スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第83話 ソフィアと愉快な仲間達

 

【▼月☆日】

 

 かなめちゃんやテッサ艦長が、粘り強くソフィアと話を続けている(テッサ艦長は暇を見てだが)のはこないだ言った通り。

 

 しかし最近、なんか……他のメンバーもよくソフィアに会いに来るようになった。

 

 同じミスリルであるクルツやマオさんをはじめ、アキトにユリカさん、サリーちゃんや浜田君、ココにミランダにヴィヴィアン、バナージやカミーユ、アムロさんに刹那、真田副長や新見情報長、総司さんにナイン、ユリーシャさん……その他。

 

 理由は様々だ。単に興味を持ったからっていう人もいれば、ソフィアが実は悲しい過去を持っていると知って、どうにかして助けられないかと思った人もいる。

 ソフィアの掲げる『歴史改変』というものの是非について討論していった人もいれば、どうにかして敵の情報を聞き出そうとした人もいた。

 今は敵同士であっても分かり合えるんじゃないかと思って対話を望んだ人もいれば、全然何も深い考えとかはなくて、友達になれないかなー、とか思った人もいる。

 ……あと、何を思って話しかけたのか、聞いていても全然わからない人もいたな。

 

 なお、どれが誰のことかはあえて言わないことにする。想像してみて。

 

 そういった人達との対話(と言っていいのかどうか)を経て……何かソフィア、徐々に混乱してきたっぽい。

 

 精神に不調をきたしたとかそういう意味ではなく……どう対応したもんかわからなくなったり、緊張感が続かなくなってきた、みたいな気配を感じる。

 

 今までソフィアが相手にしてきたのは、レナードやカリーニン少佐といった、あくまで目的のために手を組んだ相手であり、その間に交わされた会話、ないしやりとりは、常に『同志』としての……言っちゃなんだが、仕事としての堅苦しい内容ばかりだった。

 

 けど、ここにきて……そういうのとはかけ離れたやり取りがあまりに多い。

 

 自分のことを理解しようとしてくれるかなめちゃんだけでも、割と徐々にその心がほどけて来ていたようなのに加えて……同じように自分のことを、目的とか関係なく優しくしようとしてくれる人や、仕事とか堅苦しい要素ゼロで話しかけてくる人、やや堅苦しくはあるものの、レナード達とはまた違った会話を交わすことができる人、ソフィアを通して何かを学ぼうとする人、何を考えているのか話してみても全く分からない人……

 

 今までの人生?で出会うことのなかった人と出会い、言葉を交わし、色々な感情をぶつけたりぶつけられたりしているうちに……徐々に彼女の中に戸惑いが生まれている。

 

 そして、この彼女の変化や動揺に関して理解を示したのは……意外といえば意外なんだが、ヴィヴィアンだった。

 彼女自身も、こういう感じになった経験があるから、『あー、その気持ちわかる』って。

 

 結構前の話になるんだが、覚えているだろうか。

 

 まだアンジュが、ヒルダ達と死ぬほど仲が悪かったころ、ヒルダのブラジャーとパンツでヴィルキスが撃墜され、アンジュが行方不明になったことがあった(言い方)。

 

 その時に、総司さん達はアンジュの無事を願いつつ、ずっと捜索していたわけなんだが……その様子を見ていたヴィヴィアンが、『どうしてアンジュを探してくれるの?』と聞いた。

 

 その頃の彼女達の認識はまだ、『ノーマは人間扱いされなくて当然』というものだった。

 だから、アンジュのことを一生懸命粘り強く探してくれる総司さん達の行動が、ヴィヴィアンには理解できなかった……という、あんまり笑えない『ノーマあるある』である。

 

 その時と似た感じで……今まで触れることのなかった人の思いや考え方に触れた時、好きとか嫌いとかそういうの以前に、どう対応、ないし反応していいのかわからない……ということが、時に起こる。

 ヴィヴィアン曰く、今のソフィアもちょうどそんな風になってるんじゃないか……とのこと。

 

 でも同時に、その向こうに見つかる、知ることのできるものは……きっとソフィアにとっても、重要というか、必要なものであるはずだから……こうして皆でソフィアと分かり合おうとするっていう今の方針自体は、きっと間違ってない。

 そんな風に言って、ヴィヴィアンは今日は帰っていった。

 

 純粋な彼女だからこそ、そういう部分に気づけるんだな、って思った。

 

 となりでそれを聞いてたかなめちゃん達も嬉しそうにしてたから……明日以降、一層気合入れてソフィアと話しにいくんだろうな。

 なんなら、友達誘っていったりすらするかもしれない。

 

 ソフィアとの面会が、単なる捕虜との会話ではなく、気のしれた間柄同士のおしゃべりになる日も……もしかしたら、そんなに遠くないところまできているのかもね。

 

