最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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囓る者・蝶妃装

「森の掟の居場所を真っ二つにしてしまったんだが、これはもう討伐したということで良いのか?」

「……多分」

「多分て、これで倒してなかったらなかなか面倒くさい事になるんじゃないのか」

「いや、支配の線は消えたように感じる。実際に確認しない事には断言ができないということだ」

「……死体の確認か」

 

 とりあえず、ぱっかんさせた木のところまで行くしかないか。幸い俺の攻撃のせいで直線の道ができてしまっているから行きやすい。

 

「……あのう、森を破壊した分のお咎めとかってあります?」

「本当なら死をもって償って貰うところだが、今日は不問とする」

「以後気をつけます……」

 

 とりあえず今すぐ俺が裁かれるようなことはなさそうだ。

 

「それじゃあ、腕の試運転を兼ねて」

 

 新しく生えたこの腕の使い方は【熟練工】が教えてくれる、俺がそのまま走るよりもこれを伸ばして引っかけた方が早い。と良いな。

 

「よっと」

 

 腕を伸ばし、木の幹を掴む、引き寄せる、その繰り返し、繰り返す毎に速度は上がり、そして。

 

「うおぁああああああああああああああああ!!?」

「シン!? 大丈夫か!?」

 

 俺の能力の限界を迎えてバランスを崩した。

 

「かー、やっぱりキツいか。速度が一定以上出ると制御できないな。いっそのこと両腕落ちてればもっと安定したかもしれない」

「……シンがもう片方の腕も、そうしたいって言うなら」

「アルカ、冗談だ」

「そうしたくなったら、いつでも言ってくれよ。オイラの準備はいつでもできてるからな」

 

 うーん、これ本当にやるな。あまり迂闊な事を言わないようにしよう。

 

「さて、なんだかんだと木の下まで到着したわけだ」

 

 ある程度の速さなら出せることが分かって良かった、調子に乗るとやはりろくな事がない。

 

「それらしきものは、ないな」

 

 地下にいた奴よりは小さいって話だが、それでも一目見たら分かるくらいの感じだと思う。それでぴんとこないってんだから。実は倒せていないのか。

 

「パチ」

 

 静電気、櫛からの? 動きの補助は今必要ない、とすれば、これは警告の類。

 

「くそっ!?」

 

 勘に任せて身を捻る、何がどんな攻撃をしかけてくるかは分からないが、危険が迫っていたことだけは確かだ。

 

「っ!?」

 

 俺の首を何かがかすめる、微かな熱を感じた。

 

「あぶねっ」

 

 首からの出血は命取りだ、浅かったから良いものの。死ぬとこだった。

 

「生きてやがったか」

「キシュ……フシュ……」

「確かに地下の奴よりは小さいが」

 

 あっちの奴は蝶と龍の合いの子のような感じだったが、こっちはより虫に近いような姿をしている。羽で斬りつけてきたのか。とはいえ俺の攻撃は当たっていたようで、それこそ虫の息って感じだ。あ、他意はないぞ。

 

「く、ごめんシン。オイラ達は手出しできないみたいだ、頼む」

「やってやるさ、ちょっと厳しいけどな!!」

 

 樹人は手出しができないようだから、俺がやるしかない。

 

「あばよ!!」

 

 とりあえず距離を取る、至近距離なんて反応が間に合うはずもないからな。距離さえあればあとは射程距離の差でどうにかできる。と思う。

 

「俺が距離を取り終わった時がお前の最期だ!!」

「キシュー……」

 

 あれ、普通に、追いつかれ。

 

「死にかけでも俺より少し遅いくらいか、これじゃあ距離取るのは難しいな。ん? このまま逃げてればこいつ勝手に死ぬんじゃないか」

「キ、キキ!!」

「ぬぉあ!?」

 

 急加速!? また油断か、学ばないな俺も!!

 

「くそっ」

 

 今、俺の身体の中で、一番耐久力のある部位を盾にする。

 

「マジかよ……綺麗に切断しやがって」

 

 桜腕を根元からいきやがって、これがそのままの腕だったらと思うとぞっとするな。まあ、腕は1本もう落ちているけれども!!

 

「……え?」

 

 見えた、これでなんとかなるんじゃないか。

 

「あらよっと」

 

 切り離された腕は普通動かない、でも桜腕は普通の腕じゃない。別につながって無くても俺の意思で動く。そして、桜腕は武器を持っている。

 

「キシャッ!?」

「そうだよな,斬った部位がそのまま攻撃してくるとは思わないよな。ま、油断したのはお互い様だ」

 

 やはり本当に死にかけだったようで、結構浅めの攻撃だったが致命傷になったらしい。もう、動かないでくれよ。

 

「さてと、腕はくっつくかな」

 

 あ、くっつきましたね。良かった良かった。

 

「こいつと地下のデカブツがセットだって言うなら、今度こそ何か特典みたいなものがあると嬉しいんだけど」

 

 ダマスカスは十分貴重品だったけど、あれは腹の中で勝手にできてたものであってダンジョン攻略の報酬にあたるようなもんじゃないしな。

 

「ま、幸運を期待するのは止めた方が良いか」

 

 ダンジョンの攻略したら、宝物が手に入るってのもなかなか眉唾物だし。

 

『ダンジョン番号5番、オベローン&ティターニアの攻略を確認いたしました。記念クレジットを授与いたします。これからも賢者の石をよろしくお願いします』

「え、記念クレジット? 何それ、ていうか賢者の石はダンジョンにも関係してるのかよ」

 

 チャリーンという音はすれども、なにかコイン的なものが俺の手にあるわけではない。

 

「……とりあえずスカイフィッシュか」

 

 今のところ俺が持ってる賢者の石製品はこれだけだ。これが使えるようになるのが、記念クレジットとやらの効果であって欲しい。

 

「記念クレジットを確認しました、本日よりスカイフィッシュの所有権を賢者の石からお客様に変更することが可能です。変更しますか」

「する、迷う理由がない」

 

 これでいつでも飛べるようになったんだろう、高速移動手段は欲しいから有り難い。

 

「ふぅ……、これで一段落か」

 

 ダンジョン攻略と合わせて樹人の問題も解決した、そろそろ次の場所をどこにするかを考え始めないとな。

 

 

 

 

 

 




【記念クレジット】
おめでとうございます、あなた様は特別なお客様になられました!! 試練を突破した事を記念いたしまして、我が社の製品を所有する権利を差し上げましょう。重ねておめでとうございます、次なる試練を突破した暁にはまたお会いしましょう!!
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