「んーー、退屈だなァ……」
まいったな…やる事が無いぞ。
いや、無いことはないんだが1、2時間机に向かってりゃ終わる程度の書類仕事じゃやる気にもなれねぇ。
一応ペンこそ持っちゃいるがなんだか走りが悪くて紙に㌧㌧㌧と黒点が増えるばかり。
殆どの人員が任地に行ったせいで兵舎もガランとして寂しい空気が幅をきかせている。
ウルバンとバーランは残ってるが医学はあいにくサッパリ分かんねーし、朝から酒飲んで呑まれてる奴にかける言葉も無いと来たもんだから本格的にやることが無い。
頭脳派には分からねぇだろうが肉体派なら分かってくれるだろう、座ってるだけでケツがウズウズしてムカついてくるこの感覚を。
眠気とか以前にその空間が嫌になんだよな。
シスんとこ行っても良いんだが今は
アイツら人間兵器だからな。
────よし、
「誰かいるか?」
「はい、失礼します」
入ってきたメイドはクシャーン人じゃなかった。
ガニシュカが気を利かせたのか、単に人種分けした結果なのか知らねえが俺の周りにはミッドランド人とチューダー出身者が集められている。
「んん?いつもの奴じゃないのか、オメー新顔だな」
「はい、配属されてまだ5日目です」
「そうか、わざわざクシャーンまで来るなんざ酔狂な女だなァ。見た感じミッドランド人だろ?向こうはまだ殺り合ってんのか?」
「いえ、チューダーとの戦争は勝利で終わって殆どの国土を併合したらしいです。戦争が終わったので私はミッドランドで父と旅商人をしてましたが盗賊に襲われて、そのまま奴隷として売られました」
「奴隷商ねぇ……」
まぁよくある話だ。
殺されなかっただけマシと考えりゃ釣りがくるぜ。
ところでこの子、どっかで見たような。
「それで私はかなり高額で取り引きされたんですが、乗せられた船が難破してしまって……元海賊だったという奴隷商に拾われました」
「(ふ〜〜ん……うん?)」
元海賊の奴隷商ねぇ…。
なんだか知り合いにそんな奴が居たような──
「もしかしてだがその海賊、もとい奴隷商の船長は松葉杖ついてたか?」
「あ、はい!ついてました。お知り合いだったんですか?」
知り合いも何も部下なんだが?
あの髭、やりやがった。
「それよりだ、その船でクシャーンに来たのか」
「はい、それでクシャーンの港で降ろされて奴隷商のツテに売られてここに来たんです」
「そ、そうか。んでオメーの名前は──」
「はい、コレットです」
やっちまってんじゃねえか、ダメじゃんか!
思い出したぞ、コレットっていやガッツと絡みがあるキーワードキャラだろ?そんなんクシャーンに来ていいワケねぇだろうが!!
「(───いや待て)」
コレットがガッツと会うのって "触" の後のはずだ。
そのタイミングでミッドランドに送り返せば……いやダメか、そもこの子の親父が死んでるんじゃ話にならねえ。
これ……俺がまたなんかやっちまってたパターンか?
「あの、何かお持ち致しますか?」
「いや、俺はちょっと出掛けてくるからこの部屋に鍵かけといてくれ。夕方には戻るから軽食も用意しておけ」
「分かりました」
深く頭を下げて見送るコレットを横目に部屋を出た。
実際どうしようも無いからな。
手遅れだ。
手遅れだが身寄りの無い子供を見ると胸が痛む今日この頃。
「散々人殺した奴の何が痛むんだ」とか思ったヤツ、てめぇ殺すからな。
本音言うとあの子をウチに編入して会計部にでも放り込むのもアリっちゃありだと思うんだよな。
金勘定が出来るのはステータスとしてはデカい。
俺としては歳が近いからロシーヌの友達にでもなってくれりゃ万々歳なんだが。
「ロシーヌが何て言うか、だな」
あの子が喜ぶようならコレットを養女に迎えるのも悪くない、金はかかるだろうが別に難しくねぇ。
そうなるようならシスにも話さないとだな。
うん。
ま、なるようになれだ。