Side.ミツル
僕達『地球艦隊・天駆』は、帝都バレラスでやるべきことを一通り済ませた後、再び宇宙に上がった。
もちろん、隣にある星に……この旅の最終目的地である、イスカンダルに行くためだ。
ガミラスについては、沖田艦長達が、総統府の人達と話し合い、デスラー総統が没した今、最早戦いを続ける理由はないということで、お互いにもう手出しはしないこととなった。
侵略を先導していた独裁者はいなくなったことだし、これから徐々に、少しずつでもいいから、歩み寄っていければいいな、と思う。
今後は、今現在総統府を仕切ってる副総統さんと、しばらくしたら戻ってくるであろうディッツ提督らとともに、ガミラスの運営を行っていく予定だそうだ。
そんなわけで僕らは、宇宙の『花』になったELSと『第2バレラス』をわき目に見ながら、イスカンダルの指示に従って進み、その大地に着陸。
そしてこれから、イスカンダルの女王であるスターシャさんという人に会って、これまでの旅であったことを報告することになったんだけども、さすがに全員で押しかけるわけにはいかない。
なので、代表して何人かで向かうことになった。
本来なら、『地球艦隊・天駆』の総司令である沖田艦長が……というところなんだけど、残念ながら体調がすぐれないらしいので、真田副長とブライト艦長が代理で行くことになった。
それに加えて、古代戦術長と森船務長、新見情報長。
こちらから予定していたのはこのメンバーだったのだが、ここからさらに……
「あとは……あなたと、あなた」
ユリーシャさんが、刹那とナイン、そして……
「それから……あなたも」
……僕のことも指名してきた。
まあ、なんとなくそんな予感はしてた。以前のヤマトでのアレもあったことだしね。
そんなわけで、ユリーシャさんと、ナインが行くなら心配だからって半ば無理やりついてきた総司さんを含め、総勢10名で会いに行くことになった。
行きがけにメルダに、『イスカンダル猊下にくれぐれも無作法のないようにな!』って釘刺された。
しかし、呼び方『猊下』って……やっぱり、イスカンダルの女王って、宗教トップみたいな位置づけなんかな。
ユリーシャさんに対しては『殿下』だったけど……よくわからん。とりあえず偉い人か。
謁見の場で待っていたスターシャさんは、ユリーシャさん以上のものすごい美人だった。
さらさらの長い金髪に、線が細くてはかなげな体つき。こちらを憂うようなまなざし……なんか、美人過ぎてどこか現実離れしてる感じにすら思えた。
……ちょっと失礼なこと言うかもしれないけど、あそこまで行くと逆に近寄りがたい、ってレベルだ。高嶺の花どころじゃない……美術館の銅像とか見てるみたいな気分になった。
スターシャさんからは、ここまでの苦労をひとまず労われたものの、どうやら波動砲……つまりは、『波動エネルギー』を武器として使用したことがあまりお気に召さない様子。
ただ、それについてはユリーシャさんがフォローしてくれた。『彼らは力に溺れることはない』って、これまでの旅路で僕達が乗り越えてきた苦難を合わせて説明しながら。
刹那とナインを連れてきたのも、その一環だったみたいだ。
刹那は、言葉で語ることのできないELSと意思を通じ合わせ、戦いを終わらせた、相互に理解し合える可能性を体現した存在として。
ナインは、AIでありながら人の心を理解し、自分が作られた目的に縛られず、自分が正しいと思ったことをする意思を手に入れた存在として。
そのまま、一通りの話し合いが終わり……その後、今度はスターシャさんが、ヤマトにいる沖田艦長の元を訪れることに。
ただ、その前に色々と準備があるからって、一旦部屋を出ていった。
残った僕らは、一度解散してそれぞれの艦に戻ることになったんだけど……その時に、ユリーシャさんに呼び止められて、『少し付き合ってほしい』と連れ出された。
そのまま連れていかれた先……応接室のような、狭くもなく広くもない、それなりに豪奢なつくりの部屋で……先に謁見の場を出ていったはずの、スターシャさんがなぜか待っていた。
