【▼月▽日】
確かに昨日、僕は『このピンクな雰囲気をどうにかしてくれ』と祈った。
けど、だからといってガチのトラブルに舞い込んできてほしかったわけじゃないんだが……まあ、こんなこと言ってもどうしようもないか。
何が起こったかというと……レナード達『アマルガム』が襲ってきたのである。
DG同盟がこっちに来てたことからも予想はしてたけど、やっぱりこいつらも来てたか。
レナード曰く、『時空融合の完成には彼女の存在が必要』ということらしく……そのために、ウィスパード同士の『共振』で彼女を呼び出し、何かしらの方法でまた
が、どうにかその試みは阻止することに成功している。
というのも、レナードが『共振』を使ってかなめちゃんを呼び出した時、かなめちゃんだけではなく、同じウィスパードであるテッサ艦長もそれに気づいた。
しかし、彼女たちだけでなく……もう1人、ミレーネルもそれに気づいた。
『共振』は、かなり特殊なそれではあるものの、広義的に言えば精神波の一種であるため、そっち方面の専門家である彼女が即座に察知することができたのである。
そして、『ゴーストリンク』によって意識を飛ばし……かなめちゃんの意識が薄れてしまったその瞬間……ソフィアより先にミレーネルが彼女の体を乗っ取った。
そしてうまいこと演技をしてレナードを騙し、直後に宗介達が合流したところで、素早く彼らに合流。
驚くレナード達を残し、陸戦部隊に守られながら、そのまま一緒に帰ってきた。
その後、行き場を失って唖然としていたソフィアは……以前ミレーネル自身も入っていた、あのタブレット端末(の、形をした精神体用の依り代)にその意識を強制的に移し、閉じ込めた。
これでもう、かなめちゃんに干渉することはできない。乗っ取られることもないだろう。悪いがここでおとなしくしていてもらう。
ただ、そうして助けたにもかかわらず、なぜかかなめちゃん、依然として調子が悪そうなままなんだけど……レナードの奴に何か吹き込まれたのかな?
……後でミレーネルにでも聞いてみよう。一時的に彼女の中に入っていたわけだし、何か知ってるかも。
その後、僕らは後詰めでアマルガムの連中……あるいは、協力関係にあるエンブリヲやエグゼブが襲ってくるのを警戒して戦闘態勢に入ったんだが、なんとそいつらより先に、インベーダーが現れて襲ってきた。
しかもその戦闘には、どうやらこの世界までこいつらを連れてきたらしいエンブリヲと……インベーダー側の親玉である、コーウェンとスティンガーの2人が。
……率直な印象をここで1つ。ガタイが、肩幅がすごい。
早乙女博士の時も思ったけど……研究者には見えない見た目だ。これもひょっとして、インベーダーに寄生されてるがゆえなんだろうか?
