最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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赤い海の上で

「止まり木、我を褒めるでしゅ」

 

ん? 俺は、今イカと戦って……? でもヤタが居るってことはあれ?

 

「と、ま、り、ぎ」

「分かった分かった、頭をすりつけるな」

 

 そういや潜る前くらいからヤタが居なくなってたな。飛べないだろうから、壁抜けの応用で隠れていたのだとは思うが……

 

「おい、よく見たらお前ボロボロじゃないか!!」

「やっと分かったでしゅか、止まり木が戦ってたあのイカは止まり木が見たら発狂する類のものでしゅ」

「え」

「我が身体の内側に潜り込んで守ってなければ今頃頭がパーンってなってるでしゅ」

「そ、そんな相手だったのか」

 

深海にいるただデカいイカかと思ってた。

 

 

「そうでしゅ。さあ撫でるでしゅ」

「ああ、ありがとうヤタ」

「えへへ……」

「ん?」

 

 何か、違和感がある、ような。視界が狭い?

 

「っ!? 何かおかしいでしゅか!?」

「いや、目がなにかおかしい……ような?」

「誤魔化しきれないでしゅか……」

「誤魔化す? 俺をか?」

「心して聞いて欲しいでしゅ」

「なんだ?」

「止まり木の右目はもうないでしゅ」

「は?」

「防ぎきれなかった足の切れ端が目に入り、潰されてしまったでしゅ」

「……そう、なのか」

「そうでしゅ。治療ができるような状況でもなく、もう見えることは多分ないでしゅ」

「……ありがとうな、教えてくれて」

「礼を言うならあの人形に言うでしゅ、応急処置とその他もろもろをやったのは人形でしゅ」

「そうなんだな、分かったよ」

 

 右目、腕に続いて失ったか。どこかに義眼でもあれば良いんだけどな。

 

「そういえば、外がどうなったか分かるのか?」

「まあ、だいたいは」

「あのイカはどうなったんだ?」

「ああ、あれは乗り物がなんかガシャーンガシャーンとなって全部食い散らかしたでしゅ」

「ガシャーン?」

「そうでしゅ、肉の内側からこう、なんか出てきたでしゅ」

「……なる、ほど?」

 

 賢者の石製品ならそんなこともあるか。

 

「あと、目が覚める前に1つだけ言っておくでしゅ」

「なんだ?」

「あんまり傷ついたらダメでしゅ。腕も目も失って、それでも止まる気がないのは分かってましゅが、それでも止まり木が壊れたら我も一緒に壊れるのは知っておいて欲しいでしゅ。これは護り鳥の契約だけの話じゃないでしゅ」

「……気をつける」

「お願いするでしゅ。人形も今にも泣きそうな顔で治療をしてたんでしゅから」

「分かった」

「じゃあ、さっさと起きるでしゅ。我は疲れたからしばらく止まり木の中で休むでしゅ」

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

 

 浮上するような感覚、これは目覚めの兆候だな。

 

「……眩しいな」

 

 海の上じゃあ日を遮るものもねぇし。そりゃあ眩しいよな。

 

「ああ、これが今の視界か」

 

 明らかに狭い、見える範囲が減っている、これがこれからの世界なんだな。

 

「シンの旦那……あてがナイチンゲールほどの事ができれば、そうすれば、目を、光を、失うことはなかったんだ、すまネェ……本当にすまネェ……!!」

「良いんだ、ありがとうカタハ」

「礼なんて言われるようなことはできてネェ。そんであてはしばらく目から離れられネェんだ……何かあったら言っておくれナァ……」

「ああ、分かった」

 

 後は……レブンか。ここは陸じゃないから、レブンの上だろう。

 

「レブン、無事か?」

「……大事ない。だが、我輩にはもう友と話す資格がない。我輩のせいで友は光を失った。我輩が代わりになれれば良いのだが……その機能は我輩にはない」

「目の事は仕方ない、こうなってしまった事は残念ではあるけどな」

「友よ、我輩の罪は許されぬものだ」

「許すよ。終わってしまった事はどうしようもないんだ」

「だが……」

「良いんだ、良いんだよ」

 

 これから海での移動をするときにレブンに頼ることがあるだろう。それならここで借しを作っておくのは決して悪い事ではないはずだ。そう言う打算を抜きにしても、弱い者が戦場で傷を負うのは当然の事だから仕方ないしな。

 

「何か、償いはできないだろうか」

「そうだな……俺が海を渡りたいときにまた背中を貸してくれれば良い」

「それは当然のことだ。我輩は償いに何かを差し出さねばならないはず」

「差し出すって言われてもな……」

 

 もらえるものなんてないだろう……

 

「要らないって」

「だが……!!」

「……それじゃあ歯をもらえるか」

 

 多分そのままでも天然の刃物として使えるレベルだと思うが、加工すれば更に信頼できる武器になってくれるだろう。

 

「そんなもので良いのか……?」

「ああ、それで良いよ」

「分かった。陸に着いたら渡そう」

「ありがとう」

 

 これで食い下がられたら困るとこだったな……下手なものを受け取っても持てあます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【潜行】
ほんっ………とうに世話の焼ける止まり木でしゅ
人間の身体の中に入り込むなんて、したことなかったけど上手くいったでしゅ
思ったより居心地が良いし、もうちょっと居ても良いでしゅね

二心同体……えへへ、これはもう結婚でしゅね?
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