Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』   作:御魚天国

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第1節:一人目のサーヴァント

 さてさて……随分と可愛らしい姿のサーヴァントが、一糸纏わぬ姿で御出でなさったな。

 ブリテン関連のサーヴァントを呼び出したはずなんだが……まぁ、異聞帯に無理やり繋げたわけだし、こういうことも起きるか。

 結構な無茶やったから頭痛は酷く、座り込んでから立てる気がしないが気分はいい。

 かなり満足している。

 

「ふむ……貴様が私のマスター、だな?」

 

 呼び出したサーヴァントの少女は、興味深そうに周囲を見渡して俺に問いかけた。

 俺はその問いに頷くと、少女は振り返って大地を見渡す。

 

「なるほど。随分と歪な……理解した。名を聞こうか、マスター」

「俺の、名前──? ……あー、ちょっと待ってくれよ。今思い出す……」

「……?」

 

 俺の発言に彼女は不思議そうな目で見つめてきた。

 

 思い出す──、というのは別に語弊でもなんでもない。

 本当に今、思い出そうとしているのだ。

 

 何事にも代償というものは必要だ。

 代償無くして手に入るものなど何もない。

 現代なんて最もそれを表していると言えるだろう。

 

 人はその身を削ってお金をもらう、お金を消費してものを手に入れる、ものを消費して人はまたその削る。

 循環とは言え、そこには確かに代償というものが存在している。

 

 俺の利用する魔術の根幹もそうだ。

 何かしらを代償として発動させる。

 

 今回代償となったのは記憶の一片。

 それが『名前』だった。

 

「……分からん。なんだったか……」

 

 ポケットを適当に探ってみるも、出てきたものの名前欄は酷く濁ったような形をしていた。

『俺の名前』という概念すら消え失せたというべきか。

 

 名を失ったことを実感し、失笑しているとサーヴァントは納得したような笑みを浮かべる。

 そして俺の目の前まで歩いてくると、座り込んでいる俺の頭に手を置く。

 何してんだ、という間も無く、彼女は俺の頭を撫でて言った。

 

「名を失う、か。随分と面白いものだな。マスター」

「そうか? お気に召したようでなにより、だ」

「……()()()()()。今からそう名乗れ」

 

 そう言った彼女は、頭から手を離し踵を返すと、足元に引きずっていた()()()()()()()()()を身に纏う。

 と言うより、影の方から纏わり付いてきた、と言うべきか。

 それは一瞬にして漆黒のドレスのようなものを作り上げる。

 

「マスター、貴様の目的はなんだ」

「俺は……俺にはやることがある。あるはずなんだ」

「それすらも忘却したか。それでいてなお、進み続けるか」

「やるべきことは、やらなきゃな」

「……そうか。ならばそれを思い出すまでの間、準備は整えておくべきだろう。カルデアは……ふむ。()()()()()言うところのロシアか?」

 

 そうか、ロシア……カドックのところか。

 あいつも大変だな……ってちょっと待って。

 

「カルデア? なんでお前、それを知って……」

「少し未来を覗いただけの話だ、気にするな」

 

 未来を覗いただけって……千里眼の類だろうか。

 だが英雄とか詳しくない俺が考えてわかるものではないだろう、と俺は思考を止める。

 今は彼女の言う通り、準備を整えるべきだ。

 

「マスター、貴様が決めろ。まずはどうする?」

「まずは……そうだな。もう何人かサーヴァントを呼んでおきたい。なにが起こるかわかんねーしな」

 

 と、俺は彼女の隣に立って地上を見下ろす。

 文明は滅び、地表は緑に覆われた。

 だがそこにあるのは確かな異物。

 その異物をまずは取り除く、そしてそのためにはサーヴァントの用意が必要だ。

 

「賢明な判断だ。この異聞帯程度ならば私一人でもどうにかなるが──」

 

 遠くを見据えた彼女は、少し険しい顔をする。

 

「この霊脈の数。奴らにとっては格好の的だろう」

「わかるのか?」

「大体だがな。だが奴らがこれを利用しようと言うものならば、私たちにとって痛手であることは間違いない」

「……早めに潰しておくべきか」

 

 だが潰すにしても、どうするべきか。

 使用してしまうのが一番早いだろうか。

 

「サーヴァント召喚して、先に使うってのは?」

「……あまり勧めないな。霊脈の量が尋常じゃない、まず神代でもあり得ない数だ」

「なるほどな……なら、人間を利用する手に限るか」

 

 と、なると。

 あのバケモノどもに支配されていた人間。

 奴らを利用し尽くしてやるか。

 

「なにをするつもりだ?」

「面白いことだな。だが何かを始めるには、まずはあそこ目指す必要がある」

 

 そう言って俺が指をさしたのは、遠くにそびえ立つ空想樹だった。

 霧に覆われ、その存在が()()されているようにも見える、遥かなる樹。

 

「空想樹か。ならばいくつか点在している霊脈を辿るとしよう。英霊を呼び出すのにちょうどいいものがいくつかある」

 

 そこまで伝えて歩き出そうとした彼女を俺は呼び止める。

 なんだと言って振り返る彼女に、俺はその名を聞いた。

 

「真名、聞いておきたいんだが」

「……ふっ。今伝えても面白いものでもあるまい」

 

 俺はステータスを覗き見ようとするが、何か靄のようなものがかかっていてみられない。

 唯一見られたのはそこに内包されたスキルだけだった。

 それも唯一つのスキル。

 

『境界の心臓:EX』

 

 ただこれだけだった。

 当然こんな情報だけじゃ、なにもわかるはずがなく。

 

「じゃあ、せめてクラスだけ」

「クラスか。まぁ、それならばいいだろう」

 

 少女は足元に広がる影のように白いものを大きく広げる。

 まるで翼のように、空を飛ぶ竜のように。

 

「私はただの復讐者。王に、人に、魔術師に──、アヴェンジャー。それが私のクラスだ。と言っても、霊基的にランサーの方が近いのだが」

「アヴェンジャー……エクストラクラスか!」

「そうだな。本来召喚に応じる身でもないのだが……この異聞帯ではそうもいかないらしい」

「どう言うことだ?」

「すぐに嫌でもわかるさ」

 

 と言ってたアヴェンジャーはそれ以上語ろうとはしなかった。

 俺も無理に聞き出そうとは思っていなかったから、取り敢えず話を終えて歩き出すことに。

 

 そんなこんなで、異聞帯探索と新たなサーヴァントを仲間にする旅が始まった。

 この世界の歪さを知ることなく。




境界の心臓:EX
アヴェンジャーの保有するスキルの一つ。
このスキル自体、かなり変化した果てのものであり、元は『ドラゴンハート』だった。
だが彼女の霊基そのものを、別の霊基で上書きした結果、こんなものが生まれてしまうことに。
その特性は■■と■■の結びつけ。
それは■■■■■の願いの果てを叶えるためのもの。

なんせそれを、彼は成したのだから。
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