……寄生されてるされてない関係なしに、なんかこう……人間離れした見た目してるけどさ。
特に、スティンガーの顔色。青て。肌の色、青て。
まあ、それはいいとして……どうやら襲ってくるようなので迎え撃つことに。
親玉である2人は、手下のインベーダー達だけを残して撤退して行っちゃったけど。何か、ヤマトの波動エンジンを狙う的なことを言ってたな……少し不安だ。
気にはなるけど、今は目の前のインベーダーの相手だ。
数は多かったし、相変わらず見た目その他が気持ち悪い奴らばっかりだったけど……僕らであれば十分に対応できる範囲内だったし、全滅させるのにさほど時間はかからなかった。
ただ、その最中にちょっと横槍が入った一幕があってね。
恐らくはレナードの指示だろうが、アマルガムの幹部2人……ええと、名前ぱっと出てこないんだけど、武人っぽい男とメガネの女の子の2人が、横から襲ってきたのだ。僕らがインベーダーと戦っているところに、奇襲をかける形で。
狙いは宗介。……なんかレナードの奴、やたらと宗介を目の敵にしてる気がするな……。
まあ、彼を殺せばかなめちゃんへの揺さぶりになって、またソフィアが彼女を乗っ取る助けになるかもしれない、と思ってるのかもしれないけど……まあ残念ながら、もうソフィア、かなめちゃんの中にいないんだけどね。レナード達は知らないだろうけど。
それでもまさか宗介をやらせるわけにはいかないので、こちらでフォローしつつ戦っていたんだが……その最中、アマルガムの残る幹部の1人である、カスパーによって宗介が狙撃され……しかし、その瞬間にラムダ・ドライバを全開にして防御したため、宗介は無傷。
それと同時に、クルツとサリア、ジルとミランダの4人がカウンタースナイプで逆にカスパーの方を狙撃。
しかし、それも警戒していたカスパーは、素早くその場を離れることで回避し……しかし、その瞬間に空間跳躍で目の前に現れたヒルダのテオドーラの剣が振るわれる。
それも、ASの左腕を犠牲にしてどうにか防いだものの、それが決定的な隙となって……超長距離で放たれたクルツのとどめの一撃が決まり、完全に破壊された。
後から知ったんだが、クルツが狙い打ったその一撃は、狙撃可能な距離を明らかに超えた、カスパーでも当てることはおよそ不可能なはずの一撃だったという。
『女の子たちがあんな風に協力してくれたんだから、いいとこ見せなきゃ男じゃねえよな!』とのこと。……言われてみれば、協力したの全員女性だな。
ただ、軽い感じで言ってたけど、それとは裏腹に、その目はしばらく、常にはない真剣そのものといった光を宿していて……なんとなくその心中を察することができた。
なお、宗介への狙撃を防ぎ、迅速に反撃を可能にしていたのは……これもミレーネルのおかげである。
戦いが始まって早々に……アマルガムの2人が来た段階くらいで、超遠距離からこっちを狙っている敵意を彼女が感知し、すでに気づいていたのだ。
後は、『なんかこんなのいて狙ってるよ』『マジで? じゃあ逆に利用しようぜ』みたいな感じで作戦が決まったわけだ。なんか今回、ミレーネル無双だな。
火星の後継者しかり、アマルガムしかり、精神波を使っていろいろやる敵は、彼女にとっていいカモなのかもしれない。
そんな感じで、アマルガムも撃退、インベーダーも全部倒したわけだが……その後今度はエグゼブが現れ、なんと地下のマントルで大規模な爆発を起こしたとかなんとか……
惑星フェルディナの火山という火山が噴火をはじめ、ほどなくして星そのものが崩壊するというから大変である。
あわてて各機、戦艦に戻ったわけなんだが……ただ1人、宗介だけは『決着をつけなければならない奴がいる』と言って星に残った。
皆は口々に止めたけど、テッサ艦長とかなめちゃんは、なんとなくその心中を察しているのか……『ギリギリまで待つから必ず帰ってこい』と声をかけて、送り出していた。
しかし、本当にぎりぎりまで待ってみたけど、彼が帰ってくることはなく……
☆☆☆
「……惑星フェルディナ、完全に崩壊しました……相良軍曹の脱出は、確認できていません」
「そんな……宗介……っ!」
「馬鹿野郎、宗介……お前、かなめちゃんを残して、何やってんだ……ッ!」
涙をこらえて下を向くかなめに、血が出るほど強く拳を握りしめるクルツ。
その横では、テッサがこちらも、沈痛な面持ちでうつむいてしまっていて……マオやクルーゾーは、そんな彼らにかける言葉を見つけられないでいる。
