最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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白盾、白翼

「では向かいましょう、身体は万全ですか」

「ああ、まあな」

 

 毎日警告されるから目覚めはあまり良くないが、身体に疲れが残っているような感じはしない。なら、大丈夫だ。気疲れに対する耐性なら、なんとか獲得している。

 

「それではこれを」

「目隠し……?」

「はい。これから向かう場所は本来ならばホワイトシールドの者しか入れない私有地ですから。場所の特定をされないためにこうする必要があるんです」

「……仕方ないか」

 

 本当ならこういう時に素直に目隠しをされるべきではない。視界を奪われた後に好きにされる可能性は何時だって存在しているからだ。今は桜腕を仕込む時間があるから、対策が可能だ。

 

「ほらよ」

「ありがとうございます。今から馬車に乗ります」

 

 ラウンに手を引かれて誘導される。それなら馬車に乗ってから目隠しをしても良かったんじゃないかと思ったが。その場所に行くための馬車すらも特別製なのだろう。

 

「段差がありますので気をつけてください」

「はいよ」

 

 馬車、と言うわりには生き物の気配がしないな。

 

「おっと」

 

 わざとよろめいてみせる、ここで何かに触れて使い方が分かればこの馬車がなんなのか分かるんだが。

 

「シンさん!?」

「すまん、足下の把握が甘かったようだ」

 

 これは……なかなか、御者もいらない少人数用の自動運転馬車か。場所を設定した後は2点間を全自動で移動するもののようだ。馬も魔法具だ、こんなもんを自分の一存で使える環境とは恐れ入った。

 

「では行きます」

 

 滑り出すような動き出し、本来の馬車は相応に揺れるものだがそんなものはなかった。こりゃあ、快適だな。俺も欲しい。

 

「あの、着くまで無言というのも何なので。お話しませんか」

「そうだな、暇は良くない」

 

 そこからは、他愛ない会話が続いた。好きな食べ物、名物、絵のこと。俺もラウンもなんとなく察しているのか家族の話は一度も話題にはならなかった。

 

「……着きました。ここがホワイトシールドと護鳥が約定をかわした白の渓谷です」

「目隠しとっても良いのか?」

「はい、もう大丈夫です」

「目隠しからのこの光景は目に悪いな、チカチカする」

 

 渓谷と言うだけあって、まあ谷なんだけど。白いんだ、白すぎてめっちゃ眩しい。谷の間にある川も光を反射して余計に眩しい。

 

「慣れてもらうしかありません、この先に護鳥様の巣があるのですから」

「……分かった」

 

 少しずつ慣れてきた、あんまり長居はしたくないが。

 

「この岩の先からが護鳥様の領域です。ボクではここから先に行けませんでした、きっとシンさんなら通れるはずです」

「通れないようには見えないが、何か壁でもあるのか」

「結界です、護鳥様が貼っているのです。これを見てください」

 

 ラウンが小石を拾って投げる、すると虚空にぶつかって弾かれた。

 

「結界ね、これ俺なら通れるのか」

「恐らく。家の古文書には護鳥様と共にある者は拒まないと」

「じゃあ、やってみるか」

 

 結界がある場所に向かって歩いて行く、そのまま胴体でぶつかるのは怖いから桜腕を伸ばしてみるか。

 

「なーんもねえ」

 

 普通に通れた、結界なんてないかのように。

 

「おお!! やはりボクの考えは正しかった、今からボクも行きますから離れないでくだっ!?」

「……顔面からいったけど大丈夫か」

「いたた……なんでぇ?」

「そうだな、俺が通れるのはヤタ・デシュとつながってるからとすれば、そもそもつながりのない奴は普通に入れないんじゃないか?」

「なんて、ことだ、ここまで来て!!」

「まあ、ダメ元で試してみたい事があるけど。やるか?」

「お願いします!!」

 

 じゃあ、しますか。おんぶ。

 

「あの、これって」

「密着すれば良いかと思って」

「……恥ずかしいんですけど」

「まあ、まあ、ここを抜けるまでと思って」

 

 これでラウンだけが弾かれたら出直しになる思うが、俺の考えは正しかったようだ。

 

「通れた……!!」

「良かった、これなら俺が来た意味もあったな」

「はい!! ありがとうございます!!」

 

 テンションが上がったラウンが俺の背中から降りる、瞬間俺の背中に冷たいものが走る。このままだと、何か致命的な事が起こるような。

 

「避けろ!!」

「え?」

 

 何かは分からないがラウンを抱えてこの場を離れる。

 

「な、なんだこれ!?」

 

 さっきまで俺たちがいた場所に何かが飛んできていた、地面に突き刺さっているのは純白の羽。どう見ても当たっていたら痛いでは済まない。

 

「つぅ……!?」

「大丈夫か!!」

「すみません、足を……」

 

 ラウンの足に羽が刺さっている、避けきれなかったか……これはもう。

 

「うん、今日は帰ろうぜ」

「だ、駄目なんです!! 今日を逃したら、間に合わなくなるんです!!」

「ええ……でも怪我したしな」

 

 これを無視して死んだら元も子もない。

 

「お願いします、ボクを連れていってください。この通りです」

「貴族階級がそこまでするか」

 

 地べたに頭をつけて懇願するか、ここまでをするとなると引き下がろうと言っても勝手に行ってしまう可能性が高いな。

 

「俺と離れた瞬間に羽が飛んできた、ということはずっと俺とくっついていなきゃならないぞ。それでも良いのか?」

「何も問題ありません」

「……仕方ないな、案内は任せたぞ」

「古文書の内容は覚えています、任せてください」

 

 ラウンは軽いから大丈夫だと思うが、これからずっとおんぶかぁ……

 

 

 

 

 

 




【白翼矢】
不届き者を誅する、純白の矢。これは領域を侵した者を迎撃・殺害するために遣わされる結界の意思である。これより先、白翼の加護なき者が生くる術なしと思え。
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