Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』 作:御魚天国
カルデア、俺たちクリプターが戦うべき相手。
確かに全滅していたはずだったが生きていたと。
ちょっとした事情で大西洋異聞帯にいた頃、俺はクリプター会議の中でそう聞かされた。
それなりに衝撃ではあったが、相手は七つの特異点を攻略し、人類史を救ったやつだ。
何らかの方法で生き延びるとは思っていた。
ともかくそんな報告を聞いた俺は居ても立っても居られず、会議から一ヶ月後の今日、八つ目の異聞帯の太平洋のムー大陸へと来たわけだ。
別にここに来るのはいつでもよかった。
競い合いに参加するつもりなんざなかったから。
だがカルデアが生きていたとなれば話は別だ。
いずれ奴らは異聞帯を潰して周る。
ならその前に、俺は役割を思い出してそれを果たす。
自分のやるべきことを。
と言いたいが、それ以前に。
今現在俺たちは影を広げているアヴェンジャーの隣で、テントの入り口で焚き火を囲んで座っていた。
思いの外、時間がかかっているようで既に夜。 見つけに行こうにももうどうにもならない時間だろう。
先程入手した豚のような生き物を解体して、なんとか食事に。
ため息をつきながら呟く。
「俺ぇ、会議出れるかなぁ」
「はぇ? 会議ですか?」
「そ。俺の他にも異聞帯を経営してる奴らがいるんだけどさ。今こんな状況じゃん?」
「あー、完全にサバイバルですもんね」
「汎人類史の英霊もいるし、バケモノもいっぱいだし。どうにもなんねーよなぁ……」
一先ず俺たちが安全に住める拠点が欲しい。
英霊たちに狙われず、それでいてこの世界を見渡せような場所。
少なくとも英霊に攻撃されなきゃそれでいいのだが。
考えれば考えるほどやることが増して行くようで、ため息も増えて行く。
俺はそんな考えを切り替えるべく、少し気になっていたことをアーチャーに聞いた。
「それよりも。お前はなんで俺に協力するんだ? 契約、つっても自分の住んでいた世界を破壊するような行為だぞ?」
「……契約である。それ以上の意味なんてないですよ」
「なら聖杯に掛けた願いは」
「──、それ、は」
少し黙って俯いて焚き火を見つめる。
だが少しして星が瞬く夜空を見上げた後、ゆっくり答えた。
「私、が。聖杯に掛けた願いは。やり直すことです。なにもかも」
「やり直し、か?」
「確かに私は名を残しました。でも、それはそういった存在の一つでしかない」
「どういうことだ?」
「私以外にもその名前を持つ人間はいるってことです。……まぁ、
他にもいる、か。
「だから女だったのか?」
「基本的には男として伝わってるかもしれませんね」
俺は彼女の真名を聞いた時、性別に関しては違和感があった。
だがそれは『その英霊』の一人であると考えた時、納得はできた。
とは言え、数多いる中の一人でしかない、ってのも珍しいような気もしなくはないが。
そこから色々と話をしていたところ、突然白い影が収縮してアヴェンジャーが動き出す。
少し疲れた様子で座り込む。
「……っ。なる、ほど」
「アヴェンジャー、終わったのか?」
「少し、時間がかかったがな……やはり体が馴染みきってないのか……?」
「それで結果は?」
「どこにいるかはわかった。一応こっちに来ているみたいだが……しかしあれは……」
少し言い淀んで首を横に振る。
よくわかんないが来てるならよし。
「そうか……なら、取り敢えず待機だな」
そう言ってアヴェンジャーを手招くと、カードから用意した椅子に座らせる。
アーチャーは立ち上がると、少し見張りをするとのことで、森の方に行った。
俺は串刺しにして焼いた肉をアヴェンジャーに差し出す。
アヴェンジャーは少し驚きつつも、受け取って食べる。
「これはさっきのやつか。……む? 香辛料……?」
「なんか肉に最初から味が付いててな。手間いらずってやつだな」
「ふむ……なかなか美味しいな」
「だろ」
そっからはこの異聞帯について、これからのことを相談しあった。
基本的には空想樹を目指し、その道中で霊脈を巡る。
何騎使役できるかはわからないが、できる限り契約をし味方を増やす方向で。
と言っても、増やし過ぎるのもよくない。
サーヴァントとは言え思想がある、彼らだって人なのだ。
令呪があると言え、宝具次第では裏切ることだって可能な奴らだっているはず。
だから最高でも七騎、それ以上の使役はしないことに決めた。
そして俺はアヴェンジャーにも、アーチャーと同じことを聞く。
「アヴェンジャー、お前は汎人類史の英霊だよな?」
「……いや、少し違う」
「と、言うと?」
「少し事情がな」
と言うとそれ以上は語ろうとしなかった。
少なくとも汎人類史の英霊でないことだけは確からしい。
だから彼女は味方してくれるのだろうか。
「なんで俺と一緒に来てくれるんだ? 汎人類史を破壊……消すようなことを」
「汎人類史に興味はない。私にとってもアヴェンジャーとなったきっかけの人間がいる世界、だからな」
「そうか……まぁ、それはこっちにとっても都合がいいな」
かつて豚のようだったものの肉片に齧りつきながら会話を続ける。
サーヴァントとマスターってこんな関係なんだろうか。
どうにも正解がわからない。
「なぁ、もし聖杯が手に入ったら、どうする?」
「それは……聖杯に掛ける願いの話か?」
「そう」
「……私は、復讐したい。それだけだ」
まさにアヴェンジャー、そのものと言っていい。
それはクラスに引っ張られた思想なのだろうか。
それとも彼女が元々持つ思想なのか。
今の俺にそれを判別することはできなかった。
そんなこんなでしばらく話し込んでいると、アーチャーが森の中から走ってきた。
「アーチャー? どうした?」
「多分件の英霊が来たと思うんですけど、それが、その……」
「……? 取り敢えず迎え入れればいいだろ?」
「はぁ……」
アーチャーは頷くと、森の中に入ってその英霊を連れてきた。
そこで俺は少し驚いて、アーチャーとアヴェンジャーが言い淀んでいた理由が判明する。
英霊は
男と少女、男は19世紀辺りの作業着を着て、少女は男の足にくっついている。
見た目から既に近代の英霊ということがわかった。
「どうもマスター。俺ァ……いや、俺たちゃライダー。見ての通り近代英霊だが、よろしく頼むぜ?」
「……よろしく」
と言ってピースする二人に、俺は一抹の不安を抱いて、二人をテントへと招き入れたのだった。