勇者にはなれない   作:高円寺南口

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47 紅の狂宴

 翌日明朝、俺たちは再びイカルガ鉱山の採掘場を訪れていた。

 決行にあたって朝の時間帯を選んだのは、山賊の生活習慣上、夜襲より朝駆けの方がより効果的だと判断したからだ。

 

 辺りは薄暗く、吐く息は白い。

 朝焼けで空がほんのりと紅く染まり始めた頃――南洋風に言うなら、彼は誰時に俺は鉱山を見下ろせる見晴らしのいいポイントで、再び大自然に土下座――じゃなかった。千里眼を発動していた。

 

「ふむ……全く人気がないな」

「そりゃこんな時間だもの」

「にしても、見張りすら置かないとはね。麓に妙な連中がいると知りながら、ずいぶんと舐められたものだ」

「遠足に来たと思われてるのよ。きっと」

 

 ドロシーは「ふあああ……」と興味なさそうにあくびしていた。それからワンドをかざすと、昨日と同じように使い魔のフクロウが現れて、索敵を開始した。

 が――フクロウは洞窟の入口に近寄るや、すぐに引き返してこちらに戻ってきた。

 

「ん? どうしたの」

 

 フクロウはドロシーの肩に降りると、ふるふると小刻みに身体を震わせていた。

 

「この子があからさまに怯えるなんて、珍しいわね……」

「なんて言ってるんだ? 『腹が痛くて帰って来たホー』、『ちょっとウンコしてくるから待っててホー』か?」

「んな訳ないでしょ……身の危険を感じたのよ。たとえば」

 

 ドロシーが言った。

 

「血の匂い、とかね」

 

 三秒ほどの沈黙が流れる。

 

 ゴーレム君を起動させるのも一つの手だが、アレは無機物であるが故に地味に魔力食うんだよな。今後戦闘が見込まれる状況では、極力使用を避けたい。

 ならば……

 

「突入しよう」

「お。やっとその気になった?」

「竜巣に踏み込まずんば、竜涎香を得ずってな。個人的には、君子危うきに近寄らず派なんだが、仕事となると話は別だ」

「ふーん……私は逆だけどね」

「まだ若いのに、役人みたいなこと言うなよ」

「合理的に生きてるだけよ」

 

 周囲を警戒しつつ、道沿いに下山を開始する。十五分ほどかけて、ようやくお目当ての入口に辿り着いた。

 例の山賊どもが、ねぐらとして使用しているポイントだ。

 

「相変わらず、人の気配が全くないわね……不気味なくらい。まだ寝てるのかしら?」

「ふむ。ガイラルがここにいればなあ」

「誰それ?」

「竜退治の時に世話になった白魔術士で……あいつレベルの索敵結界が使えたら、敵にも気付かれず、中の様子もバッチリ探れるんだろうけど」

「ま、私らじゃ無理よね。二人とも、黒が専門だし」

「俺の専門は黒というより、灰色なんだけどな……アイアムデバフマン」

「へえ……すごくしっくり来たわ。確かにあなた、人の足を引っ張るの好きそうな顔してるものね」

「君も人をおちょくるの好きそうな顔してるよ。お互い、バフよりデバフ向きだね」

 

 ドロシーは「ふふふ……」と笑い、洞窟へと入っていく。

 なにわろてんねんと思いつつ、俺も彼女の後に続いた。

 

 洞窟の中は冷気の塊に手を突っ込んだかのような、外とは違った質の寒さが滞留していた。陰気くさくて、得体が知れず、気味が悪い。まるで俺みたいだ。

 足音が残響し、ぽちゃりぽちゃりと、どこからともなく水滴が垂れる音が聞こえた。

 

 一定間隔で置かれている篝火を一つ、二つ、三つと通過して、やがて階段の終点へと辿り着くと、不意にドロシーが足を止めた。

 何事かと問うより早く、俺もまたすぐに異変を察した。

 

