スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第76話 イスカンダルのユリーシャ

 

【◇月>日】

 

 千歳さんのことは、また次に遭遇した時に考える、ってことになったので……ひとまず今は、今後のイスカンダルへの道筋について。

 

 今日行われたミーティングで、沖田艦長達から、今後の旅程について説明があった。

 

 この先にあるバラン星という場所に、こないだ使ったのと同じような亜空間ゲートがある。

 

 そして、バラン星にあるそれは、いわゆるハブステーションのような役割を持っているらしく……大マゼラン銀河を含む、様々な場所へ通じているんだとか。

 言ってみれば、巨大な乗換駅みたいなもんか……ともあれ、そこからなら直通で一気に『大マゼラン銀河』に行けるわけだ。

 

 だいぶロスしたと思っていた旅程の問題を一気に解決しておつりがくる、非常にありがたい情報である。

 

 これも例の『自動航法システム』からもたらされたものなんだろうか、と思ってたんだけど……そう聞くより先に、真田副長から、『この情報を提供してくれた協力者を紹介する』と。

 それと同時に、部屋に入ってきたのは……さらさらの金髪のすっごい美人な女の人だった。

 

 名前は、ユリーシャさん。なんと、イスカンダルから来た使者の人なのだという。

 彼女は今まで、自動航法システムの中で眠っていたそうなんだけど(さりげにブラックなカミングアウトがされた気がする)……こないだのWミレーネルの騒ぎで目を覚ましたとのこと。

 

 というかあの時、岬准尉に取り憑いて体を借りていたそうで……え、何、イスカンダル人ってそんな幽霊みたいなことできんの? ……いや、うちの秘書も似たようなことならできるか。

 

 ……まあそのへんの事情はともかく……そのユリーシャさんのおかげで、『地球艦隊・天駆』の今後の旅程はだいぶ短縮できそうなわけだ。

 そのことについて、沖田艦長がお礼を言ってたんだけど、ユリーシャさんは……

 

『言葉ではなく、行動で』

 

 なんか、高飛車……とまでは言わないけど、どこかそっけない感じでそう返すだけだった。

 

 ……総司さんやナインも言ってたけど、なんかこないだ、岬さんに取り憑いてた時は、もっとこう……不思議ちゃん的なふわふわした雰囲気で喋ってた気がするんだけど……

 

 古代戦術長達の見解だと、『公人として接するときの態度』なんだろう、って話だ。

 いわゆる、お仕事モードってことか? ううむ、いまいちつかみどころのない人だ……どっちが素だろ?

 

 まあ、それは今はいいとして……そんなわけで、今後の予定が決まり、各艦に通達されたわけである。

 

 ただ、そのバラン星、なぜかちょうど今、ガミラスの艦隊がものすごい数集まってきているそうで……その数、なんと1万隻を超えているとか。

 ……どこかの銀河系に総力戦でカチコミでもかけに行くんだろうか、とか思ってしまいそうな……いや、それにしたってとんでもない数である。

 

 いくらガミラスの国力が強大だからって、これが簡単に動かせる数であるとは思えない。

 

 というか、ひとところにそんな数を集めたって……逆に動きづらくて邪魔になっちゃうんじゃないかな。宇宙って、前後左右上下が攻撃範囲みたいなもんだし……あんまり密集しすぎると、数を生かせなくて逆に戦いの時に不利になるそうだし。

 

 沖田艦長と真田副長の見解では、観艦式か何かの式典である可能性がある、とのこと。

 

 ……まあ、それにしたってこんだけの数が集まっているってのは、どっちみちこっちにとっては凶報でしかない…………と、僕を含む多くのクルーは思っていた。

 

 しかし、他ならぬ沖田艦長はそう思っていない……むしろこれを、好機であると思っているらしい。

 どうやら何か考えがある様子。……人任せで悪いが、これはちょっと期待できそうである。

 

 逆境の中で『私に考えがある』的なセリフは勝ちフラグ……なんてメタなことはおいといても、沖田艦長は強がりやハッタリは言わない人だ。こうなったら『地球艦隊・天駆』一同、ついていくまでである。

 

 

 

 さて、そんな感じでミーティング自体は終わったのだが……その後、ちょっと変なことがありまして。

 

 あ、話が前後するんだけど……このミーティングに際して、なぜか僕、ヤマトに呼ばれてたんだよね。

 いつもなら『ソーラーストレーガー』から通信で参加させてもらうところなのに、『直接来てほしい』って真田副長から直前で通信が入ってさ。

 

