最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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桜の根は血を吸うらしい

「そういえば名乗っていなかったな。樹人は特に名を持たないが長には名が与えられる。桜の長の名はヨシノだ。そう呼ぶ事はないと思うが」

 

 ひとまずということで桜の樹人の方に向かったら唐突に自己紹介をされた。なんとなく分かってはいたがこの樹人が長だったらしい。

 

「そうか、これからよろしくなヨシノ」

「な、名前をそう軽々と呼ぶな!!」

「自分で名乗ったのに……」

「う、うるさい!! 普段呼ばれないから恥ずかしいんだ!!」

「あらやだ、かわいい」

「かわっ!? ふざけるなよ!!」

「うおっ!?」

 

 風が巻き上がる、桜が舞う小さな竜巻が俺の身体を持ち上げた。ここから俺にできることはほとんどないな、ヨシノは結構強いみたいだ。それでも、姉さんとラァには及ばないとは思うが。

 

「こんど茶化したら、真上に放りなげるからな!!」

「分かった、もうしない」

「全く、油断も隙もないなお前は」

「シンだ」

「……? シンとはどういう意味だ」

「俺の名前だ、名乗られたなら名乗り返さないと失礼だからな」

「……お、まえは……!!」

「あぶっ!?」

 

 今度はカマイタチのような風の斬撃が飛んできた!?

 

「当たったら死ぬぞ!!?」

「うるさいうるさい!! 迂闊なことばかりする奴は死ななきゃ治らんのだ!!」

「……名乗るのがまずかったのか」

「真名の交換は、魂の契りを意味するんだ!!」

「じゃあなんで名乗ったんだよ!?」

「それだけ期待しているという事だ!! 言わせるな恥ずかしい!!」

 

 期待がめちゃ重いことが判明いたしましたとさ。できる事しかできないから過度な期待はしないで欲しいんだけどな。

 

「じゃあまあ、聞き込みでもしますかね」

 

 探偵の真似事なんてしたことないが、なるようにしかならないだろう。

 

「じゃあヨs」

「名を、軽々しく、呼ぶな」

「じゃあ桜の長で」

「なんと安易な、だがそれで手を打とう」

「じゃあ聞くけど、前の長のことについて」

「待て、今から防衛戦だ。話は後にしろ」

「ん? 戦争は一時休戦だろ」

「違う、奴らが来た時は我らの諍いなど瑣末なこと。長が総出で当たらねばならない」

 

 奴ら、そう呼ばれた存在が何なのかはすぐに分かった。

 

「なんだありゃあ!!?」

 

 わさわさ、うぞうぞ。がさがさ、かりかり。そのような音が木々の間から響いてきた、地鳴りのような音は音の主の重さを知らせる、これで泣き声のあろうものなら大型の獣だった。だが、こいつらの足は4本ではなかった。

 

「でかすぎるだろ」

「そうだ、大きくそして強い。ゆえに我らはあれらを撃滅せねばならない」

 

 視界の端まで埋め尽くす勢いで湧いてきたのは鱗のようなものに包まれた芋虫だった。虫が巨大化したようなモンスターは当然存在しているが、それはここまで大きくはない。こんな、小屋ぐらいある奴なんて聞いたこともない。

 

「奴らの名は囓る者(ニーズ)。我らの森を食らうものだ」

「……俺も戦った方が良いか」

「いや、それには及ばない。これは我らの戦いなのだ」

 

 正直ホットした、俺の攻撃であれらがどうにかできるかは怪しかったからな。

 

「すまない」

「良い、お前に求めているのは囓る者との戦いではない。では、ここを動くなよ。守り切れるとは限らないからな」

 

 ヨシノが囓る者の方へと向かう、するとさっき顔合わせをした二人の長も前線に駆けつけていた。

 

「焼けろ、そして死ね!!」

「貫かれなさい」

 

 なるほど、楓のやつは葉の形をした炎を使うみたいだな。そんで、竹の奴は超高威力の水鉄砲みたいな感じに見える。二人ともヨシノと負けず劣らずって感じだ。

 

「はぁあああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 桜の竜巻が囓る者を空へと放り投げていく、翼を持たないあいつらではただ落ちて潰れるだけだな。次々と現われる囓る者も出てくるはしから焼かれ、貫かれ、巻き上げられていけば数を減らしていく。

 

「しかし、どこからこんな奴ら湧いてくるんだ」

 

 出所が分かれば、こんな風に襲われる前に潰せると思うんだが。雨とかみたいに降ってくる訳じゃないならどこから来てるのかは探れるかもしれない。

 

「一応奥の手はある、動いてみるか」

 

 動くなと言われたが、流石に何かしないとな。

 

「こっちに向かってくるんだから……、あいつらが来た方を遡ってみれば良いよな」

 

 三人の長がヘイトを稼いでいるおかげで、俺が近くを通っても囓る者は見向きもしない。そもそもどこに目があるかも分からんけどな。

 

「こっちか……」

 

 なんとなくそれっぽい場所に着いたとは思うんだが、これはなんだ? デカい木の根?

 

「地下から来てるってのか、ならここの下は奴らの巣?」

 

 これ思ったり深刻なんじゃないか、これじゃあいつ押しつぶされてもおかしくないぞ。

 

「ここより先に行っても大丈夫なのか分からないが……行かなければ何も分からないか」

 

 大樹の根の先へと足を進めた、その瞬間になにかが変わったような感覚に包まれた。おいおい、これってまさか。

 

「あー、やっちまった。そういうことか」

 

 先ほどまでとはまるで違う景色、周囲は壁、眼前には門。

 

「汝、迷宮に挑む者よ。大樹(ユグドラシル)の底へと至れ、か」

 

 あの場所、ダンジョンの入り口だったのか……

 

 

 

 

 

 




【囓る者】
タベル、タベル、タベル。フレルモノヲ、タベレルモノヲ、タベテタベテ、イタルノダ、ハルカナタイジュノ、ハルカナネヘト、イタレバワカル、ナニモカモ、ウマレタイミモ、タベルイミモ、ワレラナニユエウマレ、ナニユエシヌノカ、タベタサキニハ、スベテガアルノダ
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