「…………死体、か。どう見ても事切れてんな」

 

 ドロシーはうなずく。そして死体の方へ近づいていった。

 

 面倒事には人一倍敏感な俺は、この時点でもう帰りたい気持ち満々になっていた。

 嫌な予感がする。俺の中の天使と悪魔がガッチリ握手をして、「君子危うきに近寄らず」条約における「仕事となると話は別」条項の削除に合意し、互いに満面の笑みを浮かべている。

 

 しかし、怖い物知らずでスタスタ歩いて行くドロシーを見捨てる訳にもいかない。

 なんという強メンタル……ため息を一つ、すぐに彼女を追った。

 

 ハンガーにつるされた鉄鍋。ほのかに残る熾火の近くに、山賊の亡骸が一つ。

 少し離れた所に、もう一つ。

 

 片方は腹部を抉られ腸が飛び出しており、もう片方は首から上がなかった。紅い液体が地面を染めている。

 いずれも武器を手に持ち、応戦しようとした形跡が見られた。

 

「おいおい。宴席での喧嘩ってレベルじゃねえぞ……」

「血の乾き具合からするに、死んでから二・三時間は経ってるかな」

「だが……変だな。人間がやったにしては」

「やっぱりあなたも思った? 人殺しにしては、殺し方が残虐過ぎるのよ。ここまでやる必要あるっていう……衝動的な殺意が原因なら、なおさらね」

「だよな。怪物の類いに襲われたと考えるのが妥当か」

「ええ。この爪痕……人間に近い体躯ね。中型で、残虐な殺し方を好む魔物といえば、吸血鬼が思い浮かぶけれど……こんな人里離れたところに、吸血鬼が現れる訳ないし」

 

 ブツブツ言いながら、死体の周囲を探索してるドロシーを見て、俺は眉根を寄せた。

 

 地面には血を引きずったような跡が残っている。

 薄暗くてはっきりとは見えないが、昨日のゴーレム君情報だと、奥は確か大空洞に続いていたはず……

 

 俺の視線を察したのか、ドロシーがすっと立ち上がる。

 

「行きましょう、ニケ」

「ええ? 行くの?」

「当たり前でしょ。あなた何しに来たのよ」

 

 ドロシーは簡易魔法で淡い光の球を作り、スタスタと洞窟の奥へと向かっていく。

 んもう、ホント怖いモノしらずなんだから……

 

 細い通路を伝い、再び開けた場所に出た。

 予想通り、そこには大空洞が広がっていた。天井は高く、石筍が林立しており、地下水のせせらぎが聞こえる。魔力を帯びた水晶が、妖しい輝きを放ち、この場に不気味な神秘性をもたらしていた。

 

 そして案の定、そこかしこに死体が転がっていた。

 

 1、2、3……

 

 ざっと15かそこらか。

 中には、見覚えのある奴もいた。死体の数の多さから、おそらくここが主戦場だったのだろう。割れた酒瓶や、飛び散った血痕が生々しい。

 

 怪物は入口から襲って来て、山賊達はここに追い込まれて……大方そんなストーリーかね。先ほどの入口で見つけた二つの死体は、第一犠牲者といったとこだろうか。

 

「むごいな……全滅か」

「ニケ。ちょっとこっち来て」

 

 ドロシーに呼ばれて、しゃがんでいる彼女の頭越しに死体を覗く。

 光の球が、仰向けに寝転んでいる死体の肩口を照らし出した。

 

「この傷跡。さっきのと違うと思わない?」

「さっきのって……前のフロアで見た、二つの死体のことか?」

「うん。よく見て」

 

 そう言って彼女が指差した箇所は、肩口から袈裟懸けに一筋、真っ直ぐに皮膚が抉られていた。

 

「剣による切り傷……と見て間違いなさそうだな」

「おかしいと思わない?」

「何が?」

「怪物が剣なんて使うワケないじゃない。入口の二人とは、死因が異なるってことよ」

 