どうやら『準備がある』っていうのは方便で……本当はここで、僕とだけ会うことが目的だったみたいだ。
『なぜミツルとだけ?』って、『地球艦隊・天駆』の皆に不思議に思われないように、気をまわしてくれたらしい。
そして……予想しないではなかったけども……
「お会いできて光栄です……太極の力をその身に宿す御方」
スターシャさんは、以前にユリーシャさんがそうしたのと同じように……僕の目の前でひざまずいて、僕の手の甲にキスしてきた。
その隣で、ユリーシャさんも、同じようにひざまずいていた。
……落ち着け。悲しきかな……こういう反応も想定内だ。
ユリーシャさんがそうだったから、スターシャさんもこう来るんじゃないか、とは予想してた……そして、そうなった場合にどう返すかも、事前にシミュレーション済みだ。その通りに動け。
「以前、ユリーシャさんにもそのようにしてもらいました。その時は、彼女の口からは、僕にそんな風に敬った態度をとる理由は聞けませんでしたが……スターシャさんからは聞けるんでしょうか?」
「はい。お望みであれば、全てお話いたします。もっとも、私も全てを知っているわけではないため、いくらかは推測を交えたうえでの話となってしまうのですが……」
「それでもかまいません。お願いします。それと……このままじゃお互い気疲れしますので、普通にしてお願いできますかね?」
「……あなた様が、そのようにお望みであれば」
そう言って、2人はすっくと立ちあがり、部屋の中央にある応接用らしいソファを手で示す。
僕ら3人ともがそこに着席したところで、スターシャさん達の身の回りのお世話をしている機械人形――『イスカンドロイド』というらしい――が、お茶とお茶菓子を持ってきてくれた。
それを適度につまみながらということで、話は始まった。
「まず、何から話したものでしょうか……ミツル様は、イスカンダルの歴史について……その、恥ずべき過去の過ちについて、ご存知でしょうか?」
「かつて、波動エネルギーを兵器として運用し、他の星々を侵略していた……というものですか? 僕らの仲間が『ガーディム』から聞かされた情報で、真偽のほどは不明だったのですが……」
「その歴史は真実です。かつての昔……イスカンダルは、ガーディムや現在のガミラスと同じ……いや、ともすればそれよりもさらに、人の道に外れた行いに手を染めていました。星の海を越え、星と星の懸け橋となるものとして作り出された『波動エネルギー』を軍事転用し、いくつもの星を滅ぼし、あるいは支配下において、この大マゼラン銀河に一大帝国を築いていました」
それは数千年前の話ではあるが、それでもれっきとした事実であり……当時存在した、もう1つの巨大星間国家『超文明ガーディム』と、大マゼラン銀河の覇権をかけて争っていたという。
その結果はイスカンダルに軍配が上がり、ガーディムは文明としては滅亡。
イスカンダルの一強状態となった大マゼラン銀河は、それから長い間、イスカンダルを頂点に据えた支配体制となっていた。
しかし、それはあくまで昔の話。
今はイスカンダルは、その過去の行いを恥じ……その償いのために、滅びの淵に立たされている他の星々を、その技術や知識をもってして助けるために活動しているという。
ガミラスの攻撃によって環境を破壊され、滅びを待つのみだった地球に手を差し伸べてくれたのも、その活動の一環としてだ。
生命の存在する星には、時空を超えてその星の記憶を伝える波動が存在し、それは、その星の『エレメント』と呼ばれる物質を使って解き放たれることで、壊れてしまった環境を正常なものに戻し、時空のゆがみすらも正常なものに戻してしまえる。
それこそが、僕らが地球を救うために求めた『コスモリバース』なのだそうだ。
そして、スターシャさん曰く……ここまでは、公に記録として残されており、イスカンダルのみならず、ガミラスやその他の星々の民たちも……程度に差はあれど、歴史として知っている範囲の話であるという。
