もっといろいろ好き放題やってみたかった欲がここにきて……
……とりあえず、どうぞ。
西暦世界の戦乱を闇から支配していた巨悪・ブラックノワール。
エグゼブが扱っていたものとは比べ物にならないほど強力な『魔のオーラ』によって、洗礼ロボ達の強化と再生に加え、サリーのイノセントウェーブをもはねのけた。
『ソーラーストレーガー』の次元干渉すら凌ぐレベルの力の前に、さすがの『地球艦隊・天駆』も苦戦するが、周囲の次元の支配の基点となっている個所に『ヘリオース』が突貫し、そこに一転集中で次元力を叩きつけたことで、周囲一帯に及んでいたブラックノワールの支配が揺らいだ。
その隙を見逃さず、『地球艦隊・天駆』全員の意思が一つになったイノセントウェーブに加え、波乱万丈がウォルフガングから受け取った、ドン・ザウサーの遺産『対次元干渉波動光』によって、ついに闇の支配を打ち破り、形勢を逆転することとなる。
『馬鹿な……ありえない! イノセントウェーブなど、ゲームを盛り上げるためのアイテムの1つとして設定しただけのものなのに……!?』
「順調にメッキがはがれてきたな、悪の親玉」
「お前の意思も矛盾だらけの世迷言も関係ない! 俺達全員の力を合わせて、お前という悪はここで必ず倒す!」
冷静に言い放つアキトと、もはや一点の曇りもない決意と共にそう言い放つ舞人。
真田とルリに己の存在の矛盾を指摘されて論破され、絶対の存在などではないことを突き付けられて狼狽するその姿は、自らが豪語する神などからは程遠いものだった。
既に『地球艦隊・天駆』には恐れなどなく、その目に映っているのは……今までと何ら変わらない、倒すべき1つの『敵』としてのブラックノワールのみであった。
「それより……ミレーネル! ミツルからはまだ応答とかないの?」
「あいつが生きてるのは確かなんだよな!?」
アンジュとヒルダが、『ソーラーストレーガー』を操縦しているミレーネルにそう尋ねると、ミレーネルは通信の向こうで、せわしなくコンソールを操作しながらそれに応えた。
「それは間違いないわ、あの瞬間、次元震が起こってできた時空の亀裂の存在を観測できてるし……ごく微弱にだけど、ヘリオースが放つ次元力の反応も届いてるから。ただ、こことは別な空間にいるみたいで……詳しい観測はできないのよ!」
「でも……無事なのは確かなんですよね?」
「それなら大丈夫だよ。ミツルさんもヘリオースも強いから、すぐに帰って来るって! でなきゃさっさとこっちを片付けて、私達が迎えに行ってもいいし」
ミランダとココに続けて、ジルもその見立てを肯定して言う。
「そういうことだ。あいつはきっちり仕事を果たした……なら、後に残った邪魔者の始末くらいは、私達がやらねば格好がつくまい! 正念場だぞ小娘共、気合を入れろ!」
「「「了解!!」」」
かつてのアルゼナル司令の名は伊達ではないとわかる一喝で少女たちをまとめ上げ、自らもラグナメイル『レイジア』のブースターに火を入れて飛翔するジル。
舞人やアキトがブラックノワールとの直接対決に進み出る中、その周囲には、ブラックノワールの手勢が無数に跋扈している。
洗礼ロボに加えて、AI制御のモビルスーツやパラメイル(ラグナメイルの量産型)、マジンシリーズやインベーダー、ガーディムの無人機すらも呼び出されていた。
それらを一掃し、舞人達の邪魔をするのを阻止するため、パラメイル第一中隊をはじめ、『地球艦隊・天駆』の戦士達は一斉に前に出る。
ブラックノワールとの戦いは、いよいよ最終局面を迎えようとしていた。
……そして、それと同じ頃。
そことは違う空間で……こちらはたった1人で、死闘を繰り広げている者がいた。
☆☆☆
「馬鹿な……」
どろりと濁ったような異様な空間に、轟々と燃える炎。
その中心に顔のような文様が浮かび上がっている……『闇の帝王』は、目の前に広がる光景を見て……信じられないといったような声音で、そうつぶやいていた。
