勇者にはなれない   作:高円寺南口

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53 好奇心は猫をも殺す

 ブラン城は今を遡ること二半世紀前、現騎士王のひいひいひいひいひい(途中省略)じいさんに当たる、ゴットフリート1世によって建築された。

 

 元々はトランシルヴェスタの有力諸侯であったツェペシュ家が、ガラテアに移封された際、カトブレスをトルバ海の一大貿易拠点とすべく、整備する過程で築かれた城なんだとか。

 その後ゴットフリート3世の治世に、カトブレスは首都と定められ、北の白都として花開く。例の世界一周を成し遂げた冒険家、ネルソン・トラヤヌスが生まれたもその時代だ。

 

 さて、ブラン城に着くや、俺は早速うんこをしていた。

 

 どうも俺は初めての場所に来ると、うんこをしたくなるという習性があるらしい。前世は犬だったのかもしれない。

 マーキング……いやマーキングはうんこじゃなくて小便だから、そう言うと犬に失礼か。図らずとも俺は犬畜生以下の習性の持ち主であることが判明した。またしても、業の深さが一つアップデートされてしまったか……愉快愉快。いや不愉快だよ。

 しかし……

 

「……」

 

 どうやら道に迷ってしまったようだ。

「うんこしたい」とトラヴィスに告げると、汚物を見るような目で場所を教えられ、最上階の会議室で待ってるからなと言われたのだが、その最上階に辿り着けない。

 

 肝心の用は済ませたから人間としての尊厳は保たれたのだが、余りに待ち時間が長いと、「あれ? ニケ君遅いね」、「ああ。アイツうんこしてんだよ」、「え? キモっ」、「くっさ……」、「やっぱり天パに碌な奴はいねえな」、「陰毛みたいな髪型してるだけのことはある」と言われること必定である。尊厳は保たれど、名誉は失墜すること間違いなしである。

 

 何より、騎士王を俺のうんこ待ちで待たせるなんて、恥の余り俺を八つ裂きにして公開処刑にしてくれと叫びたくなるようなカルマを感じる。この者、自らの便意を優先し、陛下の貴重な時間を奪った罰により、晒し首の刑に処す――

 などと考えて急いだのが、今思うと全ての失敗の始まりだった……

 

 いや待てよ、最上階まで登ればいいだけの話だろと思った諸君に一つ言い訳をさせていただきたいのだが、この手の城は、侵入者に備え、あえて複雑な造りにしているのが定番なのである。

 

 例えば、四階に行くのには、一階から入って二階に上って地下一階に降りて、三階まで上がって二階に降りてようやく四階に行ける……みたいな。冗談みたいな話だが、本当にそうなのである。

 

 あー……やべえよ。何階も上り下りした結果、今自分が何階にいるのかすらわからなくなってきた……

 お前の人生みたいだなって? うるせえな。そのとおりだよ。

 

 索敵魔法? 悪いがもうとっくに行使してる。俺の人生史上こんな情けない理由で索敵魔法を使うのは初めてだが、そうも言ってられない。

 うんこ待ちのカルマは、それほどにまで深いのである。不快なだけに尚更深い。

 

 しかし残念ながら、俺の索敵魔法の精度では、何となくあの辺りにいるんだろうなくらいしか掴めない。ルート検索なんて便利な機能は、当然ない。

 てかそれをやるのなら、マッピングの工程を挟んでからじゃないと……ブツブツ。

 

 気が付くと、篝火が灯るほの暗いエリアに侵入していた。どこからともなく、ピチャンピチャンと水滴の音が聞こえる。

 

 地下か? たぶん地下なんだろうな。索敵魔法の反応を見る限り、目的地まではさらに遠ざかってるようだし……

 簡易魔法でトーチを作ると、周囲に光が射して、土壁が照らされる。奥へとさらに進むと、ハッとして背筋に冷たいものが走った。

 

「……牢屋か?」

 

