最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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2階は武器屋

「その剣ワシに預けてみないか」

「嫌です」

 

 モグラグマを倒して、それでようやく塔の2階に登れたと思ったら。妙な老人に絡まれるハメになった。なんでアルカを預けないといけないんだ。持っていかれたらと考えると絶対に嫌だ。

 

「いや、ワシには分かる。その剣はまだ高みに昇れる」

「残念ですけど、そんな高みにいられると私が使えないので」

「そんな!! 宝を腐らせる気か!!」

「ははは、とにかく遠慮させていただきますね」

 

 これでやり過ごせればよし、万が一アルカに触ろうとでもしたら。ちょっとどうなるかは保証できないかもしれない。

 

「いや、その剣はあんなものじゃ」

「……」

 

 あと、少しだけ我慢しよう。

 

「だから、ワシが」

 

 3

 

「そもそも剣とは」

 

 2

 

「つまり、使い手の研鑽が」

 

 1

 

「おいおい、惨めったらしい真似をするもんじゃないヨォ」

「なんだと!」

「さっきから聞いてりゃぁヨォ、女々しく言い寄るわ、引き際も分からねえわで。見てるこっちが気分が悪ィ」

「貴様……ワシが誰だか分かっての物言いだろうな」

「おうヨ、赤盾灯台鍛冶場の長老だろう?」

「では、これから貴様がどうなるかも分かるな?」

「ヘェ、どうなるってんだい?」

「ワシの全能力を使って叩き出すのだ」

 

 なんか、割って入った奴に意識が向いたな。そうだ、今のうちに逃げてしまおう。苦言を言ってくれた奴には後で礼をするとして、今は走るか。

 

「じゃあそういうことで!!」

「あっ!? 待て!! まだ話は終わってないぞ」

 

 我慢の際まで来てた話がまだ続く予定だったのかよ。聞いてられないから、さっさと撒こう。

 

「こっちか」

 

 入り組んだ路地へと逃げ込む、止まらずに出鱈目に走っていったが運良く行き止まりに当たらず敗けたようだ。

 

「ふー、厄介な奴だった」

「本当サ、全く面倒なことになったもんだ」

「……」

 

 なんでこいつおるん? 俺が走ってきたのを先回りしたのか? だがなぜ? 俺が逃げたからか、ならば初めにやることは感謝と謝罪だ。

 

「逃げてすまなかった、助かった」

「ン? 良いんだそんな事は。こっちだって下心があってやった事だしナ」

「下心? 金でも要求されるのか」

「いやいや、銭っこなんざ飯を食いっぱぐれなけりゃあ良い。あての要求は、それサ」

 

 アルカを指さしたか、こいつもさっきのと同類か。

 

「申し訳ない、この剣は大事な者で誰かに渡すことはできないんだ」

「渡してもらおうなんざ思っちゃいねえヨ、ただ振ってもらえりゃあ良い。その蛇腹がどう動いてんのか見てえんだ」

「それくらいなら、まあ」

 

 剣舞はできないが、ただ伸ばして振るだけなら問題はない。少々狭いが、そこは【熟練工】の適応範囲内だ。

 

「ふっ!!」

 

 円を描くように縦横に振って見せる。

 

「こいつァ、とんでもねえ!!」

「そんなに目を剥いて言うほどすごいのか」

「すごいも何も、何もかもだ。伸び方も曲がり方も、しなり方も煌めきも、全てが規格外サァ!!」

「それは嬉しいな、少し気恥ずかしいが」

 

 やっぱ、アルカって凄い剣だったんだな。

 

「いやァ、さすがはダマスカスの剣だ」

「っ!?」

「おや、当たりかィ?」

「……はめられたか」

「悪いネ、カマをかけたつもりが本当だったとは。そりゃ誰にも触らせないわけだ。それ一本で城が立つもんナァ」

「口封じ、しないといけないか?」

「いや要らねえヨォ、この界隈であての言うことを真に受ける奴ぁいねえからサ」

「……」

 

 どうするか、信じる理由がない。だからといって殺すのもな。何か良い方法が有れば良いんだが、そんなものは咄嗟に思い浮かばない。

 

「ンー、信じてもらえねえか。となれば手形を渡さにゃあならんナ」

「手形?」

「ほれ」

 

 投げ渡されたそれを受け取ると、それは暖かく柔らかい。

 

「これはどういうつもりだ?」

「だから手形サ、あての右手じゃ足りないかい?」

「……どうなってる」

 

 確かにこれは右手、しかもウネウネ動いている。

 

「もう少し驚いてくれても良いんじゃないかい」

「だって、これ本物じゃないだろ」

「ありゃ、あての腕もまだまだ」

 

 実際腕を落としたから分かる。部位欠損して眉の1つも動かさない訳がない。それなら偽物か、狂人のどっちかだ。ひとまず狂人の線を捨ててみたが当たっていたようだ。腕がまだまだと言ったのなら、この手はこいつが作った物だと考えられる。人形師か、義肢職人か?

 

「いや、よくできてる。と思う」

「いやいや、初見の方を騙せないようでは」

「腕を落とした事がある。それで違和感に気づいた」

「腕? そちらの奇妙な腕は能力ではなく義手?」

「そうなる。俺を助けてくれた奴からもらった」

「……じゅるり」

「なんで舌なめずりを……」

「あての生業からすると、それは是非とも隅々まで見せていただきたいものでネェ」

「生業、というと」

「これサ」

 

 目の前にゴトゴト音を立てて人の身体のパーツが置かれていく。義肢の方だったか。

 

「名乗り遅れまして申し訳もございやせん。あては姓をヒコ、名をカタハと申します。しがない義肢作りでございやす、どうかお見知りおきを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【義肢師】
神ならざる身にて、人を作る者。それはある種の禁忌となる。人が人を作ることは、神の御業を侵すことにほかならないと失わぬ者が言う。だが、実際に失ったものにとっては神が作ろうと人が作ろうと同じ事だ。
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