自力では脱出困難なこの空間に、標的である『ヘリオース』を引きずり込んだところまでは、想定通り。
ここでそれを討ち、その力を食らうことでさらに己の力を増し、より盤石なものとした上で物質界に復活する。それが、闇の帝王の目論見だった。
そのために、その力でもって。戦いの中で散ったミケーネの戦士達を復活させ、その一斉攻撃でヘリオースを蹂躙……哀れな贄はなすすべなく破壊されるはずだった。
しかし……目の前に広がっている光景は、その全く逆。
「ぬっ、が……ぐああぁああぁ!?」
また1体……剣を手に切りかかった一柱が、その剣ごと体を両断され……機械神としての巨体を風化させて消えていく。
その向こうに、両手に持った剣を振りぬいた姿勢のヘリオースがたたずんでいた。
「おのれぇえ……下等種族ごときが、生意気な!」
「すぐにその腕を折り、脚を砕き、頭蓋を踏みつぶして醜い屍をさらしてくれるわ!」
「……あまり強い言葉を遣うなよ……弱く見えるぞ?」
そんな言葉と共に、ヘリオースの全身から光が放たれ……その身を中心に太陽が顕現したかのようにまばゆくその周囲が照らされる。
次いで放たれた光炎が全方位に広がり、襲い掛かろうとしていた神々を焼き滅ぼしていく。
その中を歯を食いしばって突破し、ヘリオースの首元めがけて鎌を振りかざす別な一柱。
しかしその一閃はむなしく空を切り、降りぬいた瞬間、切り落とされた自らの両腕と共に、鎌は明後日の方向に飛んでいった。
「なっ……!?」
そして、両腕ごと武器を失ったミケーネ神は、喉元に剣を突き立てられ……そこから膨大なエネルギーを流し込まれる。
体中から火花が散り、機械の体が砕けて裂けて光が漏れ出し……数秒と待たずに内部から爆散する末路を辿った。
血を払うように剣を振るうヘリオースは、そこにさらに襲い掛かろうとしていた……今度は、ミケーネの戦士たる機械獣を迎え撃つ。
火炎や突風、巨大な弓矢に分裂しての攻撃……全方位から降り注ぐそれらを全て紙一重でかわし……上空高く飛翔するヘリオース。
そして両掌に、すさまじいエネルギーが凝縮した光弾を作り出し、射出。
機械獣達が密集している中で2つ同時にさく裂させ……立ち上った閃光のような火柱が、放たれた攻撃ごと上塗りしてそれらを焼き滅ぼした。
「おのれ……これ以上好き勝手にはさせぬぞ! 勇者と言われた我が力、思い知るがいい!」
その爆風の中を突っ切って突撃して来るのは、骸骨のような顔に双頭の龍のような頭を両肩から生やした、ミケーネの機械神の中でも突出した存在……ガラダブラである。
双龍の頭から破壊光線を放ってけん制しながら、猛烈な勢いで突き進み……その両腕をヘリオースめがけてたたきつける。
しかしその両腕は、ヘリオースの全身を覆うように展開した不可視のバリアによって止められ、その身には届かない。
爪のみならず、ほぼゼロ距離で放った光線もまた同じだった。
「ぬぅう……小癪な、こんな壁など……がぁっ!?」
そのバリアの向こうから、ヘリオースは次元力の波動を叩きつけてガラダブラを吹き飛ばし……それと同時に動きを封じる。
「ガラダブラ殿!? おのれ、一体奴は―――」
あしゅら男爵が、しかし何か言い終わるより早く……飛翔したヘリオースはその隣をすり抜けるように移動しながら、手に持った剣を一閃させる。
赤と黒の刀身を持つ、禍々しい大剣……『インテグラル・ディスキャリバー』が放ったその一撃は、寸分たがわず、『機械獣あしゅら男爵』の体の真芯を切り裂き……その命に届いていた。
「消えろ、その原罪と共に」
「ばか……な……!」
あしゅら男爵が炎の中に消えると、今度はヘリオースは手にした剣を天に掲げ……その瞬間、剣は姿を変え……白と金の神々しい装飾に、天まで届かんばかりの巨大な光の刀身を持ったそれ……『聖剣コールブランド』に変わる。
指一本動かせないままに、振り下ろされたその刃の直撃を受けたガラダブラは……空間そのものが砕け散るような衝撃と、暴力的なまでのエネルギーの迸りの中に飲まれ……断末魔すら聞こえることのないままに粉砕された。