 それはいいけど、何で? って理由を聞いたら、『君に会いたがっている人がいる』とのこと。

 

 で、その『会いたがっている人』っていうのが……ほかならぬ、ユリーシャさんだったのだ。

 

 彼女はなぜか人払いをし、適当な誰もいない会議室で僕と2人きりになった。

 ミレーネルも同席はダメだって言われたので、まあ害意があるわけじゃないだろうと思って仕方なく言う通りにしたんだけど……そこで、何があったかというと、だ。

 

 これがね、他でもない、さっき言った『変なこと』なわけなんだけど……

 

 

 

 ……なんか、2人きりになるやいなや……目の前でユリーシャさんが跪いた。

 そして、僕の手を取って……手の甲にキスしてきた。

 

 

 

 ……待ってくれ、まるで意味が分からない。

 

 さっき見せた淡泊な態度とも、こないだの不思議ちゃんな態度とも、どちらとも違う。

 まるで……目上の者(それもかなり身分に開きがある感じ)に対する、敬意を……いやむしろ、それを通り越して平伏とか忠誠の意思を表したかのような、そんな態度だった。

 挙動そのものが洗練されていて優雅に見える分、余計にそんな風に感じてしまった。

 

 ちょっと前に見た映画で、マフィアのゴッドファーザーと腹心の部下が同じようなことやってた気がするんですけど……。

 

 しかもよく見るとユリーシャさん、かすかに震えてるようにすら見えて……ごめん、ほんとそろそろ説明して!? いったい何なの!? ここまでくると怖いのはむしろこっちだよ!

 

 しかしながら、ユリーシャさんからの説明は……説明になってなかった。

 

 

『やはり、あなたはわからないのですね……ですが確かに、あなたは『力』を持っています。遠い昔に、歴史ごと失われたはずの……禁断の力を』

 

『心より申し訳なく思いますが……私の口から、その意味を話すことはできません。私には資格がない……全ての真実は、わが故郷イスカンダルにて、わが姉スターシャの口よりお聞きください』

 

『そしてどうか、どうかこのまま、彼らのことを見守っていてあげてください。彼らが世界を……いえ、この宇宙を救うことができる者かどうか……それを見定めることもまた、私の役目……』

 

 

 はい、この通り。

 

 沖田艦長や真田副長にも、お仕事モードの淡泊な口調と態度だった彼女が、平伏しながらきちんとした敬語で僕には話してくれた。

 しかし、内容の方は……肝心なことが何一つ明らかになっていないっていうね……

 

 しかし、ここんとこよくこういうことを言われるな……アウラさんといい、アドヴェントといい……僕に一体、どんな力が眠ってるって言うんだよ。

 前々からちょくちょく気にしてた、『死ぬたびに強くなる』あの成長と、何か関係あるのかな……ありそうだな。その先に何が起こるのか……いよいよ気にしなきゃいけない……か?

 

 にしたって、表現が詩的にすぎる……どっかの呪われし放浪者じゃないんだから、もうちょっとわかりやすく話してほしいもんだけど……ああ、怒ってない怒ってない! 怒ってないから、何もしないから震えなくていい! ストップ!

 

 ……とりあえずまあ、彼女が何を心配してるのかわからんけど……僕にどんな力が眠っていたとしても、僕にはそれを変なことに使うつもりはない、と言っておいた。

 

 ただ、彼女が言った『何もせず彼らを見守っていて』ということについては、うなずくわけにはいかない、と返しておいた。

 その『彼ら』ってのはどうやら、『地球艦隊・天駆』のことだったようなので。僕も彼らの仲間の1人だから、一緒に戦うためにこうして旅に同行してるんだし、困ったことになってたりしたら、そりゃ助けるつもりだしね?

 

 それを聞いて、ユリーシャさんは何か言いたげな様子ではあったけど……ひとまず引き下がることにしたようだった。

 立ち上がり、最後まで優雅な動作で、深々と一礼して……僕を残して部屋を後にした。

 

 

 

 ……さっきも書いたが、いよいよ本格的に気にした方がいいのかもしれないな。

 

 一体僕は……何者なんだろうか?

 

 自覚してる限りでは、なんかこう……ネット小説じみた『異世界転生』でこの世界にやってきたみたいな身の上だけど……

 

 そういうのにありがちな『チート能力』的なポジションで、次元力や『ヘリオース』、そして数多の兵器類のデータその他を手にしていて……しかし、それ以上の何か、僕がまだ把握できていないことが隠されている、ってことなのか?