 俺はハッとして、瞬きを止めた。

 

「つまり……そいつは人間に殺された?」

「ええ」

「おいおいちょっと待てよ。コイツらは、怪物に襲われたんだろ? なのにどうして、人間同士で争ってんだ?」

「そんなの私が訊き――」

 

 ドロシーが何か言いかけた所、不意に地面が揺れる。

 初めはただの気のせいかと思った。だが違う。一秒、二秒と時間が経過するにつれ、それは確信に変わった。

 

 震動と共に、地鳴りのような何かが、こちらへと着実に近づいてきている――

 

「おいでなす――」

 

 剣の柄を握ると同時、背後でヒヤリと冷たい感触が走る。アクアブルーの光芒。

 気付いた時には、鋭い氷柱が、音のした方へ雨あられと降り注いでいた。

 

 ドロシーの氷魔法だ。ノーモーションからの無詠唱。つまり、ウイッチクラフト。

 こいつホント、容赦ねえな……

 

「せめて、俺が喋り終えるまで待ってくれない? あと二、三文字だったのに」

「ん? 何か言った?」

「いえ別に……」

「心配しなくても、咄嗟の魔法でくたばるような相手じゃないわよ」

「……みたいですね」

 

 ほくそ笑んでるドロシーさんから目を離すと同時、「グオオオオオオオ!!!!」と鼓膜が破れるような唸り声が、洞内にこだました。

 ゆうに人間の倍はある毛深い体躯に、二つの耳、つり上がった眦、鋭い牙……何より特筆すべきは、それが二足歩行であるということだろう。

 

 俺は唇を噛み、舌打ち混じりに言った。

 

「人狼――か」

 

 

    *

 

 

「残念。吸血鬼じゃなかったな」

「ホッとした?」

「まさか。滅茶苦茶最悪が、滅茶最悪になったくらいの違いしかない」

「それよりアレ……狼が先か、人間が先か。どっちだと思う?」

「滅多なこと聞くんじゃねえよ。前者であることを切に願う」

 

 距離にしておよそ三十メルト。人狼が雄叫びを上げてこちらに突進してくる。

 

 俺は素早く腰元の剣を引き抜き、刀身に手をかざす。

 丹田に力を込めると、左手から溢れ出す闘気が剣へと伝播し、刀身が淡く光を帯びる。

 

「我が剣の錆となれ――」

 

 格好付けてるだけで威力や発動には全く影響がない、要するに特段意味はない掛け声と共に、腰を落として、逆手に掴んだ剣を左下から右上へ斬り上げる。

 刹那、その軌跡をなぞるように衝撃波が生まれ、人狼へと飛来する。

 

 突然のことに、人狼が足を止める。

 奴は力尽くで俺の衝撃波を打ち消そうとしたが、異変を察したのか、土壇場で半身を転じた。

 ギリギリのところで躱すと、後方の岩石が派手な音を立てて崩れる。わずかに掠った左腕からは、一筋の切り傷。だらりと血が流れていた。

 

「グオオオオ……!!」

 

 人狼が歯をきしり、両目を剥いて、激しく俺を睨みつける。

 

 クククク……運の良いヤツめ。すんでの所で気付いたか。

 

 飛ばした斬撃――その刃は、俺の氣を高度に研ぎ澄まして練り込んだ必殺の一閃。

 黒鉄(クロガネ)をも傷つけるその一撃は、生身の身体で受け止められるような代物ではない。その道理がわからぬ阿呆は、気付いた時には身体が真っ二つになっているというカラクリよ。

 

 ジジイとの修行の末に編み出した、とっておきのワザなのさ……

 

 魔力ではなく氣を出力に、遠距離から攻撃できる手段が欲しいという俺のリクエストに応え、ここ二週間徹底的に俺を痛めつけてくれたジジイには恨み――じゃなかった。感謝しかない。

