スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第88話 対話と決戦と再会

【▼月&日】

 

 16万8千光年の旅もいよいよクライマックスに来た。

 

 最後のワープで、僕らはようやく、イスカンダル……と、ガミラス本星のある星系にやってきたわけだが……その直後、ディッツ提督から連絡が入った。

 なんと、ガミラスの本星が、謎の金属のような生命体に襲われている……というもの。

 

 どう考えてもELSのことだとすぐに分かったわけだが、この事態を受けて、『地球艦隊・天駆』はそこに急行することに。

 

 理由は、刹那達がELSと『対話』して相互理解をすることで、あいつらとの戦いを終わらせるため。

 

 もともとELSは、こちらとコミュニケーションを取ろうとして攻撃を仕掛けてきた――戦闘民族的な意味じゃなくて、『戦闘=地球人にとってのコミュニケーション』だと勘違いして――わけなので、地球人がそういうアレじゃないと理解してもらう。

 あと、連中の挙動から分析した感じ、ELSは全体として1つの生命体的な生き物で、地球人が個体単位で生命活動や意思疎通を行っている存在だってこともわかってない節がある。

 その点についても含めて理解してもらえれば、戦いは終わる……というのが刹那達の見立てだ。

 

 イノベイターである刹那の晴れ舞台……っていうと不謹慎かもしれないが、そのために部隊一同で援護させてもらうことになったわけだ。

 

 その他にも、ガミラスにもディッツ提督やメルダみたいに、ガミラスにも話の分かる奴がいるし……その民達まで含めで全てが憎いわけじゃない。対話の余地があるから、っていう理由もある。

 

 あくまで敵対しているのは、総統デスラー以下、侵略を推進している連中のみ。

 

 理想的な展開としては、戦いの中で、その頂点であるデスラー総統を討ち取り、侵略による拡大政策をやめさせた上では和平……みたいな形だと思う。

 

 そもそもの話、ガミラス本星(と、イスカンダル)に僕らが近づいた時点で、連中が黙ってみていてくれるとは思えないしね。

 図らずも……連中が危惧という名の勘違いをしていた、『地球側による乾坤一擲の攻撃』が、本当になりつつある状況である。

 

 そんなわけで最後のワープを行った僕らは、ガミラス本星の近くにやってきたのだが……そこには、わかっちゃいたけど……数えるのも億劫になるくらいの大量のELSが。

 そしてその中心には、連中の中枢である、月サイズの巨大ELSも。

 

 こりゃ『対話』が目的でもやばいな、と思ったその瞬間……それを迎撃していた、ガミラスの都市型宇宙要塞――メルダ曰く、『第2バレラス』という名前らしい――から……見覚えのある極太のビームが発射され……進行方向上にあったELS達が根こそぎ……実に、群れの半分近くくらいが吹き飛ばされた。

 

 というか、どう見ても『波動砲』だった。

 

 メルダに聞いたら、あんな兵器はガミラスでも聞いたことがないっていう話だから……ここ最近開発されたものらしい。

 そして、向こうは普通に戦いのための兵器として使う気満々だ、と。

 

 侵略の方針に輪をかけてやばいものを敵が手にしたな、と思いつつ……僕ら『地球艦隊・天駆』は、ELSとガミラスの両方を相手取る形で戦いに乱入。

 両方の遠慮も何もない攻撃をさばきつつ、速攻で刹那をELSの中枢に到達させ……クアンタによる対話が始まった。

 

 その後しばらくして、ELSからの攻撃が止まり、彼らは戦域から離れて、小惑星級の方に戻っていった。

 刹那が対話を成功させて、ELSが僕達のことをわかってくれたんだと、皆、すぐに分かった。

 

 そのことにひとまず安堵したものの、今度はガーディムが現れて、僕らとガミラスの両方に攻撃を始めた。

 ELSの方は無視しているようだけど……その攻撃部隊の中には、やはりというか千歳さんもいて……その対応に気を取られている間に、ガミラスの要塞都市から、何隻かの戦艦が、ガミラス本星に降りて行った。

 

 その中に、濃い青色……『親衛隊』のカラーリングの、ひときわ大きな艦があったことから……おそらく、アレが総統デスラーの座乗艦だと真田副長が見抜いた。

 

 さらにそれを追う形で、ガーディムの艦隊の一部もガミラス本星に降りていき……しかもユリーシャさんが、『あそこに雪がいる』ってさらっと爆弾発言をぶっこんで来たもんだから大変。

 

 だからもう……短時間で状況があっちこっちに動くのはやめてほしいってもう何度思ったか……いや思っても仕方ないのは理解というか痛感してるんだけどね!? つくづく!

