スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第75話 改めて、よろしく

 

 

「……以上が、私が思い出したことの全てです」

 

「なるほど。説明に感謝する」

 

 精神干渉能力による攻撃から、無事全員が復帰した『地球艦隊・天駆』。

 

 一通りの後処理を終えた後、各艦とモニターで通信がつながっている中で……今回起こったことの詳細と、その裏側に隠れていた、とある真実について、説明と情報共有がなされていた。

 

 そしてその中には、ミレーネルが思い出した記憶についても含まれていた。

 

 彼女がかつて、このヤマトを拿捕するために送り込まれたガミラスの工作員だったという事実が、他ならぬ彼女自身の口から語られた時には、さすがにほとんど全員が驚いていたように見えた。

 それでも、途中で口を挟んだりすることはせず、ミツルを含め、全員がその話を最後まで聞く姿勢をとっていた。

 

「すでに各艦の状況のチェックは済んでいるのだったな?」

 

「はい。侵入者が何か行動を起こす前に、古代や叢雲といった無事だった面々が駆け付けたようです。艦の各部に特に破損等は見受けられませんので、今後の航行予定に差し障りは生じないかと」

 

「波動エンジン、および波動コアについても簡易的にチェックを行いましたが、問題は発生しておりませんでした。ワープ航法も波動砲も問題なく使用可能です」

 

 真田副長と新見情報長からの報告をそれぞれ聞き、うむ、と納得したようにうなずく沖田艦長。

 

「ならば今後の予定に変更はない。同時に、各艦警戒態勢に移れ。……敵の作戦が失敗した以上、そう時間をおかずに後詰めが来る可能性が高い。……だがその前に、確認しておかなければならないことがある」

 

 そう言って、沖田艦長はミレーネルに向き直る。

 

 いや、沖田艦長だけではない。モニター越しに、他の艦に乗っている者達からも視線が集中しているのを、ミレーネルは感じ取っていた。

 

 それでも、これは予想できていた事態。

 ミレーネルは目をそらしたり伏せたりすることなく、正面から見つめ返し、口元を一文字に引き締めて次の言葉を待った。

 

「ミレーネル・リンケ女史。あなたに一つ確認しておきたい……あなたは今後、どうする心づもりであるかを」

 

「……はい。私は……かなうなら、このまま引き続き『地球艦隊・天駆』の一員として、皆さんとともに、イスカンダルへの旅路に……ひいてはその先の、地球を救うための戦いのために、協力させていただきたいと考えています」

 

 それを聞いて、部屋の隅にいた伊藤保安部長がわずかにぴくっと反応したようなそぶりを見せたが、その他は黙って彼女の話を聞き続けていた。

 

「その申し出については、大変心強く、またありがたく思う。しかしそれは……あなたのかつての所属である、ガミラスと敵対することと同義だ。あなたが探したがっていた……姉と慕う者とも。それを踏まえた上で、我々に協力していただける、と?」

 

「はい。……もちろん、このような身の上ですので、私の言葉など信じられないかもしれないのはわかっていますし……もし皆さんがそれを受け入れられないのであれば、今回のことで皆さんに危害を加えたことも含め、しかるべき処罰を受ける覚悟もできています」

 

 ですが、と続ける。

 

「決して短くない時間を地球で過ごした者として……あの星はすでに私にとって、故郷と呼んで差し支えないものになっています。それに……銀河規模で侵略戦争を展開し続けるガミラスに、過去の恩だけを理由に盲目的に従い続けることは、多種多様な種族の存在や価値観というものを知った今となっては……口が裂けても、正しい選択とは言えないものだ、とも認識しています」

 

「…………」

 

「ですから、もし私のことをまだ信じていただけるのであれば……どうか、お願いします。私を……皆さんとともに行かせてください」

 

 そう言って頭を下げるミレーネル。

 

 沖田艦長は、しばらくの間黙って考えていた。

 そして、ミレーネル以外にも……その場にいて顛末を見守っていた、ミツルや総司、ナインや古代といった面々の視線も集中する中で、口を開いた。

 

「ミレーネル女史。あなたの覚悟と、異星人でありながら、我らの母なる星……地球に対して、とめどない愛を抱いてくれているその心に、敬意を示す」

 

「……!」

 

「もとよりあなたを疑うつもりなどない。これまでともに戦ってきた者として、その心根が信頼に値するものであることは理解しているつもりだ。……これからも、よろしく頼む」