 おかげでエルから貰ったこのプラチナソードも、ようやく日の目を見ることができたという訳だ。

 

 まあ、とっておきを初撃から使ってる時点で、とっておきじゃないだろって話だけどな。細かいことは気にするな……新しいモノはすぐに試したくなる性分なんでな。クククク……

 

 不意に、視界から人狼の姿が消える。

 消えた? いや――

 

「ニケ! うしろ!!」

「――」

 

 ドロシーの声とほぼ同時、振り返った瞬間、それは来た。

 

 鋭い爪が俺の喉元を抉るよりわずかに早く、差し出した剣が一撃を弾く。弾くと同時、互いにノックバックして、互いに隙が生じる。

 

拒絶せよ(ヴァイガーン)

 

 ドロシーが即座に風魔法を発動し、人狼の身体が吹き飛ぶ。2メルトを超える巨体が、磔刑されたが如く、洞窟の壁面へ叩き付けられた。

 

 砂塵が微かに舞う中、ドロシーは帽子のつばに手を当て、俺の背中に手をやる。

 

「大丈夫?」

「すまん……助かった」

 

 両手には痺れがまだ残っている。

 一人なら、次の一撃で確実にやられてたな……今頃壁面に叩き付けられていたのは、俺の方だったに違いない。

 

「しかしあの巨体であのスピード……どういうことだ?」

「さあ。昨晩は満月だったからね。血の気が旺盛なんじゃない?」

 

 ドロシーが鼻で笑った。

 いや、別にそんなスタイリッシュで気の利いた冗談は求めてないんだが……

 

「それより、こういう閉鎖された空間だと、ド派手な上級魔法は使えないわ。かといってあのタフさだと、下級や中級魔法では、チマチマやるのは骨が折れる」

「一点強化で射殺すほかないな。つまり一撃必殺。お得意の氷なら、そんなの朝飯前だろ?」

「簡単に言うわね。懐に飛び込まないと厳しいし、アジリティに秀でた相手だと、リスク高いんだけど」

「なら俺がヤツの足を止める。お前はそれまで応戦して、動きが止まった瞬間、ヤツの脳天を貫け」

「信用できないって言ったらどうする?」

「信用してくれって、土下座してる間に俺が殺されるだけだ」

「なら信じる」

 

 するとドロシーはマントを脱ぎ捨て、ワンドを手放し、右手に魔剣を具現化させる。

 トントンと、準備運動でもするかのようにその場で二、三回軽くジャンプすると、次の瞬間、スタン状態から立ち直った人狼へと肉迫する。

 

 バフによるストレングス及びアジリティの一時的強化――

 ったく、度胸のあるお嬢ちゃんだぜ……まあ俺が命令したんだが。

 

 ドロシーが魔剣を振りかざし、人狼と一合、二合と撃ち合った頃合いを見て、俺は詠唱に入った。

 

「汝が影に問う。その闇はいづかたより来たりて、いづかたへか去る。常闇に潜むその姿は、汝のもう一つの姿――」

 

 洞窟ゆえ、光が少なく、敵影が捉えづらい。照準が目まぐるしく動いては、ブレ続ける。先を読め。目標をセンターに入れてスイッチ。奴の動きを予測して、ここぞというタイミングで――

 

「捉えた――影踏み(シャドウ・タグ)

 

 瞬間、俺のデバフが発動して、人狼の影を突き破るようにして現れた黒い奔流が、背後から巻き付くようにして、植物の蔓の如く、奴の両手両脚を拘束する。

 

「くたばれバケモノ――」

 

 ドロシーが左腕を引いて出力を上げると同時、蒼い魔力の残滓が瞬く。左手を覆うようにして現れた氷の刃が加速し、その鋭き切っ先が、人狼の眉間を射貫こうとした――

 

 その時だった。

 

「!」

 

 ドロシーが前のめりにバランスを崩す。沼地に足を取られたが如く、倒れ込む彼女を見て、俺は思わず瞬きを止めた。瞳に映った光景を疑った。

 彼女を妨げたのは――

 

 山賊の、死体……?

