Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』 作:御魚天国
一部設定の変更あり。
プロローグのみ変更なし。
となっています。
代償
「おかしなことになっちまったもんだな」
果てしない未来の地。
異聞帯の終焉にて、俺は空を見上げていた。
朝とも夜とも言えない空。
時間は進んでいるはずなのに、
一方で地上の方へと視線を向けてみれば、壮大な都市は既に崩壊していた。
そこに今まであったはずの都市は、黒く果てしないバケモノの手によって食い尽くされていた。
しかしまぁ、随分と時間をかけて準備してきたはずなのに、たった一つの綻びでここまで崩れるとは。
流石はカルデア、キリシュタリアにデイビットを打ち倒しただけのことはある。
なんて考えながら地上を見続ける。
都市も何もかも、今まで作り上げてきたものはもうない。
だが、ここで立ち止まることはできない。
空想樹がなくとも、後がなくとも。
俺はこんなところで死ぬわけにはいかない。
「……マスター。どうするつもりだ?」
気づけば隣に
どれほど悲惨な戦いだったのか、腕を失い、片目を喪失し、中身が片足がわりになっていた。
「よぉ。どうしたその姿」
「カルデアに味方したサーヴァントどもだ。……まさか、私がここまでやられるとは」
「
「……ふん、消し炭にしてやったわ。矮小な存在にして、それでもなお武器を手に取る。蛮勇とでも言うべきか」
「褒めてやれよ。せめてな」
俺は笑って、ポケットから一枚のカードを取り出し渡そうとする。
だが彼女はそれを拒否して、俺の隣で地上を見つめた。
どこか悲しげな目で、世界を見ていた。
俺は右手に刻まれた令呪を見て、パスがいくつか途切れていることに気づいて少女に聞く。
少女はその質問に対して、地上を見つめながら答えた。
「みんなどうなった?」
「……全員死んだ、と言うべきか? アサシンは命令をこなしたさ。だが貴様があの時、あんな命令を……いや、言うまい。この世界はもとより歪だった」
「ははっ、言えてら。……アヴェンジャー、俺は死ぬわけにはいかねぇ。死にたくねぇ」
「……そうか。ならば命令しろマスター。貴様の令呪、今は受け入れよう」
静かながらも、遠くを見据えたその目で彼女は語る。
令呪、英霊に対する絶対の命令権。
今までまともに魔術すら効かなかった彼女が、それを受け入れると言った。
ならそれに、俺も応えるだけだ。
どんな犠牲を払おうとも、もう突き進むしかないのだから。
「アヴェンジャー……令呪をもって命ずる。総て喰らい尽くせ。人類史も、この世界も。もう不要だ。奴らごと全部、喰らい尽くしてやれ」
右手に刻まれた令呪、最後の赤い印が消えると同時に、アヴェンジャーの体に魔力が満ちる。
ニヤリと笑みを浮かべたアヴェンジャーは一歩ずつ前へと出て、崖っぷちに立つ。
そして振り返って満面の笑みで俺の方を見た。
「マスター。貴様との日々はなかなかに刺激的だったぞ。生前、貴様と出会えていたのならば……そう幾度となく考えたが、この出会いもまた運命の一つ。また会おう! マスター!!
「こういうときゃ、また生きて会おう、だろうが」
俺は自然と出た笑みを手で拭って押し消して、落ちて行くアヴェンジャーに背を向ける。
戦いが始まる。
全てを決する戦いだ。
藤丸 立香。
人類最後のマスター。
奴を倒し、その先へ行くまで俺は死ねない。
死ねないんだ。
クリプターとして始まったのは、いつだったか。
随分昔だったような気がするし、一年前のことだったような気もする。
だがどちらにしろ、あの日、あの時。
この世界に来てアヴェンジャーを召喚した日。
全てが始まったのだ。
なおネタバレを防ぐため、消せるコメントは消してあります。