Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』   作:御魚天国

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第4節:急襲

「ってなわけで! それが私の真名でーす!」

「そ、そうか……」

 

 たった今自己紹介を終え、真名を聞き出した。

 無駄にテンションの高いアーチャー、彼女はどうやら汎人類史の英霊らしい。

 だが力を貸してくれるとのこと。

 契約した以上、雇い主はあなたですから! とのことで。

 

 真名を考えると心強く味方であることは間違いないのだが、なんとも言いようのない不安感が沸き立つ。

 このテンション感のせいだろうか。

 

「無事成功した……と言うには少し、難あり、と言うべきか」

「こんなんだもんな」

「こんなんってどういうことですか!?」

 

 一応信頼は出来ること伝えると、アヴェンジャーは渋そうな顔しつつも頷いてくれた。

 それよりもだ。

 

「アヴェンジャー、パスは()()()()()()()()()()

「なに?」

「複数召喚つったろ。どうやらその時、複数パスが繋がっちまったようだ」

「意図せず、二騎の英霊と契約したということか……」

 

 アーチャーはなにを話しているのかよくわかっていないらしく、首を傾げてこっちを見ている。

 が、説明している時間もないので、一先ず外に出ることに。

 既に陽が傾き始めている、オレンジの空が広がり始めているのを見るに、時間経過に関しては汎人類史と変わらない様子。

 

 完全に暗くなる前に、もう一騎の英霊も見つけておきたいが……。

 

「暗くなるとなにが起きるかは分からん。令呪を使うのも一つの手だぞ」

「最後の手段だな。一応サーヴァントの状態を見るのは……こっちはできるな」

 

 俺はアーチャーの方に視線を向ける。

 そこには確かにアーチャーのステータスが表示されていた。

 基本的な項目は以下の六つ。

 

『筋力:C』

『魔力:D』

『敏捷:A+』

『耐久:C』

『幸運:EX』

『宝具:D+++』

 

 それに加えて、スキルに宝具……だが、宝具に関しては、さっき自己紹介の時に確認はした。

 まだスキルの方は確認していないから、そっちを見るとして。

 

『単独行動:A+』

『対魔力:D』

 

『新緑のカリスマ:A』

『油断なき者:C』

『叛逆者:B+』

(ふくろう)の目:C+』

 

 と言った感じか。

 さて、カリスマ性はどこにあるのだろうか……。

 叛逆者に関しては、彼女の逸話的にも納得のできるスキルと言ったところだな。

 

「……『梟の目』? なんだこれ?」

「ああ、それはですねー。単純に、夜に目が良くなるだけ、ですね! それは『私』個人のスキルです!」

「なるほど?」

 

 ……多分、役に立つんだろう。

 多分な。

 

「で、誰か探すんですよね?」

「ああ、つってもどんな奴かわかんねーけど」

「パスが繋がっていれば、クラス程度はわかるのではないのか?」

「なんか変なんだよ、令呪が。パスが繋がっているはずなのに、どこから来てるかわかんねーんだよ」

 

 確かに魔力で繋がっている。

 少し離れているのはわかるのだが、どこにいるのかと言うのが曖昧なのだ。

 そもそも本当に一騎だけなのか……なんか魔力、二騎分ぐらい持っていかれている気がするんだよな。

 

「アヴェンジャー、その影みたいなのでなんとかできないか?」

「ふむ……やろうと思えばできんこともないだろうが……現状の体では少し無防備になる上に、他の英霊を察知するのが少し難しくなる。私自身攻撃されたところで傷は一つもつかんが、貴様を守ることができなくなる」

「それなら私に任せてください! 襲い来る敵は弓で撃ち抜いてみせます!」

「……だそうだが?」

「そうだな……一応実力の方も見ときたいからな。任せていいか?」

「わかった」

 

 アヴェンジャーはそう言うと、白い影のようなものをじわじわと広げて行く。

 地面を飲み込むどんどん広がって行く。

 その間、アヴェンジャーは目を瞑って一言も喋ることなく、動く気配もない。

 

「ところでこの影、なんなんだろうな」

「マスターさんは知らないんですか?」

「聞いてなかったからなぁ……っと、そういや今何時なんだ?」

 

 空はどんどん暗くなり始めている、夜まであと一時間もないかもしれない。

 アヴェンジャーは……まだ終わりそうな気配ない。

 

「今日はテントだな」

 

 ならば、と野宿するための準備を始めた。

 俺はカードを数枚取り出しながら、アーチャーに確認する。

 

「アーチャー、周りに誰もいないよな?」

「気配は感じませんがー……そこかッ!!」

 

 突然アーチャーは構えていないところから弓を引いて矢を放つ。

 建物の周囲を囲う森の中に一矢が吸い込まれて行き……なにかに刺さる音、そして()()聞こえた。

 

「ぴぎゃっ!」

 

 なんとも言い難い声だが、少なくとも人の声であることはわかる。

 俺は目を凝らして見ようとするが、その前にアーチャーが前に出て弓を引く。

 そして森の方へまっすぐと向けた。

 

「マスターさん、私の後ろに。あれは英霊です!」

 

 俺はテントの入っているカードをしまい、別のカードを取り出す。

 魔術の入っているカードで簡易的な暗視の役割を果たすものだ。

 

 カードを手で挟むとそこから魔術の陣が溢れ出る。

 すると目に暗視の魔術がかかり、周囲の光景が良く見えるようになった。

 

 アーチャーが撃ったのは……うさ、みみ? 

 うさぎの耳が見える。

 うさぎの耳を持った少女が、確かにそこにいた。

 

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってよ! 撃たないで! なんもしないから!」

 

 少女はアーチャーに矢を向けられたことで、半泣きになりつつ出てくる。

 あれが英霊……なのか? 