 

 あろうことか、近辺に転がっていた山賊の亡骸がドロシーの足首を掴み、一体、二体と立ち上がって、群がるように彼女に覆い被さろうとする。

 

「ちょ、やめ……離しなさいよこの!」

 

 ハッとして向けた視線の先、人狼の瞳が真紅に妖しく光っていた。既視感(デジャビュ)

 あれは確か、竜退治の時の――

 

「ニケ! 何とかして!」

 

 それまで人狼を絡め取っていた、デバフの拘束が破られる。迷う暇もなく、俺は剣を振り払った。

 次の瞬間、人狼の右腕が――殺意に満ちた爪撃が、ドロシーへと振り下ろされる。

 

「つっ――!」

 

 咄嗟に放った斬撃の波が、人狼の右腕、肘から先を切断する。時間差で送った二撃目は――外した。

 奴の首筋を狙った一撃は、すんでの所で躱される。行き場を失った斬撃が、洞窟の壁面にぶつかり反響して、土砂に崩れる音が伝った。

 

 それをかき消すかのように、痛みを押し殺し、憎悪に満ちた人狼の叫び声が、洞窟内に響き渡る。

 

 アンデッドの群れを振りほどいて、何とか立ち上がろうとするドロシーの下に、人狼が迫り来る。

 斬撃? いや魔法――ダメだ。もう間に合わない。

 

「ドロシー!!」

 

 まるで時間が止まったかのような錯覚に陥った。

 どうすることもできず、映像がゆっくりと流れていくのを、唯々眺めているかのような……

 

「……え?」

 

 我知らず、息が止まった。

 

 振り下ろされたはずの人狼の左腕は、ドロシーに届こうとする寸前で、停止していた。

 一瞬、本当に時間が止まったのかと思った。でも違う。何度目を凝らしても、人狼の左腕は、中空で不自然に止まり、微動だにしなかった。

 

 デバフ……か?

 

 おそらくは干渉の類い。力場を巧みにコントロールすれば、できない芸当ではないが……そう言えばドロシーは、御前試合でゴライアスに似たようなことをやっていたはずだ。

 

 ふと、人狼の様子がおかしいことに気付く。

 奴は俄に全身を小刻みに震わせ、怯えたように恐怖したように、口から泡を吹き、両膝を地面に突いた。

 

「アアアアア……アアア……!」

 

 その発狂を合図に、ドロシーにまとわりついていた山賊の亡骸どもが、ピタリと動きを停止する。

 糸を断ち切られた操り人形のように崩れ落ち、アンデッドから物言わぬ死体へと戻っていた。

 

 どういうことだ? 何が何やら……

 

 混乱する俺をよそに、ドロシーがすっとその場から立ち上がる。

 やおら立ち上がった彼女は、それまでと雰囲気が違っているように映った。魔力の波長が揺らいで、妙なオーラを纏っているようにも感じる。

 

 愛用のハットがふわりと、地面を滑るようにして落ちた。

 

「……ドロシー?」

 

 ゆらりゆらりと、彼女は人狼へと近づく。そして、右腕をすっと前に伸ばし、次の瞬間、掌をグッと握りしめた。

 

 すると、人狼が激しく身もだえする。断末魔の呻き声を上げ、やがて、その半身が地面へと沈み込む。

 遠目に奴が事切れたことを確認すると、俺はすぐさまドロシーの元へと駆け寄った。

 

「おい、ドロシー。どうしたんだ? お前、さっきからなんか――」

 

 声に応じて、ドロシーがゆっくり振り返る。頬には返り血が付いていた。俺は両目を見開いたまま、呼吸を止めた。

 

 彼女の瞳は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 明らかに、まともな人間のそれではなかった。

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