スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第87話 ガーディムとイスカンダルの話

 惑星レプタボーダの周辺宙域……ガミラスや『地球艦隊・天駆』のレーダーによって見つからない、死角となる場所に……その船……超文明ガーディムの旗艦『バースカル』は停泊していた。

 

 その中の一室……小さな会議室のような場所で、2人の女性が席についていた。

 

 1人は、『地球艦隊・天駆』の一員であり、宇宙戦艦ヤマトの船務長を務める、森雪。

 

 もう1人は……大ガミラス帝星の宣伝情報相にして、総統デスラーの側近、ミーゼラ・セレステラ。

 

 彼女達2人は現在、捕虜としてこの艦に乗せられていた。

 

 『七色星団』の決戦で、イスカンダルのユリーシャと間違われてガミラスに拉致された森雪は、ガミラス本星からの迎えを待つ間、レプタボーダで待機していた。

 それから少しして、大ガミラス帝星からの迎えとして訪れた使節団……その責任者としてやってきたのが、ミーゼラ・セレステラだった。

 

 しかし、時を同じくして、惑星レプタボーダにガーディムの艦隊が襲来。

 

 セレステラ達は森を乗せて、惑星レプタボーダから脱出を図るも、逃げられずに輸送艦は撃墜、連行され……こうして囚われの身となっている。

 

 その2人がいる部屋のドアが開き、1人の男性が入ってくる。

 ガーディム人に共通の特徴の通り、病的なほどに色の白い肌をしたその初老の男……ガーディム第8艦隊司令、アールフォルツ・ローム・ハルハラスは、不快感を隠そうともしない2人の視線を受けながらも、特に堪えていない様子で口を開いた。

 

「そう睨まないでくれたまえ。せっかく朗報を持ってきたのだから」

 

「朗報……?」

 

「惑星レプタボーダの騒乱だが、無事に鎮圧されたようだ。死傷者多数なれど、ディッツ提督をはじめとした要人のほとんどは大した怪我もなく救出されたらしい。収容所の責任者は死んだがね」

 

「つまり、あなた方の攻撃は失敗に終わったということね……いい気味だわ」

 

 セレステラの棘のある言葉にも、やはりアールフォルツは表情一つ変えることはない。

 

「否定はせんよ。テロン人の艦隊……君達の仲間は、どうやら我々の予想を超えて強力な戦力を有しているらしい。辺境の銀河にありながらそれだけの力を有しているというのは、純粋に評価すべき点だと言えよう」

 

 さらりと森が『テロン人』……すなわち、地球人の仲間であることを口にするアールフォルツ。

 イスカンダル人ではない……つまり、ガミラスの勘違いだったことを暴露しているが……この点については、この艦に来た時点で既に暴露されて明らかになっていたため、別にセレステラも驚いたり反応をすることもない。

 

「だが……だからこそ残念だ。君達のような存在が。イスカンダルなどに騙され、地球を救えるなどという幻想を胸に抱いて、ここまでの困難な道のりを歩んできたという事実がね」

 

 

 

 少し前……森とセレステラが収容された直後のこと。

 2人と面会したアールフォルツは、その時にいくつか、森の知らない『イスカンダル』という存在について話して聞かせていた。

 

 イスカンダルの真の姿は、地球を救うために力を貸してくれるような慈愛に満ちた救世主ではなく……波動エネルギーの力で数々の星を侵略し、滅ぼしてきた凶悪な国家であること。

 ヤマトに乗っていた森には、あまりにも見覚えのある……『波動砲』によって、惑星そのものを破壊していく様子をとらえた映像データとともに、それを聞かされた。

 

 ゆえに、イスカンダルに行こうとも地球が救われることなどない。

 ヤマトの16万8千光年の旅は無駄足に終わる、と。

 

 そして、

 

「でたらめを言うな! イスカンダルは貴様の言うような軍事国家ではない……いや、正確には、そのような歴史もあったと記録されてはいるが……それは数千年前の話だ!」

 

 セレステラが反論する通り、イスカンダルは確かに、かつては『波動エネルギー』によってこの大マゼラン銀河に一大覇権国家を築いた存在だった。

 

 しかし、今現在ではその過去の行いを恥じ、滅びかけている星々に手を差し伸べ、その運命を救っていくという活動に傾倒している。

 地球を救うために、波動コアを送り、自分達の星に招いて『コスモリバース』を贈ろうとしているのも、その一環。

 

 ガミラスとしてそれをどう思うかどうかは別として、その点に偽りはないと、セレステラは反論し……アールフォルツの言うことは嘘だと糾弾する。

 

 そして同時に、そもそもガーディムとイスカンダルが戦っていたのはすでに数千年前の話で……戦いに敗れてガーディムは滅んだはずであると。

 

「我々がいかにして生き延びていたか……それについては今は重要ではないゆえ、またにしよう。確かにイスカンダルが、侵略戦争を繰り返していたのは数千年前の話だ……今現在はそのような活動は報告されていない。だが……それは果たして重要なことなのかね?」

 

「何……!?」

 

