第91話 受け取ったもの
【▼月>日】
スターシャさんからの話は、確かに衝撃的なものではあった。
けど不思議と、それをすんなり受け入れ……納得すらしている自分がいる。
共通点、色々あるもんな……Z世界の『呪われし放浪者』こと、アサキムと。
死んでもコクピットの中で蘇ったり……強い力に触れることで自分の枷を外し、あるいは学んで力に変えるところとか……
むしろ、今まで何で気づけなかったんだろう、と言ってもいいだろうレベルだ。
なるほどなー……死んで蘇ってそのたびに強くなって、そのたびに、人間から離れていく……みたいに思って不安になってたけど、何のことはない。
そもそも僕は、もともと人間じゃなかったってオチか。……別に面白くも何ともないな。
この世界で、至高神の核の、さらにその欠片から生まれた新たな『ヘリオース』によって……コクピットの中に、欠けていたパーツとして生み出された。
そして、戦闘で、あるいはその他の理由で死ぬたびに生き返り……ではなく、作り直され、今この時まで存在し続けている。
その際に、『最適化』されていたから、僕は『死ぬたびに強くなっている』ように思えて……ひょっとしたら、知識とか技術面でもそうだったのかな?
思えば、『アンゲロイ・アルカ』や『ソーラーストレーガー』を完成させた時も……その直前に、何らかのブレイクスルーみたいなことが起こっていた気がする。
死んで生き返ったこと……戦いの中で『ヘリオース』を覚醒させたこと……『SPIGOT』の補助を受けてとはいえ、これまでにない規模で次元力を使ったこと……
そのたびになぜか、『次元力』に対する理解が深まって、停滞しつつあった研究・開発が一気に進んで……強力な武装や兵器を作れるようになった。
あれも、『最適化』の影響で、僕の頭の中に直接そういう知識とかが思いだされてきていたのかもしれない。……感覚としては、直感的に思い浮かんだ、みたいな感じだったけど……。
……小説やマンガなんかで見るような、ご都合主義なんてものは、なかったってことか。全て、必然として、理由があって起こったことだったんだ。
なお、僕の中に『星川ミツル』の記憶とか経験も入っている理由については……これもスターシャさんの予想だけど、初めて『アスクレプス』が僕を作った際に、その直前に死んだ彼の魂と混線が起こったせいで、巻き込んでしまったんじゃないかとのことだ。
そんなこと起こるのか、って思ったけど……『次元力』がらみだと、本気で何が起こっても不思議じゃないからな……。
それに、総司さんが以前、ミレーネル(敵)の精神攻撃の際に、ナインの記憶と混線したことがあったって前に言ってたっけ。こういう言い方はなんだけど、機械の記憶(記録?)と混線が起こるくらいだし、うん……あり得る気がしてきた。
総合して……これまで自分について認識していたことのほとんどが崩れ去った形になるけど……不思議と、僕に動揺は少ない。
いや、驚いてないわけじゃないし、ショックも多分受けてるんだと思う。
ただ、そのせいでこう……精神的にマイナスな感じの状態になっているかと聞かれると……そうでもなくて……すんなり『ああ、そうなのか』って受け入れられてるんだよね。
これは、異星人や異世界人、人間以外の存在との交流の中で、自分が何者だろうが『多様性』の1つとして受け入れる土壌が、知らないうちに僕の中にできていたのか……
……それとも、次元力を行使するのにおいて邪魔になるから、そういう精神的な負荷を一定以上感じないように、自動的にセーブされているのか……
……願わくば、前者であってほしいな、とは思うけど……僕が『呪われし放浪者』であり、オペレーターという名の、ヘリオースのパーツの1つだとして考えると……困ったことに、後者じゃないかと思えてくるもんだから……
自分の感情が、本当に自然なものなのか自信が持てない。
自分の頭の中のことなのに、自分の思い通りにならない(かもしれない)……ははは、ア〇ンズ様の気持ちがわかるな。
……こんな風に冗談かましていられる余裕があるのも……いや、もう考えるのやめよう。
ショックは受けてないけど、色々疲れたな……今日はもう休もう。
ミレーネル達に心配かけちゃいけないし、皆の前では、普段通りにしないとな。
【▼月<日】
とりあえず、『地球艦隊・天駆』とスターシャさんとの間で、話はまとまったようだ。
前にも言った通り、スターシャさんは僕ら……というかヤマトが『波動砲』を使ったこと……すなわち『波動エネルギー』を兵器として使ったことがお気に召さなかったらしい。
過去の自分達と同じ過ちを繰り返してしまうんじゃないか、という危惧から。
ただまあ、もともとそのイスカンダルの方針転換は……沖田艦長達は聞かされてないにせよ、『御使い』っていうろくでもない黒幕がいたわけで……まあ確かに、流されたイスカンダルに全く責任がないってわけじゃないだろうけど、それでもさ。
ユリーシャさんの説得もあって、最後にはきちんとスターシャさんも納得してくれた様子。
マジンガーZEROや覚醒エヴァンゲリオンの暴走を、意思の力で制御した甲児やシンジ。
ELSと相互理解を果たした刹那。
AIでありながら、人と変わらない心を宿したナイン。
その他にも、異種族・異星人でありながら相互に理解しあい、決して力に溺れることなく今までやってきた僕らを信じることにしてくれたらしい。
事前の話通り、『コスモリバースシステム』を渡してくれるとのことだ。
……まあ、『渡す』というとちょっと違うんだけどね……厳密には。
