Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』   作:御魚天国

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第5節:三人目のサーヴァント

 カルデア、俺たちクリプターが戦うべき相手。

 確かに全滅していたはずだったが生きていたと。

 ちょっとした事情で大西洋異聞帯にいた頃、俺はクリプター会議の中でそう聞かされた。

 

 それなりに衝撃ではあったが、相手は七つの特異点を攻略し、人類史を救ったやつだ。

 何らかの方法で生き延びるとは思っていた。

 

 ともかくそんな報告を聞いた俺は居ても立っても居られず、会議から一ヶ月後の今日、八つ目の異聞帯の太平洋のムー大陸へと来たわけだ。

 別にここに来るのはいつでもよかった。

 競い合いに参加するつもりなんざなかったから。

 だがカルデアが生きていたとなれば話は別だ。

 

 いずれ奴らは異聞帯を潰して周る。

 ならその前に、俺は役割を思い出してそれを果たす。

 自分のやるべきことを。

 

 と言いたいが、それ以前に。

 今現在俺たちは影を広げているアヴェンジャーの隣で、テントの入り口で焚き火を囲んで座っていた。

 思いの外、時間がかかっているようで既に夜。 見つけに行こうにももうどうにもならない時間だろう。

 

 先程入手した豚のような生き物を解体して、なんとか食事に。

 ため息をつきながら呟く。

 

「俺ぇ、会議出れるかなぁ」

「はぇ? 会議ですか?」

「そ。俺の他にも異聞帯を経営してる奴らがいるんだけどさ。今こんな状況じゃん?」

「あー、完全にサバイバルですもんね」

「汎人類史の英霊もいるし、バケモノもいっぱいだし。どうにもなんねーよなぁ……」

 

 一先ず俺たちが安全に住める拠点が欲しい。

 英霊たちに狙われず、それでいてこの世界を見渡せような場所。

 少なくとも英霊に攻撃されなきゃそれでいいのだが。

 

 考えれば考えるほどやることが増して行くようで、ため息も増えて行く。

 俺はそんな考えを切り替えるべく、少し気になっていたことをアーチャーに聞いた。

 

「それよりも。お前はなんで俺に協力するんだ? 契約、つっても自分の住んでいた世界を破壊するような行為だぞ?」

「……契約である。それ以上の意味なんてないですよ」

「なら聖杯に掛けた願いは」

「──、それ、は」

 

 少し黙って俯いて焚き火を見つめる。

 だが少しして星が瞬く夜空を見上げた後、ゆっくり答えた。

 

「私、が。聖杯に掛けた願いは。やり直すことです。なにもかも」

「やり直し、か?」

「確かに私は名を残しました。でも、それはそういった存在の一つでしかない」

「どういうことだ?」

「私以外にもその名前を持つ人間はいるってことです。……まぁ、()()()()()()ですが」

 

 他にもいる、か。

 

「だから女だったのか?」

「基本的には男として伝わってるかもしれませんね」

 

 俺は彼女の真名を聞いた時、性別に関しては違和感があった。

 だがそれは『その英霊』の一人であると考えた時、納得はできた。

 とは言え、数多いる中の一人でしかない、ってのも珍しいような気もしなくはないが。

 

 そこから色々と話をしていたところ、突然白い影が収縮してアヴェンジャーが動き出す。

 少し疲れた様子で座り込む。

 

「……っ。なる、ほど」

「アヴェンジャー、終わったのか?」

「少し、時間がかかったがな……やはり体が馴染みきってないのか……?」

「それで結果は?」

「どこにいるかはわかった。一応こっちに来ているみたいだが……しかしあれは……」

 

 少し言い淀んで首を横に振る。

 よくわかんないが来てるならよし。

 

「そうか……なら、取り敢えず待機だな」

 

 そう言ってアヴェンジャーを手招くと、カードから用意した椅子に座らせる。

 アーチャーは立ち上がると、少し見張りをするとのことで、森の方に行った。

 

 俺は串刺しにして焼いた肉をアヴェンジャーに差し出す。

 アヴェンジャーは少し驚きつつも、受け取って食べる。

 

「これはさっきのやつか。……む? 香辛料……?」

「なんか肉に最初から味が付いててな。手間いらずってやつだな」

「ふむ……なかなか美味しいな」

「だろ」

 

 そっからはこの異聞帯について、これからのことを相談しあった。

 基本的には空想樹を目指し、その道中で霊脈を巡る。

 何騎使役できるかはわからないが、できる限り契約をし味方を増やす方向で。

 

 と言っても、増やし過ぎるのもよくない。

 サーヴァントとは言え思想がある、彼らだって人なのだ。

 令呪があると言え、宝具次第では裏切ることだって可能な奴らだっているはず。

 だから最高でも七騎、それ以上の使役はしないことに決めた。

 

 そして俺はアヴェンジャーにも、アーチャーと同じことを聞く。

 

「アヴェンジャー、お前は汎人類史の英霊だよな?」

「……いや、少し違う」

「と、言うと?」

「少し事情がな」

 

 と言うとそれ以上は語ろうとしなかった。

 少なくとも汎人類史の英霊でないことだけは確からしい。

 だから彼女は味方してくれるのだろうか。

 

「なんで俺と一緒に来てくれるんだ? 汎人類史を破壊……消すようなことを」

「汎人類史に興味はない。私にとってもアヴェンジャーとなったきっかけの人間がいる世界、だからな」

「そうか……まぁ、それはこっちにとっても都合がいいな」

 

 かつて豚のようだったものの肉片に齧りつきながら会話を続ける。

 サーヴァントとマスターってこんな関係なんだろうか。

 どうにも正解がわからない。

 

「なぁ、もし聖杯が手に入ったら、どうする?」

「それは……聖杯に掛ける願いの話か?」

「そう」

「……私は、復讐したい。それだけだ」

 

 まさにアヴェンジャー、そのものと言っていい。

 それはクラスに引っ張られた思想なのだろうか。

 それとも彼女が元々持つ思想なのか。

 今の俺にそれを判別することはできなかった。

 

 そんなこんなでしばらく話し込んでいると、アーチャーが森の中から走ってきた。

 

「アーチャー? どうした?」

「多分件の英霊が来たと思うんですけど、それが、その……」

「……? 取り敢えず迎え入れればいいだろ?」

「はぁ……」

 

 アーチャーは頷くと、森の中に入ってその英霊を連れてきた。

 そこで俺は少し驚いて、アーチャーとアヴェンジャーが言い淀んでいた理由が判明する。

 英霊は()()いたのだ。

 

 男と少女、男は19世紀辺りの作業着を着て、少女は男の足にくっついている。

 見た目から既に近代の英霊ということがわかった。

 

「どうもマスター。俺ァ……いや、俺たちゃライダー。見ての通り近代英霊だが、よろしく頼むぜ?」

「……よろしく」

 

 と言ってピースする二人に、俺は一抹の不安を抱いて、二人をテントへと招き入れたのだった。

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