最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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神鳴り

 ゴロゴロ……ピシャァアアアンン……!!

 ホワイトシールド卿が血迷った事を抜かし始めたと思ったら、近くに特大の雷が落ちた。これはつまり、姉さんの目覚めを意味している。つまりタイムリミットだ。

 

「失礼ですが、時間のようです。私はこれ以上ここに居られません……それでは!!」

「あ、シンさん……」

「話はまた今度だ、姉さんが来る」

「待て、今から来るのは姉と言ったな?」

「あ……」

「お前、あの一族の人間か」

「では……!!」

 

 ばれたか……どちらにしろ今はスカイフィッシュで全速力、これ以外ない。

 

「待て、お前にも訳があるのだろう。隠れて居るが良い」

「でも、ホワイトシールド卿……相手はあの」

「雷神なにするものぞ、我が盾の前に追い返そうではないか」

 

 姉さんは図抜けている、それでもホワイトシールド卿なら、そう思わせる凄みがこの男にはあった。姉さんが負けるところは想像もできないが、追い返すことくらいなら。

 

「……良いんですか」

「良いと言ったぞ」

「……すみません」

「なに、未来の息子を助けるためなら」

「……それは聞かなかったことにします」

「あー、古傷がー、いきなり痛み出したー!!」

「聞こえてましたー!!」

「ならば良い。しらばっくれるのは許さないぞ」

「……選択を誤った気がするなぁ」

 

 隠れてろと言われたので、桜腕を使って身を隠す。一度は欺けたこの手段でも、もう一度いけるのかは定かではない。

 

「来たか」

 

 轟音、ここまでの音と振動は俺も知らない。見たことのない姉さんの本気なのか。

 

「……ホワイトシールド卿、このような不躾な真似をしまして誠に申し訳ありません」

「何、貴殿がそこまでして来るのだ。何か重大な要件があるのだろう」

「はい。我が家名にかけて問わせていただきます」

 

 家名にかけて問う、これは嘘偽り即デストロイという物騒な前置きだ。とても領主に向けて使うものではない。

 

「では改めて聞こうではないか、デーレ・ビクトリウス」

 

 ビクトリウス、それが家名だ。傲慢にも勝利を意味する言葉を家名にした先祖のセンスに物申したいところはある。

 

「私の、わたしの、せかいでいちばん、だいじな、おと、おとうとを、しりませんか……?」

「貴殿、なんて顔をしている。今にも死にそうではないか」

 

 か細い声、鼻をすする音。見なくても今の姉さんがどんな顔をしているかは分かる。目にいっぱい涙を溜めて、触れば砕けてしまいそうなほど儚げなのだろう。

 

「なまえは、シンです。いま、さっきまでここに、ここにいたとおもうんです。どうか、どうか、なにかしっていることがあればおしえてください……!!」

「貴殿の弟の事は知らぬ。だが、シンという名前の男ならばこの白盾の街に来ていた」

「本当ですか!!」

 

 バチッという音、これは姉さんが移動した時の音だ。今はホワイトシールド卿に詰め寄っているに違いない。

 

「いつですか!! どこですか!! 教えてください!! 早く早く!!!!」

「そんなに急がずとも教えよう、ビクトリウスを敵に回すほどの余裕はない」

「あちらにある黒盾砦を超えていくと言っていた、そこから先は知らん」

「ありがとうございます!!! それではシンちゃんを迎えに行かないといけないので!!!」

 

 またしても電気が弾ける音。姉さんの気配が消えた。

 

「出てきても良いぞ」

「……はい」

 

 会話だけで追い返したか。これがホワイトシールド卿なんだな。こっそり脳筋だと思ってた。

 

「……お前も酷い顔をしているな。先程の姉にそっくりだぞ」

「姉弟ですから」

「奥歯が砕けそうではないか、そんなに辛いなら姉に居場所を明かした方が良いのではないか」

「姉は、外に出ようとする私の半身を麻痺させてまで止めようとした人です。今捕まれば、私は2度と自由は得られないでしょう」

「う、麗しき家族愛もそこまで来るとなかなか強烈だな……」

「それはまあ置いておいて、ありがとうございました」

「良いのだ。聞いていたと思うが黒盾砦には行かない方がいいだろう。目指すなら、反対方向の赤盾灯台に向かうと良い」

 

 赤盾灯台、なんでそんなところに俺を誘導しようとしているんだ。何か魂胆があるのか?

 

「あの、赤盾灯台には何があるんでしょうか」

「ん? なあにひとっ飛びして届けてほしい密書があるんだ」

「今密書って言いました?」

「言ったぞ」

「それを聞いた私は?」

「密書届ける以外の選択肢はないな」

「拒否すれば?」

「もちろん、こうだな」

 

 首を刎ねるジェスチャー、命はないってことね。

 

「まあ、これくらいはしてもらってもバチは当たるまい」

「密書を届けたら戻ってこいなんて言いませんよね?」

「ん? その先は好きにするといい。ラウンを連れて行けとも言わんさ」

「分かりました……姉さんをいなしてもらった恩を返します」

 

 ラウンがこっちを見ているが、何も言わないなら俺はこのまま去ろう。報酬はもう貰ったし、これから跡継ぎ争いをする奴がここを離れるわけにもいかないだろう。

 

「シンさん」

「なんだ?」

「ボクは、ホワイトシールド卿になりますよ」

「ああ、応援してる」

「ホワイトシールド卿になったら、ボクは我慢しません。あなたの姉も何もかも気にしません。あなたをボクの翼にします」

「俺を移動の足にしたいのか……!?」

「違います!! そういうことではなく!!」

 

 意味はわかっている、それでも今ここでは茶化すくらいでちょうどいいだろう。俺がどうなるかなんて分からないんだ、傷は少ない方がいいよな。

 

「スカイフィッシュ!!」

 

 さあ、飛んで行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【密書】
ひみつのおはなしがかいてあるひみつのてがみ。
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