そもそも『コスモリバース』というのは、具体的にどういうものなのか。
今まで僕らは、それを具体的に知ることなくここまで来たわけだが、それをスターシャさんからきちんと説明してもらった。
生命が存在する星には『エレメント』という物質が存在し、そこにはその星の環境やら生命やらの記憶が、『時空を超えた波動』として残されている。
その力を、イスカンダルの時空制御技術をもって開放することで、その星の記憶の力で、汚染されたり荒廃してしまった環境を元に戻すことができる。これが『コスモリバース』の原理だ。
そしてこれを作るには、その星のエレメントをイスカンダルに持ってくることが絶対条件。
作るための環境や技術はイスカンダルにしかない。
作るために必要な材料は地球にしかない。
前に南部砲雷長とかが『助ける意思があるなら地球に直接コスモリバースを贈ってくれればいいのに』とか言ってたことがあったな。
その時は『我々はイスカンダルに試されているのかもしれない』って沖田艦長達が推察してたけど……実際にはそれに加えて、『地球を助けるコスモリバースを作るには、地球からエレメントをもってイスカンダルに来てもらうしかない』っていう理由もあったわけだ。
そして、そのエレメントというのは、宇宙戦艦ヤマトそのものであり……スターシャさんは、ヤマト自体を『コスモリバース』に作り替えることで、僕らにそれを渡してくれるそうだ。
作り変えるとは言っても、戦艦としての機能はそのまま残る。
ただ、波動砲が使えなくなるだけだそうだ。波動砲のコアシステムがあるところに、コスモリバースを作って設置するそうだから。
スターシャさんからの希望として、『波動砲を封印すること』っていうのも、受領条件の中にあるらしいので、まあ……これは仕方ないだろう。
帰り道に、波動砲を使わなきゃいけないような敵がでないことを祈るしかない。
……ついでに、今ので変なフラグが立っていないことも。
【▼月¥日】
『コスモリバース』が完成するまでの間、しばしイスカンダルに滞在させてもらい、休息をとることにした。
さほど時間はかからないそうだから、日程的な心配はないだろう。しばしの休暇と思って満喫させてもらうことにする。
この惑星、景色が何というか、幻想的できれいだし――どこか作り物じみた違和感もなくはないが――観光っていうには大げさかもしれないが、ゆっくり過ごすには向いた星だと思う。
空気もきれいで、水も……海水はともかく、川の水とかは飲み水に適している。ユリーシャさん達にきちんと断って、帰り道のための物資の補充なんかもさせてもらうことにした。
もっとも……娯楽施設なんかがあるわけじゃないみたいだから、割とすぐ退屈になりそうではあるけど……その時は『ソーラーストレーガー』でいくらでも遊んでもらおう。
それと、スターシャさんから僕らに、1つ渡されたものがある。
古代戦術長にプレゼントされたそれは、彼のお兄さん……『古代守』さんが残した音声記録だった。沖田艦長の元部下であり、真田副長の親友。新見情報長の元・恋人でもあった人だ。
今は……イスカンダルにある墓地の1つに眠っている。
冥王星での戦いで殉職したと思われていた彼は、実はガミラスによって捕虜にされており……しかし、護送中の艦がコントロール不能になって、イスカンダルに不時着。
その際、生存者は古代守さん1人であり……それを、スターシャさんが助けた。
しかし、彼はすでにその時手遅れで、延命治療を施しても長くはもたない状態だった。
ヤマトが地球を出港し、ここイスカンダルに向かっていることは知らされたが、自分の命はそれまでもちそうにない。ゆえに、こうして声をメッセージとして残したそうだ。
古代戦術長に渡されたそれを、彼を知る人も、知らない人も……一緒になって聞いた。
古代守さんの、地球を救ってほしいという願いの込められたそれを。
何人かは、感極まって涙を浮かべていたり、平静を装いつつも、拳を強く握りしめていて……皆、決意を新たにしているんだろうなということがわかる光景だった。
……このままいい話で終わらせられれば一番よかったんだろうけど、もう1つ。
古代戦術長への音声データと同じく……スターシャさんから託されたものが、もう1つある。
見た目は、占い師が使うような、透明な水晶玉っぽい何か。握りこぶしより少し大きいくらいの大きさで、傷一つ、曇り一つなく、見た目はとてもきれいだ。
しかしもちろん、これは単なる宝石ではない。
それは何と、イスカンダルに残されていた……『御使い』の時代の遺産だった。
イスカンダルの技術によって、厳重に封印処理が施されたそれを、スターシャさんは僕に『本当に必要だと思った時にはこれを使ってください』と言って、渡してくれた。
ただでさえ彼女が危険視し、怖がっていた……もしかしたら、新たな『根源的災厄』になるかもしれない僕に、そんなものを渡していいのかとも思ったけど、スターシャさんは僕を信じてくれるという。
『地球艦隊・天駆』という素晴らしい人達と共に旅をして、数多の困難を乗り越え、支え合い、理解し合い共に生きることの大切さを理解している僕ならば、力の使い方を誤ることはない。きっと、あの時代の『御使い』達とは違うはずだ、と。
そして、もし本当に必要な……それこそ、僕が『御使い』の力を取り戻してまで対処しなければならないような危機が訪れた時には、きっと『それ』が力になってくれる。そう言っていた。
……この信頼、決して裏切っちゃいけない。そう思った。