スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第95話 箱庭の終焉

 

 

 宗介とタスクが、互いのパートナーの救出に動いているのと同じ頃。

 

 連れ去られた女性達は、森雪とミレーネルの先導により、どうにか開けた庭園のようなスペースにたどり着き……しかしそこには、すぐ前にも見たばかりの顔が待ち受けていた。

 

 見る者の神経を逆なでする、こちらを見下した笑みを浮かべるエンブリヲが。

 

「その行動力もまた、君たちの魅力だ。しかし、これから私の妻となるのだから、あまりわがままばかり言っていてはいけないよ。まずは夫となる私の―――」

 

「消えろ」

 

 ―――ドスッ!!

 

 そこまで言ったところで、突如としてエンブリヲの背後に現れたミツルが、抜き放った光の剣(ライトセイバー)で背後からその胸を一突きにして貫き……同時にそこから次元力を注入。

 体内から膨大なエネルギーが光炎となって噴き上がり、一瞬にしてその体を焼失させた。

 

「……コレの名前、『リボル〇イン』とかにしようかな……まあいいや。ミレーネル、皆も……無事みたいでよかった」

 

「ミツル!」

 

 その姿と、エンブリヲが消滅した光景を見て、女性達の……特に、先頭に立っていたミレーネルの顔に、わかりやすい安堵と歓喜が浮かぶ。

 

「よかった、来てくれたのね……っていうか、今いきなり現れなかった?」

 

「ほら、最近僕、次元力で転移使えるようになったからさ。その応用……っと、残りも来たか」

 

 その言葉に、ミレーネル達が、ミツルの視線が向いている方を見ると……建物の扉を乱暴に開けて、宗介とかなめが、ソフィアの入った端末を持って出てくるところだった。

 どうやら、無事にレナード達の追っ手を振り切って救出できたようだ。

 

「お疲れ宗介。……タスクは?」

 

「別行動だ。アンジュを迎えに行っているはずだが、あいつのことだし心配は……」

 

 宗介が言い終わるより先に、別な方向の建物の影から……タスクのアーキバスと、アンジュのヴィルキスが飛翔し、戦場に飛んでいった。

 

「どうやら、あっちはうまくやったらしい。アンジュは直接ヴィルキスを呼んだようだな」

 

「ああ、そういや呼べば来るんだっけアレ……それならここにいるメンバーで救出対象は全員だね。じゃ、それぞれの艦に送るから、皆動かないで」

 

「? ミツルさん、送るってどうやって……」

 

 テッサがそう、声に出して尋ねたかどうかというタイミングで、ミツルはすでに次元力の行使を始めていて……女性達の体を、緑色の光が包んでいく。

 そして、次々にその身を一瞬で転移させ、この場から消していった。

 

 森とユリーシャ、ベラとベルナデッドはヤマトの艦橋に。

 オードリーはネェル・アーガマに。

 マリナとカガリはプトレマイオスに。

 ラクスはエターナルに。

 ユリカはナデシコCに、それぞれ転移させる。

 

 転移させた先で、突然光と共に彼女たちが現れたのに、各艦のクルーたちは驚いていたが、すぐにその帰還を喜び、保護のために、あるいは直ちに指揮系統に戻ってもらうために動き出した。

 

「なんか地球とかで留守番してるはずのメンバーまでいたんだけど……あのヤローどんだけ好き勝手に連れ出してたんだよ。宗介、かなめちゃんはどうする?」

 

「大佐殿と一緒にダナンに頼む。千鳥、大佐殿もよろしいですか?」

 

「あ。うん……」

 

「え、ええ……ミツルさん、こんなこともできるようになったんですか? 個人単位のジャンプ……いえ、量子転送? その……すごい、ですね……」

 

「どうも。じゃ、送ります」

 

 そう言って、かなめとテッサ(と、ソフィア)をダナンに送り、最後に……

 

「じゃあ、ミレーネル。サリーちゃんと一緒にソーラーストレーガーに送るから。で、戻して早々悪いんだけど、艦の操縦頼めるかな? 僕は『ヘリオース』で出るから」

 

「いいけど……何しに? って……聞くまでもないか」

 

「そりゃあもちろん……」

 

 言いながら、ミツルは宗介とちらりと視線を交わす。

 宗介もまた、これからやるべきことを理解していて……こくりと力強くうなずいていた。

 

「……今度こそ、決着(ケリ)をつけに」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 北辰、ドゥガチ、ゲール……アマルガムの幹部達。

 待ち受ける強敵達を次々に撃破。

 

 突入したタスクと宗介により、連れ去られたアンジュとかなめ、その他の女性達も無事に救出され……それぞれ元居た場所に、ミツルの次元転移によって戻された。

 

 奪ったはずのものが次々と取り戻され、何一つ自分の思い通りにならないことに業を煮やしたエンブリヲは、自らヒステリカで出撃。

 

 時を同じくして、ベリアルに乗り込んだレナードもまた、戦場にその姿を現した。

 

