最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

39 / 86
先んじる理由

「私はビクトリウスの名を堂々と名乗れる力はありません、興味を持っていただくほどの者では……」

「ははは、随分と殊勝な事だね。聞いてるよ、あの白カラスを落としたんだろう? それで興味を持つなっていうのは謙虚すぎるね」

「いや、あれは」

「ああいい、あたしはもうあんたに興味がある。それは変わらない」

「……恐縮です」

「ふふ、さっきだって直撃させるつもりで投げた鉄球を躱してみせたしな」

「く……」

 

 ヤタ・デシュのおかげだと言っても反応は変わらないだろう、もう塔主の相手のするしかないか。

 

「秘蔵っ子のはずのあんたがなんでこんな所に居るんだい。ビクトリウスの悲願を背負っているだろうに、もしかして完成した? いや、流石にそこまでの力は」

「おっしゃるとおりです。私は家の悲願を達成できるほどの力を持ってはいません。今は」

「……ああ、修行か。あんたも大変だねえ、雷神と糖妃が居るって言うのに。あの姉妹は高すぎる壁になっちまうだろ」

「それでも、私は」

「ふぅむ、自分の伸びしろは分かっているって顔だね。それでも足掻いている。違うかい?」

「はい。自分の天井は見えていますが、諦められないのです」

「そういや、姉妹とはできるだけ会わせないように書いてあるがどういうわけだ? 仲が悪いのかい」

「いえ、家を出るときに強攻策を取ったので。連れ返されます」

「……話し合わなかったんだね」

「家を出ようとしたら、監禁されそうになったので」

「あー、そういやビクトリウスの女は情が深いことでも有名だったね。まさか肉親にまでそうなるとは思わなかったけど」

「はは、それでも自慢の姉妹です」

「うーん、あんたも中々狂ってるね」

「恐縮です」

「じゃあ悪いことをしたね」

「……何の話です?」

 

 まさか、塔主がラァを呼んだのか? 盾王の領地ではビクトリウスを雇うのが流行ってるのか?

 

「実はあんたの妹が隣のダンジョンに用があるみたいでね、別に断る理由もないから許可を出したんだ。で、今日ここに来るのさ」

「今すぐ隠れます!!」

「あの糖妃から逃げ切るのは簡単じゃない。引き留めてしまった詫びに、土地勘のある奴を貸しだそうじゃないか。ついでにここにいる間はそいつに案内でもしてもらいな」

「あ、ありがとうございます!!」

 

 見つかりにくい場所があれば、そこに行くに超したことはない。案内がいるなら手っ取り早い。

 

「おい、居るか」

「お呼びですかィ」

「よしよし、今からしばらくこいつに付き合ってやりな。追われてるらしい」

「分かりやした、仰せのままに」

 

 嘘だろ、なんで……

 

「カタハ……」

「また会ったネェ、縁があるようだ」

「あ? 知り合いか? じゃあちょうど良いな、さっさと隠れた方が良いぞ」

「さぁ行きましょうや」

「あ、ああ……」

 

 塔主の厚意を無下にすることはできない。ここは、大人しく一緒に隠れるほかないか。

 

「いやー、まさかお嬢に用とは」

「一応聞く、隠れる場所に心当たりは」

「そりゃあ、あるサ」

「それは、砂糖くらいの粒子がばらまかれた時に入り込まない密室か」

「もちろん、一度入れば時間を稼げる場所に1つだけ心当たりがある」

 

 嫌な予感がする。

 

「その場所、人形工房だろ」

「ありゃ、察しが良いネェ」

「……なんで俺なんだ、塔主から紹介だから罠の線は消すとしても、そこだけが分からない」

「賢者の石、知ってるかィ」

「知ってる。それがどうかしたか?」

「ダンジョンを作ったのは賢者の石という事も知ってたかィ」

「は……?」

「そこまでは知らないようだネェ」

「そんな、ホントか?」

「嘘を言う理由がないだろォ。とはいえ、あてもそこまで深いことを知っている訳じゃネェ」

「……続けてくれ」

「シンの旦那が手につけてるそれは賢者の石のもの。しかも、所有権まで持っている。つまりは、挑む側の人間ということサ」

「挑む側……?」

「シンの旦那はダンジョンを攻略し、その恩恵を正しく受け取る資格がある。挑む側の人間でなければ人形工房は攻略できないのサ」

「だから、俺なのか」

「そのとおり。そしてシンの旦那の妹がどれほど強くても人形工房は攻略できない」

「ラァが危ないのか」

「その通りサ」

「俺が先に行けば回避できるんだな」

「もちろん」

 

 じゃあ、もう、なにもためらう理由はない。

 

「今すぐ行くぞ、人形工房へ」

「その言葉を待っていた、準備は良いかィ?」

「時間が無いんだ」

「分かった、一直線に行こうじゃないか」

 

 ラァに危険が及ぶのなら、それは何にも優先される。それが、俺には難しい事だったとしても。やらなければならない。

 

「これでも、兄なんだ」

「麗しき兄弟愛だネェ」

「当然だろ、たった1人の妹なんだ」

「監禁されそうになったのに?」

「……? それと、ラァを守ることが矛盾するのか?」

「ははは、確かに狂ってるナァ」

「話はここまでだ。案内してくれ」

「分かってるサ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【糖妃】
誰かが噂をしているよ、ひそひそぼそぼそ言ってるよ♪
怖くて可愛いお姫様、さらさら、とろとろ、かちんかちん♪
自由自在の縦横無尽、甘い匂いに気をつけろ♪
ビクトリウスのお姫様、分かったときにはもう遅い♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。