 

 

【▼月★日】

 

 本日もソフィアとの面会……とかいいつつ遊びに来た的な感じになってるわけだが……その最中に、ヴィヴィアンがふと思いついたように口にしたことがある。

 

 ソフィアの目的が、自分が死んでしまったがために手に入れられなかった、幸せな人生を手に入れる、というものであるのは前に書いた通り。

 そのためにかなめちゃんの体を乗っ取って、『時空融合』からの『歴史改変』を行おうとしていた。

 

 そのことについては今もあきらめていないわけなんだが……そこでヴィヴィアンが、

 

『だったらかなめの体を使わなくても、ミツルに新しい体作ってもらえばいいんじゃない? ミレーネルみたいに』

 

『……!?』( ゚д゚) ← ソフィア

 

 ソフィアのみならず、その場にいた全員がまさしく『その発想はなかった』的な感じになった瞬間だった。

 いや、確かにそれは……彼女には体がない。だからかなめちゃんの体を奪おうとした。だったら彼女に体を用意すれば、かなめちゃんの体を奪う必要はなくなる……まあ、言われてみればそれは正しいっちゃ正しい……な。

 

 ただそれだと、相変わらず理由はわからないけど『歴史改変』はできない。

 ソフィアはあくまで、不幸な形で終わった人生そのものをやり直すことを望んでいるので……ただ単に、自由に動けるからだが手に入るだけじゃ満足できないわけだ。

 

 今から生き返って人生を再び歩みたいわけじゃなく、一からやり直したい。それがソフィアの望みなのだ。

 

 ……そう言いつつも、『新しい体が手に入るかもしれない』と分かった瞬間、ちょっと反応していたのも、時折ちらちらとこっちを見るようにしていたのも僕は気づいていました。

 

 そして、ここ結構重要なポイントじゃなかろうか。ソフィアを説得するための。

 

 今言った通り、ソフィアの……そして、レナード達の望みは『やり直し』だ。

 今の世界の歴史を否定し、壊したうえで理想の歴史に作り替えて、その世界を生きよう……っていうもの。今の世界に生きる価値はない、壊した方がいいという思いからそれは来ている。

 

 けどもし、ソフィアが、今の世界を受け入れて……新しい肉体で、今これからの人生を歩むことを選ぶなら……その時はきっと、今彼女をすでに『友達』扱いしているおせっかいな面々が、彼女のこれからの人生を……きっと、素晴らしいものにしてくれるんじゃないかと思う。

 

 過去を嘆き、戻ろうとするんじゃなく……過去を受け入れて、未来に目を向ける。

 そんな、決して楽ではない、しかし、人がごく当たり前にやっていることを……もし、ソフィアが選ぶことができたなら……

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.ソフィア

 

 本当に妙な連中だ、と思う。

 

 私が敵だとわかっていても、こんな風に毎日、にこやかに語り掛けてくる。

 こちらがそっけなくしても、毒を吐いても……悲しそうにしたり、気にしなかったり、態度こそ違えど……決してあきらめることなく、毎日語り掛けてくる。

 男も女も、地球人でない者や、生物でない者さえも。

 

 このところは……半ば根負けする形で、会話に付き合っている。

 

 そして、会話をするようになったからこそ……余計に『変な人達だ』と思うようになった。

 

 私みたいなのに話しかけてくる、物好きな奴……という以外にも……どうして彼ら、彼女らはこういう考え方ができるんだろう。

 最近はよく、そんな風に思うようになったし……そこからつながった会話の中で、そういう人たちの考え方に触れる機会も増えた。

 

 ここの人達……『地球艦隊・天駆』の中には、決して幸せとは言えない過去を持っている人も、少なくない。

 いやむしろ、忘れたいほどひどい過去を持っている人の方が多いと思う。

 

 私が一番多く顔を合わせている、千鳥かなめ……そのボーイフレンドである相良宗介は、幼いころに飛行機事故で天涯孤独の身になり、以来ずっと、傭兵として硝煙香る世界で、物騒極まりない日常を送ってきた。そのせいで今も、平和な社会にまるでなじめていない。

 

 眩いばかりの『正義』を掲げて戦う旋風寺舞人は、両親を悪の手先によって殺された。

 そのライバルであるジョーも同じ。悪人によって利用された挙句に父親を殺された。

 

 テンカワ・アキトとミスマル・ユリカは、新婚旅行の最中にテロリストによって襲撃・拉致され……5年もの間、引き裂かれていた。テンカワ・アキトは過酷な人体実験の末に五感のほとんどを失い、ミスマル・ユリカはボソンジャンプの装置に組み込まれて利用されていた。

 

 アンジュをはじめとするメイルライダーの面々は、ノーマであるというだけで幸せな人生を奪われ……人間扱いされず、追い立てられ閉じ込められ、危険な怪物との戦いを強要された。