 

「っ……はい! ありがとうございます!」

 

 その瞬間、部屋の中の……いや、モニター越しに見ていた者達全ての空気が緩み……中にはわかりやすく笑顔を浮かべて喜んでいる者も少なくはなかった。

 その光景はつまり、この沖田艦長の決断を、何一つ不満なく、見ていた者達が受け入れている……すなわち、ミレーネルはすでに、『地球艦隊・天駆』の仲間として認められ、受け入れられているということの証明だった。

 

 ふと、ミレーネルの視線がずれて横を向き……何も言わず、しかしずっと彼女を見守っていた青年……ミツルと目が合う。

 

 何か彼女によくないことが起こりそうだとみれば、すぐさま口を出して助けるつもりでいた彼だが、それも杞憂に終わり……ほっと安堵していたところ。

 ミレーネルと視線が交わされた瞬間……思わずその顔に、喜びの笑みが浮かぶ。

 

 それに対して、ミレーネルもまた……今度こそ、何1つ不安も含みもない、心からの笑顔で返すのだった。

 

 

 

 しかし、ゆっくりとそのことをかみしめて味わう暇もなく、

 

『沖田艦長! 他ノ方モ、至急艦橋ニオ戻リクダサイ! レーダーニ感アリ、ガミラスノ艦隊デス!』

 

「……沖田艦長の予想が当たったな」

 

 放送設備越しのアナライザーの声が響き渡り、全員が一瞬にして表情を引き締める。

 呟くように総司が言い、続ける形で沖田艦長の声が響き渡った。

 

「総員戦闘配置! 航空隊および機動部隊は直ちに出撃準備! ここは今までよりもガミラスの本拠地に近い……相応の規模および戦力の敵が展開していることが予想される。心せよ!」

 

「ミレーネル君、このあたりで展開しているであろうガミラスの軍について、何か情報は?」

 

 真田副長からの問いかけに、ミレーネルは少し考えて、

 

「恐らくですが……記憶を失う前の私の作戦行動時、協力を要請していた相手からすると……エルク・ドメル上級大将の艦隊かと」

 

「上級大将!? おいおい……何かえらい大物が出てきたんじゃないか?」

 

「『宇宙の狼』の名で知られる、ガミラス軍の中でも最高と言われる名将です。……宇宙世紀世界で何度か戦ったゲール提督とは、率直に言って、全てにおいて雲泥の差かと」

 

「先程の特殊極まる作戦と言い、敵も本腰を入れてきたということか……」

 

 ミレーネルの言葉に戦慄する島と古代。

 

 しかしそれでも、彼ら、彼女らの歩みに迷いはなく、迫りくる戦いに備えて、自らの乗る機体へと足を急がせるのだった。

 

「ミレーネル、君はこっち」

 

「えっ、ミツル? こっちって何―――」

 

 と、ミツルがミレーネルの手を取った瞬間、一瞬だけ緑色の光が2人を包んだかと思うと……その場から一瞬にして2人が消え去った。

 

「……え、何ですか今の?」

 

「ああ、そういやミツルが最近、次元力を使った個人単位での転移が使えるようになったとか言ってたっけな……まだできるのミツルだけらしいけど」

 

「そんなことが可能なのか!? いやでもまあ、北辰の奴も『ボソンジャンプ』で似たようなことはやってたか……まあいい、迅速に動けるならそれにこしたことはない。俺達も急ぐぞ!」

 

 しばしの間、あっけにとられていたトビアやキンケドゥを総司が急かす。

 

 そして、一瞬にして『ソーラーストレーガー』に場所を移したミツル達は、こちらもそれぞれ準備に移る。ミレーネルから情報がもたらされた、これまでにない強敵に立ち向かうために。

 

 ……しかしこの時、彼らはまだ知らなかった。

 この戦いで彼らを待ち受ける敵は……ガミラスだけではなかったことに。

 

 

 ☆☆☆

 

 

【◇月+日】

 

 突然起こった超広範囲の精神波攻撃に始まり、2人のミレーネル。

 そして、戻ってきた記憶と……明らかになった真実。

 

 ……これまで何も起こらず平和だった反動か、ってくらいに、色々なことが一気に起こったり、明らかになったりした。

 

 まあ、結果としてミレーネルの記憶が戻って、そのうえで改めて僕らの仲間になってくれたことについては……本当に良かったと思うけど。

 

