足を怪我して2年が経った。
ほぼ杖無しで歩けるまでに回復したものの長く歩くとやっぱり傷が痛む。
今日も日課の散歩を終えてシスと一緒に天幕外の椅子に腰掛けてチェスをしていると、戦を終えたガッツが走って帰ってきた。
なんだかいつもよりテンションが高めだ。
「ガンビーノ、聞いてくれよ!敵の大将を殺ったんだ!」
「おかえりガッツ、怪我してない?」
「大丈夫だよ母さん。ほらこれ!見てよガンビーノ!!」
「ほーーマジみたいだな。よくやったじゃねーかガッツ、お前も随分強くなったんじゃないか?」
ガッツが嬉しそうに渡してきた小袋には確かに数枚の金貨と何十枚かの銀貨、銅貨が入っていた。
大将と言えば護衛がいて重武装が当たり前。騎士を討つのとは訳が違う。これはかなり頑張ったに違いない。
「うん…、…。ほらよ」
ポポイっとガッツに金貨と銀貨を1枚ずつ投げて渡す。流石に全部は多すぎる、まだ子供なのに大金持たせて変に散財する癖がついたらたまらないからな。
おい何だよそんな目で見んなよ。
何もピンハネしてるんじゃねえよ、ガッツの為にも親の義務を果たしてんだからんな。勘違いすんなよな。
お前らもガッツの純粋さを見習えい!
「ま、死なねえ程度に頑張れよ」
「うん!!」
いつの間にかシスの膝の上に座ってたガッツの頭をワシワシと撫でくりまわしてやる。
こうするとびっくりするほど喜ぶ。今も満面の笑みでコインを握りしめてるくらいだからな。
ああ、可愛い盛りのガッツを見てると原作に律儀に沿わなくて本当に良かったと思えてくる。
ギリ覚えてる範囲だとガンビーノを殺しちゃったガッツはガンビーノの部下に追い回されて崖から落っこちる運命だった。
落ちても死ななくて狼の群れを撃退するも力尽きてバタンキューした所を別の傭兵団に拾われる所までは覚えてる。
んーー、ダメだそっから先が思い出せねえ。
「ガンビーノ?ねえガンビーノってば!」
「あ?なんだ」
「んーん、なんか考え込んでるみたいだったから…」
「あー気にすんなオメーには関係無いからよ」
ひとしきり撫で終わってチェスを片付ける。
そろそろ晩飯時でシスも行かなきゃならないしガッツじゃチェスの相手にならない。「大丈夫?」って聞いてくるガッツにいつも通り大丈夫だと返して席を立つ。
1年と少し前、自力で起きれるようになったってのに「まだ動くのは早い」とか言ってくるウルバンの反対を押し切って始めたリハビリの日々。
その時は傷が深くてマトモに歩けなかったから杖での移動だったがそれが宜しくなかった。
動きが制限されるせいでストレスが溜まりっぱなしで自然と酒が増えた。アル中になるほどじゃないにしろ禁酒に失敗したのは痛い。
っかしーなー、前に禁酒した時は成功したんだけど…。
まあそんなこんなでガッツの成長を見続けてきた俺の考えは最近変わってきている。『そろそろちゃんと世の中を見せてやるべきなんじゃないか?』って。
子供の成長ってのは思ってるより早い、だからもう少ししたらガッツを独り立ちさせるのも悪かないよな。
シスの後に着いていくガッツを眺めながらそんなふうに思う。
アイツはこの世の中を上手く生きてけるんだろうか…。
それだけが心配で仕方なかった。