最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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隠れ家

「小さくなったなぁ」

「ははは、ご覧の通りで」

「どうすんだこれから」

「どうする? それはなんとも薄情な問いじゃないかィ?」

「と言うと」

「連れてってくれヨ、この通り持ち運び易い身体サ」

「……ま、確かにな」

 

 連れていきやすいのは、そうなんだが、連れていく意味がなあ。薄情と言われてしまうのも甘んじて受けるが、ただ同行者を増やすのもなんだか違うよなあ。俺が強くなるために必要なものを選別しないと、なし崩し的に大所帯になる気がする。

 

「で、カタハは今何ができる?」

「何って、そりゃァ。愛らしいだろ?」

「ただのマスコットは要らん」

「な、なんてこと言いやがるんだィ。あては恩人だろ?」

「確かにそうなんだが、口づけでチャラになったんじゃないか」

「いやいや、ならネェ」

「そうか……困ったな」

「あ、あれなら出来そうだネェ」

「あれ? どれだ」

「腕出しナ」

 

 腕?

 

「これでどうだィ?」

「……腕1本分の鎧か」

「ま、このサイズの限界ってところだネェ」

「よし、じゃあ行くか」

「……随分とあっさりだネェ」

「まあ、少しでも連れて行ける理由があればそれで良い。カタハのノリにも慣れてきた頃だ」

 

 桜腕じゃない方でも、これで有効打を出せるようになると良いんだが。

 

「それで、相談なんだけどな」

「何だィ?」

「1時間でラァの探知範囲から逃げられる自信が無い」

「あー、正確にはあと55分だナァ」

「もっと無理だな。地下の隠れ家とかないのか。ラァの砂糖は風に乗るから地下には行きにくいんだ」

「ない、正確には今はないネェ」

「含みがあるな、これからできるみたいだぞ」

「ご名答ォ、人形工房の真下には素材置き場があってネェ。そこをちょちょいと弄れば隠れ家サ」

「ちょちょいってのは、何分くらいだ」

「50分くらいサ」

「早く言え!! 5分で降りるぞ!!」

「合点!! とはいえ、あては御存知このサイズ。運んでおくれヨ」

「分かってる!! 好きなところに潜り込め!! 落ちるなよ!!」

「へいへい」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 落ちるように塔を下る、スカイフィッシュは方向を選ばねえ、下に向かっても加速できる!! 重力+スカイフィッシュなら、5分で間に合う、はずだ。

 

「一階についたぞ!! どうするんだ!!」

「では、ちょちょいと」

「ぐぉあ!?」

 

 床が爆発したぞ!? とんでもねえ威力だ。

 

「ありゃ? 火薬の量を間違えたかネェ?」

「おま、火力、どうなって」

「え? あては別に小さくなっても弱くなったとは言ってないヨォ?」

「……そういうことは先に言ってくれ。連れていく理由を探してた時間を返せ」

「へ? 連れていく理由を探してた?」

「あー、なんでもない。忘れてくれ」

「……へー、連れていく理由を、ネェ?」

「うるせー!! 早く隠れ家作れ!!」

「分かってるサ、さぁやるよ。今だけはあてがここの主」

 

 うわー、なんか地下がグルグルしてる、なんだこれ。

 

「え? てかなんでカタハがこんな権限持ってんだ」

「あー、それはネェ。アイドールの奴を人形に移すときにコピーしたのサ」

「そんなことしてたのか」

「やー、一泡吹かせるための仕込みが役に立って何よりだネェ。それじゃ、あと48分22秒待っておくれナ」

「結構あるな……」

「待つだけは暇かィ?」

「まーな」

 

 あー、なんか駆け抜けた反動で今どっと疲れが出てきたな、普通はこんな駆け足で攻略するもんじゃないんだよ、ダンジョンは、多分。あ、やべぇ、気を抜いたら眠くなってきた。

 

「ふふ、横になって寝ナ。出来たら起こすからヨォ」

「ふわぁ……悪いな……なんか、すごく……眠いんだ」

「目を閉じな、寝てる間くらいなら、あてもなんとかやるサ」

「なら……安心だ……頼んだ……カタ……ハ……」

 

 なんだ、柔らかい、感触が、ある、ような

 

ーシンoutー

ーカタハinー

 

「寝てる姿はまるで、無垢な幼子みたいだネェ」

 

 あてはシンの旦那に嘘をついた、本当は人形工房が攻略された影響なんて微塵もないんだ。それどころか、アイドールが持っていた特権も手に入れて、あてが求めた本物の義肢だって難なく作れちまう。小さくなったという芝居は、ただ、連れていって欲しかったのサ。

 

「この姿、見せる事はできないネェ」

 

 理想の身体、あての、姿。人間と遜色のない身体というあての夢。この身体を愛してくれたなら、それはきっと極楽に行くよりも、幸せだネェ。

 

「今は、寝ている間に膝枕をするくらいが限界サ」

 

 シンの旦那は、誰よりも強くなりたいと願っている。そこに強すぎる仲間は要らない、あての立ち位置はほどほど使える道具だ。それなら、きっと連れていってもらえると考えたのサ。

 

「ああ、愛おしい」

 

 あての、あてだけの、持ち主。

 

「今なら」

 

 そう、今なら、完全に気を抜いて、寝ている今なら、あての、ものに、

 

「なんて、思うだけサ」

 

 シンの旦那は、あてを信用して、命を預けてくれている。それを裏切ることなんて、できやしないサ。

 

「それに、怖い護衛も居るみたいだネェ」

 

 射殺すようにこちらを睨む白いカラス、意思のあるように蠢く木の腕、変な気を起こすもんじゃないネェ。

 

「安心しておくれヨ、奪ったりしないサ」

 

 ま、しばらくはネェ?

 

 

 

 

 

 

                                                                                                                                                                                              

 

 

 

 

 

 

 




【17式自律人形エンデ】
人形の完成形、被造物の終着点、人形工房が生み出した最後の傑作、マキナはデウスを呑み、エンデに至った。そして、人形はひとのかたちを得た。次なる望みはひとのこころ。自らのものではない、愛しい者のこころ。
愛しいこころを得るために、最後の人形は、自らを偽る。それこそが、最も人らしい事と気づかぬままに。
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