最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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里帰り

「はぁ……気が重い」

 

 蒸発した息子がひょっこり帰ってきて、家の秘密を話せだなんて言ったら絶対に怒られる。これはもう確定だ。避けられない。

 

 で、俺は母さんが怒った怒ったところを見たことがない。つまりは未知だ。怒ったところを見たことのない人が怒るのが一番怖いのはそこだ。

 

 俺がどうなるか分かったもんじゃない。

 

「深いため息だ。若人よ、そのように俯くものではないぞ」

「いや、とてもとても前向きになんて……ん?」

 

 俺の目の前にいる老人、見覚えある。盾王だ。なんで!?

 

「た、盾王陛下!?」

「陛下などと呼ぶ必要はない。ビクトリウスはどこの国家にも属しておらぬ。故に私を仰ぎ見る必要もない」

「で、ですがここは盾王陛下の領地」

「なるほど。ではなおさら畏まる必要はない。ここは私の領地ではない」

「へ? ではここは……?」

「あたりをよく見ると良い」

「?」

 

 あー、なんか見覚えあるー、なあんだ、ここ俺の部屋じゃーん、ははは、驚いたなぁ、なんて

 

「言ってる場合か!? なんでここに居るんだ俺は!!?」

「良い反応に腹から出ている声。身体に支障はなさそうで重畳。最も、それが良いのか悪いのか」

「なんか不穏なことを言わないでくれます!?」

「はっはっは、そろそろ時間か」

「なんのですか!?」

「平和が終わる時間。ここまでに貼ってきた盾が残り一枚になった。目覚めはせめて平穏にと思ったのだがここまでのようだ」

「え、それはどういう」

 

 盾王の言葉の意味はすぐに分かった。なぜなら。

 

「あら、起きたのね?」

「母さん……」

 

 扉がずり落ちるようにバラバラにされ、母さんが姿を現したからだ。その手には愛用の包丁とフライパン。

 

 母さんの愛用なのだから尋常なものではない。超希少な半獣半石の獣であるオリハル狐(コン)でできた包丁とフライパンだ。

 

「ほう……オリハル狐製か。ならば私の盾を割るのも頷ける」

「お褒めに預かり光栄です。今から少々お見苦しい内輪の話を始めますので応接室へどうぞ」

「うむ。死ぬなよ若人」

 

 行かないで欲しいというのが本音だが、今から起きる惨劇に付き合わせる事はできないな。

 

 さて、母さんの中にいるのは鬼か蛇か、それとも破壊神なのか。

 

「さて、聞きたいことを聞きましょう。あなたはこの家を捨てて外に出た、そうね?」

「え?」

 

 家を捨てて? 俺が? そんな事ありえないだろ。

 

「嫌気がさしたのか、それとも何かに絶望したのかは分からないけれど」

「待って待って、俺は別に」

「黙りなさい。母が話しているでしょう!!」

「うっ!?」

 

 威圧感が尋常じゃねえ。息子に向けるもんじゃねえだろこれは。

 

「あと少しであなたに受け継がせる準備ができたというのに。今からでも遅くはありません、賢者の石であなたは最も強き者になるの。嫌だと言うなら」

「母さん、賢者の石ってこいつらみたいなものか」

 

 休眠状態に入っていたカタハとオゼロを起こす。省エネ? 機能らしいがよく分からないな。

 

「ン? こいつァ驚きいたネェ。お初にお目にかかります、あてはカタハ。【人形工房】のはぐれものにしてシンの旦那に仕えるものでさァ。お見知り置きを御母堂」

「ワン!!」

 

 母さんが固まっているもしかしてまずい事をしたのか。あとはアルカとヤタ、スカイフィッシュも紹介しないといけないが……

 

「オイラもそうなったんだろ? 教えとかなくて良いのか?」

「いや、母さんの反応を見てからと思ってたんだけど」

「カァッ!!」

 

 ヤタも出てきちゃった。なんかわちゃわちゃしてしまったぞ。母さんは依然として固まっている。これは怒りの前の静けさか、呆れ返ったと言う状態か。

 

 もう出してしまったからに仕方ない。何事もなかったように説明をするしかないか?

 

「賢者の石が作った物という意味じゃなかったのか……?」

「シン……あなた」

 

 ゆっくりと歩いて近づいてくる。それだけの動作を止められる気がしない。どんな風に攻撃しても全部撃墜される予感しかない。

 

「分かっていたのね、ビクトリウスの使命を」

 

 え?

 

「せっかくだからちゃんと話しましょう。ビクトリウスと賢者の石の関係を」

 

 え?  

 

「そう、これはビクトリウスが産まれる時の話」

 

 なんか勝手に始まっちゃった。けどまあ、聞きたかった事聞けそうだから良いか。

 

「あ、それはそれとして勝手に出て行った罰は与えますからね」

「へ?」

 

 やっぱりダメだったー!!

 

「半殺し、半殺し、4分の3殺し、10分の9殺しの順でやります」

「情状酌量を要求します!!」

「却下します。理由は母を悲しませた事を相殺する事情など存在しないからです」

「そんな!!? 陪審員を呼んでくれ!!」

「シンちゃん呼んだ? ビリビリいっとく?」

「お兄様お呼びですか? 砂糖漬けになりたいならすぐにでも」

「ここは敵地の真ん中か!? 頼りにならないが、父さんなら……!?」

 

 父さんに加勢を要請をしようと思ったが、そんなことをしたら父さんにまで被害が及ぶかもしれない。だが、父さんならやってくれるかも……

 

「ん?」

 

 ひらひらと落ちてきたのはガタガタの文字が書かれた紙。

 

『生きろ。父より』

「うん。まあ、この状況なら俺でも逃げるわ」

 

 




【オリハル狐】
おいおい、この世で1番堅いものが何か知りたいのか。
鉄も鋼も金剛石もあるが、そんなものじゃ比較にならねえよ。
これはな、生きた金属なんだ。
なんで狐の形なのかって?
そんなの俺が知るかよ。
―――伝説的な金属加工職人 ドドロス
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