最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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バードストライク

「最初に飛んだときは余裕がなくて見られなかったけど、空から見る世界ってのは凄く綺麗に見えるもんだな」

 近くで見たらそう見えなくても遠くから見たら凄く綺麗なんてものは良くある話だとしても、この感動はなかなか得られるようなものじゃない。鳥と並んで飛ぶなんて事は今まで考えたこともなかったが、やってみると気持ちの良いものだ。

 

「どこか、降りられるような場所はと」

 

 いや、別に何も見つかってないというわけじゃない。ちらほらと村らしき場所とかは見かけてはいるがそこに降りてもな。できれば大きめの街とかに行きたいんだが、俺の知ってる地図と実物では見え方が違うせいで場所がよく分からない。

 

「何か目印のようなものとかないか」

 

 とはいえ、そんなに簡単に行き先を決めるようなものなんて見つかりはしない。もう少し空の旅を楽しむとしよう。

 

「カァー!! カァー!!」

「うぶっ!? なんだ、スカイフィッシュのフィールドをすり抜けたのか!?」

 

 姉さんやラァでも妨害できたスカイフィッシュの謎空間を突破できる奴がこんな所に!?

 

「カァ……カァ」

「白いハト? いや、白いカラスか、珍しいな」

 

 俺の顔面にぶつかってきたカラスがそのまま俺の腕に落ちてきた、珍しい個体だがそれだけでスカイフィッシュを突破できるのか。いや、それよりも何か臭うな、これは鉄の、血の匂いだ。

 

「お前、羽が片方千切れそうじゃないか」

「カァ……カ……ァ」

「待て待て、死ぬな!!」

 

 いきなりぶつかられてそれで死に様を見せつけられるのはいやだぞ、治療に使えそうなものはあるか。あーくそ、【熟練工】がなにも示さないってことは、俺の技術でできる治療行為はほぼないと思って良い。そもそも、自分以外を治すのはそれだけで専門技術だ。

 

「傷を縫ってやることくらいしかできないか」

 

 あのデカブツを倒したときに繊維は全部投げちまったから、俺の桜腕で無理矢理傷を閉じてから自切するしかない。麻酔もないしかなり痛むだろうが。

 

「耐えてくれ」

「カァ……」

 

 傷の状態から何をされたのかを類推することは難しいが、何かにつつかれたような傷のように見える。綺麗な切り傷とかなら楽に縫えるんだろうがぐちゃぐちゃの状態だからかなり難しいな。これは綺麗に治ることはないだろう、飛べなくなるか、それとも予後不良で死んでしまうかのどっちかになる気がする。

 

「生きろよ」

 

 意識を失ったのかぐったりとしてしまった。死んではいないと思うが。

 

「不格好で悪いな、とりあえずは抱えていくか」

 

 これは応急処置に過ぎない。やはり医者に見せる必要があるか。医者が常駐しているような大きな街を早く見つけないと。

 

「高度を上げる、視力が追いついていない分は気合いで何とかする」

 

 残念ながら鷹の目は持っていない、それでも高く上がって周りを見渡す以上の方法を思いつかなかった。

 

「どこか、大きな街、大きな川の近くとか、もしくは盆地とかにあったり」

 

 水運が使える大河の近くは農業もしやすく、交易もしやすい。だから大きな街になりやすいはずだ、せめて川を見つけたら。

 

「あった!!」

 

 大きな川、きっと名のある川だろうが勉強不足で分からない、とりあえずこの川を下って街を探す。

 

「あるはずだ、1つくらい」

 

 正直今川を下っているのか、上っているのかは分からない。きっと自分が行く先に街があると信じて飛ぶほか無い。

 

「見つけた!!」

 

 何かを囲む壁を確認した!! あれが城壁だとすれば城下町がある!! そこには医者もいるはずだ!!

 

「行くぞ」

 

 見えてしまってからはそこに一直線に進むのみだ、だんだん細かいところが見えてきた。あれは、旗か? 旗だと!?

 

「どこの旗だ?」

 

 我が家がどこかの国家と敵対しているということはないはず、とはいえどこで怨みを買っているかなんて分かりゃしない。好戦的なとこだった場合は家の人間と戦争をしていた可能性がある、もう少しで判別が着きそうなんだが。

 

「羽の付いた盾、そして中心に丸印。盾王の傘下の街か、それなら大丈夫そうだ」

 

 盾王、そう呼ばれる王がいる。噂でしか知らないが戦争を嫌う温厚な王らしい。そこならわざわざ俺の家と戦争していたことはないだろう。

 

「良かった、そこに降りよう」

 

 城門らしきものの少し前で地面に降りる、あんまり空を跳ぶ人間はいないから目立ってしまう。変に目立つ奴を親切に通してくれるお人好しばかりが門番じゃない事くらいは分かる。

 

「さて、通してもらえると良いが」

 

 今の俺の状態を確認しよう。怪しいところは極力減らしていかないといけない。

 

「まあ、腕だよな」

 

 他はまあ誤魔化せる範囲ではある、腕だけ木だもんな。それをどう説明するべきか。普通に義手ですって言えば通るか? 時間も無い、それで言ってだめなら別の手段を考えよう。

 

「ん? お前は……何の用だ」

「この中に入りたいんです、この子の治療をしたくて」

 

 まずは正直に話してみよう、それで何か言われたら対応する。

 

「通行手形を見せてもらおう、商人か? 職人か? それとも兵士か?」

「通行、手形ですか」

「ああ、その反応だと持っていないか。それだと通すのは難しいな」

「でも、この子の命がかかっているんです。どうにかなりませんか」

「どうにかといわれてもな、その獣は何か聞いても良いか? 鳥のようだが」

「白いカラスです」

「なるほど、白いカラス……しろいからす!!?」

「あ、はい、そうですけど」

「今すぐ入る許可をする!! 一刻も早くその護鳥(まもりどり)を治療しなければならない!!」

「まもりどり?」

「ああもう!! 説明はいい!! 俺についてこい!! 今すぐに治療できる医者まで案内してやる!!」

「あ、ありがとうございます」

「さあ行くぞ!!」

 

 ちょ、この人足早いな。

 

「こっちだ!!」

「はい」

 

 街の景色も見られないままに門番についていくと、大きな建物の中に入っていった。立派な門を躊躇なく開けて大声で医者を呼んでいるようだ。

 

「手が空いている医者は皆出てこい!! 護鳥が負傷されている!!」

 

 建物の中にいた医者らしき人が大慌てで出てきた、服装が少々乱れているところを見ると休憩中だったのかもしれないな。そんな中呼び出して悪いとは思うが、この白いカラスの治療をしてもらわないといけないから仕方ない。

 

「な、なんだって!? 護鳥だって!?」

「そうだ!! 見ろ!!」

「ほ、本当だ。初めて見た」

「治療をお願いできますか、今は私の力で応急手当をしていますがとても保ちそうにないんです」

「ああ、全力を尽くそう」

 

 白いカラスを渡す。これで一安心だ、にしても護鳥ってなんなんだ。ああそうだ、縫合を解いておかないと。

 

「あんた、もしかして護鳥の止まり木なのか?」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【護鳥】
盾と翼は分かたれず、数多の戦火を鎮めたもう。白き翼のカラスは3本の杖を持ちて地上を見下ろし、止まるべき木を選定した。選ばれし者よ、盾を持て、それは自らと自らの後ろに立つ者を遍く危機から救うだろう。
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