 色々なものを失い、死ぬまで解放されず、何人もの仲間達の命が奪われてきた。

 

 碇シンジはその血筋ゆえに、普通の中学生だったところを、半ば無理やり機動兵器に乗せられ、『使徒』を相手に命がけの戦いを強要されている。

 

 アムロ・レイやカミーユ・ビダン、刹那・F・セイエイに叢雲総司……皆、悲惨な戦争の中で、大切な人を失った。家族だったり、友達だったり、仲間だったり、恋人だったり……

 

 そんな過去を背負っていながら、彼ら、彼女らは……私のように、過去を変えたい、幸せな人生を取り戻したい……と思うことはない。

 いや、全く思わないことはないのかもしれないが……それを選択することはない。

 

 それがどうしても、理解できなかった。

 

 もしかしたら手に入ったかもしれない、理不尽に奪われてしまった、幸せな人生、幸せな未来……それが手に入るかもしれないのに、なぜ彼らは手を伸ばさないんだろう。

 人間なら誰でも、それを望むはずなのに。

 

 現に、かなめは――ただし、いつも話しかけてくれる『千鳥かなめ』ではなく、『サガラカナメ』は、だけど――それを求めた。

 その結果としてウィスパードは生まれ、隣り合う二つの世界に決定的な歪が生じた。

 

 その歴史からも、人は時に、不可逆の『時間』をさかのぼってすら、幸福な未来を求めるはずなのに……どうして、そんな、受け入れたくないつらい過去を、今を受け入れて、我慢して生きていく気になんかなれるんだろう……

 

 そのことを、ふと思いついた時に、たまたま話していた相手に聞いたら、

 

「だってそんなことしたら、皆と一緒に過ごした思い出も忘れちゃうじゃん。つらいことも多かったけど、楽しいことも嬉しいことも多かったし、大切な友達や家族もいるのに、そんなのやだよ」

 

 さも当然と言わんばかりに、笑顔を見せながらヴィヴィアンは言った。

 

「確かに、捨ててしまいたいほどに辛い思い出もいくつもある。だが、それも含めて、今の俺という人間を形作っている……彼らとの記憶が、今の俺を支えてくれているんだ。そのことにまで、背を向けようとは思わない」

 

 静かだけれど、強い意志のこもった声音で、アムロ・レイは言った。

 

「戦うのは今でも怖いよ。でも僕に、大切な人を守ることができるなら……その力があるのなら、僕にできることをやりたいと思うんだ。父さんに言われたからでも、僕にしかできないことだからでもなく……僕は僕の意思で、エヴァに乗るよ」

 

 自分が怖がっている、迷っていることを隠しもせず、しかしはっきりと、碇シンジは言った。

 

「失ったものも多いし、消したい過去もいくつもあった。忘れたいほど恥ずかしいやらかしもね……でも、そういう日々の中で手に入れたものもある。だから私は。やり直したいなんて言わないし思わない。今こうして仲間になれた皆と一緒に、これからも生きていくわ」

 

 過ぎ去った過去を思い返すようにしながら、しかし迷いも何も振り切って、アンジュは言った。

 

「つらいことがあったからって、いちいちそれから目を向けて逃げていたら、逃げることしかできない人になってしまう。やり直した後の世界で気に食わないことがあったら、きっとまた同じことを考えて逃げたくなってしまう……だから皆、歯を食いしばって未来へ進むんだ、きっと」

 

 もう何度も自分で考えたことなんだろう。迷いのない強い口調で、古代進は言った。

 

「死ぬほど嫌な思い出でも、いっそなかったことにしたい過去でも……それを乗り越えて俺は今、ここにいる。そして、その途中で散っていった奴らは、皆、未来を信じて、俺に後を託してくれたんだ。だったらそれに報いなきゃ、申し訳ないってもんだろ?」

 

 軽い口調で、しかしその一言一言に、聞いていてわかるくらいの強い意志を、覚悟を滲ませながら、叢雲総司は言った。

 

 ……私には、皆の言っていることがわからない。

 幸せな未来に手が届くのに、今のこの、つらいだけの現実なんで捨ててしまえばいいのに……それを拒んで、わざわざつらい、認めたくもない現実を生きていくなんて……何で、そんな風に……きれいごとにしか聞こえない決断ができるのか。

 

 私には、理解できない。

 

 ……けど、もし……それを私が理解できる日が来るのなら……

 

 ……その時には、私はもしかしたら……今とは違う風に、世界を見ることができるんだろうか。

 

 そしてその時、私は……今はもっていない『何か』を手に入れているんだろうか。

 恐らくは、彼ら・彼女らは持っていて……今の私は、持っていない……それが何なのかもわからない……

 

 ……けど、きっと……大切なものなんであろう、『何か』を。

 

 

 

 

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