 それも、アウラさんがその扱いに危惧し、アドヴェントがわざわざ励ましてくれて、ユリーシャさんがあんな風に恐れる、何かが。

 

 ユリーシャさんが言っていたことは、ええと……『禁断の力』とか、『歴史ごと失われた』とか……

 ……それってもしかして、『Z』世界準拠の設定の中にあったものなのか? だとすると……

 

 んー……

 

 …………

 

 ………………

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 

 

 ……まあ、いいか。

 

 

 

 

 

 

 

【◇月<日】

 

 バラン星に到着するまでもうちょっとあるので、ミレーネルからガミラスの内部事情を聴く。

 

 まあ、彼女もそこそこ上の地位だったとはいえ、そこまで深くいろいろな事情を知ってるわけじゃないみたいだけど……それでも、今の時点では僕らが知らなかったことを、いくつも聞くことができた。

 

 収容所惑星レプタボーダや、銀河外縁部で小競り合いの続いているというガトランティス……侵略して制圧された『劣等種族』の扱いや、逆に進んで恭順の意を示したものへの扱い……etc

 

 そして、その中でも特に興味を引いたのが……現在の『大ガミラス帝星』は、言うほど余裕がないというか、盤石な状態ではない、ということだった。

 

 たしかに、軍事力という面で圧倒的な強者であるのは間違いない。いくつもの星を侵略し、配下に加えて支配領域を拡大してきた。今もなお、それは続いている。

 

 しかし、あまりにその支配領域を拡大しすぎたおかげで、その占領統治やら何やらについて、手が回らなくなってきているのだそうだ。

 

 加えて、その強大な軍も、常勝無敗、というわけでもない。

 支配領域の拡大に沿って戦力の分散も進んでしまい、そのおかげで、戦線によっては負けが込んでいて、異民族相手の戦で後退せざるを得ない状況になっている個所もあるとかないとか。

 

 行く先々で戦果を挙げているのは、ごく一部……こないだ戦った、ドメル上級大将とやらの率いる『ドメル軍団』くらいのものだという。

 

 まあ、地球でも、国土が広くなりすぎてうまく統治できず、ついには反乱を起こされて滅んだ……なんて国は、歴史上いくつも存在するからな。

 ましてそれが、宇宙規模となってるわけなんだから……そりゃ大変だろう。

 

 しかし、そんな状態になっていながらも、なんだってあちこちに喧嘩売って支配領域を広げ続けるのやら……単なる征服欲か、それとも他に何か目的があるのか……

 

 ミレーネルにもそれはわからないそうだけど、あえて気になることを挙げるとするなら……ガミラスは征服した星や文明に対して、例外なく『イスカンダル主義』を押し付けている。

 それにより、ガミラス人やその支配領域に暮らす人々は、イスカンダルの人間を高貴な者として認識し、敬っているらしい。

 

 地球で言うところの特権階級……貴族みたいなもんなのかと思って聞いたら、むしろもっと上……神のごとく崇拝しているとすらいえるんだとか。……宗教?

 

 そして、ガミラスとイスカンダルには星同士の交流もあり……というか、大ガミラス帝星とイスカンダルは、望遠鏡とかなしに違いの星を見ることができる位置に並んでいる『双子星』らしい。

 

 ……なんか、よくわかんなくなってきた。

 

 ええと、ガミラスは地球……のみならず、宇宙のあちこちを侵略しようとしてて、

 

 イスカンダルは、そのガミラスの侵略で滅びかけてる地球を助けようとしてくれて。

 

 けどそのイスカンダルは、ガミラスから崇拝されていて……侵略した星や民族にも『イスカンダルマジ至高』っていう主義を押し付けていて……

 

 ……不思議というか、複雑な関係性が築かれている気がする……やっぱりよくわからん。

 

 けどもしそれが本当なら、イスカンダルからガミラスに『侵略やめれ』って一言言ってもらえたら、全部解決するんじゃないか、って思ったんだけど……そんな風なことにならずに、長いことガミラスが侵略戦争を続けてるってことは……無理なんだろうな。理由はわからないけど。

 

 ……だめだ、結局何か推理しようとしても、情報が足りなすぎる……今は置いておこう。

 

 イスカンダルに行った時に、そのへんの謎もまとめて明らかになることを期待しようと思う。

 

 

 

 

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