「なんと恐ろしき力よ……だがだからこそ、その力、我らのものとなれば、この宇宙全てに覇を唱えるにふさわしい力を手にできよう……! いざ、参る!」
小細工は不要とばかりに真正面から飛び込んでいく暗黒大将軍。
走りながら、その目から怪光線を放ってヘリオースをけん制し、射程内まで一気に距離をつめたところで、手にしたダークサーベルを振りぬいた。
「ぬぅっ!? 何だ、これは!?」
しかし、降り抜いたはずの剣は……突如ヘリオースの体から『生えた』、無数の赤い結晶のような棘によって止められ……しかも全方位に剣山のように生えるそれは、暗黒大将軍の体を突き刺し、串刺しにして空高く持ち上げてしまう。
その、持ち上げられた先に、飛び上がって回り込んだヘリオースが、その手から、やはり血のように赤い結晶を、棘のように何本も生やし……それを叩きつけて突き刺して、さらに動きを封じる。
「ぐ、ぐあああぁ……な、何だこの棘は……!? ち、力が抜けていく……」
「ジ・エンド・オブ・マーシレス。終わりなき悪夢をここに。そして……」
続けざまにヘリオースは、手のひらをかざすようにし……すると、その目の前の空間が、巨大な怪物の顎(あぎと)のように上下に開く。
「開け、尸獄門……!」
その空間の裂け目の向こうから、全てを塗り潰すような漆黒のエネルギーの奔流が放たれ……鉄砲水のごとき勢いで、暗黒大将軍を飲み込んだ。
その本流はさらにとどまることを知らず広がっていき、周囲にまだ残っていたケドラやミケーネ神、機械獣達をも軒並み飲み込んでいった。
「よみがえったとこ悪いけど……そのままあの世に帰ってもらう」
「ぬ、ぐ……ぐあああぁあぁあ!? も、申し訳ございません、闇の帝王様ぁぁああ……!!」
まるで死の洪水に押し流されたように、暗黒大将軍達はその空間から跡形もなく消し去られた。
そこに残るは……最初にこの場に現れた、闇の帝王ただ1人。
「馬鹿な……!? ミケーネの戦士達が、こうもたやすく……なぜだ!? 以前に戦ったときは。貴様の力はここまでのものではなかったはず……このわずかな間に、いったい何があったというのだ!?」
「さーて……何だろうね? ……実際のとこ、僕自身もわかっちゃいないんだけど……しいて言うなら……自分のルーツを知って、多少なり『自覚』が出てきたから……かな? 今僕、本当に……思いついたこと、何でもできそうな気分なんだ」
蹂躙の後の静寂が支配する空間で、ゆっくりとこちらを振り向くヘリオース。
通信越しに聞こえるその声は、戦いの激しさに対して不釣り合いなほどに落ち着いたもの。
(体の奥から、力がどんどん湧き出てくる。際限なく、底が見えないくらいに。それこそ、本当に無限に湧き出てくるんじゃないかと思うほどに……。これが、ひょっとしたら……スターシャさんの言っていた、僕の本当の力、なのか……?)
力を振るいながらも、ミツルはその内心で、少なからず困惑していた。
使っても使っても。自分の力に底が見えない。
1分前、1秒前、いや一瞬前よりも色々なことができそうな気がして……その感覚に押し流されて、思いついたことを、あるいは『思い出した』ことを全て試したくなる感覚。
まるで、あふれ出てくる力そのものが『もっと使え』『何でもいい、やりたいようにやれ』『お前が知っている全てを見せてやれ』と急かしてくるような感覚。
それに困惑しつつも、身を任せると……自分でも驚くほどの力がいとも簡単に顕現するのだ。それこそ、機体の構造や、力や技の性質すら無視してでも。
その困惑を……奇しくも、闇の帝王もまた、ごくわずかな違和感として感じ取っていた。
(いったい何なのだ、奴の力は……ただ単に強いというだけではない。無限に湧き出る間欠泉のような、タガが外れてどんどん止まらなくなっているような……振り回すつもりで振り回されているようにすら見える。どこからこれだけの力が……。本当に奴は一体何者なのだ!? 一体何が起こっているのだ!?)
