ミッドランドを発って2ヶ月は経ったか?やっとだ、やっと着いたぞ!夢にまで見たクシャーン帝国!!
私が来た!とでも叫びながら練り歩きたい気分だぜ。
まぁ俺の後ろじゃ久方ぶりの地面に対して、涙目で喜んでたり五体投地の真似をしてる奴まで居るからちょっとな。
このまま叫んだら俺まで変人達の仲間入りしちまう。
ただ、船旅の苦労を思えば少しくらい好きにさせとくのも──
「ママー、あの人達」
「シッ、見ちゃいけません!」
「あの軍装ってミッドランドの…」
「チューダーのも混じってないか?」
…あー、駄目だ。叩き起こそう。
☆
さすが戦争と無縁だった国家と言うべきか、港の、町の活気が違う。ちょっとした地方都市ってくらい賑やかで人と物が流れている。
どこか懐かしくて町特有の喧騒が落ち着く俺はおかしいだろうか。
「ガンビーノ!ああ良かった。無事に着いたんだな」
「よぉウルバン、アドンも一緒か。まぁこの通り無事だ。それと新顔も居るぞ」
既に港町を満喫してただろうアドンとウルバン。
何を買い込んだのか知らないが幾つか紙袋を抱き抱えていた。
新顔と聞いて顔を見合わせる2人だが十中八九、面識は無いはずだ。
「ほら船長、話してた奴等だ」
「お初にお目にかかる。海賊を生業としていた海賊船元船長、髭骸骨です」
「「おお…!」」
見た目いかにもな海賊に俺と同じ反応をする2人に思わず苦笑いがこぼれる。
そうだろう、そうだろうよ。これ以上海賊らしい奴は中々居ないもんな!
もっともこの後すぐに武装船を与えて送り出す予定だから、鮫と鯨の共闘とかは無い訳だが。
「なあアドン…」
「ん?」
カルテマに髭骸骨を武装船に連れていかせて、部下はウルバンに押し付け、アドンを連れて町へ向かう道すがら
クシャーンに関わる事はもう足掻くしかないが、仮にも "神" の名を拝する海神なんかには間違っても関わりたく無い。
アレはガッツの仕事だ。
話の結果から言うと、アドンは既に報酬の支払いを終えて親子に小型船を与えて島に帰していた。
なんか娘の方が大型船やら港町に興味津々らしかったが土産を満載させたら大人しく帰ったとか…。
あれ?もしかして
何にせよビッキビキにそそり立つ死亡フラグに引きずり込まれなくて済んだのは
ここで死んだら\\闇フィス爆誕//待ったナシだからな。
偉いぞアドン。
「それで、お前の言ってた様に親子は帰しといたがこれからどうする気なんだ?分かってるだろうが数百人の部下を食わせなきゃいけないのに雇い主が居ないのは不味いぞ」
「それなんだがな?町の連中の話を拾ったんだが近く祭りがあるらしいんだよ。王城近い港町の祭りだぞ、きっと王家の誰かがお忍びで来るはずだ」
「初耳なんだが…盗み聞きでもしてたのか?」
「テメェ…人聞き悪い言い方すんな。聞き耳立ててたと言えバカタレ」
「あぁ…そうだな。すまぬ」
別に怒っちゃいねぇんだが。
アドンに諜報能力があるなんて微塵も思ってないしな。ドルドレイにいた頃みたいなヘマさえしないでくれりゃそれでいいんだ。
あとは──
「アドン、お前に預けた工兵隊は生きてんのか?」
「無論だ。船から降りたら1日と経たずに平然としてたぞ」
「なら自走砲を作り直せ。前の砲は髭の奴にくれたからな、ひとまず代用で手に入る長射程の奴を積めばそれでいい」
「待て待てなんだと!?あれ1台で幾らかかると!」
「作れ」
「…あい分かった」
例え火の車だろうが身を切る出費だろうが、出すべき時に金は惜しんじゃいけねぇ。
ミッドランドで使ってた自走砲の噂くらいは従軍商人伝いでコッチにも届いてんだ。ならアピールしなきゃ駄目だろ。
『俺達はここに居る!』ってな。
王政が健在なら、いやなればこそ王家は欲しがるはずだ。
臣下に渡ると厄介な部隊、なれど有すれば強力な部隊を。たとえ直近に戦が無くともきっとそうする。
扱いなんてどうだっていい、金さえ貰えりゃどうとでもしてみせる。
今までがそうだったようにな。