最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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災害【地鳴り】

「行ったか」

 

 上からものすごい音が聞こえた、きっとラァが壁でもぶち抜いたんだろう。見た目に反して、行動は結構脳筋だからな。

 

「まさか人形工房から一直線に飛び出すとはナァ」

「凄いだろ?」

「凄いというか、凄まじいというか」

 

 まあ、何にせよ。これでラァの方から距離をとってくれたんだ。ここから出るなら今しかない。

 

「よし、ここを出るぞ。出口はどこだ」

「そういやァ、次はどこに行く気だィ?」

「どこ? 決めてなかったな。海でも渡ってみようか」

「船旅かィ、悪くない」

「いや、空を飛んでいく」

 

 船を動かすのは大変なんだぞ? 俺にはスカイフィッシュがあるんだからそれでいい。

 

「ま、空の旅ってのも悪かないネェ」

「別の大陸とか島国でも強くなるタネはあるだろうしな」

「あてはシンの旦那と一緒ならどこでも良いさね」

 

 ノーコメントとしておこう。ここで下手に答えると面倒なことになる気配がぷんぷんする。

 

「さて、出てきたのは良いが。なんか騒がしいな」

 

 赤盾灯台の空気が張り詰めている。今から攻められでもするのか?

 

「ん? お前は支度しねえのか」

「支度?」

「伝令聞いてなかったのか!? 黒盾砦に昨日地鳴りが出たんだよ!!」

「地鳴り……!?」

 

 そう呼ばれる災害があるのは知っていたけど、それがどうしてデーレ姉さんのいるはずの黒盾砦に。

 

「救援を送らにゃならんから戦える奴らはみんな戦支度をしてんだ、お前は行かないのか?」

「行く、教えてくれて感謝する」

 

 ラァの身が危ないのを回避したと思ったら、今度はデーレ姉さんか!? 俺が行ってもどうにもならないかもしれないが、行かないという選択肢は存在していない。

 

「カタハ、落ちるなよ」

「合点!!」

 

 スカイフィッシュの最高速度で黒盾砦に向かう。方角はすでに把握済みだ。

 

「夜明けまでには着くか?」

 

 正確な距離が分からない以上は、何も起こっていない事を祈るほかない。それだけに、時間の進みが異常に遅く感じる。

 

「これ以上早くはできないが……もどかしいな」

 

制御不能になって墜落するのが1番時間の無駄になる。これ以上の速度は出せない。

 

「くそっ、無事でいてくれ」

 

万が一が何度も頭をよぎる、血溜まりに沈んだデーレ姉さんの姿を幻視する。

 

「落ち着け、デーレ姉さんは強い。俺なんかよりずっとだ。心配する事なんてないんだ」

 

言い聞かせる、何度でも。

 

「見えた……!!」

 

 そびえ立つ黒い城塞、そして周囲には破壊の跡。

 

「焦げた匂い……」

 

 周囲の物が焼けている、しかしこれはただ焼けているんじゃない。電熱で黒焦げになっている、それならここはデーレ姉さんが戦った場所か。

 

「砦は健在で、地鳴りは居ない」

 

 勝ったのか? それなら、

 

「なんだ?」

 

 デーレ姉さんの破壊痕の他に、何かとんでもなく強い力で蹴り出しような足跡。

 

「……デーレ姉さんの移動には、こんな跡は残らない。つまり、デーレ姉さんのほかに誰か戦っていた?」

 

 少なくとも足手まといにならないレベルで戦える人間といえば、この砦の主くらいだと思うが。

 

「デーレ姉さんが矛で砦の主が盾をやっていたのか」

 

 そのタッグなら、災害である地鳴りでも正面から打倒する事ができてもおかしくはない。

 

「地鳴りも居ないなら、ここに残るリスクの方が大きい」

 

 デーレ姉さんの探知範囲に入ってしまうのは避けたい。

 

「……戻るか」

「いいのかィ? 無事を確認しなくても」

「良い、デーレ姉さんは負けない」

 

 ここがこの程度の破壊しかないのなら、それは姉さんが本気で戦っていない証拠だ。姉さんが本気になったら、この辺り一帯は更地になっている。

 

「後悔しないようにナァ」

「大丈夫だ」

「ま、シンの旦那がそう言うなら。あてから言うことはなにもないサ」

 

 さて、海を渡る準備でもするか。

 

「無駄足で良かった」

「なにが無駄足だって?」

「っ!?」

 

 誰だ、それよりも、どうやって? さっきまでここには誰も……!?

 

「お前、名前は?」

 

 目の前の女、金髪を腰まで伸ばした令嬢風の見た目。それを覆い隠して余りあるとんでもない威圧感。強さを隠そうともしないその姿。

 

「……シンだ」

「シン? シンねぇ……」

 

 何かを考えるような素振り、今のうちに俺の本能が逃げろという。だが、俺の勘は逃げられないと言う。相手の目的すら分からない現状では迂闊に動くことはできない。

 

「あの電撃の弟だろ。お前」

「電撃? 何の話だ。俺はここに地鳴りを倒しにきたんだ」

「嘘だな、お前じゃ無理だ。そんなことは自分が一番よく分かってますってツラもしてる。助けに来たんだろ? 姉貴を」

「何のことだかさっぱりだ、話が終わりなら行くぞ。地鳴りがいないならここに居る意味もない」

 

 これで行かせてくれるなら、どんなに楽だろうか。

 

「待てや」

 

 肩を掴まれたか、好都合だ。

 

「あ?」

 

 手をすり抜けた。異常事態に固まる相手、後は全力で飛ぶだけだ

 

「させねえよ?」

「……冗談だろ」

 

 何をされたのか分からなかった、ただ俺は地面に倒れて拘束されている。

 

「なぁ、お願いがあるんだよ」

 

嫌な予感しかしない。

 

「聞いてくれるよな?」

 

 

 

 

 




【地鳴り】
大地を操るおそるべき災害、一国をも滅ぼす力を持つというが今回は相手が悪かった。
雷神と鬼が暴れ回り、地鳴りは崩れゆく。無念を胸に抱きながら。
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