彼の知る、こことは別なとある世界に存在した戦士達の技、あるいは武器の数々を、いとも簡単に再現し……その力でもって、鎧袖一触、ミケーネの神々を容易く滅ぼしていく。
その姿に、かつてない脅威というものを感じ、動揺しながらも……闇の帝王はそれでも、ミケーネの支配者としての意地ゆえか、退くことをよしとしなかった。
動揺を上塗りするように、怒りと憎しみのままに、体から放った地獄の業火でヘリオースを焼き滅ぼそうとして……しかし、
「とぉあっ!!」
「ぐふぁ!?」
それを正面からぶち抜いてきたヘリオースの飛び蹴りが直撃。
非実体のはずの闇の帝王の体を、しかしその蹴りは見事にとらえて……宇宙空間に蹴り上げる。
「まだまだぁ!」
その飛んだ先に一瞬で回り込んだヘリオースのかかと落としがさらにその身をとらえ、地に叩き落し……
しかしやはり、落下するより早く回り込んだヘリオースの蹴り上げで再び打ち上げられる。
それをさらに飛び回し蹴りで弾き飛ばすと、ヘリオースはその身にまとったエネルギーを開放。
溢れだしたエネルギーは、無数の隕石のような形となって放たれ……吹き飛ばされた闇の帝王を追って次々と飛来し着弾、炸裂していく。
その爆風にもまれ、さらにあまりのダメージで身動きの取れない闇の帝王めがけて……
「さらばだ……闇の帝王!!」
「ぐ……ぐあああぁあああぁあっ!?」
体を『Y』の字にしたヘリオースの、渾身のドロップキックが直撃した。
単なる肉弾技ではなく、極限まで高めた次元力と共に放たれたその一撃は……衝撃と同時に巻き起こったエネルギーの奔流の中で、闇の帝王の命をがりがりと削り、砕いていく。
あまりの力の迸りに、次元が揺らぎ、空間に亀裂が入り……ついにはそこに穴が開いた。
落下するようにそこに落ちていった闇の帝王は……今まさに、ブラックノワールを打ち倒した、『地球艦隊・天駆』の皆が集まるその真ん中に落下した。
そして、その穴を通って、ミツルも通常空間に復帰する。
「な、何だ!? 宇宙空間に……炎!?」
「いや、違う……あれは、悪意の塊だ。だが、もうすでに……」
「あ、ミツルさん帰ってきた、お帰りー!」
突如として現れた、得体のしれない新たな敵(推定)。
しかしアムロは、それがすでに燃え尽きる寸前の……文字通り風前の灯火であることを、いち早く察していた。
その一方で、ココと……その他数名は、同時に帰還したミツルの無事を純粋に喜んでいた。
そのミツル自身も、『ただいまー』と、緊張感に欠ける物言いでそれに答えながらも……もはや虫の息というしかない状態の闇の帝王を、油断なく残心し観察する。
「お、おのれ人間どもめ……だが、いい気になっていられるのも今のうちだ! 我は不滅……今はまた朽ちてこの世界より消えようとも、いつの日か必ず蘇る! その時は、貴様らを…………ぬうっ!?」
『地球艦隊・天駆』の面々が見守る前で、消える寸前の闇の帝王はしかし、いずれ復活し、再び自分達の前に姿を現すと告げる。
しかしその途中に、突如として言葉を切り……
(こ、これは……!?)
その時、闇の帝王の目には……ある光景が見えていた。
それは、滅びに瀕した闇の帝王が、その直前のほんの一瞬に垣間見た……因果の果ての、可能性の未来。
(あ……ああああ……)
ほんのわずかな時間だけ見えたそこには……絶望があった。
(あああ……ああああああ……!!)