他の艦の、他のメンバーも……おおよそ同じような雰囲気の中にいた。
恐らく彼は、カリーニン少佐と決着をつけに行ったのだろう。
そのことにかける宗介の意思の強さを理解していたがために、テッサたちは彼を送り出したが……今となってはそれが正しかったのかどうか、答えを出せないでいる。
既に惑星フェルディナは粉々に砕けて、無数の岩塊や粉じんが巻き上がっている。地下から沸き上がったのであろう、溶岩がそこかしこで熱を放ってすらいた。
まるで、星そのものが火の玉になって全てを焼き尽くさんとしているような惨状。
あの中に取り残されたとあっては……たとえ『ラムダ・ドライバ』で惑星崩壊の衝撃を防ぐことができたとしても、脱出することなど不可能。
救出に行く術もない。ナデシコのボソンジャンプや、ラグナメイルの空間跳躍、ヘリオースの次元転移……そのどれを使っても不可能だろう。そもそも、宗介がどこにいるか、無事でいるのかすらわからないのだ。
テッサの優秀な頭脳は、そんな残酷な答えを導き出していた。
隊全体に、どうしようもない喪失感と、悲しみが広がっていき……
……その時、不思議なことが起こった。
―――大丈夫
―――あなたたちがそれを望むなら、源理の力はそれに応えます
―――限りある命であるからこその輝き、それを燃やして戦う者の美しさ
―――それは、決して捨ててはいけないもの
―――可能性という名の希望、進化という名の未来
―――諦めずに歩み続けるなら、いつの日か扉は開く
―――きっと、あなたたちこそが、この先の未来に必要なのでしょう
―――この世界を、宇宙を……また再び、終わらせないために
―――だから……
―――私が、あなた達を救います
その声を聴いたのは……皆と同じように、『ソーラーストレーガー』の中で、仲間との別れを悲しんでいた……灰色の肌の、1人の異星人の少女。
仲間達と同じように、悲しみにうつむいていた……
(…………え、何? 誰、今の……声?)
ミレーネル・リンケ……彼女、ただ1人だった。
☆☆☆
【日記 続き】
もうだめかと思ったその時、宗介の乗ったレーバテインが黒煙の中を突っ切って現れた。
ほとんど奇跡と言っていい生還に湧き上がる僕ら。
宗介曰く、自分でもよくわからないけど、偶然というか、どういうわけか、煙も溶岩もないルートを飛んで突っ切ることができ、障害物もすべて『ラムダ・ドライバ』で防ぐことができたおかげで脱出できた、とのことだった。
何はともあれ、無事に帰ってこれたんならそれで十分だよ。よかったよかった。
……だってのに、めでたい場面に思いっきり水を差してくれるお邪魔虫が多数出現。
大物面して出てきたエグゼブに加え、ハーデスの仇を取るためにと、ミケーネの連中も集結。あしゅら、ガラダブラ、それに暗黒大将軍とまあ、勢ぞろいで現れた。
エグゼブの方も、とんでもなくでかいロボットに乗って現れた上に、パープルと同じく、手下ともども『魔のオーラ』でしっかり強化された状態での参戦である。
案の定、再生能力を持った集団と化していたので、まーめんどくさい。
ミケーネの方は特に再生とかはしないけど、こっちは普通に強いししぶとい。
やっぱりまた次元力でひっぺがすか、とか考えていたんだけど、それより先に、ウォルフガングと浜田君、それにその他のメカニックの皆さんが協力して作っていた秘密兵器がお目見えすることとなった。
その名も『イノセントウェーブ増幅装置』。名前そのまんまではあるが、個人が発するイノセントウェーブ……精神波を増幅して、現実世界に影響を及ぼせるようにする装置である。
それを、常人の100倍のイノセントウェーブを発することができるサリーちゃんが装備し、舞人達の勝利を願って祈ることにより……凄まじい力を発揮した。
浜田君達によって調整された『増幅装置』によって、可視光線レベルにまで強力なそれになったイノセントウェーブは、エグゼブの『魔のオーラ』(という名の次元力)による強化に対して特効的な威力となり、ものの見事に再生能力や機体の強化を引っぺがした。
それどころか、霧散した次元力を再利用する形で、逆に舞人達を強化するおまけつきである。
僕がヘリオースの力を使って、さらに『界』という形で前回やったことを、こんなにも見事に、簡単にやってのけるとは……。
専用の装置を使ってるとはいえ、サリーちゃん、マジですごいな……これが愛の力か?