それはつまり……歴史の中で知られていない、記録には残されていない部分が存在する、という風に言っているも同然の言い回しだった。
……聞いていいんだろうか、その話。
いや……多分だけど、むしろそのへんが……僕が聞きたかった部分なんだろう。そんな気がする。
「当時のイスカンダルが、この大マゼラン銀河に覇を唱えていたというのは、今お話しした通りです……しかし、その忌むべき歴史には、転換点となった出来事がありました」
「何か、きっかけがあって……イスカンダルは道を踏み外したと?」
「他者のせいにするかのような物言いになってしまいますが……そうなります。あれは……イスカンダルが『波動エネルギー』を技術として確立し、初めて星々の海を、光を超える速さで渡ることに成功した時のことでした」
そう、スターシャさんは……自分がその場面を見ていたかのような語り口で話す。
もちろん、そんなことは実際にはない。イスカンダル人は寿命がかなり長いらしいけど……それでも、数千年も前からスターシャさんは生きているわけじゃないし。
あくまで彼女は、その歴史を知っているだけ……しかしその歴史を決して、過去の出来事に過ぎないとか、他人事でしかないものとしては受け取っていないからこその言い方なんだろう。
しかし、続けて彼女が語り始めた内容に……僕は驚いて、絶句したままそれを聞くことになる。
「当時のイスカンダルは、喜びに沸いていました。これでまた一層、銀河の星々との交流を密なものにし、友情を深めることができると。また、銀河の果てで困っている友の待つ場所へ、いち早く駆けつけて助けることができると。技術の発展のもたらす、明るい未来を確信して……。しかし、それから間もなくして……彼らに接触してきた者達がいたのです」
「……?」
「その者達と接触した後、イスカンダルは方針を一転させ……波動エネルギーを、通常の運用方法のみならず、軍事方面に転用した技術の開発を……すなわち、あなた方が『波動砲』と呼ぶ、禁断の兵器としての運用を推し進めていきました。最初は外敵に対する自己防衛のための手段として……しかし次第に。武力によって大マゼラン銀河を平定することで、銀河に平和をもたらすという、ゆがんだ思想の元に、かつて友だったはずの他の星々に恭順を迫り……従わない者達に対しては、武力でもってそれを滅ぼし、あるいは恫喝して支配下に加えていった……」
「それはまた……極端な方針転換ですね。内部からの反発とかはなかったんですか?」
「もちろんあったそうですが……当時の首脳陣は一切聞く耳を持たず、イスカンダルを大マゼラン銀河の覇者とするために政策を推し進めていきました。国内での反発も、次第に収まっていき……最後には、星々から崇拝され、敬われることに、人々は酔ってしまったと……記録にはあります」
「そうですか……それで、その『接触してきた者達』っていうのは、いったい何者だったんです? 一体その者達から何を言われて、首脳陣はそんな風に考えを変えたんですか?」
「……わかっている限りの話になりますが、その時、彼らは……」
―――星々の海を駆ける術を手にした、大マゼラン銀河の先駆けとなる者達に告げる。
―――お前達は、我々の意に反したシンカを遂げ、力を手にすることは許されない存在である。
―――もしこれ以上、お前達が誤った道筋を歩んでいくならば、その先には滅びの運命が待つ。
―――しかしもし、お前達が我らと共に歩むことを受け入れ、この手を取って忠誠を誓うなら、
―――その先に待つのは、永遠の安寧と繁栄。そして、銀河の覇者となる栄光の未来である。
「当時の首脳陣は、この託宣を受け、ある物は狂ったように歓喜し、あるものは限りない畏怖から心を病み……その果てに、彼らの使徒となることを選びました。そしてイスカンダルは……彼らによって、大マゼラン銀河の覇者となることを『許された』」
「許、された……?」
