Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』 作:御魚天国
「やはり懸念すべきはラ・ムーか」
「え、なんの話?」
朝、昨日の夜はテントの中で一先ずライダーから真名を聞き出して睡眠。
真名は……英霊になりそうだなぁ、って感じ。
使えるのは間違いない。
で、同じく汎人類史の英霊のようで。
深く考えていたが、頷くと協力すると言ってくれはした。
少し警戒はしておくべき対象かな、とは考えている。
今は朝。
起きて朝飯食った直後に突然アヴェンジャーが言い出したのだ。
「ラ・ムーって?」
「なんだ貴様、知らないのか?」
「ああ」
「……ラ・ムーはムー大陸にいたとされる王だ。他の異聞帯で言うと……多分、異聞帯の王に該当するのでは、と考えている」
「なるほど?」
「わかってないな、貴様。と言っても、私もあまり知らん。太陽神の化身だとかは聞いたことがあるが、その程度だ」
太陽神か……太陽に関連する逸話を持つ英霊と相性良さそうだな。
出てくるかどうかはわからないけども。
……いや、昨日出てきたな。
なんて話をしながら、サーヴァントたちとともにテントを片付けて移動の準備をする。
と言ったところでアヴェンジャーが立ち止まって、少し遠くの方を見て呟いた。
「……霊基の数が、増えてる?」
「え?」
その言葉にライダー……兄妹の兄の方がアヴェンジャーの隣に立って反応を示す。
「やっぱそうだよなぁ。英霊の数が増えてんぜ、こりゃあ」
「増えてる?」
「……昨日はこの大陸に、私たちを除いて四騎程度の英霊がいた。だが今日は……」
「デケェのが二騎、既にいた四騎、そして気づいた増えてた三騎……合計九騎いますぜ。マスター」
「クラスはわかるか?」
「……私たちが、観測した……範囲で、なら……」
そう言うとライダー妹が、どこから持ってきた地図を広げる。
かなり精度の高い地図だが、どこで手に入れたのだろうか。
「こんな地図どこで……?」
「昨日の夜、作った……」
「アヴェンジャーさんからちと頼まれてまして。徹夜で」
ニヤリと笑うライダーに、俺は地図を指でなぞる。
精密に広範囲に、この異聞帯全体が描かれている。
徹夜でここまで完成させたのか。
ただ細かく書いてあることを見るに、信用度の高いものではありそうだ。
……めちゃくちゃ広いな。
「宝具を使わせたが構わんな?」
「あ、ああ。こんな地図作れるなら別に構わねーけど。……お前らそんな逸話あったっけ?」
「ま、ちとした事情ってやつですよ。気にしないでくだせえ」
ちとした事情……その事情が気になるんだが。
だが宝具を使っただけでは、ここまで精密な地図は作れない。
それこそ地図に関して逸話を持つサーヴァントではないと。
しかし今、気にするのはそこじゃない。
俺は話し始めるように言うと、最初に指をさしたのはアーチャーだった。
「今私たちがいるのはここですね。昨日はアサシンとバーサーカーに襲撃されました」
「……聞いてないぞ?」
「あ、あとで話します! それよりも、アサシンの方は真名が判明してます……よね、マスター?」
「ああ、アサシンの真名は『因幡の白兎』。日本神話に出てくる兎だ。なんでアサシンになったかは知らんが」
その言葉を聞いてアヴェンジャーが首を傾げる。
「日本神話? 日本の英霊だと……? 妙だな……まぁいい、続きだ。で、バーサーカーの方は?」
「こっちも多分日本の英霊。どっかの資料で見たことのある軍服を着ていた」
それを聞いてアヴェンジャーは再度を首を傾げる。
そして地図をじっと見つめて、俺たちの方を見ながら不思議そうに聞いた。
「本当に? 日本の英霊か?」
「どうして」
「……ロンドンとギリシャの英霊……じゃないのか?」
「なんでロンドンとギリシャ?」
「……なんとなくだ。それに関しては私が勝手に調べるとしよう。それよりも続きだ」
一体何を気にしていると言うのだろうか。
たしかに因幡の白兎に関しては、何故アサシンのなのかわからない。
それに日本軍人の英霊もあそこまでのパワーが出るのがよくわからない。
近代英霊である以上、出力は抑えられているはずなのに。
なんて考えていると、ライダー兄が他の場所を指差す。
「デケェ反応、こいつはセイバー……で、アヴェンジャーさんが任せろ、とのことで」
「抑止力が私を脅威とみなしたようだ、いずれ殺す。貴様らは無視しろ」
明らかに憎しみのこもった物言いに俺の鳥肌が立つ。
恐怖、それに近いものが沸き立ってきたのだ。
それは他の三人もわかっているのだろう。
少し静かになって、話の続きを始めたのはライダー妹だった。
「残り六騎……ここに一人でかいのと、三人……ここに二人……固まってる……」
指し示した場所は現在地よりかなり離れている場所。
一先ずは安心してもいいだろうが、いずれ出会ったときのことも考えておくべきか。
だが次に言われた言葉に、俺は困惑を覚える。
「ここにキャスターとフォーリナー……こっちにはアーチャー、バーサーカー、ライダー、ランサー……でも、四人の方は、仲間割れしてる……」
「ちょ、ちょっと待て、フォーリナー? それに仲間割れ?」
「近代英霊ですが、明らかにフォーリナーすね。で、仲間割れの方は……なんつーか。その、
またとんでもないのが出てきたな。
しかも
一度どこかで見たような、聞いたことがあるような。
何にしろ、俺はそれを知っている。
だがそれよりも気になったのは、仲間割れって方だ。
ランサーが他三騎相手に殺し合いを繰り広げているのは非常に気になる。
「殺し合いか……利用できそうだな……」
「殺し合いの発端はランサーすね。もっと英霊はいたみたいなんすけど……」
「全員、ランサーの手によって葬られているな。染み付くような魔力から、神霊の可能性が高い」
「なにそれ……」
魔力でわかるのか……。
色々と例外なのかしれない、このアヴェンジャー。
他の三人を見ていると、そう思ってしまう。
と言うかランサーが神霊か。
聞いたらわかるのだが、聞かなきゃなにも思い浮かばない。
問題となるのは、接触するべきか、避けるべきか。
「……一先ず避けるべきか」
現状なにも整っていない状況で接触しても、逃亡したところで逃げる場所がなくなる。
逃げれなくなることだけは避けたい。
「どうする、マスター。私は放置を勧めるが?」
「接触したところでいいことなさそうだもんな。取り敢えず目的地に向けて出発。接触してしまった場合、その都度対応で」
「了解です!」
アーチャーのはっきりとした返事の後、それぞれが適当に返事を返す。
その後は地図を片付け、テントを片付けて歩き始めた。
空想樹へと向けて。