 道沿いに鉄格子がまっすぐ続いている。

 

 アンデッドでもいないだろうなと、恐る恐る一部屋一部屋、牢の中を覗いていったが、中身はどれも空っぽだった。今は使われていない古い設備なのかもしれない。

 このまま進んでも行き止まりだなと思い、引き返そうと思ったその時、奥に階段があるのが見えた。どうやら上に上がれるようだ。

 

「……」

 

「進むか退くか迷った時は、退けば取り返しがつかなくなるかどうかで決めろ。後は時と場合による」という師匠の古い教えに従い、前に進むことにした。

 そして後悔した。

 

「何だこれ……拷問部屋か?」

 

 縛り台に鉄格子の吊り籠、トゲトゲの椅子、締め具の類いに、鞭や鎖鎌といった拷問具の数々、用途不明の実験器具、ガラスの中に液体漬けにされた謎の物体……奥にはかの有名な鉄の処女(アイアン・メイデン)もあった。

 

 聖母をモチーフとした、高さ2メルトほどの空洞の人形。前面の扉の内側には、無数の釘がびっしり。

 空洞部分に押し込めた人間がどうなるかは、推して知るべし……

 

 一説によると、ツェペシュ家初代当主ゴットフリート1世は、その昔領内の美しい娘を連れ出しては、鉄の処女でもだえ苦しむ姿を見て楽しんでいたそうな。

 絞り出した血液を全身に浴びることで、「ここ数年で最高のできばえ」、「柔らかくみずみずしさすら感じる珠玉のヴィンテージ」などと嗜んでは、吸血鬼として必要な血を摂取していたということである……

 

 嘘か本当かは知らんが、とんだド変態もいたものだ。

 過剰な権力は、人の心をいとも容易く歪めてしまうということか……そう考えると、権力などまるで有していない俺がこれほどの変態性を保持できているのは、逆に凄いことなのでは? ニケ、恐ろしい子……

 興味半分、恐ろしさ半分で鉄の処女に触れると、ふと肩を掴まれたような感覚があった。

 

 ……ん?

 

 幽霊だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 声にならない悲鳴を上げて、素早く振り返ると、そこには予想だにしない人物がいた。

 

「ニ~ケくん♪ こんな所で何してんの?」

 

 八重歯を見せて、軍服に身を包んだ騎士王が、にこりと微笑んでいた。

 

 

    *

 

 

「……すんません。陛下自ら、わざわざご足労をいただき……」

「いやいや。この城って、けったいな造りになってるからね。部下はみんなバタバタしてて、私が行かないと、他の人じゃわかんないから」

「……すんません」

 

 僕のうんこのせいで……と心中で言い足す。用も足せたからオールオッケー! などと、隙あらば申し開くのが俺の悪い癖だとは重々承知している。

 

「にしても、あんな所まで迷い込んだのは君が初めてだよ~。普通途中で引き返すでしょ~」

「過ぎたことは振り返らないのが、僕のモットーなので……」

「ははっ。嘘つけ~。振り返りまくるタイプのくせに~」

 

 さすがは陛下、類い希なるご慧眼の前では、小生如き丸裸のスッポンポン。

 実際、隙あらば振り返っては悶々と憂鬱に浸り、時のラビリンスをセルフプロデュースする男だからな。

 身体は忘れても、心はどうやったって覚えておるのだよ……あの日の傷をね……

 

「にしても、あの部屋何なんです?」

「見てのとおり、拷問部屋だよ。今は使ってないけどね。昔の名残っていうかさ」

「その割には、部屋が妙に片付いてましたけどね。俺の鼻ムズレーダーが反応しなかった」

「鼻ムズレーダー?」

「埃っぽくなかったってことです。俺、古臭い部屋に入ると、くしゃみ連発して、鼻水がダラダラ滝のように流れ出すんです。あの部屋にはそれがなかった」

「ふ~ん……なんかよくわかんないけど、そっか。気付いちゃったんだね……」

 