「彼らは、当時の首脳陣が、抗うことを即座に放棄してしまうほどの力を見せつけ……しかし自分達に従うならば、それらの力をもってイスカンダルを支援し、銀河の覇者となる未来を手にできるよう取り計らう、と告げたそうです。その代わりに、自分達に変わって銀河の星々を監視し、自分達の意に反する成長を遂げる文明が現れることのないように、管理せよ、と……」
……それはまた、随分と……スケールの大きな話になってきたな。
まさか、当時の銀河の覇者だったイスカンダルに……そのさらに、影の支配者みたいな存在がバックについていたとか……
そして、何だ、その……そういうことをしそうな連中に、すさまじく心当たりがあるんだが……
こことは違う世界の地球で、月に到達した人類の先駆者たちに対し、同じように接触し……地球人類は、シンカを許されない種であると、宇宙に飛び出して、その先の領域に到達することを認めないと……そう一方的に告げ、管理し、押さえつけ続けた存在を……僕は、知ってる。
「イスカンダルは、その悪魔の取引に屈してしまったのです。そして、平和と友好を愛するはずであった星は、暴力と威圧によって全てを支配する帝国へと変容し……『彼ら』の意向のままに星を管理し、時に滅ぼして……人を人とも思わぬような、暗黒の歴史を紡いでいった……っ……!」
語りながら、つらそうに、苦しそうにするスターシャさん。
必死に表情を取り繕うとしているようだが、一言一言、言葉にするたびに歯を食いしばって耐えているように、僕には見えた。
「その恥ずべき歴史は、『彼ら』が、他の宇宙の勇気ある者達によって倒され……その際に起こった次元の奇跡によって、歪んだ歴史が正されたその時まで続きました……その時を待って、ようやく私達は、解放されることできたのです」
「…………」
「以来私達は、過去のその行いの償いのために……そして、二度と同じような歴史を繰り返すことのないように……それ自体が恥ずべき行為であると知りながらも、その黒い歴史を封印しました。そして、イスカンダルの王家にのみ伝わる口伝として、ひそかに受け継いできたのです。……ここまで話せば、うすうすお気づきではないでしょうか。私たちがかつて屈した、『彼ら』が何者であったのか……あなたにはもう、見当がついているはず……」
「……色々と、呼び方がありますよね。『根源的災厄』……『全宇宙の支配者を気取る者』……あらゆる並行世界の中で、最初に『高次元生命体』の扉を開いた先駆者……その、彼らの名は―――」
―――『御使い』
「……そう……私達、イスカンダルは……この大マゼラン銀河における、『御使い』の
「…………!」
「波動エネルギーですら、彼らの力の前では、お遊びに過ぎない……『
そして、と続ける。
「私やユリーシャが、あなたをこのように敬うようにするのは……その力を、あなたがその身に、確かに宿しているからです」
「『次元力』……いえ、『
「……あなた自身、もう薄々気づいているのではありませんか? ご自分が……明らかに、普通の人間ではないことに」
恐る恐る、といった声音で、スターシャさんはさらに……僕がもう1つ、知っているなら聞きたかった事柄についても、踏み込んで語りだした。
畏怖を抱きながらも、自らの務めとして、はっきり言うべきだと……自分を奮い立たせながら、口を動かしている……ように見える。
ひょっとしたら、これから語られることは……僕にとっても、後で『聞かなければよかった』と思ってしまうような、残酷な真実なのかもしれない。
それでも……僕は、ずっと気になっていたこの疑問に対する答えを、聞きたいと思った。
「本質は異なりますが……あなたという存在を言い表すのであれば……『御使い』の残滓……それと同時に……こうも言えるでしょう……『呪われし放浪者』」
「……っ……!?」
……知ってる。
そう呼ばれていた、かつて『多元世界』に存在したある男を……そして、その特殊すぎる境遇と、その誕生の真実を……僕は、知ってる。
