Lostbelt No.0 『存在証明大陸 ムー』   作:御魚天国

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本日二話目。
宝具祭りです。


閑話:神霊『ランサー』

 私はただ、生命力が高いだけのバーサーカー。

 逸話として確かにそれが刻まれている。

 かつて戦場を駆け抜け、武器を手に戦い続けた日々を。

 

 だが、こんなもの戦いなどと呼べるものか。

 近代と神代の差は──、あまりにも大きかった。

 

「ひゃはっ、はっはっはっはっ!! 血とは、争いとはあああああッ!!」

 

 まさに狂気。

 私は確かにバーサーカーですが、それでも近代英霊ということもあって正気を保っている。

 だが小柄なランサーは、正気を保っているとは到底思えなかった。

 

 翼の生えた女神、見た目はまさに神様というべき存在だろう。

 だがその言動と行動は、私のようなバーサーカーよりも凄まじかった。

 

「まさか、召喚された直後に襲ってくるとは……」

 

 私の呟きに、近くに立つ弓を携えた女性が呟く。

 

「一撃が、些か重すぎるぞ……バーサーカー、体力の方は?」

「なんとか、と言ったところでしょうな。キャスター殿の宝具のおかげで、なんとか注意が逸れております故……」

「前が見えていない、と言うわけか」

 

 それならばいいのですが。

 あの女神、些か恐ろしいことにこちらを弄んでいるように見える。

 

 槍を振るえばその薙ぎ払いによって、キャスターの分身が次から次へと蹴散らされて行く。

 矢を放てば、次の行動によって弾かれるから避けられる。

 私が銃弾を撃ち放つと、それすらも軽い動きで避ける。

 

 攻撃のしようがない。

 全て避けられるし防がれるのだから。

 

「くっ……私の魔力もそろそろ尽きるぞ!」

「キャスター殿!」

「我が宝具……【同遺伝子体(クローニング)】も使えなくなってしまう……! せめて令呪の魔力があれば、君たちも作れたのだが……!」

 

 歯を食いしばって、キャスターはランサーを睨み付ける。

 だがランサーはただ笑い続けて、大量にいるキャスターの中で槍を振るい続けていた。

 そこに突然一人、海賊の船長が割って入る。

 だが大きく槍を振るったランサーによって吹き飛ばされてしまった。

 

「ライダー殿! 大丈夫か!?」

「げひひッ……俺様も海の上なら万全に戦えんだがなァ……!」

 

 そう言って片手に握った剣を地面に突き刺して立ち上がると、女神に向かって走り出す。

 かれこれ数時間、私たちは戦闘を続けていたが、このまま戦い続けていてはいつしか敗北してしまう。

 

 この女神をこのまま残しておくことはまずい。

 後に召喚されるであろう汎人類史の英霊たちが、彼女に手こずることがあってはならない。

 ここには()()()()()恐ろしい存在がいることを認知できるから。

 だが……今ここで倒せないのもまた事実。

 

「逃げるしか……あるまいな」

「アーチャー殿……同じ考えでしたな」

「ではどう撤退するか、だが……」

「私が殿(しんがり)の役目を請け負いましょう。こう見えて、逸話に関しては神代に負けず劣らず故……。なぁに、ちゃんと生きて行きますとも」

「……了解した。ライダー、キャスター! 撤退だ!」

 

 その言葉に頷くと、キャスターは宝具を解除して後ろに下がる。

 ライダーも鍔迫り合いで女神の武器を弾き、後ろに大きく下がって撤退する。

 そこに私は銃剣を手に走り出した。

 

「ランサーァァアアッ!!!」

「くふっ……ふ、ふふっ!!! 勇者! ……私を倒さんとする勇者よ!! ()()()()()()()()()()()()()()愚者よ!! 私が相手をしよう!! この私、■■■がッ!!」

 

 そう言うと名前を聞き取ることのできなかったランサーが槍を振るう。

 すんでのところで私も銃剣を振るって、槍の一撃をそらすと胸元に向かって突きを放つ。

 だが卓越した技術を持つランサーの槍は、その私の一撃を大きく弾く。

 

 そこに振るった大きな一撃な、大地を割いて衝撃波がこちらまで届く。

 私は宙に浮いた体で、飛んできた瓦礫を足場にして移動する。

 そして奴の視界から外れた背後から奇襲。

 だが奴は槍を逆手に持つと、近づいた私に向けて振るう。

 

「ぐっ……」

「はははははっ!!! いい、ですねぇッ!! 素敵です、最高ですよ!!」

 

 危ういところで銃剣で槍先を逸らし、奴に一撃を浴びせようとした。

 だが奴は指先で私の一撃を受け止め楽しそうに笑う。

 

 あまりにも一方的すぎる、完全にこちらを弄んでいる。

 奴ならば一撃で私を殺すことも可能だろう。

 だがこちらに実力を合わせてきている。

 近代と神代の差ははっきりとしていると言うのに。

 

「……くっ……」

 

 どちらにしろ私の敗北の可能性は濃いだろう。

 行くと言ったのに、行けずじまいとは。

 汎人類史の英霊として一つの活躍もできずに、か。

 

「……せめて名を残したものして、死に際ぐらいは、な」

 

 銃剣をしっかり握ると、私は再度走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その瞬間、()()()()()

 

「──は?」

「──なんだ、これは」

 

 女神は驚きに呆然として空を見上げる。

 私も空を見上げ、青い空の中に星が見えたのを確認する。

 星、ただの星じゃない。

 

 青くて、丸くて、アレは。

 

()()、だと……!?」

 

 はるか遠くに、地球が見えた。

 

 それに気づいた時、女神にもある変化が起きていた。

 

「ッ……!? し、神性が、魔力が……!? 何故、何故何故!! 私から()()()()()()()()()!?」

 

 その言葉に驚くと同時に私は走り出す。

 一撃を浴びせようとするが、やはり防がれる。

 だが今度の一撃に対して奴は余裕のない顔を見せる。

 

「くっ……!?」

 

 女神は驚きに顔を歪ませ、飛んで走って後退していった。

 私は奴を退けたことに安心し座り込む。

 意識の混濁、体から魔力が抜けて行くのを感じる。

 

「これ、は……」

 

 直感であの地球によるものだと感じる。

 私は遠くに見えた二つの人影を見ながら、そのまま気を失ったのだった。




キャスターに関しては真名がわかりやすそうですね……。
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