「この私に選ばれていながら、こうも不快な思いにさせてくれるとはな……優しく手折るつもりでいたが、少しばかり躾をしてやらねばならなぐおっ!?」

 

 ヒステリカにエネルギーを漲らせ、戦場全体を見下ろしながら、いら立ち交じりに放った言葉だったが……その言っている最中に、宗介が放った空対空ミサイルが直撃。

 

「獲物を前に舌なめずり……三流のすることだ。ミスルギ皇国での戦いから、何一つ学ばなかったと見えるな」

 

「貴様らっ……レナード、何をしている! さっさとそんな雑魚は片付けて、奴らに身の程というものを教えてやれ!」

 

「俺に指図するな、クズが」

 

「何っ!?」

 

 こちらはこちらで、宗介の乗るレーバテインと対峙しているレナードに対して怒鳴りつけるエンブリヲだったが、仮にも共犯者であるはずのレナードからも、本気の嫌悪と共に罵声を叩きつけられ、唖然とする。

 しかし、すぐにその事実もまた、エンブリヲの怒りに火をつける要因となった。

 

「どいつもこいつも……っ! だが、この時の狭間の世界では私は無敵だ! 貴様らごときがどれだけ足掻こうと、私にその刃が届くことなど無いと知れ!」

 

 言うが早いか、エンブリヲは今の宗介のミサイルでできた損傷をたちまちに直してしまう。

 新品同様の姿になったヒステリカを見て、ちっ、と舌打ちの音を響かせるアンジュ。

 

「ミツル! あれってエグゼブ一味が使ってたのと同じ『魔のオーラ』ってやつじゃないの? だったらあんたの『事象制御』か、サリーのイノセントウェーブで……」

 

「違うよアンジュ! あれは次元干渉とは別物! イノセントウェーブじゃだめだわ!」

 

 と、それを遮って割り込む形で、ダナンの艦橋からかなめが声を張り上げた。

 

 ウィスパードの知識に加え、ソフィアがもたらした情報も加えて解析・推察を進めていたかなめは、エンブリヲが何度も機体を、そして己自身を復活させる仕組みを見破っていた。

 

「あいつの不死身はこの空間そのもののせいよ! この『時の狭間』は色々な並行世界にアクセスできる空間なの。あいつは他の平行世界の自分自身を観測して、その情報と同期させることで、何人も同時に出現したり、傷ついても死んでも、即座に最善の状態に戻したりしてるのよ!」

 

「すまん千鳥! もう少しわかりやすく頼む!」

 

「要するに、パソコンで行うコピー&ペーストと同じだ。エンブリヲは並行世界の自分を利用して『万全な自分』『万全な機体』のデータをあらかじめクリップボードにコピーしておき、損傷するたびにデータを貼り付けして上書きしているということだ」

 

 真田副長がさらに補足する形で付け加えた。

 

「そういうこと! つまりこの空間にいる間はエンブリヲは何度でも復活しちゃうの! だから……この世界をぶっ壊せ!」

 

「世界を壊す……それなら!」

 

 かなめの示した突破口。それを切り開くべく、アンジュはヴィルキスのコクピットで『永遠語り』の歌を響かせる。宇宙の法則をメロディーに置き換えた、世界を破壊する歌を。

 しかし、それをエンブリヲは、無駄だと断じてあざ笑った。

 

「その歌は確かに宇宙を支配し、世界を破壊するだけの力を持っている……だが、君達の知っている『永遠語り』のメロディーは、本来の、完璧な『永遠語り』の一部でしかない! 完璧な永遠語りを再現するためのメロディーは、始祖連合国にも、竜の民にも伝わってはいないのだから。必要なハーモニーが完成しない! 理を破壊するには足りないのだよ!」

 

 アンジュやサラマンディーネの知る歌は、全体の一部でしかなく、それだけでは完成しない。

 ゆえに、『ディスコード・フェイザー』という、ただ破壊だけを引き起こす兵器を起動させることはできても、世界を、理そのものを壊すことはできない。

 

 そう言って嘲笑うエンブリヲだったが……その直後、余裕の笑みが見事に消失した。

 

 ヒステリカのコクピットから観測できている、この空間……『時の狭間の世界』の状態を見て。

 

「これは……どういう事だ!? 『永遠語り』が……統一理論のメロディーが、完璧なハーモニーを生み出しているだと!? 馬鹿な、始祖連合国も竜の民も知らないパートを誰が歌っている!?」

 

「この歌……エターナルからか? ということは……」

 

「ラクス……!」

 

 いち早く気付いたのは、シンと、キラ。

 それを聞いた『地球艦隊・天駆』の面々や、驚愕するエンブリヲの視線が向けられた先……エターナルの艦橋で歌を紡ぐラクス。

 

 失われたはずのメロディーは、タスクを最後の末裔とする『古の民』と古くから交流のあった者達へと……そして、現代のコーディネーターの歌姫へと受け継がれていた。

 予想だにしなかった事態に狼狽するエンブリヲだが……すでに遅く、自分を無敵たらしめていた空間は崩壊を始めている。

 

