光弾を放ちながら突撃してくる、無人の機動兵器。
『アールヤブ』と呼ばれる名のそれらは、眼前に迫る1機の人型ロボットに、激突することも恐れず突貫していって……次の瞬間、すれ違いざまに両断されて、異空間に散った。
降り抜いた刃を素早く構えなおした『アスクレプス』は、迫ってくる別な敵に向けて、けん制するように光弾を放つ。
背中から伸びているそれは、砲身がまるで蛇のように自在に動いて、その先端の発射口から光弾が吐き出される形になっていて、ほぼ死角なしの稼働・攻撃範囲を発揮していた。
機体そのものの向きはもちろん、手足とは全く別に、阻害されることなく動き、狙いを定めて打ち込んで、命中させる。
それ1発で落とすことはできなかったものの、その一撃で怯んでいる――無人機なので、正確には衝撃で動けなくなっている、という状態だが――ところに素早く接敵し、両腕のブレードでとどめを刺す。その瞬間に見せた加速も、尋常ならざる速さだった。
その様子を、ヤマトから出撃した機動部隊の面々は、自分達も戦いながらも、興味深そうに眼で追っていた。
「なかなかやるもんだな、あの白い機体……見たことねえけど」
「地球連邦軍の機体じゃないってことですか?」
総司がつぶやいた言葉に反応して尋ねるトビア。
総司はそれに、ああ、と答える。
「月面の研究所でも地球でも、あんなモビルスーツは見たことも聞いたこともないな。それどころか、見たこともねえ兵装も積んでるようだし……何だ、あのウネウネ動くビーム砲? まあ、便利そうではあるが……」
『動力系ニモ、既存ノ技術体系トハ違ウ未知ノエネルギーガ使用サレテイルヨウデス』
「……お前はホントにいきなりしゃべるよな」
こちらから話しかけても反応しない、聞きたいことに応えてくれないことも多いこの自機のOSが、また唐突に言葉を発したことに、驚きつつも戦闘の手は緩めない総司。
「俺もトビアも見たことない、総司も知らない……ひょっとしてアレも異世界の機体か? 竜馬、鉄也、刹那、ティエリア、お前達はどうだ?」
キンケドゥがそう尋ねるが、その面々からの返事はどれも同じだった。
「俺の世界にはなかったと思う」
「僕も見たことはないな。もちろん、僕らが知らないだけ、という可能性もなくはないが」
「俺もないな」
刹那、ティエリア、鉄也が順に答えた後、残る竜馬は、
「俺もだ。だが……あの機体、性能や武装はそれなりのモンだが……気付いてるか、鉄也?」
「ああ。……乗っているのは、ほとんど素人に近いようだな」
歴戦のパイロットである彼らは、機体性能そのものはともかくとして、動かしているパイロットは、こう言っては何だが、そこまでの腕ではないことに気付いていた。
駆動が素早く正確であり、またトリッキーな武装や一撃の強力さなどもあって、少々わかりづらくはある。
しかし、動きそのものはかなり単純で直線的。遠距離で射撃してけん制してから、一機に加速して飛び込んで仕留めるといった、有用ではあるが、いわゆる『教科書通り』な戦い方が目立つ。
訓練やシミュレーターで動き『だけ』は熟達しているが、本物の戦場や死線を幾度も経験して洗練された戦士の戦い方ではない、そんな印象だった。
何度か無人機の攻撃に被弾している――それ自体はバリアらしきもので完全に防いでいて無傷だが――のも、戦闘に不慣れであるからだろう。
特に宇宙空間での戦闘は、地球上の重力圏での戦闘とは勝手がかなり違う上、上下左右前後から攻撃が飛んでくるため、それらを見切ってさばかなければ一瞬で落とされることにもなりかねない。そのあたりがわかっていない立ち回りだと、彼らには一目でわかった。
(言っちゃなんだが、機体のスペックをほとんど活かせてねえな……あんだけ急加速・急制動が効くなら、もっと飛びこんでかき回すような戦い方もできるだろうに)
(実力的に明らかに不釣り合いな機体をなぜ持っていて、しかもなぜこんなところで、俺達を助けようとする? パイロットは何者だ?)
