Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』 作:御魚天国
宝具祭りです。
私はただ、生命力が高いだけのバーサーカー。
逸話として確かにそれが刻まれている。
かつて戦場を駆け抜け、武器を手に戦い続けた日々を。
だが、こんなもの戦いなどと呼べるものか。
近代と神代の差は──、あまりにも大きかった。
「ひゃはっ、はっはっはっはっ!! 血とは、争いとはあああああッ!!」
まさに狂気。
私は確かにバーサーカーですが、それでも近代英霊ということもあって正気を保っている。
だが小柄なランサーは、正気を保っているとは到底思えなかった。
翼の生えた女神、見た目はまさに神様というべき存在だろう。
だがその言動と行動は、私のようなバーサーカーよりも凄まじかった。
「まさか、召喚された直後に襲ってくるとは……」
私の呟きに、近くに立つ弓を携えた女性が呟く。
「一撃が、些か重すぎるぞ……バーサーカー、体力の方は?」
「なんとか、と言ったところでしょうな。キャスター殿の宝具のおかげで、なんとか注意が逸れております故……」
「前が見えていない、と言うわけか」
それならばいいのですが。
あの女神、些か恐ろしいことにこちらを弄んでいるように見える。
槍を振るえばその薙ぎ払いによって、キャスターの分身が次から次へと蹴散らされて行く。
矢を放てば、次の行動によって弾かれるから避けられる。
私が銃弾を撃ち放つと、それすらも軽い動きで避ける。
攻撃のしようがない。
全て避けられるし防がれるのだから。
「くっ……私の魔力もそろそろ尽きるぞ!」
「キャスター殿!」
「我が宝具……【
歯を食いしばって、キャスターはランサーを睨み付ける。
だがランサーはただ笑い続けて、大量にいるキャスターの中で槍を振るい続けていた。
そこに突然一人、海賊の船長が割って入る。
だが大きく槍を振るったランサーによって吹き飛ばされてしまった。
「ライダー殿! 大丈夫か!?」
「げひひッ……俺様も海の上なら万全に戦えんだがなァ……!」
そう言って片手に握った剣を地面に突き刺して立ち上がると、女神に向かって走り出す。
かれこれ数時間、私たちは戦闘を続けていたが、このまま戦い続けていてはいつしか敗北してしまう。
この女神をこのまま残しておくことはまずい。
後に召喚されるであろう汎人類史の英霊たちが、彼女に手こずることがあってはならない。
ここには
だが……今ここで倒せないのもまた事実。
「逃げるしか……あるまいな」
「アーチャー殿……同じ考えでしたな」
「ではどう撤退するか、だが……」
「私が
「……了解した。ライダー、キャスター! 撤退だ!」
その言葉に頷くと、キャスターは宝具を解除して後ろに下がる。
ライダーも鍔迫り合いで女神の武器を弾き、後ろに大きく下がって撤退する。
そこに私は銃剣を手に走り出した。
「ランサーァァアアッ!!!」
「くふっ……ふ、ふふっ!!! 勇者! ……私を倒さんとする勇者よ!!
そう言うと名前を聞き取ることのできなかったランサーが槍を振るう。
すんでのところで私も銃剣を振るって、槍の一撃をそらすと胸元に向かって突きを放つ。
だが卓越した技術を持つランサーの槍は、その私の一撃を大きく弾く。
そこに振るった大きな一撃な、大地を割いて衝撃波がこちらまで届く。
私は宙に浮いた体で、飛んできた瓦礫を足場にして移動する。
そして奴の視界から外れた背後から奇襲。
だが奴は槍を逆手に持つと、近づいた私に向けて振るう。
「ぐっ……」
「はははははっ!!! いい、ですねぇッ!! 素敵です、最高ですよ!!」
危ういところで銃剣で槍先を逸らし、奴に一撃を浴びせようとした。
だが奴は指先で私の一撃を受け止め楽しそうに笑う。
あまりにも一方的すぎる、完全にこちらを弄んでいる。
奴ならば一撃で私を殺すことも可能だろう。
だがこちらに実力を合わせてきている。
近代と神代の差ははっきりとしていると言うのに。
「……くっ……」
どちらにしろ私の敗北の可能性は濃いだろう。
行くと言ったのに、行けずじまいとは。
汎人類史の英霊として一つの活躍もできずに、か。
「……せめて名を残したものして、死に際ぐらいは、な」
銃剣をしっかり握ると、私は再度走り出す。
だが、その瞬間、
「──は?」
「──なんだ、これは」
女神は驚きに呆然として空を見上げる。
私も空を見上げ、青い空の中に星が見えたのを確認する。
星、ただの星じゃない。
青くて、丸くて、アレは。
「
はるか遠くに、地球が見えた。
それに気づいた時、女神にもある変化が起きていた。
「ッ……!? し、神性が、魔力が……!? 何故、何故何故!! 私から
その言葉に驚くと同時に私は走り出す。
一撃を浴びせようとするが、やはり防がれる。
だが今度の一撃に対して奴は余裕のない顔を見せる。
「くっ……!?」
女神は驚きに顔を歪ませ、飛んで走って後退していった。
私は奴を退けたことに安心し座り込む。
意識の混濁、体から魔力が抜けて行くのを感じる。
「これ、は……」
直感であの地球によるものだと感じる。
私は遠くに見えた二つの人影を見ながら、そのまま気を失ったのだった。
キャスターに関しては真名がわかりやすそうですね……。