最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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愛される資格

「アイドールちゃんからご主人様にご報告だよ、妹ちゃんの治療には1時間くらいかかるよ☆」

 

 1時間か、それならここから離れることはできるだろう。

 

「でもなあ、これをここに置きっ放しにするのももったいないような気がするよな」

「何言ってるのサ、妹御にそのドールハウスを持っていてもらえば良いじゃないかィ」

「……ラァに渡せるのか?」

「できます☆」

「じゃあ、これをラァに渡す」

「分かりました☆」

 

 よし、これで憂いはないな。さっさと去るとしようか。

 

「さ、行くとするか」

「……」

「どうしたカタハ?」

 

 いきなり黙り込んで、何か言いたいことでもあるのか? いつも話している奴がいきなり黙ったときはたいていろくな事がない。

 

「何かあるんだな? 隠さずに言ってくれ」

「はは、シンの旦那には隠せないか」

「その身体、どうしたんだ」

 

 カタハの身体には無数のヒビが入っている、いくら換えのある身体とはいえ、この有様はあまりにも、致命的に思える。

 

「人形工房から独立したと、思っていたんだけどネェ」

「まさか……」

「あても、ただの人形だった、みたいサ」

「壊れるのか、お前」

「壊れる、というのは少しだけ違うネェ……」

 

 そんな顔で笑うなよ、そんな、諦めたような、

 

「あては、もとに戻るのさ、ただの、意思無きものに」

「人形工房を攻略したからか」

「どうだろうネェ、遅かれ早かれこうなっていたような、気が、するけど、ネェ」

「夢は、どうするんだ」

「夢? ああ、本物の身体、義肢の完成形、確かに、今なら作れる、ような、気がする、でもそれはもういいナァ」

「時間は、もう無いのか」

「はは、それもあるネェ。まあ、もっとも今はもう要らないっていうのが本当の所サ」

「なんでだ、夢なんだろ」

「あては、本物の手足があれば、本物になれると思っていたんだ。でも、それは違った。本物っていうのは、在り方だった、あてはもう、とっくにあてだったんだ」

「そうか、それがお前の答えなんだな」

「だから、もうひとつの夢を、追うとするヨォ」

「もうひとつの?」

 

 何だ、そんなものあったのか、俺が何かできる事だと良いが。

 

「シンの旦那……野暮なことだってのは分かってるが、もう一度聞いても良いかィ?」

 

 俺に聞くこと? 今聞かなきゃいけないことなのか?

 

「……あてを、愛しちゃくれないかィ?」

「っ!?」

 

 そうか、そういうことか、

 

「……お前が居なければ俺は人形工房を攻略できなかった。俺とラァの命の恩人だ。俺は、お前に恩を返さなければならない。それは建前として、俺がお前に何かしてやりたいというのも本音だ。俺はどうやって愛せば良い?」

「口づけを、最期に……くれないかィ」

「そんなことで良いのなら」

「へ?」

「ん?」

「な、なんでもない。あまりにも即答だったもんで驚いただけサ」

 

 今一瞬、すごいきょとんとした顔になったな。

 

「直接で良いのか?」

「え、あ、直接?」

「口にするんだろ」

「え? 口に?」

「口づけって言ったろう」

「や、確かに、言ったけどネェ」

「こんなところで遠慮するな」

「遠慮、というか、躊躇わなさすぎじゃないかィ」

「ん? 口づけってのは挨拶みたいなものだろ。なんで躊躇う必要があるんだ」

「シンの旦那……つかぬ事聞くんですがネェ、もしかしなくても慣れてるかィ」

「慣れるも何も、毎朝毎晩ラァと姉さんからされてたからな。もはや日常の一部だ、それがどうかしたのか? 姉弟なら普通だとデーレ姉さんも言っていたし」

「……」

 

 絶句してるな、顔にドン引きって書いてあるぞ

 

「まあいい、口づけをしよう」

「ちょ、ま、むぐっ」

 

 これで、少しでもカタハの無念が減るのなら良いんだが。

 

「ん、ん、んん!? んんんんんん!!?」

「うおっ!? なんだ!?」

 

 暴れて逃げ出すとは、なんでだ、いつも通りに舌を絡めただけなのに。

 

「だ、だだだ、し、ダンナァ!?」

「落ち着け、ヒビが広がるぞ。なんでそんなに慌てている?」

「し、舌、入れ、ナンデ!?」

「なんで? 口づけってこういう物だろう?」

「……妹御と姉御にはいつもこのような」

「当然だろ? さっきから何をそんなに驚いて」

「……シンの旦那、一応言っておきますけどネェ。舌を絡ませるような口づけは、恋人同士が営みのときにやるようなものでネェ。とてもとても、姉弟で毎日するようなものではないと思うヨォ」

「まさか、姉さん達はちょっと長めの挨拶だって」

「……とんでもねえ姉妹と暮らしていたんですネェ」

「あ゛? 今なんて言った?」

「んんっ!! 仲むつまじいご姉弟で……」

「姉弟ってそういうものだろ?」

「ははは……」

 

 なんでそんなに気になるんだ、当たり前のこと、なんだよな? え? 違うの?

 

「ていうか、なんかお前余裕あるな」

「あ」

「あ、じゃねえ。なんか死にそうな感じだったのもなくなったし」

「いや、壊れそうなのは本当で、けっ」

 

 あ、砕け散った。

 

「今の感じで壊れるのか!? そんな馬鹿な!!」

「あはは、一応こんな感じでこれからやっていくみたいサ」

「え、ちっさ」

 

 指人形サイズのカタハがそこにいた。

 

 

 

 

 

 




【長めの挨拶】
フレンチキス、もしくはディープキス、決して血のつながった物同士でやるような行為ではない。だが、それは一般常識という鎖に縛られた囚人の発想、人並み外れた想いの前ではそのようなものはひとえに風の前の塵に同じ。
ちなみに、物心ついた時からシンはラァとデーレにキスをされ続けているためにとんでもなくキスが上手い。その技術を使う事はほとんどないが。
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