 

 この事態に、『地球艦隊・天駆』は急遽、部隊を2つに分けることとなった。

 

 1つは宇宙で、千歳さん達率いるガーディムの艦隊の相手をする部隊。

 

 もう1つは、ガミラス本星に降り、デスラー総統とガーディムの艦隊を討伐しつつ、森船務長を救出するための部隊。

 救出に関しては、さらに別動隊を作って……ってことになるかな。

 

 千歳さんの方は総司さんとナインに任せ、僕とミレーネルは本星への降下部隊の方に加わることになった。

 

 長かったガミラスとの戦いも……いよいよ決着の時が迫っている、そう思った。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 大ガミラス帝星……帝都バレラス。

 夜の闇に包まれ、建物の明かりが荘厳な夜景を作り出しているその都市の上空で……三つ巴の戦いが繰り広げられていた。

 

 住民達や、総統府を守るヒス副総統らがかたずをのんで見守る中……ガミラスの誇る艦隊と、数千年前からよみがえった『超文明ガーディム』の艦隊、そして、今迄はガミラスの仇敵として知られていた『地球艦隊・天駆』の艦隊が砲火を交えている。

 

 数ではホームであるガミラスが圧倒的に多いが、それだけで大勢は決しなかった。

 

 ガーディムの戦艦は多少被弾したくらいではびくともしない装甲強度と、多数の無人機動兵器を武器に攻撃を行う。

 眼下に広がる都市や市民への流れ弾による被害など、考慮してもいないかのように、遠慮容赦なく乱れ撃ち、焼き払う。

 

 一方で、『地球艦隊・天駆』は、艦はもちろん、繰り出した機動兵器のどれもが、量産機とは一線を画する一騎当千の戦闘能力をもって暴れまわり、中には当然のように戦艦を相手に蹂躙している機体すらあった。

 しかしこちらは、極力市街地へ被害を出さないように立ち回り、そのためにガミラスやガーディムの攻撃をあえて受けることで街を守っている一面すらあった。

 

「なんということだ……栄えある大ガミラスの帝都に、敵対する異民族の侵入を許したばかりか、このような戦いの場になってしまうとは……!」

 

 ガミラス副総統、レドフ・ヒスは、今のこの事態を嘆きながらも、総統府内で素早く様々な指示を各方面に出し、バレラス市民のシェルターへの避難や、被害状況の把握、各種状況確認のための連絡ラインの構築などを進めていた。

 

「総統への連絡はまだつかんのか?」

 

「それが……30分前に最後の通信の後、『デウスーラ2世』にて親衛隊を率いて出撃し、現在交戦中であります! こちらからの通信は、非常時ゆえ緊急を除き行わないようにとのことで……」

 

「なんとっ……総統、この事態を緊急のそれではないとおっしゃられるか!? ならば、我々は……とにかく市民の避難を進めろ! 総統が負けるとは思わんが、都市直上で艦隊戦など、どんな被害が出るか分かったものではない! 可能なら都市そのものから脱出させたいところだが……」

 

「でしたら、副総統こそお早い脱出を! ここにいては巻き込まれる危険が……」

 

「ここで私が逃げなどしたら、いったい誰が指揮を執るのだ! 仮にも為政者の末席を汚す者として、民達を守る責務を放棄すること断じてまかりならん! 私が避難するのは、なすべきことを全て完遂した後だ……わかったらお前達も動け! 問答の時間すら惜しい!」

 

「は、はいっ! 承知いたしました!」

 

 

 

 ヒス副総統が総統府にて怒号を飛ばしている頃、

 

 ガーディムの戦艦のうちの1つに、戦いの騒乱に紛れて、古代進をリーダーとした部隊が侵入。

 拉致され捕虜になっていると目されている、森船務長の救出に動いていた。

 

 当然、内部に配備されている『エージェント』という名のアンドロイド達に見つかるも、事前にナインから渡されていたリモコンのような装置を使うと、『停止コード』が発信され、その機能を停止させて動きを封じることができる。

 

「ナインがかつて、ガーディムによって作られた存在だったというのは本当だったのか」

 

「そのようですね。しかし、その古巣を裏切ってまで、赤の他人である我々に協力してくれるとは……わからないものだ。まあ、裏切りや罠を警戒しなくてよさそうなのはありがたいが」

 

「その嫌味な物言いは後にしてくれ、伊藤。……まだ傷がふさがっていないんだろう、一緒に来てよかったのか?」

 

 古代は、自分の後ろでコスモガンを構え、周囲を警戒している男……ヤマトの保安部長・伊藤に向けて、一応は気遣う形でそう問いかける。

 

 惑星レプタボーダの戦いの折、ガーディムに拉致される森雪を助けようとして、しかし返り討ちにされて重傷を負った伊藤。

 しかしその後、奇跡的に応急処置が間に合ったことで一命をとりとめていた。

 

 実際にはそれに加えて、その直後の『エル・ミレニウム』との戦いの際、『ソーラーストレーガー』が行った事象制御による味方への支援の余波が彼にまで届き、生命維持と治癒を支援していたことや、舞人を復活させるためにサリーが放ったイノセントウェーブがさらにそれを後押ししていた、という事情が絡み合った結果なのだが……それを知る者はいなかった。

 

 短期間で動けるまでになった回復力を、佐渡医師は驚きながらも喜んでいた。

 皮肉や嫌味交じりの物言いで、決して人に好かれるたちではなかったとはいえ、ここまで苦楽を共にしてきた仲間であるのも事実。負傷や死を喜ばれるわけでもない。

 

