ガッツが鷹の団に接触した。
その噂を聞いて俺は物語が回帰しようとしてる事を確信した。『鷹の団』で『大剣振り回す若武者』つったらもうガッツしかいねーだろ。
運命とやらはどうあってもグリフィスを闇堕ちさせたいらしい。
ま〜〜ったく冗談じゃねぇやい!
俺の気も知らねーで勝手ばっかしやがって!何が運命だコノヤロー。
こちとら毎度おなじみチューダー戦で飽きて疲れた頃合いだってのによ。
ちなみに戦況は最悪、チューダーの大規模反攻作戦を受けてズルズルと後退中。そんな時に新興の貴族が功を早って戦線を突出させすぎたんだから堪らねえ。
あっという間に後方のドルドレイ要塞と分断されちまった。
そんなアホなんざほっときゃ良いのに『直ちに救援せよ』なんて命令が出されてウチの雇い主が無駄な手柄欲を起こして引き受けやがった。
巻き込み事故なんてレベルじゃねーぞマジで!!
しかも斥候の情報じゃあ包囲してんのは紫犀聖騎士団にボスコーン将軍率いるチューダーの一軍。その数掴みで2万弱。
……夢だろ?
まぁ命令だからな、しょーがねえ。仕方なく俺たちゃ『おバカ救出 大・作・戦☆』の主力として進軍、今は少し離れた台地に布陣してチューダー主力と睨み合いながら機を伺っているところだが…。
畑から兵士が取れるとかそーゆー感じなのか?チューダーって…。
「いやぁ〜、無理だろアレ」
「わざわざ言わなくて良いんだよバカ」
「言いたくもなるっての…あん中に突っ込むんだぜ?俺たち。紫ナンタラの騎士団はともかくボスコーン将軍とかどーすんのよ。俺当たりたくねーよ…カルテマ、アンタが相手するか?」
「……無理。一騎打ちであの将軍に勝てるとは思えない」
「ふむ、儂がもう少し若ければ…いや、難しいかな?」
「聞いたろカルテマ。モス爺だって無理な相手なんだぜ?俺は御免こうむるぜ!」
かれこれ1時間以上も作戦会議をしてるがいい案は無し。
ウチで一二を争う戦争好きなバーナーやバーランですら衝突を避けたがっている。
もちろん俺だってゴメンだが「あ、無理っす〜」と言って引き揚げるわけにはいかない、やるしかないのだ。
ひとまず言い合いになりかけてる場を静める。
こういう時は独裁よろしく「こうだ!俺に従え!着いてこい!」と強く引っ張るのが1番効果的だ。
「聞けテメーら。正面からぶつかるのは論外だ、夜襲も…十中八九失敗すると俺は思ってる。だが幸い敵の主力は騎兵ときたもんだ。俺達が最も得意にしてる兵科だろ?ガッツリ攻めるんじゃねぇ。守りながら攻撃すりゃ勝てる可能性はある」
ちょうど良い対騎兵戦に覚えがあるしな。
「守りながら…?森に引き込んで囲むとかか?」
「違ぇよバーラン。いいか、今から書く陣をお前らよく覚えろよ?コイツは "方陣" つってな──」
〜〜〜◇チューダー軍本陣◇〜〜〜
「ミッドランド軍は動かぬか…」
「ハッ、未だ動きはありませんが敵の主力にあのガンビーノ傭兵団の旗を確認しております」
「ムウ…それは厄介ではあるが将軍、そなたならば問題あるまいな?」
「当然でございます」
「ふふっならば良い。期待しておるぞボスコーン将軍」
「ハハッ」
一礼して退席する。
その際チラッと総督の後ろの幕の影に美少年が待機してるのが見えた。
嗚呼、戦地に来てまでコレとはもうどうしようもあるまい…。
ゲノン総督。
あまり共感できない性癖で有名なお方だがそれでも我が上官。逆らうなど許されぬ。
「将軍!騎士団および歩兵部隊、いつでも出陣可能です」
「うむ、ならば騎士団長を招集せよ。作戦を伝える」
「ハッ!」
駆けてゆく部下を見送りながらため息をつく。
ミッドランドの大攻勢に対して国を傾けてまで行っている大規模反攻作戦だが未だに勝機が見えてこない。
ここから離れた地では鷹の団とやらが力を強めているとか。
「まったく…上手くいかぬ物だな」
次から次に悩みの種が増えてゆくばかり。
有能な将すら今のチューダーにどれだけ居るか…。上官がアレなのはこの際致し方ないとしても、せめて部下に有能な者が欲しかったと強く思う。
声には出さないがコボルイッツ家の馬鹿もいっそ何処かで戦死してくれれば気が楽なのだがな…。
「ここにおられましたか将軍、各騎士団長方がお集まりです!」
呼びに来た部下の声でハッとした。
どうやら考えながら会議室とは別の場所へ歩いていたらしい。
「すまぬな。直ぐにゆく」
まぁ良い。我は騎士らしくある迄よ。
作戦と呼べるか分からんが総督の命令には従う。
騎兵で敵陣を切り裂いて、歩兵部隊がその亀裂を押し広げて分断、殲滅する。
なんと安易な策か、もう少し考えて頂きたかった…。
チューダーの、故国の先はもはや長くはあるまいな。
この私もいずれは…