俺が何者か、それを思い出してはや数ヶ月が過ぎちまった。あっという間に今日を迎えた気分で憂鬱だ。
体感時間が狂っちまったらしい。
『ガッツを拾わないようにする』つったって今の時勢じゃ親を亡くした子供も赤子もウンザリするくらいには居る。
赤子の見た目なんざ大して違わねーってのにどうやって見分けりゃ良いんだよ!
あんだっけか、漫画じゃシスがガッツを拾ってくるんだったよな?て事はだ。
そのタイミングさえしのげれば何とかなったりしねーかな。
いや、無理か。そもそもいつの話なのか思い出せねぇ時点でこの考えは無駄だ。
悩んだ末に俺は思い至った。
もしシスがガンビーノに愛されてたら?子供を拾おうとは思わないかもしれない、と。
みなまで言うな!わかってる、クズ野郎じみた事言ってんなって。
でも生きたいんだ!俺は生きたい。
そんな本音を隠しながら今日もシスのテントに顔を出している。
「痛くねぇか?シス」
「あーー!ぅぅーー♪」
いつからだったかシスの髪をとかしながら話しかけるのが当たり前になっていた。
「なぁシス、子供が居なくても俺ァお前が居たらそれでいい。1人が寂しいんなら俺が側にいてやるだからよ…」
『赤子を拾わないでくれ──』
ダメだ言えねぇ。
この世に生まれて40数年。本気で惚れた女に、死産で気を病んじまった妻に、どの面下げて言えってんだ。
「うーー?」
シスの手が言い淀んだ俺の頭をポンポンと撫でてくれる。
嬉しさと自己嫌悪が胸の奥で混ざる。
やめだ、もうやめよう。
いっそシスの好きにさせるのも悪かねぇ。
「あぁ、大丈夫だ。何でもねぇよ」
撫でてくれるシスの手を優しく握り返しながら笑顔を返す。
思えば作り笑顔ばかりしてる気がする。
おかしいな…前世でも今世でもこんなふざけた考えした事無かったのに。
お前だってこんなクソッタレな世界に好んで生まれた訳じゃねえってのにな。
戦争に飢餓に重税、貧困に犯罪に贈収賄。どこに行ってもどれかが蔓延していやがる。
聞くだけだとろくでもねぇ世界だろ?実際そうさ。
こっちじゃ100年戦争っつーんだが…分かりにくいか?
そうだな、中世ヨーロッパの戦国時代って言ったら分かるか?
まぁそんな時代だ。
「あうーーー」
シスの髪の手入れが終わると、正座したシスが自分の膝をポンポンと叩きながら誘ってくる。
最近してくれるようになった膝枕だ。
昼寝にも丁度いい時間だから素直に乗っておこうと思う。
寝転がった瞬間、武装した男が駆け込んで来なけりゃもっと良かったんだけどなぁ…
「おーいガンビーノ!!丘3つ向こうにチューダーの輜重隊が通過中だとよ。どうする、久々にやるか?」
……くそっ、シスの膝枕で昼寝決め込むつもりがタイミング悪ぃこった。
仕方ねぇな、「ダメだ」って言ったって行くだろてめぇら。ちょっと待ってろ俺も行く。
「チッ、今度はマトモな物なんだろうなぁ。前みたいに食えねぇブツだったらぶん殴るからな?」
「分かってるさ、ちゃんと調べたぜ。ブツは食料が主であとは雑貨物みたいだ」
「雑貨か…」
たまにはシスに何かプレゼントするのも悪くない。
気の病で言葉を忘れちまってるが、今もシスには愛情がある。時間があればシスの面倒を見てやってるが伝わってるのかよく分からねぇ。
明確に伝えるにはいい手じゃねぇか?これ。
「ん?なんか言ったか?」
「何でもねぇよ。さっさと行きてぇ奴ら集めてこい」
「おう!!」
部下共のストレス発散をさせるついでだ。ブローチでも
シスの喜びそうなもんがありゃあ頂くまでよ。
だからよシス…ガッツを、拾わないでくれ
話の長さ調節に御協力を(今は大体1500くらい)
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これでいい
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も少し長く