最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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石を継ぐもの

「今なんて言った」

 

 俺の聞き間違いでなければ、こいつは賢者の石製品のことを知っているような口ぶりだった。俺以外にこれの存在を知っている奴がいるとは考えもしなかった。

 

よく考えてみれば、賢者の石が作ったものはそれ自体は道具に過ぎず、俺だけが使えるわけじゃない。ならある程度の知識を持っている奴がいてもおかしくはないのか?

 

「ンン? パックの事を知らない? 石掘りならパックの事を知らないわけないデスけど?」

「石掘り?」

「……もしかして、マジで偶然手に入れたとか言いマセンよね。そんなに賢者の石を持っておいて」

「いや、そうなんだ」

「オーマイゴー!!?」

「うわっ!?」

 

 いきなり大声を出したな、そこまで驚く事なのか。

 

「信じられマッセーン!! そんな馬鹿な!!!! どうやって使い方を知ったのデスカ」

「俺は触れたら使い方が分かる能力があるんだ」

 

 これは別に知られたところで問題はない。別に弱点とかもないし。

 

「そんな地味能力がこんな風に開花するとか、あなた主人公デスカ」

「シュジンコー……?」

「英雄って事デス。あなたの言うことがホントなら世界征服できマスヨ」

「それは最強ってことか」

「まあそうデス。今からでも最短クリア目指せマス」

 

 最短クリアってなんだ?

 

「そーデスネー、4魔人はもう出てるみたいなのデー、手始めにソコから落としましょうネー、RTAルートで言う4斬りデスネー」

 

 さっきからちょこちょこ意味わからん単語が入るな。その意味を問いただすべきか? それともこいつが何者かを聞く方が先か?

 

「ええと、パックさん?」

「へいへい、なんデスカー?」

「あんたは一体何者なんだ」

「ふっふっふ……それはデスネー!!」

「パックは余の姉だぞ」

「え?」

「それもまた然りデスネー。でも今はもっと違う名前で名乗りマス」

 

 なんだ、なんかごちゃごちゃしてきたな。

 

「ンー? じゃあこう言いましょうカー」

 

 なんだ!? パックから一気に重圧が……!?

 

「我が名はパック、賢者の石序列8位にして【育成卿】と呼ばれし者!!」

「……!?」

「やー、こう言う名乗り憧れてたんデスヨネ」

 

 賢者の石序列8位? すると何か、こいつは賢者の石の関係者どころか中枢の人間だって言うのか。賢者の石は今もあるのか?

 

てっきりもう無いものだと思い込んでいたが、まだどこかにあると言うのならそれは……

 

「賢者の石は今もあるのか……!?」

「アー、期待に溢れた目でみていただいているところ悪いんデスケド。賢者の石は空中分解、自動解体デストローイ、でもうナイデス」

「な、じゃあなんでダンジョンやら道具やらはそのままなんだ」

「それはまあ、遺すのが前提で作りましたからネー」

「なんでそんなことを……!!」

 

 それじゃあ賢者の石が何をしたかったのか分からない。作るだけ作ってあとは放っておく意味はなんだ。

遺すのが前提、パックはそう言ったな?

 

なら、それは遺さないといけない理由があるはずなんだ。試練を課すダンジョンと、とんでもない性能の道具を用意する意味はなんだ。ただの商売でそこまでするか?

 

たしかに賢者の石の道具は商品ではあった、だがその裏には普及させないといけない理由があったんじゃないか?

 

道具による人類全体の底上げと、一部の猛者を選別するためのダンジョン。それはなんのため?

 

「……立ち向かうには強すぎる外敵がいるのか」

「ホー、なかなか察しが良いデスネー。その通りデス。この世界、我々はアルファと呼んでいましたが。このアルファと繋がっている世界が2つありマス。仮称ベータ、ガンマ、デスネ」

 

 繋がってる世界? べーた、がんま? なんだ理解が追いつかないぞ

 

「ベータ世界は所謂神の国デス。天使、神、聖人が住んでいる天上楽土。対してガンマ世界は地獄デス。悪魔、魔王、魔人が跋扈する世界デス」

「天使? 悪魔? そんなのいる訳……」

「ハハハ!! 賢者の石の製品を使っておいてベータ世界とガンマ世界を否定するんデスカ? 賢者の石が製品の材料に使っているのはそちらの世界のものデスヨ」

「いや、そんな」

「見せた方が早いデス。ちょっとスカイフィッシュ貸してくれませんカネ。壊しはしないノデ」

「……分かった」

 

 現状分からないことが多すぎる。スカイフィッシュを渡す事で少しでも理解の助けになるのなら。

 

「ドーモ、ではちょちょっと」

 

 流れるような手捌きでスカイフィッシュをバラしていく。そして完全にバラバラになった時、パックの手には脈打つ赤いものがあった。

 

「これ、天使の翼デス」

「……どう見ても肉片なんだが」

「ええ。デスから天使の翼の一片なんデス」

「は……?」

「賢者の石が作った製品には多かれ少なかれこういうものが入っているんデスヨ。死んで破片になっても脈打つ生物はアルファ世界にはいないはずデス」

 

 本当なのか、それを確かめる術がない以上は今は飲み込むしかない。

 

「賢者の石の目的は、アルファ世界がベータ、ガンマ世界に立ち向かえるように遺産を遺す事デシタ。完全な形での成就は無理デシタが、あなたが今ここに居マス。王サマを調整して仕立て上げるよりずっと早い」

「……待て、何を言うつもりだ」

 

 嫌な予感がプンプンしてきたぞ。

 

「世界を救う気はありマスカ? あなたにしかできない事デス」

 

 

 

 

 




【育成卿】
育てるのが好きだった、植物でも動物でも、人間でも
育成ゲームが好きだった、シミュレーションゲームも好きだった
だから、千載一遇の機会だった
この世界は育て甲斐がある
いつ襲われるか分からない、いつ自壊するか分からない
そんな世界だった
私は、自分が育成する国が欲しかった
そうして世界を旅するうち
同郷の人間に会った
彼らは自分達を賢者の石と称していた
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