最強になれと言われても他の妹姉の方がずっと強いので無理と言ったら両親に泣かれ、じゃあ修行に行きますと言ったら姉妹に泣かれたんだがどうしろと言うんだ?   作:ジラフ

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オーバーホール

「ん? なんだこれ」

 

 体の調子が良い。母さんとやり合って全身バッキバキになるのを覚悟していたのに。これは一体どういう事だ?

 

 超再生能力でも会得したかな?

 

「お兄様。お目覚めですか?」

「ラァ……久しぶり」

「お体の具合はいかがですか」

「凄く調子が良い、まるで回復能力でもあるみたいだ」

「それは良かった。お兄様が下さった、このナイチンゲールがまた役に立ってよかったです」

「……ナンノコトカナ」

「いえ、良いのです。お兄様はきっと、何か、そうとても重大な、ラァ……より……大事な……グスッ……ことが……」

 

 やばい、これはマジ泣きだ。寝起きで何が何やらだが、今はあやすことに全力を注ごう。妹の泣き声ほど効くものもない。

 

「家族より大事なものなんてない。俺がここを離れて行動していたのは確かだが、その一点に関して俺は何一つ違えていない」

「ほんとう、ですか」

「疑うのか?」

「その言い方はずるいです。ラァはお兄様を疑うことなんてできないのに」

「ごめん……置いていくような真似をして」

「良いんです。戻ってきてくださいましたから、それに、これからはずっといるのでしょう?」

「いや、それは……」

「違うんですか……?」

 

 くそっ、上目遣いで目をうるうるさせてる。俺の妹は可愛いなあ!!

 

 だが、ここで終わらせたら俺は何も成さないままだ。むざむざ別の世界からの侵略を許すハメになるのも看過できない。

 

「俺はやらないといけない事があるんだ」

「そう、ですか、あくまで行くと言うのなら、ラァもそれ相応の対応をさせていただきます」

「ん? ラァ? 何を?」

 

 砂糖がラァの周りに集まり始めている。何をする気なんだ?

 

 まるで今から攻撃をするみたいじゃないか。

 

「お兄様の動きを封じて監禁します」

「待て、冷静になれ、何も一生帰ってこないってわけじゃない、やることをやったら帰ってくる、絶対だ」

「それまでラァは耐えられないので、駄目です」

 

 駄目かー、どうする、俺から攻撃して突破という線はない。

 

 ただでさえ不安定なラァの心にこれ以上俺から打撃を与えたら砕けてしまうかもしれない。

 

 第3勢力の登場を期待したいが……

 

「うふふふ……お姉様とお母様なら来ませんよ。治療の邪魔をしないようにキツく言っておきましたから」

「……そっか、近くにはいるんだな」

 

 ここはラァの部屋。そこそこの距離はあるが走ってどうにかなる距離だ。

 

「ラァ、俺は今捕まるわけにはいかないんだ」

「いいえ捕まえます。そもそもこの距離でラァから逃げる事ができますか」

「どうだろうな、やってみよう」

 

 するりと体を落下させる。ここが2階で助かったな。

 

「な!? お兄様!?」

「服に仕込んでた分も置いていくぞ、悪いな」

 

 壁を抜けるのは俺とその付属物だ。ラァの砂糖はヤタの能力範囲から外れる。

 

 どうせ仕込んであるとは思ってたが思ったより多いな。これ全部集めたら結構だぞ。

 

「よし、行くか」

 

 目指すは居間だ。おそらく姉さんか母さんのどっちかが居るはずだ。ラァを止めるならその2人の方が俺より上手い。

 

「おにいいいいさまあああああああ!!!!」

「早いな」

 

 砂糖を巻き込んだ塊のようになったラァが追ってきた。あの移動早いとは思うが見た目が絶望的だな。正直言ってモンスターの類だ。

 

「俺が到達する方が早い」

 

 扉を開けて居間へと体を……

 

「あー、そんなご無体なー、あてにはシンの旦那がいるというのにー」

「何を言っているのですか? 子の持ち物は親の持ち物に等しいのです。見せなさい」

「あーれー」

 

 見たくないものが目の前に、どう見ても襲われているカタハに、襲っている母さん。

 

「嘘だと言ってくれよ母さん……」

「待ちなさいシン、何か誤解をしているようですね」

「良いんだ母さん……たとえ母さんが人形に欲情するとしても……俺は母さんを愛しているから……ちょっと受け入れる時間をくれれば、普通に、接するから」

「重大な間違いがあるので、そこに座りなさい」

「ちょっと、今は、無理かな」

 

 扉をそっと閉めた。

 

「……お兄様」

「ごめんラァ、今は1人にしておいてくれ」

「え、あ、はい……」

 

 部屋に戻る足が重い。家の秘密を話してもらう前に母さんの性癖の秘密を明かされるなんて思っても見なかった。

 

「いや、抱えきれねえって……」

 

 一旦頭を整理するために寝ることにしよう。きっと目が覚めたら何もかも普通に、

 

「なーんて思ったけど。母さんに限ってそんな倒錯した趣味はないか。だってあの母さんだし、早く戻ろう」

 

 気持ちを切り替えて居間に戻る。

 

「ごめん母さん。やっぱり俺の……勘……違い……だった……」

 

 え?

 

 なんでみんな分解されているんだ、カタハも、オゼロも、スカイフィッシュも、アルカも、

 

「これは……?」

「シン、これは必要な事よ」

「何がだよ!? 俺から取り上げる事がか!?」

「だってあなた、手入れの仕方知らないでしょう?」

「え?」

「これはオーバーホールというものよ、今からする事を覚えておきなさい。手入れができないのは所有者失格なのだから」

「……はい」

 

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