 すると、騎士王はこちらへ振り返った。

 両手を軍服のポケットに突っ込み、身をかがめて首を突き出すようにして、彼女は俺の顔を下から覗き込んだ。

 

「そうなんだよ……私、吸血鬼だからさ。夜な夜なあそこに若いメイドを連れ出しては、拷問に掛けて血液を絞り出して……」

「笑えない冗談はやめてくださいよ」

「ふふっ。バレちったか~……」

 

 近い。顔が近いっての。

 気恥ずかしさの余り目を逸らすと、騎士王は何でもない様子で振り返り、再び歩き出した。

 

 考えてみれば、彼女とこうして二人きりになるのは初めてか……

 

 初めてか……とかほざく辺り、だいぶキモいのは承知してるが、どうせキモいついでに、「ロロ。どこにも行かないでくれ。ずっと俺の側にいてくれ」とか言って後ろからぎゅっと抱きしめて、柔らかくていい匂いがするクンカクンカの挙げ句、八つ裂きにされて公開処刑にされる生き様も一つアリかなとキモい妄想に想いを焦がしていると、騎士王がふと階段の踊り場で立ち止まった。

 背中はこちらに向けたまま。

 

「ねえ、ニケくん。君、イカルガ鉱山の一件に関与してたんだってね」

「ああ、はい。よくご存じで……」

「どこまで知ってるの?」

 

 知ってるって何? アリシアのスリーサイズ?

 しかし騎士王の様子を見る限り、そんなふざけた話を期待している訳ではなさそうだ。

 

「ギルドの指示どおり、鉱山に巣くう山賊を退治しただけですよ。山賊は人狼に殲滅させられてたので、結果として人狼を退治することにはなりましたけど」

「うそ」

 

 聞こえるか、聞こえない程度の音量。

 騎士王は振り返り、俺の目をまっすぐ見た。

 

「君は、トランシルヴェスタの竜退治にも絡んでた……だったらもう、わかるよね。君の中で答えは出てるんじゃないかな」

「……」

 

 その目は生来陰っているようにも見えたし、鈍い闇の中で微かに輝きを保っているようにも映った。窓から射す光が褪せていたことが、その印象に僅かな誤差を与えているのかどうか、考えてみたけれど、結局わからなかった。

 

 俺は嘆息し、ぼりぼりと頭を掻いた。色んな可能性を考えた。警戒されているのか? ならばとっくに消されているような気もするが。

 いずれにせよ、彼女が本当はどちら側の人間なのか判然としない状況では、答えられることなどたかが知れている。

 

「あなたは俺に、何を期待してるんですか?」

 

 騎士王は答えなかった。

 やがて、彼女は視線を落とし、正面へ振り返った。小さなため息が、耳元を伝う。

 

「ごめん、何でもない。今の忘れて」

 

 突き放すようなその言い草は、なぜだろう。彼女が初めて俺に漏らした本音のように聞こえた。沈黙が流れる。

 

 やはりここは、後ろからぎゅっと抱きしめて、「ロロ。どこにも行くな。ずっと俺の側にいてくれ」と言うべきだったか……いや絶対違うな……

 

「ねえ、ニケくん。仮に、私があなたのことを好きだとして」

「はい……ハイ?」

「私の寿命があと一年しかないって言ったら、あなたはアリィより私を選んでくれる?」

 

 辺りは森閑として、真冬の夜のような静けさだった。ありとあらゆる音が壁の中に吸い込まれ、ここだけ時が止まったみたいだ。

 お生憎様、こういう時にシャープな切り返しができる男なら、俺はとっくにモテているはずだし、道化に身を落とさずにすんだはずだ。誰が道化やねん。

 

 二十秒ほど石像と化したのち、俺は重くて鈍い口を開いた。

 

「陛下」

「陛下じゃない。ロロって呼んで」

 