 けど、それだけじゃなくて……さらに続けてトラブルが襲ってきたんだもんなあ。

 

 『後詰め』として襲撃してきたガミラスの艦隊は、ミレーネルの情報によれば、ガミラス軍の『上級大将』とかいう人が率いる精鋭部隊だとのこと。

 指揮官としても実力も、兵士達の錬度も、宇宙世紀世界で戦った連中とはまるで別格。

 

 実際、そのあとすぐに機動部隊は出撃して相手をしたわけだけど……確かに、強かった。

 

 これまでの敵は、単に火力と数に任せた戦術しか使ってこなかった。

 あるいは使っても、こちらのデータにない特殊な兵器で不意を突いてきたりとか、そういう方向の戦術にとどまっていた。

 

 しかし、その指揮官……『エルク・ドメル上級大将』とやらは、時に火力と装甲を生かして大胆に攻め、時に巧みに陣形を操ってこちらを誘い込み……気づいたら後ろに敵艦や敵機が回り込んでいたり、一気に包囲が狭まってきて囲まれてしまったり、なんてこともあった。

 

 その時は、空間転移が可能なヴィルキスや、装甲の強靭さや防壁で強引に突破可能な、マジンガーやエヴァンゲリオンだったからよかったけど……正直、肝が冷える場面だった。

 

 こちらの方が、機動兵器ってことで機動力は大きくあるはずなのに、それすら利用して手玉に取ろうとしてくるんだからな……。

 戦慄すると同時に感動すらしてしまった。超一流の軍人って、ここまでのことができるのかと。

 

 しかし、戦いの途中で……なぜかその上級大将の艦隊は、いきなり切り上げて撤退していった。

 理由はわからない。いよいよここから本番か、ってタイミングで……何でだろう? 今日はただ単に様子見だけにとどめるつもりだったとか?

 

 まあそんなわけで、ガミラスとの戦いはそこまでだったんだけど……問題はそのあとだ。

 

 ガミラスの撤退とほぼ同時に、入れ違いになるような形で……今度はガーディムが来た。

 

 例によってジェイミーが指揮官。記憶は……うん、都合がいい感じに消されてるな。前回あんだけみじめに惨敗しておいて、それを丸っと忘れてまたあの高飛車な感じで……なんか、見ていてもはや逆に気の毒というか、痛々しいんだが。

 そのまま、めっちゃ偉そうなこと言いつつ、部下とか無人機に任せて自分は撤退していったし。

 

 誰だよこんな恥ずかしい事させてる彼女の上司は。

 

 ただ今回は、前回と違う点が1つ。

 ジェイミーの乗る『マーダヴァ』の隣に、よく似たオレンジ色の機体が飛んでいて……むしろ、問題だったのはそれに乗っていたパイロットの方だった。

 

 なんと、それには……千歳さんが乗っていたのだ。

 

 西暦世界で、タツさんの家から自分探しの旅(語弊注意)に出て以降、その行方を知ることができなかった彼女が……どういうわけか、ガーディムに組していたのである。

 

 しかもそのまま、『マーダヴァ・デグ』というらしいその機体を駆って、こちらに攻撃を加えてきたんだから……もう何が何だか。

 

 幸いというか、その……千歳さんの操縦テク自体はそこまででもなかったので、危なくなるような場面はなくて……総司さんがヴァングネクスで翻弄しつつ、説得していた。

 千歳さん、自分でペーパーだって言ってたからな。機動兵器の操縦。

 

 『マーダヴァ・デグ』とやらの機体性能は、『マーダヴァ』よりも上だったようだけど……今の総司さんとナインが乗る『ヴァングネクス』だって負けてない。3つの世界の技術に加え、出向直前に僕のところでも協力させてもらって大幅に性能アップしたからな。

 もし、もう少し前……改良前の状態だったら、性能差で苦戦したかもしれないが。

 

 最終的には撃退に成功したものの、千歳さんは逃亡した。

 

 その際彼女は……ナインが傍受していた通信で、気になることを言っていた。

 

 

『ごめんなさい、総司さん……私は、あなたたちを倒して、ヤマトを手に入れなければならないの……地球を救うために』

『総司さん、ナイン、ミツル君、騙されないで……イスカンダルは……』

 

 

 ……はてさて、これは一体何を意味しているのやら……?

 

 色々考察したいところだけど……正直今日はもう疲れた。明日以降に回そう。

 おやすみ。

 

 

 

 

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