「勘違いしているようだから指摘させてもらうが、私はイスカンダルの行いについて以上に、『イスカンダルによって地球が救われることはない』という点を重要視して述べたつもりだ。簡単に言えば……侵略行為がなくなったからといって、イスカンダル人の本質が変わったわけではない……他の星を、その民をしもべとして従え、崇拝させるという本質は、今もそのままだろう」

 

「それは、大ガミラス帝星が『イスカンダル主義』を掲げ、その他の支配地域にもそれを浸透させているためだ! デスラー総統は、全銀河を統一し、その全てに『イスカンダル主義』を浸透させることで、真の恒久平和の実現を目指して……」

 

「それを本気で言っているのなら、そのデスラーという男はすぐに精神の病を疑うべきだな。論理性のかけらもない、一方的な価値観の押し付けは、一般的に侵略と呼ばれ、忌み嫌われる行為だ」

 

「貴様らが言えた義理か! 数多くの文明を滅ぼし、自分達に教順させて同一の価値観と社会構造を構築することを強要してきた侵略国家が!」

 

「我々が行っているのは、高度かつ精密に構築されたシステムによって統制された、知的生命体とはかくあるべきという完璧な社会システムへの矯正であり、いわば教育。そしてそれを行うのは、先達である我々『超文明ガーディム』の義務。その崇高な使命と、単純な侵略行為との違いが判らんようでは……やはりガミラスとやらも、文明のレベルが知れるな」

 

 横で聞いていて、森は……まったく会話になっていない、と思うしかなかった。

 

 アールフォルツは、自分達もまたその『価値観の押し付け』を行っているのだということに気づいていない……というより、そのように考えること自体ができていない。

 自分達が間違っている、という発想に至ること自体がないのだろう。

 

 セレステラはセレステラで、『イスカンダル主義』という金看板を掲げ、ガミラスの侵略行為を正当化しようとしている……あるいは、それを掲げる総統・デスラーを妄信して、それを否定する者にかみついているだけ、といった印象を受けてしまう。

 

 だがそれよりも、森は……先ほどから気になっていたことについて、話が途切れた隙間を見て、アールフォルツに問いかける。

 

「聞いてもいいかしら」

 

「何かな? 私にこたえられることなら教えよう」

 

「それはどうも……あなた達が千歳を……私達の仲間を、あなた達の機動兵器に乗せて、私達と戦わせていたのよね? それは何のため? ヤマトとヴァングネクス、それにナインと、ミツル君とアスクレプスを狙っていたようだけれど……どうしてわざわざ彼女を利用したの?」

 

 恐らくは彼女にも、『イスカンダルを信用してはいけない』と刷り込んで取り込んだのだろうが、わざわざそうした理由がわからなかった。

 彼女を戦わせるよりも、レプタボーダを襲ったような強大な戦力を直接動かした方が効率的ではないのかと思えたからだ。

 

「なるほど、もっともな疑問だな。星川ミツルと『アスクレプス』、それに『ヴァングネクス』については、純粋に使われている技術について興味があったからだ。ヤマトについては、イスカンダルがもたらした波動エンジンを搭載していたため、その調査と接収が目的だな。そして残る『ナイン』……スレイブナンバー2044についてだが……」

 

「何ですって? 今、彼女を何と呼んだの?」

 

「『スレイブナンバー2044』……君たちがナインと呼ぶあのアンドロイド……の、中枢であるシステムの正式名称だ。我々ガーディムによって作成された、な」

 

「……っ!?」

 

 そこからさらに語られる真実。

 

 ナインは実は、ガーディムがイスカンダルとの戦いに敗れ、自分達の文明が滅亡してしまった時に備えて、来る未来にガーディムを復活させるために作った文明再建システム『ネバンリンナ』の端末の1つであり、もともとガーディムによって生み出された存在だった。

 

 現在、アールフォルツとその率いる『第8艦隊』は、そのシステム・ネバンリンナによって、ガーディムの再建を推し進めているが、その作業の中で圧倒的に不足しているデータがある。

 それは、『人間』に関するデータだった。

 

 現在、第8艦隊には生身の人間はアールフォルツ以外におらず、どうしてもデータが偏る。

 手持ちのデータを使って再現したグーリーとジェイミー……『ソルジャー』と『コマンダー』についても、性能はともかく情緒面においては成功とは言えなかった。

 

 そこで、地球において……それも、3つの世界を渡り歩くことで様々な人間とふれあい、そのデータを蓄積しているはずのナインを回収し、内部のデータをフィードバックすることで、『ネバンリンナ』を完成に導く……というのが、彼の目的だったのだ。

 

 それに加えて、千歳を敵として戦わせているのも、生身の人間の情緒方面におけるデータを収集するための実験の一環だったと、アールフォルツは明かした。

 

「この答えで満足かな?」

 

「……もう1つ聞かせて。イスカンダルは地球を救わないだろうと言っていたけれど……その根拠は何? 彼女の言葉が本当なら、今のイスカンダルは、その進んだ技術で多くの星を救済している……崇拝するかどうかはともかく、行い自体は尊敬に値するものであるように聞こえたわ」