 が、その後、この森雪救出のための部隊に、病み上がりにも関わらず志願して同行すると表明した時は、さすがに呆れられていたが。

 『あの人の下には似たような無茶ばかりする奴が集まる』という、佐渡医師の言葉の真意を知る者は……果たしているのかどうか。

 

「皆の安全を預かる保安部長として、その責務を全うするために動いているだけですよ……色々と、思うところもあるのでね。後ろから撃つ気はないから、背中は任せてくれて結構」

 

「そんな心配はしていない。ところでミレーネル君、雪の居場所は?」

 

「少し待って。この艦、脳量子波や精神波を遮断するための特殊加工が施されているみたいで、うまく探れない……でも、どうにか……よし、こっちよ!」

 

 ミレーネルの案内に従って、古代達と共に進みながら、伊藤は、ここまでの自分を、そしてヤマトの旅を思い返していた。

 

 伊藤はもともと、『イスカンダル計画』に意欲を示してこの艦に乗ったわけではない。

 それどころか、そんな計画に期待などしていなかった。彼はガミラスはもちろん、イスカンダルも、その他の異星人も……最初から全く信じてなどいなかった。

 

 彼はあくまで、自分達の真の目的である『イズモ計画』……滅びを避けられない地球から、人類を新天地へ脱出させるという計画のため、移住先となる惑星を探す目的でヤマトに乗っていたのだ。新見薫をはじめとする、幾人かの秘密の同志とともに。

 必要があれば、クーデターを起こしてヤマトを制圧することすら、計画のうちだった。

 

 しかし、並行世界への転移をはじめとする想定外の事態の連続や、結局は人間同士の争いはどこでも起こり、平和な新天地などないことを悟ったがゆえに、新見は離反。

 『イズモ計画』関連のプランはほとんど実行に移されないまま、ここに来た。

 

 それでも必要ならば、自分一人でも何かしら行動を起こすつもりでいた伊藤だったが……宇宙世紀世界でエンブリヲに利用され、真ゲッタードラゴンに関する情報を奪われ……危うく地球を救う旅路がとん挫する危機を招いたことに関しては、責任を感じていた。

 

 それがきっかけになったのか、あるいは彼もまた、長い並行世界の旅路や、異星人達との交流の中で、自覚すらしていない心変わりがあったのかもしれないが……今の彼は、仲間達と共に、イスカンダルを目指し……地球を救うという目的のために動いている。

 

 まだ、完全にイスカンダルや、その他の異星人を信頼したわけではない。

 それでも……単純にその全てが敵ではないし、自分達地球人と手を取り合う意思を持つ者達もいるのだと……そういう点については、理性の部分で理解できていた。

 

 助けてくれるというなら、地球のためにそれを利用すればいい。警戒は怠らず、何かあったときにはすぐに対応できるように、身構えていればいい。

 そう割り切って、伊藤はこの場では、ミレーネルと……ナインに、自分達の命運を預けていた。

 

(結局、性分なんだ……そう簡単に他人を信じられないっていうね。……うちの連中はどいつもこいつもお人よしだから、私みたいなのが1人くらいいた方がいいのさ。……取り越し苦労だったなら、それはそれで構わないし……そうあってほしいものだ)

 

 いつも通り表情を取り繕い、会う人のほとんどに『胡散臭い笑顔』と評される笑みを顔に張り付けたまま……伊藤は、古代達の後を追って、走った。

 

 

 

 そして、いくつかの曲がり角や扉を経た先で……ついに一行は、彼女たちを発見する。

 

「雪ッ!」

 

「! 古代君っ!」

 

 この騒ぎに乗じて脱走していたらしい、雪と……もう1人、異星人の女性。

 

 今まさに、アンドロイドの部隊に見つかって、武器もなく窮地に陥っていたらしい彼女達だったが……状況を理解した古代が即座に『停止コード』を放って無力化。

 距離や位置の問題でそれが届かなかった個体に対しては、伊藤がコスモガンを撃って破壊した。

 

 助けが来た、と理解した森は、その顔を歓喜と安堵でほころばせるが……もう1人の方の、灰色の肌の異星人の女性の方の反応は、対照的だった。

 

「その肌の色……テロン人か!」

 

 その直後、古代と伊藤を強烈な眠気が襲い、体が動かなくなる。

 何かしらの手段で攻撃されていると直感した伊藤は、とっさにコスモガンの銃口をその女性に向け……しかしその瞬間、眠気と金縛りはすぐに消え去った。

 

「待って、姉さま!」

 

「っ!? その、声は……ネル……!?」

 

 異星人の女性……セレステラが、古代と伊藤を無力化するために放った精神波。

 

 それをさらに、逆方向から放った精神波で無力化したミレーネルは……伊藤と古代をかばうような立ち位置で、その半歩前に進み出た。

 

「あなた……生きて……」

 

「やっと……やっと、会えたね。久しぶり……姉さま」

 

 

 

 

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