜いていかなければならない、イスカンダルへの旅路の中で、わずかな物資も決して無駄にはしないという方針がよく表れたシステムだともいえそうだ。
その、原料となる『有機物』を、何でもいいから補充するのも、こういうちょうどいい惑星が見つかった時に行う、重要な作業なのだそうだ。
改修班がそういったものの採集を行っている間、普段、航海中は出番がない機動兵器パイロットの面々がその周囲を警戒する……という感じに役割分担して、手早く行う。
ところで、さっき僕は『O.M.C.S』について、『ヤマトに搭載されている』と言ったけども……このシステム、搭載されているのは、ヤマトだけじゃない。
僕んとこの『ソーラーストレーガー』にも、同じようなシステムは搭載されている。
なので、ヤマトと同様に、『ソーラーストレーガー』でも有機物の回収は行っている。
それ専用のドローンをあらかじめ作ってあるので、ほぼ全自動で。
そして、水と有機物を大量に確保したら……それを、『ガーディム』由来の食品超長期保存技術で加工を行う。
そうすると、いつだったか『バースカル』に積んであった、どう見ても食品にはみえない、金属のブロック、あるいはインゴットのような状態に加工が完成する。
この状態にすると、腐敗も劣化も何もしないので、超が5、6個付くほど長期にわたっての保管が可能なのだ。温度・湿度その他の繊細な管理も特に必要ないし、しかも体積的にも超圧縮されているので、一度に大量に補充して保管できる。
再度機械にかけてこれを分解すれば、きちんと食べられる食料の状態に戻る。
ただ欠点として、ガーディムの技術で食料に戻すと、レパートリーの問題であんまりおいしくないんだけど、そこで猛威を振るうのが、ウォルフガング印の『グルメキッチン5252』といった自動調理システムの数々である。
ブロック状の保存食(有機物)を分解して再構築、そしておいしく調理することで……いつでも美味しい料理を食べられるようになっている。
それらのシステムが、このストレスのない快適な旅路を支えてくれているというわけだ。
……ということをあらかじめきちんと皆には話してあるので、この『有機物その他回収』に必要な作業に関しては、皆、きちんと進んで真面目に手伝ってくれています。
というかぶっちゃけ、周囲の見回りとかは、普段出番がない人たちが気分転換代わりに進んで請け負ってくれている感じもするしね。
ああちなみに、このシステム、ブロック状にするだけじゃなくて、ブロックほどじゃないけど長期保存が可能な、色々な保存食にすることも可能だ(パック飯とか缶詰とか)。
そうして作って、リクエストに応じて他の各艦……こういったシステムを搭載していない艦におすそ分けしたりもしている。レパートリーはかなり広くて色々できるから、喜んでもらえてるよ。
というか僕ら、なんか地球にいた頃と同じようなこと――物資その他の調達・補充担当――やってるな……。
各艦からリクエストもらって、それに応じて『有機物ブロック』を材料に加工やら調理を行って……必要に応じて缶詰とかに再加工して、他の艦に届けて……ってな感じで。
普通の食料はもちろん、ケーキなんかのお菓子類や、一部の人達が愛飲してやまない酒類まで……なまじ作れるもんだから、便利に使われている感じである。
いやまあ、さっきも言ったように喜んでもらえてるわけだから、いいんだけどね?
それと、うちの艦は保存食や、特殊技術で加工して作った食料以外にも、生鮮食品も結構な量を用意して食べることができる。
艦内に水耕栽培その他のプラントがあるので……というかこれも例によって、ウォルフガング印のマシンなわけだが……やだ、うちの艦、あの人にお世話になりすぎ?
そのおかげで、割と気軽に生野菜とか手に入るし……それを使って、サリーちゃんやエルシャが美味しい手料理を作ってくれるので、それらもすこぶる好評である。
何を隠そう、僕も割とご相伴にあずかってます。
個人的に一番のお気に入りは、サリーちゃん特製のオムライスである。
チキンライスの上にオムレツのっけてすっと包丁を走らせると、ふわっと広がって卵の雪崩が……ぶわっと凶悪にいい匂いが……いわゆる『たんぽぽオムライス』なんだよね。
バイト先で覚えたらしいんだけど、見た目が見事なのはもちろん、味も超美味しいの。
そして、これらを目当てに、時々他の艦から暇な人達が小型艇で遊びに来て、食堂でご飯食べていったり、なんてことも……
……ホントにうちの艦、なんていうか……娯楽施設じみた扱いをされてきているような気がする。皆が宇宙の船旅に慣れだして、過度に緊張せず、楽しく気楽に過ごせるようになってきてるから、余計に。
……いやまあ、何度も言うようにかまわないんだけどね? 喜んでもらえてるなら、僕としてもうれしいし(3回目)。
……こんだけ快適に楽しく宇宙の旅を楽しんでもらえるなら……地球に戻ったら、このノウハウを生かして、宇宙旅行産業でも今度は始めてみようか? なんて思ったり。
いやむしろ、並行世界旅行……はさすがに……ううむ。
……というか今日の日記、なんか途中から『ソーラーストレーガー』の台所事情自慢みたいになってるな……
……これ書いてるのが深夜で、夜食が欲しくなるくらいには小腹が減っているという現状が原因だろうか?
……よし、今から何か食べに行こう。