 

「一見するとそうだろうな。だが、先ほども言ったように、イスカンダルは今も昔も、その考え方の根幹は変わっていない。自分達の目的のために他者を利用し、気まぐれに手を差し伸べたり見捨てたりするという点はな……仮に奴らの手で、地球が救われたとしよう……しかし、その後のことを考えているかね?」

 

「その、後……?」

 

「そもそも君たちテロン人は、イスカンダルが具体的にどうやって、地球の環境を再生させるつもりなのか、それを知ってはいまい? 『コスモリバース』という名前くらいのものだろう。仮にそれが……イスカンダルから継続的に力を与えられなければ力を発揮しないようなものだった場合はどうするのかね?」

 

「……!」

 

「地球は確かに『一旦』救われるだろう。しかしその後、環境の維持に必要な、何らかのリソースの供給を、イスカンダルに完全に依存する形になる……いわば、生殺与奪を握られるに等しい。その状態で、事実上イスカンダルに従属することになる以外の未来が君たちにあるかね?」

 

「……それは、あなたの想像に過ぎないわ」

 

「そうとも。だが一方で君たちは、全く何も想像すらしていない」

 

「……っ……」

 

「それに対して、我々は過去にそういった方法で他の惑星や文明を恭順させてきた存在や、そのための技術をいくつか実例として知っているし……想像であっても無視していい内容ではあるまい? 事実イスカンダルは、それよりもよほど悪辣かつ直接的な方法で、いくつもの星を滅ぼし、支配下に置いてきて……今もなお、自分達を神のごとく崇拝させて君臨しているのだから」

 

 そこまで言うと、アールフォルツは席を立った。

 

「すまないが、今日は話はここまでだ。私も色々と忙しい身でね……これで失礼するよ。何か要件があれば、そこに立っているエージェントに言いつけてくれたまえ」

 

 そう言い残して、扉を開けて去っていった。

 

 後に残された森とセレステラは、それぞれ、不安感と焦燥、そして不快感と怒りを表情ににじませながら……しかし、今は何もできず、大人しくしているよりほかになかった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

【▼月%日】

 

 予想外の遭遇となった『エル・ミレニウム』をどうにか討伐……したはいいものの、こっちの被害も決して小さくはなかった。

 

 最初の方で結構攻撃食らった、ザンボット3やグレートマイトガインをはじめ、負傷した機体はいくつもあったし……さっきも言ったように、僕も久々に『次元力』の使い過ぎでダウンしてる。

 

 そのため、仕事をミレーネルに、身の回りのお世話をミランダとココにお願いして、休暇中である。

 

 皆も僕の方の事情は知っているので、『ああ、久々だなそれ』って感じで理解してもらえていた。うん、久々にごめん。お休みもらいます。

 

 幸いというか、レプタボーダでの滞在中は、何かこれといって仕事が発生するわけでもないし……ガーディムを撃退した以上、戦闘みたいなのも起こらないだろうしね。

 

 今日1日、普通に快適に、何の問題もなくゆったり過ごさせてもらった。

 

 ……昼間、ココが入れてくれたコーヒーに、砂糖と塩が間違って入れられていた以外は。

 

 

 

 それと、僕が休んでいた間に、沖田艦長とディッツ提督(収容所から無事に救出された)との間で話し合いが行われたらしく、ひとまずここからは、ガミラスと地球人ではあるが、協力関係をとっていくことで話がまとまったそうだ。

 

 同時に、情報交換もきっちり行われた。

 

 ミレーネルに以前聞いた通り、今のガミラスは、際限のない領土拡大のせいで、民も、国も、疲弊しており、そう遠くない未来に破綻を迎えるのは確実。

 しかし、現体制に反対したものは、政治犯としてこういう収容所に入れられてしまうという、典型的な独裁者の治世。

 

 ディッツ提督は、これから自分に味方してくれる者達を集め、ここのような収容所惑星を開放していくつもりだとのこと。

 

 そして、協力関係になる僕ら『地球艦隊・天駆』には、メルダ少尉を連絡将校として改めて同行させる、とのことだ。

 

 もちろんその人事は、仲間達には歓迎され、メルダは再びヤマトに迎え入れられていた。

 プル姉妹をはじめ、彼女と仲が良かった面々が笑顔で『おかえりー!』って。すぐさま彼女の手を引いて、ヤマトのラウンジにパフェ食べに行ったって。

 

 ……まあ、僕は直接は見てないので、ミランダにそう聞いたんだけどね?

 

 ともあれ、こうして仲間も増えたわけだが……一方で、今回の一件では、森船務長の奪還というもう1つの目的は達成できなかった。

 惑星から脱出しようとしたところを、今度はガーディムに拉致されてしまったとかで……また、こちらの救助の手から零れ落ちてしまった形になる。

 

 諦めず捜索や救助のための努力は続けていくつもりなので、もうしばらく、どうか無事で待っていてほしいと思う。

 

 千歳さんのこともあるし……いい加減そろそろ、あいつらともケリをつけたい、なんて思えてきているところだ……。

 

 

 

 

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