Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』   作:御魚天国

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前日譚/革命前夜と七騎のサーヴァント
プロローグ


『──選ばれし君たちに提案し、捨てられた君たちに提示する』

 

『──栄光を望むならば、蘇生を選べ』

 

『──怠惰を望むならば、永久の眠りを選べ』

 

『──神は、どちらでもいい』

 

 

 

 

 

 ──その世界は既に終わりを遂げていた。

 世界として、ではなく『人類史』として、終わりを告げていた。

 人は知性を失い、考えることをやめ、畜生へと回帰した。

 

 七つの異聞帯、に加えて一つ、太平洋のど真ん中に浮かぶ新たな異聞帯。

 そこはキリシュタリアでさえ予想できなかった、生物の存在が歪な島である。

 

 かつて存在していたであろう文明は滅び、見たこともないような生き物が闊歩する。

 奴らは言葉を話す、意思を持っている。

 だが人間ではない、『真似事』が得意なバケモノだ。

 バケモノが人間と生物と、世界を支配していた。

 

 俺はそんな世界に秘匿者(クリプター)として立っていた。

 

 世界を救う、そんな大層な目的のために俺はAチームへと、カルデアに来たわけではない。

 俺は知識を求めてカルデアへと来た。

 だがあまりにも呆気なく、そして()()()()()()爆発は、俺とAチームの皆を殺した。

 

 しかし生き返った、異星の神とやらの選択肢によって。

 糞食らえとでも言うつもりだったが、まだ目的を果たせていないことを思いだした俺は生き返ることを選んだ。

 そして同じく生き返った七人のクリプター、Aチームの皆とともにキリシュタリアの『競い合い』に参加させられることとなった、のだが。

 

 競い合いとか興味はないから、いずれ辞退するつもりだ。

 ただ異聞帯、この世界自体は利用する気だけど。

 

 日本式の小学校を思い出させる崩れた建物の屋上。

 蔦が絡まり、植物が生え、既に文明は過去のものへと。

 

 山の上に建っていたであろう建物の上で、世界を見下ろす。

 ムー大陸、空想上の島、存在しない大陸。

 だがこの異聞帯ではどうやら、存在してしまったらしい。

 

 何か起きたのかはひとまず置いとき、この世界の現状はだいぶやばい。

 人類史として見れば、終わりを迎えていると言っても過言ではないだろう。

 ここはちょっと日本っぽい文明だったんだろうが、もうとっくのとうに植物に覆われて滅びきっていた。

 そして人間はよくわからん生き物に支配されている。

 

 で、この生き物が硬いのなんの、ありとあらゆる重火器を試してみても死ぬ気配がない。

 見向きすらしてこなかった。

 

 一応人間たちには言葉が通じるらしく会話は可能。

 だがまともに話す気がない、と言うよりも話せない様子。

 生き物たちが監視しているのだろうか。

 

 ちなみに俺は魔術で逃走して姿を隠している。

 見向きもしてこないものの、なんとなく見つかったら怖いなー、と思ったからだ。

 

「……んー、まぁ。まずはサーヴァント召喚して、この世界をどう変えるか考えるべきだよな」

 

 懐から取り出したチョークで床に適当に書き連ねて行く。

 サーヴァントってのはどんなものか大体知識では理解している。

 が、実際に見たことない、その点ついてはちょっと楽しみと言えよう。

 

「詠唱、なんだっけ。まぁ、いいや。『眼』で繋げて適当に呼び出せば……いや待てよ。それじゃ面白くないし。サーヴァントは……そうだな。ブリテン関連のやつがいい。強くて、面白い。ならまずはあいつ(ベリル)の異聞帯を『観測』して……縁を繋げればいいか。えっと……素に、()と鉄、だっけ──」

 

 

 

 その男は兎にも角にも、適当だった。

 興味のないこと、楽しくないこと、面白くないこと。

 そして、大切なこと以外。

 

 だが彼は適当であっても、『天才』だった。

 キリシュタリアとは別ベクトルの『天才』だ。

 魔力量も一族、いや魔術師の中でもかなりのモノ。

 彼の知識とその魔力量が合わさり、大抵のことは適当にやってもなんとかなっている。

 実際、数百と言う魔術師相手に、片手間で()()()()()()()()無傷で生存している。

 

 そんな彼は高校生、日本に住んでいる時、あることがきっかけで世界を放浪する旅へと出る。

 きっとその時、彼は魔術を捨てるべきだった。

 

 だが捨てることなどはできなかった。

 だって、魔術が好き(嫌い)で、楽しく(漠然的)て、面白い(否定的)だから。

 

 世界各地で生きるために人を救い、新たな魔術を生み出し、そしてマリスビリーに目をつけられる。

 その結果がこれ、Aチームとして選ばれた爆死。

 未来を見えるはずの目を()()()彼は、自身の死に驚き笑って、拒否をしようとした。

 だが彼は思い出す。

 

 何か、成し遂げなければならないことがある、と。

 それはつい最近の話なのに、思い出せない。

 思い出せないから思い出す。

 そしてそれは世界を救うよりも、人類史を塗り替えることよりも、なによりも大切だと。

 

 ──彼は生き返る、自身のために。

 

 ──彼は改変する、誰かために。

 

 ──彼は呼び出す、目的のために。

 

 

 

「抑止の……輪より来い、天秤の守り手」

 

 あまりにも適当に練り上げられた召喚陣は、大きな極光を弾き出す。

 男は一瞬、眩暈(めまい)を感じてフラつきつつも、右手の甲に令呪が宿ったことを確認する。

 そして魔力を込めた召喚陣を一瞥すると、そこには何かが立っていた。

 

 外見は、言ってしまえば、そう。

 本来ならばブリテン異聞帯でしか成立しないはずの、妖精騎士ランスロット、又の名をメリュジーヌ。

 だが彼はその少女が何か、もっと、別のものに見えていた。

 

 魔力量は彼の目で見える限りで言えば、ただのサーヴァントかどうかすら疑うレベル。

 中身が見えないのだ。

 

 そんな少女はひたひたと足音を立てて、圧倒され呆然と立っている男へと近づく。

 

「召喚に応じ、参上した。貴様が私のマスターか?」

 

 男は笑って頷く。

 きっとこれならば、先へ進めると。




真名:???
クラス:???
異聞帯で成立したサーヴァント、メリュジーヌを依代としたサーヴァント。
霊基があまりにも大きすぎたため、彼の注入した魔力では少女の体での擬似サーヴァントしか召喚できないかった。
何故か足元は白い影が蠢いているが、これは実体のない何か。
召喚された直後は元がそうであったが故に真っ裸である。
真名は不明だが、別段隠そうとも思ってはいない。
ただ思想諸々は人間寄りのようで、ふざけて真名を隠しているところがある。

彼はメリュジーヌの必要があった、それは唯一適合する体だったからだ。
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