宝石のように星々がきらめく、神秘的な美しさを持つ、不思議な宇宙が広がっている。
その空間に仁王立ちする、闇の帝王をもってしてすら、理解を超えた存在達。
黒鉄の城と呼ばれた、『0』を背負った終焉の魔神。
惑星すら容易く破壊するであろう巨体を持った、永遠の戦いの中を生きるゲッターの皇帝。
幾億の機体の合体によって誕生した、宇宙怪獣から太陽系を守る鋼の女神。
それらをもはるかに上回る大きさの、銀河をも踏みつけ砕く、天元突破の紅き螺旋の戦士。
胸に獅子の貌を持ち、光を超えた速さの黄金の腕で全てを砕き光に変える、最後の勇者王。
青い体と輝く光背を持ち、天地開闢の光すら支配し放つ、真の力を開放した重力の魔神。
逞しき白い巨体で破界の拳を振るい、黄金の獣達と共に天の獄を戦い征く、次元の将。
そして……黄金の体に6枚の翼をもつ、全ての宇宙の終わりを見届けんとする、至高の神。
その他にも、数多の超越者たる者達が待ち受ける光景。
戦いの果てに待ち受ける……宇宙そのものを揺るがし、あらゆる法則を破壊し、そしてまた創り出し……その永遠を戦い抜く者達を前に……闇の帝王の心は……完全にそこで、折れた。
「だ、駄目だ……勝てぬ! 因果の果てに待つのが、こ奴らでは……絶対に勝てぬ! う、うあああぁぁああ―――!!」
☆☆☆
「『闇の帝王』だっけ? 何か最後、直前まで『いずれ復活する!』とか言ってたくせに、やたら弱気になってたように見えたな」
「己の限界を悟って絶望したのかもしれんな。何にせよ、もう出てこないでいてくれるのならば、それに越したことはないさ」
気になったように勝平が言ったことに、鉄也はそう返す。
その隣にいて、マジンガーZEROに乗っていた甲児は、『闇の帝王』の気配を以前に知っていたような気がしていたが、すぐに消えてしまったために、その正体に気づくことはなかった。
「……まあ、気になるならミツルに聞かせてもらえば、何かわかるんじゃないか? 空間の裂け目から同時に出てきたってことは、ミツルが戦ってて……アイツを倒したんだろうし」
「それもそうだな。なあミツルの兄ちゃん、どうだったんだ?」
「勝平君、その前に早く艦に戻ってください。機体の修繕とチェックを直ちに行いますので」
と、横からルリが割り込んで声をかけてくる。
思わぬ足止めを食ってしまった『地球艦隊・天駆』。
特に致命的な遅れではないとはいえ、一刻も早く地球で待つ人々や、『時空融合』を食い止めてくれているアウラを助けるために、彼ら・彼女らは準備ができ次第、地球に戻る旅を直ちに再開するつもりだった。
そのために、出撃した各機は直ちに拠点としている戦艦に帰還するよう、各艦から通信が入り……続々と各艦に戻っていく。
機体を休ませるためというのはもちろん、想像以上の激戦で疲弊した、自分自身が休むためにも。
仕方ないから後で聞くか、と思い直した勝平は、ふと、今話しかけようとしていたミツル……の、乗っている『ヘリオース』の方を見る。
彼もまたすぐに『ソーラーストレーガー』に帰還するかと思っていた勝平だったが……予想に反して、ヘリオースはその場からなかなか動かず……とどまったままだった。
不思議に思って、勝平はザンボット3を動かしながらも通信を開き、
「おーい、ミツルの兄ちゃん、何やってんだよ。ほら、戻ろうぜ? まあ、行く先違うけど」
「そうよミツル、疲れたんなら戻ってから休みなさい。ほら、もうちょっと頑張って」
「なんなら私たちで運びましょっか? ね、ミランダ?」
「う。うーん……それはその……機体の大きさがちょっと違いすぎないかな……?」
さっさと帰るように声をかけるアンジュや、茶化すように言うココとミランダ。
そんなやり取りを、皆が苦笑と共に見ている中……
「……ミツル……?」
ミレーネルが、最初に……様子がおかしいことに気づいた。
宇宙空間を隔てて離れていても、この程度の距離ならば……いつも問題なく、ミツルの意思を、多少なりとも感じ取れるはず。
それがしかし、今は……
「……ミツル……ミツル!? ちょっと、返事して!?」
「……おい、ミツルどうした、お前無事か!?」
ミレーネルの様子に、続いて総司が、さらにほかの面々も……徐々に、様子がおかしいことに気づき、顔色を変えていく。
そんな空気の中にもかかわらず……返事は、ない。
よくよく見れば、ヘリオースは……内側から一切の操作がされず……それどころか、姿勢制御用のセンサーさえ働いていないのか、ゆっくりと傾きながら……まるで、川を流れていくように、宇宙空間を漂流し始めて……
「叢雲、ヘリオースを回収しろ! 新見情報長、佐渡先生に連絡を。救護室に急患受け入れの要請を頼む」
「は、はい!」
「了解しました! ヴェルト、そっち持って手伝ってくれ!」
「心得た!」
「ミツル君、聞こえる? 聞こえたら返事して!」
総司達が協力してヘリオースを回収する中……艦を放り出してかけつけることもできず、それを見送るしかできなかったミレーネルの脳裏には……なぜか、ひどく嫌な予感がよぎっていた。
これを最後に、もう2度と……ミツルと言葉を交わすことができなくなってしまうかもしれない……
理由も何もわからないのに、突然そんな予感が胸の中に沸いて出て、
しかもなぜか……その時はもう、すぐそこに迫っていると、頭の中で何かが語る。ざわめく。
その意味を、真実を、彼女が知ることになるのは……まだ、もう少し後のことだ。