 いや確かにうさ耳持っているのは変だけどさ。

 

「何者ですか! 名を名乗りなさい!!」

「そ、それは勘弁してください! クラスはアサシン! に、日本の英霊ですぅ!!」

 

 うさ耳少女はガクブルと震えて答える。

 日本にあんなのいたっけ……。

 と、言ったところで思い出す。

 

「いや、待てよ……もしかして?」

「その、もしかして、ですよ」

 

 一瞬目を離した隙に、うさ耳少女の姿が消え、()()()()()()()少女の声が聞こえた。

 目をつけていたはずのアーチャーも、突如消えたことに困惑して俺後ろに弓を向けた。

 少女は一瞬にして俺のそばまで来ていたのだ。

 

「私は【稻羽之素菟(嘘つき兎の川渡り)】ですので」

「宝具かッ!」

「因幡の白兎だな、テメェッ!!」

 

 一本のナイフが首元に当てられる。

 アーチャーは構えたまま身動きが取れず、俺も少女の上手く絡みついた手足によって動けないでいた。

 

「はいはい、因幡の白兎ちゃんですよ。まぁ、他の英霊も混ざってんだけどね」

「なにが目的ですか」

 

 アーチャーが冷静に弓を下ろして聞く。

 アサシンこと因幡の白兎は、俺の首元にナイフを当てまま言う。

 

「私、こんななりでも汎人類史の英霊みたいでして。そりゃもう、アンタ殺して帰るだけですよ」

「随分と物騒だな……」

 

 とは言ったが、かなりやばい。

 じわじわとナイフが奥へと入り込んで行く。

 それに対してアーチャーは冷や汗一つかくことなく、ただアサシンの姿を見ていた。

 

「……なにもしないんで?」

「したところで、でしょう。動けば殺すつもりでは?」

「どちらにしろ殺しますけどね。後か先かの違いです」

「ならば動くべきではないでしょう……もうすぐ、ですしね──」

「え?」

 

 アーチャーが冷静にそう言うと同時に、アサシンはナイフを手から落とす。

 少し後退りして膝をつき、アーチャーのことを睨んだ。

 

「ま、ひ、どく……!?」

「さっき掠った矢に麻痺毒を塗っておきました。まぁ、当たらずとも別の策はありましたが……」

 

 剣を抜いたアーチャーは麻痺して動くないアサシンのそばに行く。

 

「アーチャー、そいつをどうするつもりだ」

「消しておくべきでしょう。後で障害になられても困ります」

「まぁ、そうだが……その前に、聞いておきたいことがある。因幡の白兎……テメェ、一人だけじゃねぇよな?」

「っ……」

 

 麻痺で相変わらず動けそうにはないし、表情も表に出そうとしない。

 だがわかった。

 少なくとも複数召喚されたサーヴァントたちは、既に集まり始めている。

 まだそこまで時間は経っていないはずなのに早すぎる。

 いや、もしかして……。

 

「俺が来る前から、既に何人か召喚されて……?」

 

 呟いた瞬間、アーチャーは突然弓を引いて後ろの森に向ける。

 その直後に少し遠くから、木々を掻き分けるような音が聞こえる。

 

「った、く……おそ、いん、で、すよ……」

 

 ニヤリと笑みを浮かべるアサシンに、俺は嫌なものを感じて音のする方を見る。

 音はどんどんと大きくなっていた。

 

「なにか、なにかが来ます! マスターさん!!」

「やれッ! アーチャーッ!!」

 

 カードを一枚取り出し、カードから西洋の剣を取り出すと因幡の白兎に向けて振るう。

 それと同時にアーチャーが矢を撃ち放った。

 

 

 

 だが森の中から現れた人物の手によって、アーチャーは大きく()()()()()()、俺の手にあった西洋剣はへし折られてしまっていた。

 そして転がっていたはずのアサシンは、少し離れところで脇に抱えられていた。

 日本式の軍服を着た男によって。

 

「わっ、は、は、は、はッ!! 小娘よ! 些か勇みすぎた!! 我が軍とともに進み行けばよかろうものを!」

「う、るさ、い……です、ね! バー、サーカー、は!」

「バーサーカー! ……また日本の英霊か!」

「日ノ本は沈まぬ! 軍は我とともに!! は、は、は、はッ!!」

 

 あっという間に、一瞬でバーサーカーはアサシンを抱えたまま走り去ってしまった。

 一先ずは……助かった、と言うことでいいのだろうか。

 

 と、それよりも。

 

「アーチャー! 大丈夫か!?」

 

 少し離れ場所で、へし曲がった木にめり込んだアーチャー。

 彼女はむくりと起き上がると、頭をさすってから立ち上がる。

 

「いてて……だ、大丈夫です! マスターさんは!?」

「俺は大丈夫だ。なんとかな」

 

 バーサーカーの走り去った跡を見て、俺はため息とともに座り込む。

 英霊がたくさん出てくる異聞帯か。

 その上、変なバケモノまで。

 

 とにかく英霊たちに関してはなにかしらの対策を立てる必要がある。

 バケモノもいずれ殲滅する必要があるだろう。

 そしてそれに支配されているであろう人間たちも、どうにかしなくては。

 

 これからの色んなことに頭を悩ませる。

 だが悩ませたところで何か進むわけでもないので、アヴェンジャーの調査が終わるまでアーチャーとテントを立てることにしたのだった。




アーチャー
中世騎士を超軽装化したような格好をしている。
露出は少なく、どちらかと言うと着込んでいる方。
基本的な武器は弓矢であるが、いざと言う時剣を使えるだけの実力はある。
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