 二十秒ぶりに喋ったかと思えば、三文字で否定されるとは……

 おおニケよ! だからそなたはモテぬのだ……

 

「……ロロ」

「はい」

「その……言い出すチャンスを逃してしまったというか、ロクに否定もしなかった俺も悪いんだが……俺とアリシアの間には別に何もないよ。アイツとは友人……いや別に友人でもないな。知り合い……といえば知り合いか。ようわからんけどそんな感じの仲だ」

 

 ようわからんのはお前の言動だよと自分で自分に言いたくなった。

 すると、騎士王はにわかにふるふると両肩を震わせて、両手を顔に押し当てた。

 ……え?

 

「ちょちょちょ、え? ロロ、さん……?」

 

 慌てて彼女の腕を掴むと、ばっちり視線が合う。べーと舌を出すと、彼女は言った。

 

「知ってるよーだ」

 

 小悪魔みたいないたずらっぽい笑みを浮かべると、「あー満足した♪」と言って、彼女は階段をスタスタ上がっていった。

 俺はその場に硬直すること三秒、そして無情なる心で天を仰いだ。すると神がこう囁いた。

 

 おおニケよ! だからそなたはモテぬのだ……

 

 

    *

 

 

「たっだいま~! ニケくん連れてきたよ~!」

 

 会議室の扉を開けた瞬間、開口一番ロローナがそう言うと、窓際で煙草をふかしていたトラヴィスがこっちを見た。

 

「おう。ずいぶん長いクソだったな。漏らしたのかと思って心配したぞ」

 

 出会って二秒で即漏らすとか、コイツのお口はホント緩いこと……俺の肛門を少しは見習えよ。漏らさないように限界まで耐えてくれたんだぞ。

 

「ちげえよ。道に迷ってたんだよ」

「迷ってるのは人生だけじゃなかったのか?」

 

 トラヴィスはくっくと笑い、「迷子の迷子のゴクツブシ。あなたのお家はどこですか~♪」と言っていた。

 

 うるせえな。「困ってしまって、ワンワンワワーン!」とでも言えばいいのか? 

 ちなみに「ワンワンワワーン!」は俺の魂の叫びでもあるからな。世の中には、涙のない泣き顔ってのもあるんですよ……大人になれば、君もいずれわかる。

 

「君が噂のニケ君か。お初にお目にかかる」

 

 夕陽を背負ったその影が揺れる。

 腰元には剣を佩き、2メルトにまで届く鎧姿の巨体。筋骨隆々の男が、俺の元へ歩み寄った。

 

「私の名はゴライアス。君のことは、クロノアやトラヴィス、そしてアリシアからもよく聞いてるよ……一度こうして、挨拶しておきたいと思っていたんだ。よろしくな」

 

 ふっと微笑を浮かべると、彼は俺へと掌を差し出す。

 

「ああ……よろしく」

 

 俺もまた、すっと手を差し出し、男と男の契り、またの名を握手を交わす。

 握りしめた掌は分厚くて、温かかった。これが、夢にまで見た生ゴライアスか……おお。すごく、おっきい……

 

「国王陛下の護衛に就いてるんじゃなかったのか?」

「問題ない。こうして君と会うために、時間をいただいてきた」

「おいおい。そこまでして会う価値のある奴じゃねえよ」

「そんなことはない。只者じゃないと聞いているよ」

「そんなことはない。自慢じゃないが、只者だ」

 

 ゴライアスは一瞬目を丸くしたが、すぐに冗談だと気付いて、笑っていた。いや冗談じゃないんだけどな……

 お近づきの印に、「ちょっと大胸筋か上腕二頭筋触らせてもらっていいですか?」とお願いするべきか否か逡巡していると、後ろから声がした。

 

「ニケ! 遅かったわね~。何してたのよ」

 

 ドロシーだ。トテトテと俺の方に駆け寄ってくる。

「わりィ。うんこしてたんだ」とスマートに切り返せる度胸もなかったので、何か上手い言い訳はないかと探していると、ふと、ドロシーの三歩ほど後ろにいるアリシアと目が合った。