なお、サリーちゃんが装備したその装置の形を見て、一瞬『天地雷鳴士?』とか思ってしまったことは内緒にしておく。ド〇クエ脳……。
いつ出番が来るかと身構えていたんだけど、どうやら今回の戦い、僕の力は――次元力の制御という意味で――必要なさそうだった。
なので、純粋に戦闘要員として戦わせてもらいました。
回復手段だった『魔のオーラ』を失ったエグゼブは、それでも機体である『インペリアル』とやらの性能に任せて向かってきたんだけども、舞人とジョーの2人を中心とした『地球艦隊・天駆』の猛攻を受け、ついには敗北。『インペリアル』とともに、宇宙に散っていった。
そして、ミケーネの連中もまた同じく。
こちらは、甲児君と鉄也さんが中心となって相手をしていたわけだが、マジンガーZEROとマジンエンペラーGの圧倒的な力の前にも、最後まで一歩も引かず、ひるまずに向かってきた。
ハーデスの敵討ちとして、ってことなんだろうが……さすがというか、神と言われるだけのことはある強さ、そして気迫だった。
例え敵わなくとも、絶対に逃げたりしない、という覚悟すら感じて……なんというか、敵ながら天晴、っていうのかな、こういうの。
それに応えるように、甲児君達も、手加減一切なし正真正銘の全力で相手をしていた。
最後には、『機械獣あしゅら男爵』には、マジンガーZEROのブレストファイヤーが炸裂し、
ガラダブラは、マジンエンペラーGのエンペラーソードが真っ二つにし、
暗黒大将軍は、ZEROの光子力ビームと、エンペラーのサンダーボルトブレーカーを同時に受けて……それぞれ同じように、宇宙に散った。
こうして僕らは、惑星フェルディナから宇宙にまで部隊を移した激しい戦いの末に……エグゼブとミケーネ、2つの敵勢力を倒すことに成功したのだった。
舞人とジョーは、それぞれ両親の敵討ちを果たした形になる。
2人の両親はどちらも、エグゼブの謀略によって命を奪われた――しかもなんと、実行犯があの北辰だっていうから驚きだ――……って、前に聞いたから。
ジョーにとっては、その時の経験が原因で、一時期グレて『正義とかマジありえねーし』みたいな感じになってたわけだし、因縁浅からぬ相手だったわけだ。
甲児君達も、長いこと続いてきた因縁に終止符を打つことができて……達成感のような喪失感のような、言葉にできない感情を抱いているようだった。
あしゅら自身も、全力で戦って満足して散っていったみたいだし……なんというか、単なる敵と味方以上の何かが、この両者の間にはあっただと思う。
まーなんというか、激動の一日だったけど……それに見合う戦果を手に入れられたんじゃないかな、という感じだ。あー疲れた。
かなめちゃんもさらわれずに無事に済んだことだし、万々歳だ。
……あ、でも捕まえたソフィアどうしよう? 今、タブレットの中に幽閉中なんだけど……こういう場合って、捕虜としての扱いとか色々配慮すべき? ……後で皆に相談しよう。
追記
これは、戦闘のログを後から見ていた時に気づいたことなんだけど。
宗介が惑星フェルディナから脱出した、その直前くらいのタイミングで……極小の次元震が起こっていたのを観測できていた。
おそらくその衝撃で、周囲にあった、溶岩や岩塊、その他の障害物が偶然消し飛ばされ、進路がクリアになり……そこを通って、宗介は脱出することができたみたいだ。
まあ、惑星1つが崩壊する爆発が起こったんだし……そのくらい起こってもおかしくはない。
けどそれにしたって、ちょうどそれが、脱出するのに都合のいい露払いになってくれるとは……なんというか、運がよかったなあ、宗介。
……偶然……だよね?