「やめろアンジュ! やめろラクス! 馬鹿な、私の世界が……『時の狭間』が……! や、やめろぉぉおおぉぉっ!!」

 

 最早最初の余裕など消えて失せたエンブリヲの悲鳴が響く中、アンジュとラクスの歌は、『時の狭間』に響き渡り……世界は、ほどけるようにして消えて失せた。

 

 

 

 次の瞬間には……景色は一変していた。

 

 そこにあったはずの、地球が3つ連なった光景はどこにもなかった。

 『真実のアルゼナル』はすぐそこにまだあるようだが、見る限り、通常の宇宙空間だ。

 

「あの空間……『時の狭間の世界』とやらは、無事に破壊できたようだな。それで我々やあの建物は、通常空間にはじき出されたのだろう」

 

「なるほど。つまり……あの野郎はもう復活できねえってことだな!?」

 

 隼人の言葉で状況を理解した竜馬は、真ゲッター1を超高速で宇宙空間を飛翔させる。

 

「なんという、ことだ……私の世界が……真実のアルゼナルが……はっ!?」

 

 ショックのあまり愕然としていたエンブリヲは、それに反応が追いつかず……横一文字に振るわれたトマホークで機体を真っ二つに両断される。が……

 

「……っ……この私を……なめるな!!」

 

 次の瞬間、ヒステリカは即座に元の状態に回復した。

 

「『時の狭間の世界』がなくなっても、完全に並行世界を観測できなくなったわけではない! 今まで蓄積したデータがあれば、ヒステリカ自身の力のみでアクセスすることは可能……お前達を全員始末してから、また新たにあの世界を構築するまで!」

 

「けど、あの空間がなくなった以上、あんたの再生はもう無限には行えない。再生が追いつかないペースで倒し続ければ、ダウンロードしきれなくなってパンクするはずよ!」

 

 かなめに言い当てられたエンブリヲは、自分が今、かつてないほどに追い詰められた状況にあることを改めて認識させられる。

 それに追い打ちをかけるかのように……ギラギラとした凶悪な笑みを浮かべて、アンジュが無慈悲に言い放つ。

 

「なるほど。つまり……限界がきて死ぬまで、ひたすら殺し続ければいいってことね!」

 

「この期に及んで、まだ私にそのような口を利くか……アンジュ! こうなれば手段は選ばない……君は、力ずくで私のものに……」

 

「何が『こうなれば』よ! あんたは最初からそうだったじゃない!」

 

「そうでなければ、人の弱みに付け込むか……」

 

「人の大切にしているものを盾に取るか……」

 

「人を騙すかじゃない!」

 

 サリア、エルシャ、クリス……一度はエンブリヲに惑わされた3人が、今度は真っ向から彼を否定する。

 仲間を、親友を惑わされ、奪われかけたロザリーやヴィヴィアンもまた怒りをあらわにし、

 

「要するにロクでもないやり方しか出来ないって事だな!」

 

「そこでクイズです! あいつに相応しい名前は何でしょう!」

 

「史上最悪のクズ野郎!」

 

「存在が許されない最低人間!」

 

「エンブリヲ! お前は神でも、調律者でもない!」

 

「ただの下衆よ!」

 

 ヒルダが、サラマンディーネが、ジルが、そしてアンジュが、立て続けに、遠慮も何もない罵倒をぶつけ……常の余裕はきれいにどこかに消えて失せた。

 額に青筋を立てるエンブリヲは、見下してきたノーマ達にこれでもかと自分を否定され、怒りのままに力をふるおうとして……

 

「言っとくけど」

 

 その瞬間、真上から突如として太陽のような火球が落下してきて直撃、大きく機体を破損させながら体勢を崩した。

 

「お前にムカついてるの、女性陣だけじゃないから」

 

 その眼前に、ダーツか何かを放り投げたような姿勢のヘリオースが移る。

 さらにその後ろからは、魔神パワーによってその身を変容させたマジンガーZEROと、ブラックサレナが、

 

「これまでさんざんいろんな場面で邪魔をしてくれて……」

 

「誰も聞きたくもない、耳が腐るようなナルシスト語録を披露して……」

 

「面白半分に戦いをあおり、人々が望んだ平和を歪ませ……」

 

「挙句、てめえのわがままで地球を滅ぼそうとするようなスットコドッコイが!」

 

 さらにダブルオークアンタ、そしてヴァングネクスが……

 

 いや、その他の、『地球艦隊・天駆』の男性陣の機体が前に進み出る。

 

 花嫁にするなどという妄言を残して仲間を攫われ……とりわけ、自分の恋人や妻をその毒牙にかけられそうになった者達からは、途方もない怒りがほとばしっている。

 

「ハイクを読め、腐れ外道。お前に、明日は、来ない」

 

 

 

 

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