「ここからは私の仮説です。かつて起こった次元の奇跡……その後、砕け散った『至高神』の残骸のいくつかが、この世界に流れ着いた……そしてそれらは、至高神の『核』に近いそれだったのでしょう……長い時間をかけて、それらは自らを修復し……神器『ヘリオース』として再誕した……しかし、力を行使する上で、最も重要なパーツだけは、『修復』されることはなかった」
「……人の、意思。すなわち……オペレーター」
「パイロット、デヴァイサー……どのように言い換えてもいいでしょうが……ご想像の通りです。空席となっているコクピットの中に鎮座し、その意思でもって『源理の力』を使う、操縦者というパーツを……ヘリオースは自ら作り出した。それが……あなたです、星川ミツル」
「……っ……」
「あなたが死ぬたびに、ヘリオース……あるいはアスクレプスは、コクピットにあなたを作り出して自らに乗せた。そしておそらくは、そのたびにあなたは、パイロットとして……『次元力』を扱うものとして最適化されていき、『次元力』の扱いが飛躍的に上達したはずです。そのようにヘリオースが改良して、作り直していたはずですから……」
「…………」
「そしてあなたの中には、ヘリオースという存在から逆算的に、あるいは逆流する形で……『御使い』の1人……『喜びのアドヴェント』の因子がそのたびに流れ込み、存在そのものが徐々にそれに近くなっていった……人としての意思を、星川ミツルの人格を保ちながらも、あなたは、徐々に人という存在から離れていった……そのことを、私も、ユリーシャも、感じ取りました」
……今まで疑問に思っていたことが、どんどん解き明かされていく。
『アスクレプス』に初めて乗った時、なぜかその操縦方法が頭の中にあった理由も、
死ぬたびに復活し、そして次元力の扱いが上達していた理由も、
それに合わせて、『次元力』に関する知識や、技術面での扱い方が上達していった理由も、
後は、この金髪とか、アウラのあの言葉の意味とか……その他にも、大小の疑問が、怖いほど軽やかにほどけて消えていく。……予想通りの、残酷な真実と共に。
「このままいけば、やがて……あなた様はいつの日か、かつての『御使い』に匹敵するほどの力をその身に宿す……あるいは『取り戻す』かもしれない。12の次元の秘宝も、『超特異点』も無い今、次元の奇跡は……『超時空修復』は二度と起こりません。ゆえに、ご無礼を承知で申し上げますが……万が一、あなた様が『根源的災厄』たる存在に目覚め、力の使い方を誤ろうものなら……その時は……」
一度そこで、スターシャさんは言葉に詰まりながらも、
「その時は……あなた方の言う3つの平行世界や、天の川銀河、そしてこの大マゼラン銀河だけの問題ではない……全ての世界、全ての宇宙に、再びあの暗黒の時代がやってくる……そして、今度はその闇が祓われることは、二度とないかもしれない……私は、私達は……それが、どうしようもなく恐ろしいのです……!」
それは、スターシャさんの……かつての『御使い』の恐ろしさを知る者としての、必死の懇願だった。
ガミラスをはじめ、『イスカンダル主義』を掲げる全ての星々にとって、崇拝の対象とされるほどの存在でありながら……彼女は心の底から、僕なんかに対して、祈るように語りかけてくる。
「ですがあなた様は、既に死の淵から再生する力を手に入れている……恐らくこの世界に、あなた様を完全に滅ぼすことができる存在はいないでしょう。あなた様の覚醒を止める術は、もはや……それこそ、あなた様ご自身にも不可能なのかもしれない。であるならば、どうか……どうか、その……母なる星を思う、優しいお心を、忘れないでください……あなた様と共に歩んできた、素晴らしい仲間達との旅路を……それが、あなた様にもたらしたものを……どうか、いつまでも、忘れずにいてください……!」
それこそ……比喩も誇張も抜きで、神に祈るように。
スターシャさんは、その顔の前で両手を組んで合わせ……深々と頭を下げていた。
繰り返すようだが、僕なんかに……ここまで言われてもなお、自覚の1つも芽生えていない……彼女を慰めて励ます言葉の一つもかけられない……どうしようもない僕なんかに対して。