「この団から出ていけってどういう事なんだよ!?ガンビーノ!」
剣の鍛練を終えたタイミングでモス爺がガンビーノの所に来るように言いにきて、そのままの足で向かったら古参兵や母さんも集まってた。
そこで言われたのは『独り立ちしろ』って事だった。
「なんで急にそんな事言うんだよ、僕は嫌だ!ここは僕の家で皆は家族じゃないか!ガンビーノ、ガンビーノがそう教えてくれたじゃないか!」
まくし立てるように言葉をぶちまける。
血の繋がりが無いのは知ってる、でも追い出すような扱いはされた事なんて今まで1度もなかった。なのになんで急にこんな話を出したのか分からなかった。
誰かがガンビーノに何か吹き込んだ?いやそんなハズない、ガンビーノが耳を貸すとは思えない。
「落ち着いてガッツ。ガンビーノも言葉が足りてないんだよもう一度ちゃんと初めから言い直して、ほら」
「…」
母さんの優しく諭すような言い方に少しだけ興奮が和らぐ。確かにガンビーノは時々言葉が足りなくて誤解されたり、齟齬が生じて苦労してたのは知ってる。
軽く深呼吸しながら椅子に座り直す。
少し間を置いてガンビーノが独り立ちの件を話し始めた。
「いいかガッツ、俺はな──」
そこから先はよく覚えてない。
頭が考えるのを拒否したんだ、ただガンビーノの言葉が耳に入ってくる。
聞きたくない…聞きたくないよそんな話。
何となく居心地悪くて気持ち悪かった。
〜〜〜◇モスヴィラント◇〜〜〜
古参兵達に連れ沿われて天幕を出ていくガッツの後ろ姿を眺めながらガンビーノの心境を探ってみる。
「よかったのか?ガンビーノよ」
「…ああ」
返事に覇気がない、まあ無理もなかろう。
傍から見ても仲のいい親子だと感じる程家族らしかったと言うのに、自らガッツを突き放すような事をしたのだから。
確かに子供は独り立ちさせねばならぬ。だがもう少しやりようがあろうに。
「のうガンビーノよ、そこまで心辛い思いをするくらいならいっそここに、自分の元に居させてやれば良かったのではないか?無理に独り立ちさせんでも…」
「バーナー、俺がガッツに言った言葉を聞いてなかったのか?今じゃなきゃ駄目なんだ。俺がまだ健在な今じゃなきゃ…!」
気のせいかガンビーノが何かに焦っているように見える。その焦りがどこから来てるのか、長い付き合いを持ってしても分からない。
儂にも子はおるし、なんなら孫もいる。だが子育ては妻に任せっきりだった故に分からぬのだ。
「甘い親では無く優しい親でありたい、であったか」
それがお前がガッツに独り立ちさせることを決意した理由か…。大した親バカよな。
「俺はガッツが可愛い、血の繋がりこそ無いが俺の大切な一人息子なんだ。アイツはこのクソッタレな世の中を生きなきゃいけねえ。だからまだ子供のうちに、失敗しても許されるうちに世界がどんなかちゃんと見せてやりたいんだ」
「…親は子より早く死ぬ。だったな」
平時は子が親を看取り、戦時は親が子を看取る。
だがガンビーノのように親子共に戦地にいればどっちが先に死ぬかなんて分からない。
それでもガンビーノは己よりガッツが生き残る事を当たり前の様に考えている。
「そうだ。丁寧に石をどけた道を歩かせるのは親のエゴでしかない、子の為を思うなら石をどけずに見守るべきなんだ。許されるうちに転ぶ痛みを知り、起き上がり方を学ばせる。親が死んだ時、どっちの子が生き残れるかなんざ議論の余地すら無いだろう?」
正論である。
それにしても一体誰が想像し得ただろうか、
少なくとも儂には出来なかった、できなかったが知った以上はこれまで同様支えてゆくまで。
「なるほどな、お前の考えは理解した。もはや儂も反対はしまいよ、だがせめて15の旅立ちまでは変わらず接してやってくれよ?」
当然だと言うようにハッキリとガンビーノは頷いてシスと共に外に出ていった。
妻と寄り添い子の成長を見守る、か。
まったく…親バカここに極まれり じゃな。
これは儂が老体に鞭打ってでもガンビーノが言っていた
地図を見ながらため息を着く。
ガンビーノが "ジジイ" と呼んでいた鍛治職人。これから彼を尋ねねばならぬ。
せっかくの機会なのだ、旧交を温めるとしよう。