 

「……」

 

 互いに無言。何か気まずい。

 斜め後ろにいるロローナがニヤニヤほくそ笑んでいるような気がして、妙に居心地が悪い。

 アリシアは後ろ手にボリボリ頭を掻くと、視線を斜め下に逸らした。

 

「あー……そのなんだ。ドロシーから話は聞いたわ。うちの実家が色々世話になったんだってね……」

 

 一瞬俺の目を見ると、アリシアは再び視線を下げ、それからぼそりと言った。

 

「……ありがと」

 

 てっきり開口一番、「てめぇ、ウチの実家に土足で上がり込むたァどういう了見だおおん?!」と胸ぐら掴まれて恫喝されるまであると思っていた俺としては、正直予想外の反応だった。予想外すぎて、物足りなさすら感じる始末。

 

 後ろ手にボリボリと頭を掻き、視線を斜め下に逸らして、俺は言った。

 

「あー、そうそう。その件で、お前のじいちゃんから言付けを頼まれててな……『お前はお前の現実を生きろ、俺もそうするから』……だってよ」

 

 アリシアは瞬きを止めて、やがてふっと苦笑を浮かべた。

 

「言われんでもそうするっつーに……あのジジイ」

 

 伝わったのか伝わってないのか、でも結局伝わったんだろうなという気がした。

 言葉の外側にある想いは、きっと当事者間でしかわからないことだし、二人にしかわからないものでいいんだと思う。I am a messenger.

 

「やったじゃんアリィ~! ほら言ったでしょ。ロイドじいちゃんは、あなたの味方だって!」

 

 ロローナが満足そうに微笑んで、アリシアに抱きついていた。

 アリシアさんは「やめろウザい」と口では言っていたが、満更でもなさそうだった。

 

「よかったね」

 

 ドロシーが俺の方を見て、そう言う。

 お前のおかげでもあるんだぞと髪をワシャワシャしてやりたかったが、ナチュラルに拒絶されたら傷つくのでやめておいた。ダメ、絶対。イケメンムーブ。

 

 不意に、部屋の扉が開く。風が吹き抜けて、カーテンが揺れた。

 

「お待たせしました。皆さんお揃いのようですね」

 

 見ればそこには、クロノアがいた。

 

 数ヶ月ぶりに目にした彼は、以前よりほんの少し背が伸びて、顔付きもどことなく勇ましくなったような気がした。

 彼の覚悟がそうさせたのか、周囲の環境か……少なくとも俺が十五か六の頃は、もっと腑抜けた顔をしていた。隙あらばおっぱいの尊さについて哲学していた。恥の多い人生を歩んできたとは自覚している。

 

「お久しぶりですね、ニケさん。いつ以来でしょうか」

「さあな。一万年と二千年ぶりくらいじゃないか」

 

 つまりそれくらい、俺とお前の公転周期はかけ離れていて、直列に並ぶことは半永久的にないんだよと言いたかったのだが、上手く伝わったのかはわからない。そもそも伝える気がない。

 

 クロノアは柔和な笑みを浮かべ、「相変わらずですね……」と言った。

 笑うといつもの優しいクロノアきゅんに戻るのは、実家に帰ってきたかのような安心感があって、Feel so good だった。

 

 さて、役者も揃ったところで……といっても、一人は場違いの道化だが……

 

「そろそろいいだろ……俺とドロシーを、ここに呼んだ理由を説明してくれないか」

 

 俺がそう言うと、全員の視線が騎士王とクロノアへ集まる。

 テラスから見える夕陽が薄暗い部屋に影を落とし、風は静かに謳っていた。

 

 やがて、クロノアが言った。

 

「トランシルヴェスタの竜退治の件について、お伝えしておきたいことがあります――あの事件には、教団が深く関わっている」

 

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