最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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こくとう

「あはっ☆」

 

 盾になってる黒糖がどんどん削られていく。それほどまでにこの光の破壊力はとんでもないのか。まともに当たってたら即死だったかもしれない。

 

「さあっ、さあっ!! アイドールちゃんの愛を受け取って☆」

「貴方の愛なんていらない、そういうの押し売りって言うの」

「それでも構わないっ!! アイドールちゃんの愛が届くのなら☆」

「度し難いです、終わりにしましょう」

「終わらないわ!! アイドールちゃんがここにいる限りね☆」

「いいえ、終わり。もうできてしまったもの」

 

 なんだ? 何ができたんだ? ラァの攻撃で前準備が必要なものはほとんどないのに。わざわざ用意したものならば、それはきっとこの状況を打開するもののはず。

 

「黒糖正宗」

 

 今とんでもない事が聞こえたな、なんて? 正宗って言ったか? 伝説に出てくるような刀の名前じゃないか、いくらラァが万能でも砂糖で刀を作れるわけ……

 

「たまげた、まさか砂糖の名刀が拝めるたァ」

 

 黒く光沢を放つ一振り、ただそれだけのはず、それだけのはずなのに、どうしてここまでの存在感を発しているのか、どうしてこんなにも目が離せないのか。まるで魅了をかけられたような状態だ。

 

「そんなものがアイドールちゃんに届くと思うの? 無理、無駄、無様の三拍子だよ☆」

「これを一振りすれば貴方は終わり、遺言はある?」

「遺言? それが必要なのはあなたの方かな☆」

 

 歪みがラァに集中する、それが弾ければいくらラァでも危ない

 

「ああ、お兄様。この技はお兄様に捧げるもの、きっと近くにいるのでしょう。見てください」

 

 黒糖正宗を手放した? 当然刀は地面に落ちて、そして。

 

割れ卵は二度と戻らず(ハンプティ・ダンプティ)

 

 刀身が根元から折れ、そこから一直線に黒糖が放たれた。それは高速回転する弾丸にも似て、アイドールを胴体に大きな風穴を空けた。察するに、黒糖正宗は銃身であって近接武器として使うわけじゃないんだな。刀の形になっているのは相手に近距離攻撃を警戒させるための罠ということか。我が妹ながら、恐ろしい攻撃をする……

 

「どう、して」

「技の解説なんてしない。そのまま壊れて頂戴」

「ま、だ、本当の、偶像に、なれて、ないのに……な」

 

 倒れるアイドール、流石に胴体のほとんどが消し飛べば動きを停止するのか。いや、本当にそうか? 今までの人形は切り離した手足も普通に動いていた、その頂点にいるアイドールがこの程度で機能停止するとは考えにくいだろう。

 

「ふぅ……」

「油断、したね☆」

「残念だったネェ、人形が壊れにくいことなんてお見通しサ」

 

 アイドール目掛けてアルカを振る、何度も何度も、動かなくなるまで刻み続ける。幸いアルカには人形の動きを止める謎の効果がある。

 

「あ、ぎゃ、ひっ、やめっ☆」

「止めるわけネェだろう」

「ゆるっ、してっ、もう、こうさん、するか、ら」

「信用できないネェ」

「いや、いやぁ、死にたくない、死にたくないよぉ☆」

「人形が恐怖するなんてェ凄い出来だ。それでこそあてが参考にする価値があるってもんだィ」

「ごめん……なさい……ごめ……なさい……」

「動かない人形だけが良い人形サ、あてを除いてネェ」

「うふふ……」

 

 っ!?

 

「何を笑って……」

 

 何か隠し玉があるぞ、警戒しろ!!

 

「あはっ、アイドールちゃんはねえ。唯一無二だけど、身体は用意できるんだよねえ。だってここは人形工房、いくらでもパーツはあるんだもん☆」

「……そりゃ道理だネェ」

 

 おいおい、後ろから歩いてくるのは完全な状態のアイドールか。それも、何回でも復活するってのかよ。こりゃあ、なかなか、しんどい展開だ。

 

「姿を見せるのが偶像の役割なんだけど、攻撃されるのは嫌だからさきにやっちゃった☆」

「先に……?」

 

 俺は攻撃を受けていない、ならこの言葉の意味は

 

「ごぷっ……!?」

「吐血か、内臓が傷ついているようだネェ。おおかた、体内に衝撃波をぶち込まれたんだろうナァ」

「お、にい、さま……」

 

 ラァの口から、血、赤い、血、あんなに、血が、俺の妹が倒れた、血が、は? そんな、ことが、許され、どういうことだ? やったのは、アレか、そうか、アレか、殺そう、壊そう、手段は問わない、全身全霊で、殺ってやる

 

「旦那……?」

 

 ああ、そうだ、全てを使って、殺しきれ。許さない、許さない、アレは、俺の妹を、傷つけた。

 

「旦那!?」

 

 カタハ、俺がやる。引っ込んでいてくれ。

 

「……了解サ」

 

 【熟練工】、どうすれば良い、どうすれば俺はアレを殺せる? 使えるものは全て使う、動かない肉体はいっそのこと捨て駒として割り切っても良い。

 

「俺のできる範囲では、それは達成できない、か」

 

 【熟練工】で出来るのは、天賦の才能がない者が到達できることまで。それ以上のことは当然できない。できないことはできないと分かる、だがそれがどうした。できないことを、無理なことをするために俺は、ここに居るんだろうが。

 

「ほぼ無限に換えがある人形、だからどうした」

 

 俺の手札を見直せ、攻撃、防御、搦め手、全てを考え直せ、俺ではできない、なら、俺以外も使えば良い、道具として認識すれば良い。

 

「我慢比べだ、身体の換えはいくらでもあるようだが。精神の換えは利くのか試してやろうじゃネェか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【黒糖正宗】
黒糖で作られた伝説の刃、という嘘を纏った射撃武器。極限まで固めた刀身が折れた時、相手に向かって高密度の黒糖が弾丸として発射される。とはいえ、刀身は切れ味鋭く、そこらの刃物よりはよっぽど切れる。
刀身には銘が彫られており、実は正宗という名前すら嘘である。本当の名前は「真」であるが、それをラァが告げる事は無い。名を秘めることで成就する願いがあると信じているからだ。
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