竜馬と鉄也は疑問を覚えながらも、今はまずこの鉄火場を乗り切ることが必要だと考えた。
ひとまず疑問は頭の片隅に追いやって、まだいくつも残っている無人機の軍団に向き直り、戦闘に集中する。
戦闘はそのまま終わり、無人機は残らず撃墜に成功。
同時に、去ったと思われたガミラスの戦艦が戻ってきた。
通信で聞こえてきた内容によれば、どうやら先の離脱は不本意な何かトラブルがあった結果であるらしい。『全てこちらの責任だ』と詫びた上で、あらためてヤマトを牽引する形となった。
その際、竜馬達は秘匿回線を開き、ヤマトの艦橋に『あの不明機を拿捕するか』と問い合わせたが、沖田は少し考えた後、その必要はない、と返した。
代わりに、その不明機に向けて、力を貸してくれたことに感謝する旨と、そちらは何者かという問いかけをメッセージで送った。……少しの細工をした上で。
それに対して帰ってきたのは、
『名乗るほどのもんじゃございやせん』
「……何だこれ、ふざけてるのか?」
「江戸っ子なんでしょうか?」
「清水っ子という線もあるぞ」
ディスプレイに表示されたテキストメッセージを見て、憤慨したように言う南部。
それをなだめるのを兼ねて、島と古代が茶化すように言う。
なお、返したミツルに特に意図はない。その場のノリであった。
そして、その後ろで見ていた沖田と真田はというと、
「……こちらから送った日本語のメッセージに、日本語で返してきましたね」
「うむ、それもかなり早くな。少なくとも、言語が通じる文化圏の何者かではあるようだ……土方が言っていた機体と同一である可能性は高いか」
「! 待ってください、追加でメッセージが届いたようです」
と、新見が言ったのに合わせて、その2通目が開封される。
「『あの出入り口、こちらも使わせてもらっても?』……か。ひょっとしてあの機体も、この次元断層で迷ってたんですかね?」
「ということは、こちらに加勢してくれたのは、出入り口の使用料か。随分律儀だな」
「……こちらにこれ以上関わる意図はなさそうですね。沖田艦長、返事はどのように?」
「『もちろん構わない』と頼む。それと、『貴官の度重なる防衛協力に感謝する』とも」
「? はあ……了解しました」
言い方に若干の違和感を覚えつつも、新見はそのように返事を送った。
その後、ヤマトは牽引されながら次元断層を後にする。
後方に見えた次元の裂け目の状態を見る限り、まだしばらくは空いているだろう。
そしてヤマトは、無事に通常空間に復帰した。
しかし……そこに待ち受けている、新たな災難の、いや、災厄と呼ぶほかないほどの事態を……まだ、彼らは知らなかった。
☆☆☆
【×月×日(同日)】
拙い腕ながらも協力させてもらった、ヤマトの防衛線は無事に終了。
何機か無人機を落として、それなりに役に立った自覚はあるけど……それでも何というか、やっぱり腕の違いは歴然だってのがわかったよ。
ホントすごいな、ゲッターとかマジンガーとか。
土星で見てた時以上にとんでもない動きで、縦横無尽に飛び回って敵を落としていた。目で追えないくらい早くて、激しい動きで……それなのに狙いは正確無比。
歴戦の勇士、ってのはああいう戦いができる人のことを言うんだなって、あらためて実感した。
その他の機体……ガンダム4機(クアンタ以外名前わからない)や、例によっているあの灰色のロボット、そしてガミラスのものだったはずの赤い機体も同様。
赤い戦闘機は、通常の3倍で動いたりはしなかったけど、それでも小ささを生かして敵の攻撃をかいくぐり、1機、また1機と落としていた。
通信での会話は最小限にして、声も変えたから、こっちが誰かについては気づかれなかったと思う。他はテキストでのやり取りだけだし。
けど、戦闘終了後に、ヤマトから『貴官の度重なる防衛協力に感謝する』っていうメッセージが届いた時はちょっとびびった。
あ、コレどうやら、僕が地球で色々やってた機体だってことには気づかれたっぽいな……地球から何か連絡とか受けてたのかも。
あの沖田艦長から感謝されたってことにちょっと感動する半面、僕みたいな若造の浅知恵なんてお見通しだとも遠回しに言われてるようで、少し、うん……びびった。
幸い、それ以上は何もなく、普通に離脱させてくれたけど……なんか戦闘後、機動部隊の面々からめっちゃ視線を感じたんだよね。
あれひょっとして、『捕まえて連れてこい』とか言われてたら僕、逮捕されてたんじゃ……もしそうなったら逃げられる自信なかったよ……マジでよかった。大人しく行かせてくれて。
その後、牽引されて去って行くヤマトを見送って、拠点である『バースカル』に戻った。
あの穴が閉じる前に、僕もここから出ないとな。
ただ、出るのはいいんだけど……この『バースカル』を持っていけないのは惜しいな……
正直、生産拠点としては、ここは魅力的過ぎるくらいの場所だから。
機材だけでも持ち出したいと思ったけど、そのほとんどは艦と一体化してるし、付け替え作業なんかも、技術体系が全然違うからまずできそうにない。
けど、やっぱ諦めきれないので……気休め程度ではあるが、手を打っておくことに。
どうやらこの艦、ヤマトやガミラスの艦と同じで、もともとはワープ系の機能も有していたらしいんだけど……今はデータの破損でシステム自体が使えなくなっている。
ただ、機動兵器を転移機能で送り出すとか、転移させて帰ってこさせるみたいなこともしていたようなのだ。ドックの方を見ると、それらしい痕跡があった。
繰り返すように、転移機能そのものをつかさどるメインのデータがなければ、この艦のその機能は使えないんだけど……逆に言えば、その『転移機能』の部分をこっちで何とか出来れば、もしかしたら、またここに帰ってくることができるかもしれない。
ガミラスの艦に搭載されているワープ機能や……アスクレプスに備わっているはずの、次元転移機能。それらと上手いこと噛み合えば……。
……後者に関しては、僕の未熟さゆえに、まだ使えないけど……(泣)
まあ、ダメで元々だと思って、転移用の次元座標データやパスを、戦艦とアスクレプスの両方にダウンロードしておいた。
それじゃあそろそろ、行くとしますかね。
上手く行けば、次の日記を書くのは、通常空間に復帰してからになるだろう。
上手くいかなかったときのことは……考えたくない。